延々と続く海岸に沿って飛ぶのんびりフライトへ

静岡県浜松市舞阪の海岸に、ときどき飛びに行くモーターパラグライダーのフライトエリアがある。海岸線は海風が安定していて飛びやすい。

この日は舞阪から離陸して天竜川河口まで行って帰ってくることにした。

海岸線で飛ぶときに一番気をつけなくてはいけないことは、海に着水しないようにすること。陸のほうから海に向かって風が吹く「出し風」の場合は、陸に戻ってこられなくなる可能性があるため、飛ぶことができない。地上の風だけでなく、上空の各高度でどの向きの風が吹いているかを事前に確認しておく。

この日の風は特に問題なさそうだったので予定どおり離陸。天竜川河口方面へと飛んでいく。海岸線を飛んでいれば、万が一エンジンが止まってもいつでも砂浜に着陸できるので、とても安心感がある。

やがて中田島砂丘が見えてきた。日本三大砂丘の一つと呼ばれているだけあって、地上で見ると広大な砂丘だ。しかし上空からだと、静岡県から愛知県まで連なる遠州灘海岸全体のスケールが大きすぎて、中田島砂丘が小さく感じられてしまう。

手前右下が天竜川河口となる。左上奥に向け、海岸が渥美半島方面に延びる。
手前右下が天竜川河口となる。左上奥に向け、海岸が渥美半島方面に延びる。
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そこからしばらく進み、天竜川河口に辿り着く。天竜川の存在感は圧倒的で、太平洋に注ぐ河口から内陸奥地まで続いているのが見えた。

河口付近では、川から流れ出た淡水と海水が混ざり合わずに、模様を描いているのがおもしろい。

飛んできた方向を振り返ると、渥美半島方面まで砂浜が延々と続いているのが見える。往復約30㎞、海岸散歩をしているようなのんびりとしたフライトとなった。

天竜川のスケールは大きい。上流は諏訪湖へと続くが、奥は霞んで見えなかった。
天竜川のスケールは大きい。上流は諏訪湖へと続くが、奥は霞んで見えなかった。
川の水には砂が混ざっているのだろうか、淡水と海水の境界線がはっきりと見えた。
川の水には砂が混ざっているのだろうか、淡水と海水の境界線がはっきりと見えた。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年3月号より