自然がつくった見事な槍形岬の上を仲間と飛ぶ楽しみ

陸地の先端部となる岬に、とても魅力を感じる。登山をするとき、山の先端である頂を目指すのと近い感覚かもしれない。

千葉県富津市にある東京湾に突き出た富津岬に、モーターパラグライダーで飛べるエリアがあると聞き行ってみることにした。

岬というと、その周辺は岩石などが波に削られたような荒々しいイメージがある。だが富津岬は砂が堆積して作られた土地のため、平らで起伏はほとんどない。富津岬の地形を成す美しい三角形は東京湾へ5kmほど突き出しており、先端は槍のような特徴的な形をしている。

一緒に飛んでいる仲間を入れて撮影。モーターパラグライダーが写っているとスケール感がわかりやすい。
一緒に飛んでいる仲間を入れて撮影。モーターパラグライダーが写っているとスケール感がわかりやすい。
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岬の先端から少し内側の砂浜から離陸し海岸線を飛んでみる。先端まで飛んでいって振り返ると、本当に見事な槍の先の尖り具合。これが自然にできた形だと思うと不思議だ。

先端の少し先には第一海堡その先には第二海堡があり、こちらは人工的に造成した島となる。槍の根本の北側は工業地帯。自然にできた地形の中に人工的な造形が混在している。

普段は「地球を感じる写真」というテーマで、できるだけ人工物が写らないように撮影することが多いが、自然と人工物が混在した景観もおもしろい。

さらに今回はパラグライダー仲間と来たので、一緒に並んで飛ぶモーターパラグライダーを入れての撮影も行った。写真家としての作品撮りというよりも遊びながらの空撮といった感じだ。いつもとは違う楽しさがあった。

たまにはこのような撮影もいいな。そう思いながら岬周辺をうろうろと何周も飛び回った。

岬の先端すぐ近くにある砂礫(されき)の州。関東大地震による隆起と砂の堆積の影響で、第一海堡と地続きになっていたこともあるらしい。
岬の先端すぐ近くにある砂礫(されき)の州。関東大地震による隆起と砂の堆積の影響で、第一海堡と地続きになっていたこともあるらしい。

取材・文・撮影=山本直洋
『旅の手帖』2024年10月号より