1.クライネ・シャイデック~ヴェンゲルンアルプ
この旅で最初のハイキングだったこともあり、このコースは忘れられない。
ラウターブルンネンから乗ったヴェンゲルンアルプ鉄道。車窓を眺めていると、周辺の花がすごい。というわけで急遽、クライネ・シャイデックで降り、ひと駅手前のヴェンゲルンアルプまで歩いて下ることにした。こういう突発的なことができるのも、ハイキングコースの充実しているスイスの素晴らしさ。
アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山の大迫力、そして色とりどりに咲く高山植物、気持ちよさそうに草を食む牛たち——。
これぞスイスという圧倒的なシーンを見てしまった。ずっとここにいられる。後半、湖に映るリフレクションにも心を奪われ、もう帰りたくないという状態に。
ちなみに、スイスの人たちは圧倒的に上りが好きなのだそう。だから下るコースは人が少なかったりする(笑)。
2.フィルスト~バッハアルプゼー
ユングフラウ地方の拠点・グリンデルワルトからロープウェイで向かったのは、フィルスト。ここにはレストランと展望テラスのほか、「フィルスト・クリフウォーク」というスリル満点の展望回廊もある。2023年の夏には、新しい展望台「フィルスト・ビュー」もできた。
展望台からは名峰・アイガーをはじめ、ベルナーアルプスの山々が見渡せるが、そこからさらに先、“アルプスの宝石”とも呼ばれる山上湖・バッハアルプゼーを目指す。
最初はやや上りのスロープ、やがて平坦になり、しばらくなだらかな道が続く。コースの左側には、遠く下方にグリンデルワルトの谷、その上にはヴェッターホルン、シュレックホルン、アイガーなどの眺め。スイスにいるんだ、という実感が湧いてくる。
周辺の牧草地には小川も流れ、可憐な高原植物があちこちに。1時間ほどで山上湖が見えてきた。
バッハアルプゼーは小さな2つの湖がつながっている。風のない穏やかな早朝や夕暮れには、湖に閉じ込められた山々が見られる。どん曇りの湖で少し待っていると、シュレックホルンが姿を見せてくれた。形のいい尖った山には、なぜか惹かれてしまう。
3.リッフェルベルグ~リッフェルゼー
一番楽しみにしていたのが、マッターホルンのご来光。
ツェルマットの村からも見られるが、せっかくならもっと近くで、さらにリッフェルゼーで逆さマッターホルンも、というよくばりな計画なので、ゴルナーグラート鉄道のリッフェルベルグ駅そばに立つ『ホテル リッフェルハウス 1853』に泊まる。
ここはもちろん、スイステナブルの認証ホテルだ。山の宿とは思えない客室にレストラン、バルコニーからはマッターホルンを独り占め。そして、極めつきはサウナとジャグジー。ここがもう……ため息ものだった。
翌朝は3時過ぎに起きて、4時には宿を出発。真っ暗ななか、ヘッドランプの明かりを頼りにリッフェルゼーへ向けて歩き出す。途中で道がわからなくなり、少し迷ってしまったが、なんとか5時半にはリッフェルゼーへ到着。
湖にはカメラを構えた人がいるだろうと思っていたのに、なんと貸切。ほの暗いうちはマッターホルンの形がきれいに見えたが、日が当たってくると頂上付近に雲が出てきた。それでも、雨女の私にとっては上出来。湖面にもかろうじて名峰が映っている。
待つこと40分、山頂あたりの右側がほんのりオレンジ色に染まり、周りも明るくなってきた。なんて神々しい。一日の始まりってこんなに清々しいんだなと、改めて。あぁ、早起きしてよかった~。
4.スネッガ4湖めぐり
ツェルマットの村から一番近いスネッガ展望台へは、ケーブルカーでわずか3分。周辺には5つの山上湖があり、ここをめぐるコースが人気だ。今回は時間の関係で、4つの湖をめぐることに。
1つめはシュテリゼー。ここへ下っていく途中、野生のエーデルワイスを発見してしまった! 紫のアルペン・アスターが咲くところには、エーデルワイスがあると聞いていたので、アルペン・アスターを見つけたときに、もしかしたらと思ったら……。まさか本当に咲いているとは! にわかに信じられなかったが、ホンモノなんだ、と感動を噛みしめる。
シュテリゼーはゴツゴツした岩があり、堂々とした姿。マッターホルンと逆方向には、山小屋レストラン「フルーアルプ」も見える。
2つめはグリンジーゼー。レルヒ(カラマツ)に囲まれた静かな湖だ。逆さマッターホルンを眺めて、しばしひと休み。秋にはレルヒが黄色からオレンジに染まり、それは見事なのだそう。紅葉も見てみたいな。
3つめはモージーゼー。ここはなにやら、ほかの湖と色が違う。エメラルドグリーン? ミルキーブルー? 顔と足が黒い、モコモコのかわいいヒツジ(ヴァリサー・シュヴァルツナーゼンシャーフ)がいっぱいいた。
このあと、小さな山岳民族の村・フィンデルンでのんびりしてしまったので、時間がなくなり、最後のライゼーは駆け足で。湖畔に遊具などがあり、家族連れでも楽しめそうだ。
それぞれ湖の表情が違うので、自分の好きな湖を見つけてみては。
おまけ.エッギスホルン
アルプス最長・最大を誇るアレッチ氷河を見るため、フィーシュからロープウェイを乗り継いで、エッギスホルン展望台へ。ここからの眺望でも十分満足だが、目の前に見えるエッギスホルンに登れば、もっと氷河に近づけるという。これは登るしかない!
山頂には十字架が立っていて、岩山なのもあり独特の景観だ。20分ほど登って山頂に到着。十字架のさらに先にも行けそう。
足元に注意しながら歩を進めていくと……。うわー、アレッチ氷河が近い!! さえぎるものが何もない。ちょっぴり足が震えるが(笑)、登った人しか見られない光景に優越感。
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[気候]春・秋は8~15度、夏は18~28度、冬は-2~7度。山岳地帯と麓の村では温度差があり、日中と朝晩の気温差も激しいので、レイヤード(重ね着)が基本。着脱しやすい服装を準備したい
[時差]日本の-8時間(夏は-7時間)
[言語]ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語(地域により異なる)。ホテルやお店では英語が通じる
取材・文・撮影=『旅の手帖』編集部 協力=スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、スイストラベルシステム