高知で躍動するお酒が待つ場所MAP
【日本酒】酵母も技も進化する酒の国の象徴『SUIGEI STORE 土佐蔵』
「土佐蔵限定酒 吟の夢」50%(720ml2750円)
まずチェックしておきたいのは土佐酒である。
高知では県が主体となり、オリジナル酵母の開発に取り組んできた。その数は全国的にみても多く、使われているものだけでも20種以上ある。いずれの高知酵母もフルーツのような香りを生むのが特徴で、その華やかな香りは料理に合わせても引けを取らず杯がよく進む。
一方で、料理をいただく箸も進ませるように、あと口はすっきりきれいなキレをもたせている。食の宝庫らしい酒なのだ。
そんな土佐酒の特徴を継承しながら、独自に進化を遂げているのが150年以上の歴史を誇る酒蔵「酔鯨(すいげい)」だ。同蔵は食中酒としてのおいしさをさらに追求し、酵母を厳選。おだやかな香りとキレをもったお酒を造っている。
さらに、2018年に完成した「土佐蔵」では、県内でも珍しい巨大精米機を導入。酒の味を決める米の精米状態を造り手みずから確認するなど、よりおいしい酒を目指してきめこまやかな仕事をしている。
こだわりの設備が並ぶ蔵内部は見学も可能。また、蔵に併設するストアでは試飲や限定商品の購入、甘酒や酒粕を使ったオリジナルスイーツもカフェで楽しむことができる。
『SUIGEI STORE 土佐蔵』詳細
【ワイン】土佐のテロワールが生む新しい感動『井上ワイナリー のいち醸造所』
tosa cavatina(トサ カヴァティーナ) 正光園シャルドネ 2023(750ml3960円)
2021年に誕生した『井上ワイナリー のいち醸造所』は、県内8カ所の自社圃場で栽培したブドウを主に使ってワインを製造。そこに至るまでの経緯が興味深い。
母体となる「井上石灰工業」は、明治17年(1884)に創業して以来、高知が誇る良質な石灰を原料に産業向けの製品を作り続けている。製品の一つにブドウなどの栽培に使われる環境配慮型の農薬があり、全国の農家と交流をするなかで、「自分たちでブドウを育て、ワインを造ってみては?」といわれたことが契機となった。
しかし、栽培の知識はあっても、高温多湿な気候の高知はブドウに適していないと考えられてきたため、そう簡単にはいかない。品種の選定、栽培方法、収穫時期などすべて“高知流”を模索し、ワイナリーの設立までに実に6年を費やしたという。
そんな『井上ワイナリー』のワインは、辛口でキレがあり、和洋さまざまな料理と合わせることで互いが引き立つポテンシャルをもっている。食中酒へのこだわりは土佐酒にも通じ、高知の酒文化の真ん中にいるように感じた。
醸造所では試飲とともにおつまみも提供しているので、そのマリアージュを確かめたい。
『井上ワイナリー のいち醸造所』詳細
【ジン】老舗Bar発! 土佐ボタニカルの香り『BAR Craps』
MAKINO GIN(マキノ ジン) ベーシック(700ml3700円)
MAKINO GIN プレミアム 限定文旦フレーバー(720ml5600円)
高知が生んだ偉人の一人に、「日本の植物分類学の父」と呼ばれた牧野富太郎博士がいる。連続テレビ小説(2023年度前期)の主人公のモデルとなり一躍注目を集めたが、高知のお酒の世界では博士の名を冠したクラフトジンが話題となっている。博士ゆかりの植物など土佐のボタニカルを原料にした「MAKINO GIN」である。
開発者の塩田貴志さんは、高知市内で30年以上営む『BAR Craps(バー クラップス)』のマスター。
「高知の酢みかんに合うお酒がほしい」という知人のひと言から、高知産のボタニカルで造るクラフトジンを着想。時を同じくしてコロナ禍となり、「バーテンダーは“待つ商売”だったが、これからはお客さんのもとへお届けできるものも必要」と考え、猛勉強の末、クラフトジンの商品化に至った。
ジンの複雑な香りは、酢みかんの一種であるブシュカンの果皮や、全国的に希少となったカヤの木を燻(いぶ)した削り節など12種の原料から。なかでもキーボタニカルとなっているのが、牧野博士が発見し、妻・寿衛(すえ)から名づけた「スエコザサ」だ。
原料として確保できるよう、スエコザサの栽培まで手がける塩田さん。牧野博士にも負けない情熱で、土佐のボタニカルと向き合っている。
MAKINO GINはここでも買える! 『司牡丹 酒ギャラリーほてい』
「MAKINO GIN」の蒸留工程を担う「司牡丹酒造」の直販店。近くには牧野富太郎博士の生家跡地や牧野公園もある。
☎0889-22-1211
9:30~13:00・13:45~16:30、無休
高知県佐川町甲1299
JR土讃線佐川駅から徒歩6分
『BAR Craps』詳細
【ビール】県産素材の唯一無二の味がみんなを笑顔にする『TOSACO TAP STAND』
ゆずペールエール/ 和醸ケルシュ(各330ml690円)
ビールが好きな自分と、ビールが苦手な妻が一緒に乾杯できる一杯を追い求め、電気メーカー勤務の会社員からビールを醸造するブルワーへと転身した瀬戸口信弥(しんや)さん。高知の人と自然に魅了されて移住を決意し、2018年に「高知カンパーニュブルワリー」を創業した。
ビールが苦手な人でもおいしく飲めるよう、苦味と甘みのバランスを意識して造られる 「TOSACO」シリーズは、いまや高知を代表するクラフトビールとなっている。
その人気を支えているものは、飲みやすさだけではない。ユズや文旦をはじめ、トマト、イチゴ、カヤの木の実、日本酒酵母……と県下各地のさまざまな材料を生かして、唯一無二のビールを生み出しているのだ。
「高知の人はパワフル。特に生産者さんは思いが強い。私が出会った高知の生産者さんの思いも伝えていけるビールを造り、みんなが笑顔で乾杯できたら」と語る瀬戸口さん。
栓を開ける前から飲み終えたあとまで、幸せな気持ちが続くビールだ。
『TOSACO TAP STAND』詳細
【Information】高知の魅力、観光情報をもっと知りたい方はこちら!
高知県では、主要な観光地だけではない隠れた観光スポットや体験、観光ガイド、地元の人々との交流を通じて気づけば高知にどっぷりハマってしまうような観光情報を発信中!
●どっぷり高知旅
https://doppuri.kochi-tabi.jp/
また、2025年3月末から開始する連続テレビ小説『あんぱん』の放送をきっかけに、やなせたかし・暢(のぶ)夫妻のふるさと高知としても盛り上げていくため、ゆかりの地・ものべがわエリアでは地域博覧会を開催!
●ものべがわエリア観光博「ものべすと」
https://monobegawa.com/monobest/
取材・文=高橋さよ 撮影=井戸宙烈 協力=どっぷり高知旅キャンペーン推進委員会
『旅の手帖』2025年1月号より