浜野謙太 Hamano Kenta

1981年8月5日生まれ、神奈川県出身。
バンド在日ファンクのボーカル兼リーダー。俳優としても映画、ドラマなど多数出演し、独特な存在感とキャラクターで世間の注目を集めている。

自由で「無法」な学生時代

—— お生まれは横浜市なんですね。

浜野 戸塚の団地です。ドリームランドっていう遊園地があった関係で、ドリームハイツっていうマンモス団地がありまして。

—— 中学まではずっと戸塚ですか。

浜野 はい。そこで幼なじみが自由の森学園高等学校(のちに星野源氏と出会う学校)に行くというので、僕も! と訳も分からず受験したらありがたくも入れて。

—— 部活は吹奏楽部ですよね?

浜野 中学時代ですね。部に中途半端におしゃれな友達がいて、共に横浜に怯えながら服買いに行ったこともありますが、洋服にはうとくて。ジーンズの『マルカワ』で全部揃えるみたいな。高校に入ったらみんなおしゃれで、裏で「ベストジーニスト」ってあだ名がついて恥ずかしくて……寮の先輩に池袋に連れてってもらいました。
でも、友達と遊びに行くより所沢でバンドのリハスタに入ることが多かったですね。その後に友達の家に泊まったことも。寮生なんで、泊まっちゃいけなかったですけど。

—— それこそ自由だったんですね。

浜野 今度は「無法者」っていうあだ名がつきました(笑)。

—— 高校卒業後はすぐ大学に?

浜野 大学をどうしていいか分からなくて、1年くらいフラフラして上石神井の彼女の家にいましたね。お金もなかったんで、ずっとレンタルビデオ見てました。彼女が鈴木清順とか借りてきてましたね。

—— 渋い! 映画お好きだったんですか?

浜野 僕より彼女が。その時の彼女に影響される感じです。
結局、1浪して和光大学に入りました。大学時代の前半は実家から通って、そのうちサークルでできた友達と一軒家借りて3人で住みました。

—— その後SAKEROCKを結成されて。

浜野 大学の途中くらいですね。バンドが盛り上がってきて、「スペースシャワーTV」に出させてもらい始めて。

お店開拓は飲み歩きと知り合いの口コミで

—— 経堂の前は千歳船橋にお住まいだったようですが、引っ越されたのは。

浜野 子供が生まれる2013年頃かな。
以前は西荻窪を経て吉祥寺に住んでいたんですが、子供が生まれて妻から和光小学校に入れたいと提案があり。

—— 理由をお伺いしてもよろしいですか。

浜野 楽しい学校だからと。妻のお母さんからも和光小学校の教育をいろいろ聞いていて。戦争教育とか課外学習とか。幼稚園の頃から1年に1回、合宿するんですよね。

—— 千歳船橋にはどのくらい。

浜野 2、3年でした。次の子が先天的に心臓が悪かったんです。そこで病院を探したら、めちゃくちゃ近いところに『国立成育医療研究センター』があったんです。すごく運命的なものを感じました。経堂に移っても車で10〜15分ぐらいで行けますし。

—— 千歳船橋でお好きなお店は。

浜野 僕ら夫婦、あんまり開拓しないんですよね。夫婦2人で西荻に住んでた時も主に『ジョナサン』ばっかり行ってました(笑)。1人の時は冒険心があるんですけど。経堂でいろいろ行くようになったのは、飲むようになってからです。

——せっかくの西荻で(笑)。経堂に移ってからはどのようにお店の開拓を。

浜野 飲み歩くことですかね。あと、よく飲む大学時代から付き合いのあるクニちゃんって親友がいるんですが、引っ越す街の良さを僕が話すと追いかけてくるんですよ。最初は大学のある鶴川で、西荻いいよ〜って言ったら住み始めて。飲み屋も開拓して、地元で有名人になっちゃうんです。さらに僕が経堂に移り住んだら、梅ヶ丘に住み始めて。ここ『BAR 空(くう)』も、実はクニちゃんが開拓した店なんです。

—— 恐るべき行動力のあるご友人で。こちらではどういう風に飲まれますか。

浜野 大体、別の街で飲んできて2軒目とか。もうあとひと酔いしたいとき、ここにはおいしいテキーラがあるんですよ。そしてすごくにぎやかで来れば誰かと話せる。

—— 初めて来たときはクニちゃんと?

浜野 はい。クニちゃんと僕はジャズ研で、ジャズ研出身者が好きそうな、マイルス・デイヴィスのアヴァンギャルド時代のが、レコードで流してもらえる。

—— 他のご友人ともいらっしゃる?

浜野 行きたい人連れてきます。阿部くん・岡部くん(ヘアメイク・スタイリストチーム)とか。あと、学校父母同士で仲いい夫婦がいて、インド料理店の『ガラムマサラ』で飲むような、手ごわい夫婦です。

—— 手ごわい?

浜野 1年に一度、1年分のお酒を買うっていう。

—— それは強すぎますね。浜野さんはお酒を買って飲むことはありますか。

浜野 家にワインセラーがあるんですけど難しいんで、シンプルにいいやつ飲みたいみたいな。だから結局『伊勢丹』とかのワインコーナーでおすすめを買ってます。

—— 経堂とか近くでは?

浜野 経堂ではワインはあんまり。前はあったんですよね。白って言ったら、 5本ぐらい試し飲みさせてくれるような。

買い物は庶民派ながら意外な一面も……

—— 毎日お子さまのお弁当や朝ごはんを作られるそうですが、お買い物はどちらで。

浜野 『Odakyu OX』はめちゃくちゃ高くて。西荻住んでた時はしゃけ1切れ99円だったのに、200円とかなんですよ。だから『オオゼキ』まで足延ばします。前は松原まで行かないとなかったですけど、駅前にできたので。時々『しらかめ』のノブさん(店主)と会います(笑)。それか『まいばすけっと』ですかね。

——『しらかめ』に行かれたきっかけは。

浜野 食べログで高得点だったんで行きました。そしたら、奥さんがめちゃくちゃ近いとこにいる人だったんです。昔SAKEROCK時代に『下高井戸シネマ』で曽我部恵一さんと星野源くんのツーマンにゲストで出たことがあるんですよ。そしたら当時そこでバイトしてた奥さんが、僕を見て「曽我部さんの弟さんですか」って聞いてきて「え?」って(笑)。
初めて『しらかめ』に行ったときにノブさんからその話をされて、一気に距離が縮まった感じです。

—— 初対面で、いきなりその話を振ってくるのもすごいです。

行きつけの一つ『お蕎麦のしらかめ』前で店員さんたちと会話が弾む。
行きつけの一つ『お蕎麦のしらかめ』前で店員さんたちと会話が弾む。

浜野 柴田聡子さんとかミュージシャンとも仲良くて、いい音楽を教えてくれるんです。
映画でも「これ絶対見てほしい」って、1983年のトーキングヘッズのライブ映像を店で流してくれたこともありました。ちょっと分からなくて、寝落ちしかけましたけど。

—— アットホームですね(笑)。『しらかめ』ではどんな風に過ごしますか。

浜野 鴨ロースやサトイモの天ぷらとかで日本酒飲んで、そばで締める感じです。でも時間ある時は、いつも変わったワインが置いてあるのでそれ頼んじゃいます。

—— お酒は何でもいける口ですか。

浜野 ワインが特に好きなんですけど、お店に行くとしたら限られてるので『リコピン』に行きます。フランス家庭料理的なものを出してくれる『LUGE』も。すごくいいワインを出すってわけじゃないんですけど。ちなみに、経堂で一番ドアが重厚で一番入りづらい(笑)。

—— 他にお店の開拓の仕方はありますか。

浜野 うーん、やっぱり人のおすすめですかね。あまり自分で調べても……周りに詳しい人が多すぎて。クニちゃんみたいに。

経堂は懐の広いところがいいんです

—— これから行ってみたいところは?

浜野 昔ながらの店に行けてないかな。お寿司屋さんの『喜楽』とか『八昌』、『灯串坊』とか『デリス』。あと高級イタリアンの『リゴレッティーノ』も。ジャンルは大衆店から高級店まで幅広く行きます。まだ、自分探しみたいな感じですけどね。

—— 行きたいお店のメモはどのように。

浜野 食べログで……。時々メモ帳にメモってはいるんですけど。

—— ちょっと意外でした(笑)。食べログは何点だったら信用します?

浜野 人からおすすめされる店ってなぜか高くないんですよね。でも行ったら遜色ない。
点数だけだとしたら3.3以上じゃないとちょっと不安。昔3.2の中華屋行って、結構ひどい目にあったことが。

—— 最後のまとめのようになりますが、経堂にどんな印象をお持ちですか。

浜野 レンジが広いですよね。学生からお金持ってる中高年まで受け入れるだけの店がある。その、懐が広いところがいいです。
経堂祭りとかもすごいですよ。それと、経堂小学校っていろいろイベントやるんですけど、外の人が入っていいんです。

—— それはいいですね。

浜野 子育ての面でも、駅前に自転車で集合できるんですよね。規制されてないし、幅が広い。交番もあって、学校から帰ってきた子供たちと集合するのに良くて。喫茶店も豊富だから、移動にも便利。

—— 今回(『散歩の達人』2024年9月号)は祖師ヶ谷大蔵と成城学園前も特集エリアに入るんですけど、行かれます?

浜野 祖師ヶ谷大蔵はサウナに通ってたことがあるんですけど、仕事の後の時間だとお店が全然やってなくて。ごめんなさい、もっと開拓します!

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そば前も豊富な昼飲み歓迎店『お蕎麦のしらかめ』

2010年開店で、地域に親しまれるアットホームな雰囲気。通し営業で昼飲みも楽しめる。鴨ロース1120円、もりそば810円。日本酒は1合450円~。

●小田急電鉄小田原線経堂駅から徒歩5分。11:30~19:30LO(そば売り切れ次第終了)、火休(不定休あり)
☎03-3420-1988

上質な音と酒に酔いしれる『BAR 空』

三重野尊仁(たかひと)さんが、脱サラして2019年に開店。音楽はアナログレコードのみで、約2000枚のストックがある。テキーラのドンフリオ ブランコ1000円、レポサド1200円。チャージ無し。喫煙可。

●小田急電鉄小田原線経堂駅から徒歩4分。19:00~翌1:00、無休(不定休あり)
☎なし Instagram:bar_ku_kyodo

取材・構成=久保拓英(『散歩の達人』編集長) 撮影=丸毛 透
ヘアメイク=阿部孝介(トラフィック) スタイリスト・衣装=岡部俊輔
『散歩の達人』2024年9月号より

「何があるか」と聞かれたら、いろいろありすぎてよく分からん経堂の街。実際、おいしいお店を巡るとか、広く浅くでも十分楽しめる。けれど、ちょっと深入りしてみたら、また違う景色が見えてくるかもしれない。
経堂のみならず、全国津々浦々から人々が集い、談笑する、不思議な店『さばのゆ』。2023年、店主の須田泰成さんが急逝し一時休業となったが、店は現在、妻の直子さんが守っている。これまでのコト。そして、これからのコト。とくとお話を伺った。
こだわりコーヒーの心地よい苦味。手作りスイーツのほどよい甘み。経堂~成城学園前エリアをたくさん歩いたら、黄金コンビでしばし、ブレイクしよう。
ふらっと行ける気軽さ、ボリューム感、懐かしの味など、長年愛され続けている店には、それぞれにきちんと理由がある。知ってたけど入ったことがなかったなんて人がいたら、この機会にぜひ!