名店の遺伝子を受け継いで作りあげた1杯
オープンは2017年9月、以来口コミで広がり、今や吉祥寺ラーメンの名店として真っ先に名があがる。店主の榎本直記(えのもとなおき)さんは、「地雷源」グループ系列の店で8年間にわたり学び、独立した。
「店名は、長渕剛さんの曲『とんぼ』と、前にしか進まず退かない、不退転の精神を表す蜻蛉からとりました」と榎本さん。毎日食べてもおいしいと思える1杯を目指し、「地雷源」の味を榎本さんなりに解釈し、オープンしてからも何度も改良を重ねていった。
スープも麺もその作業行程に抜かりなし
基本のスープはトリプルスープ。名古屋コーチンの丸鶏やガラ、丹波黒鶏の油を加えた鶏スープ。国産豚の背ガラやゲンコツ、豚バラ肉と肩ロースから出汁をとった豚スープ。真昆布やシイタケ、カツオや鯖節などを使用した和風出汁の3種類を合わせている。各素材の雑味が出ないよう、それぞれ別の寸胴で仕込み、提供する際に合わせている。
「カエシには、再仕込み醤油やきあげ醬油、たまり醬油など4種類を合わせて使っています。ここに、みりんと日本酒を加えることで風味が増します」と榎本さん。スープやカエシだけでも、かなりの手間がかかっている。
麺は三河屋製麺の特注オリジナル麺。製麺所の担当者とレシピを相談しながら作りあげ、北海道産小麦100%を使った細ストレート麺にたどりついたという。
すべてのバランスがとれた究極の醬油ラーメン
今回注文したのは、この店の基本の味ともいえる醬油の旨みソバ980円。スープと麺のおいしさをシンプルに楽しめる。
運ばれてくると、フワッと香ばしさが漂ってくる。スープの表面には焦がしネギが浮いているが、出汁や醬油の風味と相まってよい香りがする。一口飲んでみれば、醬油のキレを感じながらも、コクが残る深い味だ。丼になみなみと注がれるので、最後までしっかりスープも味わえる。
麺は、柔らかくしなやかで、ほどよい長さなので、たっぷりのスープを絡め取る。
豚バラ肉を使用した自家製チャーシューは柔らかく、脂の旨さを感じる。厚めにカットされているのもいいポイントに。
有明産の香り高い海苔や、歯ごたえのある自家製メンマもそれぞれにおいしさがあり、一つひとつの材料をしっかりと味わえる。
店主のこだわりがどの素材にも光る、バランスのよいラーメンは一度はぜひ試してほしい。
取材・文・撮影=千葉香苗、構成=アド・グリーン