天ぷら 魚ふじ
旬の香味を引き出す天ぷらの妙味
豊洲で仕入れた旬味は、素材ごとに衣の濃度を変え、生搾りの太白ゴマ油ベースの油へ。揚げたてを一つひとつ供してくれる。会食にも利用される正真正銘の名店だが、昼は「毎日の食事だから、低価格で提供できないか」と店主の木口和浩さん。上は1万円以上の本格コース、下は1000円以下のお手ごろメニューまで揃えたスタイルは、あらゆる客を喜ばせたい想いの表れだ。グレードの高い定食やコースの締めには、大粒の小柱をミツバと粋なかき揚げに。下関の甘みある塩で味わうのも捨て難いが、かき揚げ丼や出汁かけの天茶に仕立てても旨い。
『てんぷら 魚ふじ』店舗詳細
麺や そめいよしの
上品なあっさり醤油が後を引く
羅臼昆布を筆頭に乾物を十数種使うスープは、やさしい味を追求して完成させた。「まず、熱々のスープを試してほしい」と、店主の大津直人さん。スープの温度が下がらぬよう、全部載せは具を別に盛る。ブレンド小麦「そめいよしの」を使う特注麺は、低加水で冠水を使わない。ざらっとした舌触りと歯切れのよさが持ち味だ。「そばを意識しています」。控えめに語る大津さんだが、実は、神田明神の神輿を担ぎたくてこの地へ来た、祭男!
『麺や そめいよしの』店舗詳細
葡萄舎
旨いカレーに隠されたマスターの生き様
マスターの池田賢一さん(64)は、若いころ放浪の旅の途中でマラリアにかかった。その時に食べたのがミールス料理(南インドのベジタリアン中心の定食)。ここでの体験がメニューに生かされている。30年ほど前、ワインバーとして開店したが、カレーの味が評判になり、やがて、昼はカレーランチ750円~、夜はカレーのほか、にこごりや刺し身などのつまみも楽しめるバーになった。ゆったりと居心地のよい店内にも、マスターの人柄がにじみ出ている。
『葡萄舎』店舗詳細
神田まつや
たまには池波正太郎のように昼酒を
ビル街の一角で、屋号を記した釣り行灯(あんどん)や軒下に下がる大きな提灯が目を引く。かつてこの地には明治17年(1884)創業のそば屋『松屋』があったが、昭和2年(1927)に閉店することになり、その店を譲り受けたのが始まり。ソバは、北海道や長野、茨城など、その時季に最もよい産地のものを選び、石臼で碾きぐるみにして、そば粉10に対してつなぎ2の割合で手打ちする外二(そとに)。そば粉が多く、つなぎに鶏卵を使用するため、そばの香りと喉越しのよさが特徴だ。食通で知られた池波正太郎がなじみにした店としても知られる。
『神田まつや』店舗詳細
神田 尾張屋 本店
そばとつゆの相性にこだわる
大正9年(1920)創業。屋号は初代の出身地である尾張町(現在の銀座5丁目あたり)に由来する。そばは、主に北海道産そば粉を使った細打ちの二八。温かいそばは、鯖節と本枯れ節で出汁を取り、風味を生かすためにつゆは薄口仕上げ。冷たいそばは本枯れ節のみで出汁をとり、つゆは濃いめの辛口。温冷とも、そばとつゆの相性を考え抜いた逸品だ。ビジネス街という場所柄、丼もののメニューも多く、夜は酒席として利用する人が多数を占める。
『神田 尾張屋 本店』店舗詳細
香川一福 神田店
爽やかな酸味、見た目にも涼しげ
のびのある細めの自家製麺とさば節を利かせた香り高いつゆが特徴。かけ(あつかけ、ひやかけ、そのまま)小460 円、中530 円、大600円に、天ぷらなどをトッピングするのが基本。季節替わりのうどんもあり、夏季は宮崎県日向産のヘベスという柑橘類を薄切りにして浮かべたヘベすうどん(小)620 円が登場。出汁が効いた冷たいつゆにヘベスの香りが移り、ほどよい酸味とほんのり感じる甘みに食が進む。ヘベスには抗酸化作用に効果があるというフラボノイドがたくさん含まれているので、夏バテ克服にもぴったり。