谷保の「丸信」でワンタンめん。
訪れたいと思っていた谷保の富士見台団地の横にあるダイヤ街商店街に友人が立上げた小さな出版社と書店「小鳥書房」。
その2階で行われている読書会の今回の課題の図書が先週訪れた「喫茶ランドリー」の始まりを記す『マイパブリックとグランドレベル』と知り導かれたと申し込む。
いざ当日、イナズマのように乗り換えをして辿り着く谷保。正午からの読書会。腹ごしらえは一週間前からここ一択。
改札を出て北口の階段を下りモスバーガーを右に曲がる路地につけ麺の幟。少し足早になり向かうそこ。
昔、国立駅の南口にあったという「丸信」で働いていた店主が暖簾分けで独立し谷保で創業した「丸信」。
1947年から始まる荻窪の「丸長」から「丸信」「栄楽」「大勝軒」「栄龍軒」と独立しそれぞれに暖簾を分け広がる丸長のれん会のひとつ。
自動ドアからこんにちは。L字のカウンター席と3つ並ぶテーブル席のそこそこ広さのある店内に厨房からホールからいらっしゃいと元気よく迎えられる。
11時の開店を少し過ぎたくらいですでにひとつ飛ばしで埋まるカウンター席。厨房では忙しく調理が始まり、カウンターではしあわせそうにルービーを決めるおっさん。
カウンターの端に座り、ちらとメニューを眺める素振りから、3日前からこれと決めていた「ワンタンめん」とお願いする。
厨房で腕を振るうクリソツな親父と息子。違うのは大小のサイズ感。あうんの呼吸で調理を進め、オーダーを熟す。脇を固めるお母さんに娘さんかなの温かく穏やかで機敏なファミリー経営。
後から来る客たちのあまりの「ビール!」に心が揺れ、「小瓶ください!」とつられお願いする。
冷えた小瓶を掴みグラスにトクトクトクと注ぎぐび。ぷはーうまい。テンポとリズムが心地良い厨房のファミリーを眺めながらしっとりのどを潤すしあわせな昼下がり。
少しして運ばれるワンタンめん。湯気と一緒にふわり漂う煮干の薫りにあがる気持ち。いただきますと啜る汁。
魚と動物と尖る醤油がバランスよく混じる汁。うん、おいしい。やさしい濃いコク。しばらくレンゲで味わい浸る。
すくい頬張るもっちりむっちの幅広の皮に包まれた小振りの餡のワンタン。チュルんと口に含み咀嚼して満足に浸る。
顔を出す麺は汁を吸いほんのり茶に染まる中太の麺。ぱっつんと歯切れの良い、するすると汁を纏い喉を滑る小麦。この麺が好き。
のる具は雑味ない心地よい歯応えのメンマと小さいけれど肉を感じる柔らかな豚。
ゆっくりとワンタンを頬張り、麺を啜り、メンマと肉を噛み締めて汁を飲む。高校野球と食べると調理を進む音が静かに入り混じるなんだかしあわせな時間が過ぎる。
店内はずっとほぼ満席。続々と集うファミリーやら仲間やら単身での老若男女。ここでずっと愛されてるが強く伝わる町中華。
お隣の塩バターに半チャーハンが気になりまくり。また小鳥書房に来る時はそれ。