円熟味のある奥深さ。千住名物の煮込み『大はし』【北千住】
大衆酒場の老舗で、明治10年(1877)創業。看板に掲げられる「千住で2番」は、「お客様が常に1番」という店主の思いが込められている。看板料理の肉とうふは、サイコロ状にカットされた牛スジや、カシラ(ほほ肉)などを、注ぎ足しで作る醤油味の牛煮込みに豆腐を投入したもの。各具材の細部にまで味が染みわたり、味わい深い。元となっている牛煮込みは東京三大煮込みの一つといわれる名品で、旨味エキスをたっぷり含んだ牛肉がホロホロと溶けていく。
『大はし』店舗詳細
何が出るか楽しみなおまかせ串焼きの数々『埼玉屋』【東十条】
1954年創業の焼きとんの名店。主人自ら毎朝仕入れに行く肉やもつは新鮮そのもの。串もの9本と生野菜がセットのコースが基本。アブラ(和牛)や上シロ、エスカルゴバターをのせたチレ(脾臓)などどれもが秀逸のうまさ。シャーベット状の焼酎に炭酸、くし切りのレモン2個が入り、グラスのフチに塩を付けた生レモンハイも名物だ。9本食べ終えて、まだ食べられるようだったら追加注文できる。
『埼玉屋』店舗詳細
牛肉豆腐は垂涎のうまさ、創業70年超えの名店『千登利』【池袋】
池袋屈指の人気店。店内へ足を踏み入れるなり、フワッと醤油の香りが鼻をかすめ、食欲がそそらえる。カウンター席の向こうには、大鍋で作られる牛肉豆腐がグツグツと煮えている。特注の豆腐を丸ごと1丁入れて、牛スジとともに醤油と砂糖以外の調味料は使わずじっくり煮込み、仕上げている。口に含むとじんわりと旨味があふれ出す。レバやタン、ハツなどの串焼きメニュー各160円も充実し、あわせて楽しみたい。
『千登利』店舗詳細
焼き物だけじゃない和洋中の絶品料理『もつ焼居酒屋 松ちゃん』【平井】
品書きは100種以上。中でももつ焼きはゼラチン質たっぷりで、ナンコツは噛(か)みしめるほどに旨味が広がっていく。店主・森潔さんは自ら市場へ足を運び、毎日新鮮なもつを仕入れて、おいしいと思う大きさにカットし、均等に火が入るよう串の打ち方も独自に極めた。元鮨職人であるだけに、目利きで選んだ魚料理も自慢の一つ。刺し身はもちろん、刺し身用のアジを使った姿フライはふわふわの身がたまらなくおいしい。
『もつ焼居酒屋 松ちゃん』店舗詳細
老舗センベロ店。価格の安さは健在『大衆酒場 まるよし』【赤羽】
赤羽を代表する大衆酒場。15時の開店と同時に、大きなコの字カウンター席が埋まっていく。壁面には幅4mはありそうな横長メニューが貼られ、その数の多さに驚くが、まずは定番の串焼きから味わおう。もつ焼きのレバー、たん、かしらなどが人気で、昨今の価格高騰もあって1串110円〜と値上がったものの、それでも高くて160円とお手頃だ。ビールや日本酒などのアルコールも400円台で用意しているので、センベロで楽しめる。
『大衆酒場 まるよし』店舗詳細
2代目が守る伝説のみそ焼き『㐂よし』【蕨】
「みそ焼き」のルーツといわれる名店。ニンニクを利かせた味噌ダレに豚ホルモンを漬け込み、焼きながらさらにタレに漬けて仕上げるのがこの店の流儀。濃厚で、ほんのり甘さもあり、何本でも食べられそうだ。考案したのは初代店主で、そのお嬢さんと一緒になった2代目・石塚裕一さんが味を引き継いでいる。合わせる酒はさっぱりと酎ハイがおすすめ。鶏肉の肉汁と出汁が染みこんだ、とり豆腐は締めに味わいたい。
『㐂よし』店舗詳細
創作モツ料理と燗酒のコラボを楽しむ『モツ酒場 kogane』【外苑前】
モツ料理×燗酒をコンセプトにした居酒屋。系列店のイタリアンで経験を積んだマネジャーの児玉順平さんは、定番のモツ焼きのほか、創作モツ料理のメニュー開発に日々挑んでいる。ゆえにジェノベーゼ味や、韓国の唐辛子を和えたりとバリエーションに富んでいる。燗酒は60〜65度で提供することで、香りや旨味など味の変化を楽しめる。キレのある味わいは、モツ焼きの脂をスッキリと流し、ついつい杯数も増えてしまう。
『モツ酒場 kogane』店舗詳細
芝浦直送のモツは種類豊富な串焼きで『豚番長 蒲田西口店』【蒲田】
店主・山田拓也さんは、この店以外にも大好きな蒲田で3軒の酒場を営む。ここは、立ち飲みスタイルで新鮮なもつ焼きを味わえると評判だ。毎日市場からその日一番のもつを仕入れるから、鮮度は抜群。もつ焼きだけでも30種類以上あり、塩またはタレと好みで楽しめる。炭火でじっくり焼き上げていくから、もつ本来の旨味を逃すことなく、弾力もたまらない。肉刺しや鮮魚刺し身など、酒と相性のよい一品料理も充実する。
『豚番長 蒲田西口店』店舗詳細
モツ焼き一筋。60数年愛される名店『一力』【小岩】
創業60年超えの、「安くてうまい」と評判の店で、開店と同時に席が埋まり、持ち帰り用のもつ焼を買い求める客もひんぱんに訪れる。店内に飾られた創業時の献立表には1串60円だったころの跡が残るが、そのどれもが今は1串110円となったものの、手ごろさは変わらずうれしい価格帯。レバーやシロは秘伝のタレがしっかり絡み、何本でも味わいたいうまさだ。当日仕入れたもつしか使わないため、なくなり次第終了となる。
『一力』店舗詳細
取材・文・撮影=アド・グリーン 撮影=加藤昌人、丸毛透、山出高士、岡田孝雄
『散歩の達人 東京名酒場』より