駅から続く歩道はやや下り坂で、軒を連ねる店舗は半地下のような位置にある。『理髪一番』の入り口は、その一角の一番手前だ。扉を開けると「いらっしゃい! どうぞ!」と、店長・小堀隆二さんが元気にお出迎え。おお、和む。美容室にはないきっぷの良さと言うか。例えるなら町中華のような親近感。あんな感じ。
理容室『理髪一番』は、創業者・藤田進が1954年に新宿駅南口で開業。翌年には三越前店、翌々年に向島店、その後も中野に2店舗を構えるなど、なかなか順調なスタートを切った。
大きな転換点は1961年だ。1964年の東京オリンピックに向け、新宿駅周辺の再開発が進行。創業店の新宿店は大井町駅前へ移転し、基幹店舗『理髪一番 大井総本店』として再出発。その後ものれん分けで都内に店舗を拡大していく。
急成長の秘訣は、理容室の需要の多さもあるが、何よりも多くの職人を育て上げた、手厚い人材育成の仕組みにあると言えるだろう。
学歴経験不問、必要なのはやる気!
「僕も中学を卒業してすぐに入ったんです。ひと言でいえば体育会系でしたね」と、小堀さんははにかむ。彼自身は2010年に総本店に入社し、雑色店を経て、再び大井町に戻ってきた。
「地域によってお客さんの層は全然違うし、頼まれる注文も違う。大井町店は近くで勤めている働き盛りのサラリーマンから小さな子供、60代から80代の古参の方と、幅広いですね」
町で暮らす人々に合わせてその地に根差す。これも半世紀にわたり続けてこられた秘訣だろう。
「時代の移り変わりで理容室に求められるものも変わっていると思う。創業期からの理念『親切、丁寧、迅速』は守りつつ、今後はもっと地域住民の方に気軽に来てもらえるよう、アップデートしていこうと思います」
思い立ったら足を運んで即散髪。それが出来るのも、培われた確かな技術があってこそ。掲げられた“理髪一番”の屋号は伊達じゃないのだ。
取材・文=どてらい堂 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2026年5月号より







