店内にはコーヒーの香りと静かな空気があった

店内に入ると、軽くモダンジャズが流れる中、店主の高安さんがコーヒー豆のピッキングをしていた。外はいい天気だったが、店内はちょっと薄暗く、それがむしろ心地いい。コーヒーのいい香りがする。

店は昭和7年(1932)の建築で、かつてはラーメン店だった。リノベーションをして2009年にこの店をオープンした。自家焙煎の喫茶店で7年ほどアルバイトした後の独立だった。

もともとコーヒーは好きだったそうだが、もしかしたら高円寺で喫茶店を営んでいた祖父の影響もあるかもしれない、と話す。

丁寧にピッキングしていた高安さん。店中にコーヒーの香りが充満。

こまめな焙煎でコーヒーの味を管理する

一杯ずつネルドリップで淹れる。湯気の中、丁寧な手さばきが映える。

こまめに焙煎できるのが自家焙煎の良さ。深煎りの豆は焙煎してから2日後くらいが最もおいしく、中煎りの豆は焙煎すぐがおいしいという。使い切る分量を焙煎するのでいつでも鮮度のよい豆を使うことができる。

焙煎の前と後の2回豆をピッキングするので、ずいぶん豆の量が減ってしまうのが悩みだそう。

コーヒーにぴったり、店主手作りケーキのセットをいただく

カップは多数種類があり、お客さんに合わせているという。今回のカップはあたたかみのある色合いで、コーヒーの深い色味がとてもきれいに見えた。

ブラジル主体の3種を配合したブレンドはコクがあり、まろやかな苦味と香りが感じられる。コーヒーに合うケーキメニューは開店当初からほとんど変わらず、高安さんの手作り。今回いただいたシフォンケーキは、ミルククリームの甘さとコーヒーの苦味が引き立てあっていた。

ブレンドコーヒーとミルクシフォンのセット850円。

それにしても、『キアズマ』とは?

店主の高安さん。後ろの壁は黒板になっていて、知人にチョークで絵を描いてもらっている。

店名の『キアズマ』。実は高安さんの大好きな山下洋輔トリオのアルバム名から取っている。単語自体は化学用語なので、とくに許可を得ていたわけではないが、開店10年目に山下氏がふらりと現れてびっくりしたという。

山下氏は「自分のアルバム名の喫茶店があるらしいから行ってみよう」という気持ちだったらしいが、高安さんの第一声は「すみません!」だったとか。それからは山下氏の公認を得て、晴れて堂々と(?)説明できるようになった。

モダンジャズ以外にも、店内にはSF本がいっぱい。高安さんの「好き」がいっぱい詰まった隠れ家のような店だ。

 

ハヤカワSF文庫多数。気になる本を見つけたら手に取ってみよう。

取材・文・撮影=ミヤウチマサコ