ラーメン激戦区・新宿で、前身の「俺の麺 春道」から『中華そば 流川』になってオープン
世界でも指折りの乗降者数を誇る新宿駅。ゆえに『中華そば 流川』まで歩いていく間にさまざまな飲食店があるが、とりわけラーメン店が目立つ。それほどラーメンの流行に明るくない筆者でも知っているビッグネームがチラホラと目に入ってきた。2019年7月1日にオープンした『中華そば 流川』は、そんな激戦区に身を置く猛者である。勇敢な店主、杉田剛さんに話を伺った。
「2009年から営業していた「俺の麺 春道」がこの店の前身です。僕の友人が運営していて、僕はここで店長をしていました。その後独立し、この場所で『中華そば 流川』として営業を始めました」。
杉田さんの前職はマッサージ師だったが性に合わず退職。就活をしていたときにラーメン店を経営していた学生時代の友人と再会し、杉田さんが25歳のときにラーメン店へ転職したそうだ。友人の元では8年間、いちからラーメンの経験を積んできた。
「若かったので友達同士で仕事をしていたら面白いかな、くらいの気持ちで参加させてもらいました。人並みにラーメンが好きでしたけど、長く仕事を続けていくうちにもっと好きになっていきました」。趣味と実益を兼ねたおいしいラーメンの追求は日々行われ、理想の味がどんどん研ぎ澄まされている。
じんわ〜り旨味が染み渡る、唯一無二の牛貝スープ
『中華そば 流川』は牛骨スープと貝出汁スープのまろやかな清湯と、「俺の麺 春道』の濃厚つけ麺の2本柱だ。牛×貝の組み合わせが面白い、特製牛貝清湯醤油中華そば1150円をいただこう。
この珍しいスープは国産100%の牛骨(ゲンコツ)と、国産鶏(丸鶏、ガラなど)を低温で10時間ほど炊き上げた透明度の高い清湯。そこへ数種の貝出汁をブレンドしている。
「牛骨はクセがあるので好き嫌いが分かれるんです。韓国料理の牛テールスープみたいに甘ったるくてくどくなりすぎちゃう。でも、アサリとシジミ、ホタテなどの貝出汁がそれを緩和してくれているんです」
成人男性が2人すれ違うのがやっとというくらいのコンパクトな厨房で手際よく盛り付け、あっという間に着丼。早い! そうだ、「麺が伸びやすいから早く食べたほうがいいですよ」って言われてたんだっけ。では、いただきます。
すん〜ごくおいしい醤油スープなのだけど、事前に材料を聞かなければ正体不明。筆者の愚鈍な舌にはむしろ牛や貝の味も隠れてしまっているように感じた。だけど、じんわりと舌に広がるまろやかな旨味があって、この味でしか表現できない唯一無二の極上スープだ。まるで、パズルのピースがバチィッとハマったよう。
そこに菅野製麺所謹製の細麺がグングンスープを持ち上げて、ともに口の中に入ってくる。数種の小麦をブレンドしており香りが豊かで、低加水のためパツパツとした歯応えもいい。しっとりした豚チャーシューは、ほんのり醤油が香る程度で、赤身肉の野性味のある持ち味が生かされている。薄切りだからひと口で食べやすいのも個人的にはうれしいところ。同じく低温調理の鶏チャーシューはしっかりと醤油が利いていて存在感大。これは、特製かオプションのトッピングでしか食べられないので、鶏チャー好きはオーダー時に注意したい。
最後に、濃厚な黄身が特徴のマキシマムこいたまごの味玉を味わって食べて終了。ごちそうさまでした。
ちなみに同じスープを使った塩中華そばは、より貝の旨味が引き出せるよう塩だれにも貝を使用しているという。「しかも、アサリのトリュフペーストで味変も楽しめるようになっていますよ」と杉田さん。それ、めっちゃくちゃおいしそうじゃないですか! 神様、今すぐ空っぽの胃をひとつください。
店名はマンガ『SLAM DUNK』の登場人物・流川楓から命名
現在は『中華そば 流川』のほか、2022年に中野にオープンした2号店『中華そば 仙道』がある。流川ときて仙道。この名字にビビッときたアナタは、もしやマンガ『SLAM DUNK』ファンではなかろうか!?
それなら『流川』の前身は「春道」ではなくて、「花道」か「桜木」であって欲しいと思ってしまった。きっとたくさんの人に何回も聞かれてると思うんですけど……。
「ははは(笑)、確かに流川は『SLAM DUNK』の準主役的キャラ・流川楓からとりました。主人公の「桜木」や「花道」は、すでにほかのラーメン屋さんで使われていたんですよ。ちなみに「春道」は『クローズ』の主人公の名前です」。ああっ『クローズ』かー! 勉強不足でした。
次は“赤木”かな? それとも“宮城”かな〜? 3店舗目が楽しみだ。
構成=アート・サプライ 取材・文・撮影=パンチ広沢