『ミロンガ ヌォーバ』古き良き昭和の面影を残す神保町の名喫茶

ミロンガブレンド650円、アールグレイのパウンドケーキ450円。
ミロンガブレンド650円、アールグレイのパウンドケーキ450円。

神保町駅から徒歩2分。1953年に誕生したアルゼンチンタンゴと世界のビールを楽しめる喫茶店『ミロンガ ヌォーバ』は、姉妹店の『ラドリオ』(1949年創業)や近隣の『さぼうる』(1955年創業)らとともに、都内屈指の名喫茶として知られる。2023年2月、元の店舗から40mほどの場所に移転オープンした。
「旧店のものを可能な限り持ってきた」という店内の雰囲気も、魅力的なメニューもそのまま。オーダーが入ってからハンドドリップするコーヒーは、ウェッジウッドのカップで提供される。カフェ・オ・レやカフェラテ、紅茶やピザなどの軽食、甘いものも充実。もちろん、世界のビールも。
創業当時の面影を残す店内でひときわ存在感を放っているのは、カウンター席にあるレンガの壁だ。改装の過程で昭和時代の古いレンガが出現したという。まるで遺跡のようなエピソードだ。
昭和の空気感を残しながらも、カウンターにはコンセントが付き、Wi-Fiも導入。時代に合わせて進化もしている。

移転前と同様に外装にはレンガが使われている。
移転前と同様に外装にはレンガが使われている。
改装中に発掘された昭和20~30年ごろのレンガの壁。
改装中に発掘された昭和20~30年ごろのレンガの壁。

『ミロンガ ヌォーバ』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田神保町1-3/営業時間:11:30〜22:30(土・日・祝は11:30〜19:00)/定休日:水/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩2分

『神田伯剌西爾』民芸調の店内で味わう骨太コーヒー

1972年創業。時間を忘れる空間。
1972年創業。時間を忘れる空間。

白のれんを頼りに地下へ潜れば、まさかの和の風情。障子ごしの明かりを土っぽい壁が受け止め、丸太の柱、太い梁、囲炉裏まで備えている。カウンターでドリップするのは、店長の竹内啓さん。学生時代に自家工房で焙煎する豆に惚れ、そのまま30年近く、コーヒーを淹れ続けることに。まずは店の顔、神田ぶれんどを。マンデリンも配合され、しっかりした苦味のあと、立ち上る甘みにため息。

のれんが下がったら開店の合図。
のれんが下がったら開店の合図。

『神田伯剌西爾』店舗詳細

『味の珈琲屋 さぼうる』60年以上変わらぬ店にもある楽しい変化

並べると壮観な6色のクリームソーダ各680円(昼料金)
並べると壮観な6色のクリームソーダ各680円(昼料金)

トーテムポールが出迎える木を多用した店構えは山小屋のよう。1955年の創業時から外観はもちろん、半地下と中2階のある入り組んだ造りも変わらない。「でも結構変わっていますけどね。表のヒマラヤスギも去年、やむを得ず切ってしまったし」と正社員の伊藤雅史さん。メニューでは、4色あったクリームソーダにグレープとオレンジが加わり6色に! 「でもこれで限界ってことはないですよ」と不敵な笑み。いつかまた増えるかも!?

店主の鈴木文雄さんは昭和8年(1933)生まれの86歳。1階奥の暖炉の前にて。「60年以上よく持ちこたえた。いい夢を見てきたよ。運がよかったんだね。与えられた仕事を一生懸命やれば運は自然とついてくるんだ。」
店主の鈴木文雄さんは昭和8年(1933)生まれの86歳。1階奥の暖炉の前にて。「60年以上よく持ちこたえた。いい夢を見てきたよ。運がよかったんだね。与えられた仕事を一生懸命やれば運は自然とついてくるんだ。」
鈴木文雄マスターを支える伊藤さんと同僚である妻・智恵さん。
鈴木文雄マスターを支える伊藤さんと同僚である妻・智恵さん。

『味の珈琲屋 さぼうる』店舗詳細

『ラドリオ』歴史の重みと渋さの中に、柔らかな空気

ナポリタンとウィンナーコーヒーのランチセットはサラダ、スープ付きで1050円。
ナポリタンとウィンナーコーヒーのランチセットはサラダ、スープ付きで1050円。

生クリームホイップがなみなみ盛られたウィンナーコーヒー。その発祥地としても知られる1949年創業の店。レンガ積みの内外装に、高さが不ぞろいの丸釘のような木のカウンター席が印象的だ。17時までランチセットがあるのも魅力で、ボリュームたっぷりのナポリタンが食べられる。「麺は固めで、トマトソースにタバスコを入れるのがポイントです」と7代目店長の篠崎麻衣子さん。店の渋さとは裏腹に、店員はみな女性で柔らかな空気感にホッとする。

『兵六』など神保町の店で飲むのが好きな篠崎さん(右)。
『兵六』など神保町の店で飲むのが好きな篠崎さん(右)。

『ラドリオ』店舗詳細

『カフェ・トロワバグ』オールドビーンズとネルドリップを貫いて40年以上

人生の先輩として学生アルバイトたちの相談役も務める三輪さん。
人生の先輩として学生アルバイトたちの相談役も務める三輪さん。

創業は1976年。フランス語で“3つのリング”を意味する店名は、創業者の名字の“三輪”にかけたというが、「コーヒーとお客様と私たち店員も表すそうです」と2代目店主の三輪徳子さん。ネルドリップとコクテール堂のオールドビーンズを創業以来貫くコーヒーは、その甘みに驚く。「ワインと似ていて、温度が下がるうちに味がまろやかになるんです」。ワイン好きが高じて、2018年、神泉にワインとコーヒーが楽しめるスタンドもオープンさせた。

珈琲屋さんのティラミス650円、サバと野菜のカレーパンのコーヒーセット1200円。
珈琲屋さんのティラミス650円、サバと野菜のカレーパンのコーヒーセット1200円。

『カフェ・トロワバグ』店舗詳細

『GLITCH COFFEE & ROASTERS』世界基準の焙煎技術が生み出す味

ハンドドリップコーヒー600円。
ハンドドリップコーヒー600円。

2015年4月にオープン。ハンドドリップでいれるコーヒーがすべて浅煎りなのは、「豆の個性を生かし、風味をしっかり感じさせるため」と、オーナーの鈴木清和さん。味や香りはカップの形状でも変化するため、オリジナルのカップを用意。豆は、ドイツから取り寄せたPROBAT社の機械で焙煎。火の入れ方などは毎回データで管理し、国内外のバリスタとも技術共有して世界基準の味を提供している。

ガラス張りで店内は明るい雰囲気。
ガラス張りで店内は明るい雰囲気。
最大5kgまで焙煎できる焙煎機。小さい機械よりも火力とファンの風力が安定し理想の味が出せるのだとか。
最大5kgまで焙煎できる焙煎機。小さい機械よりも火力とファンの風力が安定し理想の味が出せるのだとか。
86℃のお湯でゆっくりと抽出。コーヒー通に人気のエチオピア産の豆はベリーのような風味。
86℃のお湯でゆっくりと抽出。コーヒー通に人気のエチオピア産の豆はベリーのような風味。

『GLITCH COFFEE & ROASTERS』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田錦町3-16 香村ビル1F/営業時間:8:00~20:00(土・日は9:00~19:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩2分

『CHEKCCORI』ハングルを読めない方もどうぞ!

「新しい韓国の文学」シリーズを出版する『クオン』が、“読者とふれあいたい”との思いから、2015年7月にカフェを開設した。本棚に並ぶのはハングルで書かれた文芸書や実用書、日本語によるガイドブックなど。韓国の文化や本について店員に質問しながら本を読んだり、現地をイメージしつつ旅の計画を立てたり、楽しみ方は十人十色だ。「お客様と一緒にお店を創っていきたい」と代表の金承福さん。「だから、違う店みたいに変わっちゃうかも。ウフフ」。

韓国伝統茶や韓国餅といったカフェメニューも評判。写真の韓国餅はドライフルーツや 豆類がたっぷり入った栄養チャルトック500円。
韓国伝統茶や韓国餅といったカフェメニューも評判。写真の韓国餅はドライフルーツや 豆類がたっぷり入った栄養チャルトック500円。
素敵な挿絵の本が多く、絵本好きにもおすすめ。ほぼ全品購入可。
素敵な挿絵の本が多く、絵本好きにもおすすめ。ほぼ全品購入可。

『CHEKCCORI』店舗詳細

『ブックカフェ二十世紀』店名に込めた意味は「20世紀の記憶装置」

キリッとした爽やかな辛味とバターの甘みがバランスよく合わさったカレー。サラダ付き600 円。オリジナルブレンドコーヒー280円。
キリッとした爽やかな辛味とバターの甘みがバランスよく合わさったカレー。サラダ付き600 円。オリジナルブレンドコーヒー280円。

人気古書店『@ワンダー』に併設されたカフェ。文学や芸能、食文化、サブカルなど20世紀を象徴する本が揃う。約35年前早稲田で創業した当初、店はサロンも兼ね、頻繁に読書会を開催。その後販売に絞ったが、2015年6 月、20余年ぶりにカフェを始めた。「初心に帰り、本を介して人が交わる場所を創りたいと思ったんです」とは店主の鈴木宏さん。「食事しながらだと気兼ねなくゆっくりできるから」と料理も手抜きなし!

トークショーなどのイベントも実施。
トークショーなどのイベントも実施。
稀少本も気軽に手に取れる。
稀少本も気軽に手に取れる。

『ブックカフェ二十世紀』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田神保町2-5-4 開拓社ビル2F /営業時間:11:00~19:00(日・祝は~18:00)/定休日:無/アクセス:地下鉄神保町駅から徒歩1分

『ESPACE BIBLIO』本の森に迷い込んだ探検家のごとく

席の移動も自由。
席の移動も自由。

雑踏を離れ、地下へ続く階段を下りると、そこは異空間。緑あふれる中庭が見え、立ち並ぶ本棚に約6000冊の蔵書がひしめく。天井に向かって書棚がにょきにょき。その合間を"小宇宙"ととらえたテーブルが埋めている。不揃いの椅子、異なる照明を設け、座る場所で気分が変わるから不思議だ。「自分のうちでも、会社でもない空間を作りたくて」と話すのは、デザイナー兼写真家の齋藤芳弘さん。資料として集めたアートブックは、絶版、稀少本も多く、「本は読んでこそ価値あるもの」と一般開放している。都心とは思えぬ木漏れ日の下で愉しむ、テラスでの読書の時間も、なんかいい。

アンディー・ウォーホルのフィギュアも鎮座。
アンディー・ウォーホルのフィギュアも鎮座。
阿佐ケ谷『カフェドゥワゾー』の深煎りブレンドコーヒー540円。
阿佐ケ谷『カフェドゥワゾー』の深煎りブレンドコーヒー540円。
齋藤さんは市川猿之助さんの舞台撮影も行い、「亀治郎ギャラリー」も併設。全国からファンも訪れる。
齋藤さんは市川猿之助さんの舞台撮影も行い、「亀治郎ギャラリー」も併設。全国からファンも訪れる。

『ESPACE BIBLIO』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田駿河台1-7-10 YK駿河台ビルB1F /営業時間:11:30~20:00(金は~22:00、土は12:00~)/定休日:日・月/アクセス:JR・地下鉄御茶ノ水駅から徒歩5分

構成=前田真紀 取材・文=佐藤さゆり(teamまめ)、下里康子、佐久間春奈・加藤桐子(風来堂)、野田りえ、信藤舞子、パンチ広沢(アート・サプライ) 撮影=オカダタカオ、加藤昌人、中込 涼、門馬央典、パンチ広沢(アート・サプライ)

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本が大好きなあなたにおすすめ「眞踏珈琲店」神保町
ララ♪クロワールさんの投稿

扉を開けるともう独特の雰囲気が広がっています。1Fはカウンター席。2階へどうぞ!と言われ一面本の壁にそいながら2階へ上がるとそこでもずらりと並ぶ本。忍者屋敷のような仕掛けのお手洗いも必見です♪ お客さんもほとんどが読書楽しんでいらっしゃいます。物珍しそうにお店を楽しんでいるのはわたしたちだけだったかも。

きちっとしたマスターが嬉しい「珈琲舎 蔵」神保町。
ララ♪クロワールさんの投稿

階段を上がり扉を開けると素晴らしい空間が広がる「珈琲舎 蔵」。そして迎えてくださるのは黒い蝶ネクタイをしたマスター。お客様として大切に迎えてもらっていると感じます。丁寧に入れてくださった珈琲とケーキをじっくりと楽しみました。カウンターに並ぶWedgwoodの器もアート。店内もアートに溢れています。足を運びたくなるお店です。

東京23区のど真ん中に位置し、靖国通りと白山通りが交わる神保町交差点を中心に広がる街、千代田区神田神保町。  この街の特徴をひと言でいうと、なんといっても「本の街」ということになる。  古書店や新刊書店が多くあつまり、その規模は世界一とも言われている。だがそれだけではない。純喫茶、カレー、学生街、スポーツ用品街、中華街などなど、歩くほどに様々な顔が垣間見えるのが面白い。ある意味、東京で一番散歩が楽しい街ではないかと思うほどだ。