台湾式の朝ごはんでゆるやかに目覚める『東京豆漿(トウジャン)生活』【大崎広小路】
すうっと鹹豆漿(シェントウジャン)(豆乳スープ)を啜(すす)れば滋味が広がり、体がじんわりほぐれる。豆乳は風味の強いミヤギシロメを使い、店内で製造。できたてゆえに後味は軽く、ほのかに甘みが残る。酢と醤油の味付けもしっかり効いて、眠っていた食欲が覚醒し、おかげでもち米を握った糰飯(ファントァン)(台湾式おにぎり)にも自然と手が伸びる。こちらはかぶり付いてびっくりの具だくさんで、なかでも自家製だれで煮込んだ、五香粉が香る煮卵や、二度揚げしたカリカリの油條(ヨウティヤオ)(揚げパン)がインパクト大。食べ進めるごとにそれらの個性が口の中で調和し、クセになる味わい。
『東京豆漿生活』店舗詳細
朝からテンションを上げる天然本マグロ『長生庵』【築地】
以前は築地市場の場内に出前を届けたり、仕入れに来る人が食べに寄る地域のそば屋で「市場で働く人が主なお客さんでした」と、2代目の兄と店を切り盛りする松本憲明さん。「ただ、先代が大のマグロ好きで、気まぐれでうちのかえし醤油につけて出していたんです」。その流れをくみ、代替わりした後に本腰を入れ、そばとマグロの2本柱になった。今では毎朝、憲明さんが豊洲市場や築地魚河岸まで足を運び、天然本マグロを仕入れる。それを旬の魚の刺し身と並べ、朝定食に。まずはひと切れ口に入れ、澄んだ赤身の旨味と華やかな甘みにうっとり。
『長生庵』店舗詳細
スパイスの香りに包まれ、夢見心地『砂の岬』【桜新町】
州や町ごと、宗教によっても違う食文化にひかれ、インド亜大陸に渡った鈴木克明さん、有紀さん夫妻。帰国後に始めた店ではさまざまなスパイスを取り入れ、現地のカレーを鮮やかに再現する。土曜限定のミッドモーニングは、19世紀にイランから移ってきたゾロアスター教徒(イラニ)が西海岸の都市・ムンバイに開いたイラニカフェがルーツ。ブレッド&キーマが基本スタイルで、パウ(甘いパン)を濃厚なイラニチャイに浸したり、キーマカレーにつけて食べる。複雑に重なる味わい、香りに包まれ思わず目をつむると、そこはまるで夢の続き。
『砂の岬』店舗詳細
和菓子屋の名物が朝限定メニューに変身『うさぎや CAFÉ』【上野広小路・仲御徒町・上野御徒町】
「少年時代、うちのどらやきの皮にバターを塗っておやつにしていました」。大正2年(1913)から続く『うさぎや』の4代目・谷口拓也さんがそれを元に考案し、系列のカフェで提供するのが、開店の9時に来た人だけが出合えるうさパンケーキだ。「焼きたてを食べられるのは和菓子屋の家に生まれた特権。でも、おいしいから食べてほしかったんです」。席で待っていると、今まさに工場から届いたホカホカの皮が用意されていたプレートに乗せられる。半月に折った皮の香ばしさと、その中で溶けて香り立つバターのハーモニーがたまらない。
『うさぎや CAFÉ』店舗詳細
大人も子供も憧れるアメリカンな朝食『Breakfast & Brunch Jade5』【広尾】
外はサクッ、中はしっとりの自家製ビスケットにハム、ポーチドエッグを乗せ、オランデーズソースをかけたエッグベネディクト。本場のアメリカに比べると味は濃くないが、甘みと塩味が絶妙に合わさり、後を引く。日本ではめずらしい「オールデイ・ブレックファースト」の店で、和気あいあいとした空気でいっぱい。店主の布施里英さんが言う、「子供の頃に親戚のいるアメリカに遊びに行くたび、みんなで朝食を食べに行ったダイナー」がモチーフになっていて、トラディショナルなアメリカンスタイルの朝食を楽しみたい老若男女が集う。
『Breakfast & Brunch Jade5』店舗詳細
作りたての温もりに癒やされるひととき『SANDWICH CLUB』【下北沢】
人々の目当ては、店主の山口結さんが注文を受けてから手作りしてくれるサンドイッチ。定番のオムレツとハムは、養鶏所から直送される新鮮な卵を3個も使い、フライパンでオムレツを焼くところから始める。朗らかな黄色の断面を見ただけでたちまち幸せになれるが、「頬張ると温かくて、年中あるけれど冬に特に人気です」。ちなみに、同じく定番のBLTEの「L」はレタスではなく、ケール、ルッコラ、わさび菜など「八百屋さんが自社農園で採れた旬のものから揃えてくれるハーブミックス」。そこで季節を感じられるのも醍醐味(だいごみ)の一つだ。
『SANDWICH CLUB』店舗詳細
華のあるひと皿で少し特別な一日の幕開け『EQUALLY』【豪徳寺・山下】
店は買い物客でにぎわう商店街の中にあり、「平日の朝は、子供を幼稚園に送り届けたママさんたちが息抜きをしに来てくれます」。日常をほんの少し特別に彩ってくれるのは、フランス菓子の名店で腕を磨いた友納滉一さんがその技法に基づき、独自にこだわり抜いたクレープだ。モーニングプレートは、お菓子用にパリッと薄く焼いた生地とはテクスチャーを変え、厚みを出し、もっちりした食感に。サラダやベーコン、目玉焼きと一緒に食べる甘じょっぱいクレープサレで、噛(か)み締めるとフランス産と国産をブレンドした小麦の旨味がじわり。
『EQUALLY』店舗詳細
非日常を体験する極上の朝食ビュッフェ『abno』【馬喰町】
コンセプチュアルで洗練されたデザインの『DDD HOTEL』に入っているカフェ。朝食ビュッフェは宿泊していなくても利用でき、インバウンド客に混ざって旅の途中にいるような非日常を味わえる。センターテーブルには手の込んだ料理が並び、あれこれ目移りしているうち、気づけば皿は山盛り。リンゴチップでスモークした自家製ベーコンをかじると、脂の甘みが舞う。サラダバーの葉物野菜は埼玉の須永農園が厳選したその時期のおすすめらしく、色がくっきりして見るからに鮮度がいい。味が濃く、シャキッとした歯応えに心が踊る。
『abno』店舗詳細
取材・文=信藤舞子 撮影=逢坂聡
『散歩の達人』2026年1月号より






