日系移民との交流をヒントに

上野広小路駅から徒歩3分。大正2年(1913)から続く老舗和菓子店『うさぎや』の目と鼻の先に、『うさぎやCAFÉ』はある。コンクリート打ちっぱなしの外観と、『うさぎや』のロゴを掲げた暖簾(のれん)の組み合わせがモダンな印象だ。店内に足を踏み入れると、随所にハワイの雰囲気漂うアイテムが目に入る。『うさぎや』4代目店主・谷口さんによると、「日系人が日本を想ってハワイに出した店」をコンセプトにしているのだという。

学生時代に訪れたブラジルで、日系移民の人々にお世話になったことがきっかけとなり、以来彼らとの交流を大切にしてきた谷口さん。ブラジルにとどまらず、ハワイに住む日系移民の人々が本場の和菓子を食べたことがないという情報を知って、ハワイで和菓子の販売イベントを行うなど、その交流の幅を広げてきた。この店をオープンする際も「日系移民へのリスペクトを込めた店にしたいと考えた」と谷口さんは話す。その想いは、メニューにも表れている。

和菓子とハワイウォーターの融合

ハワイの天然水、ハワイウォーターを愛飲していた谷口さんは、ある時、引き取り先のない水は処分するという話を耳にした。貴重な水を大切に活用し、ハワイの日系移民に貢献できないかと考えた結果、ハワイウォーターを製氷してかき氷を作ろうと思いつく。それが、この店最初の看板メニュー、うさ氷の誕生につながった。

うさ氷900円と煎茶250円(セット価格)。

フードロス削減の貢献にもつながるような経緯から生まれたうさ氷は、氷から店で丁寧に手作りされる。柔らかくふんわりと削った氷の中には、『うさぎや』のどら焼きに使用しているあんこと、どら焼きの皮の材料に使用しているハチミツが隠れている。超軟水のハワイウォーターで作られた氷は口当たりがよく、口の中ですぐ溶けてしまうほど。うさ氷には、そのほかにも『うさぎや』の常連さんのリクエストに応えるかたちで、日本酒やコニャックを合わせたアレンジメニューも登場。あんこにお酒をかけていただくことで、あんこの美味しさがより引き立つのだそう。

ハワイウォーターは販売もしている。

また、あんこスイーツのお供に欠かせない日本茶にもハワイウォーターを使用。ミネラル成分が含まれていないため、素材本来の味や香りを引き出す特長があるという。お茶は、ハワイのイベントで出合った縁から、埼玉県狭山市で作られた茶葉を使用している。狭山産のお茶を選んだ理由を谷口さんは、「色がきれいに出て、味もいいんだ。『うさぎや』で出している和菓子にも、狭山のお茶を使っているよ」と話す。この店では、煎茶・焙じ茶・玄米茶の3種類から選ぶことができる。今では、都内で唯一のハワイウォーターの販売も手掛け始め、多くの人が車で買い求めに来るという。

9時10分までに来店したお客さんしか食べることができない「うさパンケーキ」や、ブラジルで出会った日系人の方の話から着想を得たという「うさ志る古フロマージュ」など、アイデアあふれるメニューが揃う『うさぎやCAFÉ』。そこにはどれも、あんこの美味しさや魅力を再発見してほしいという想いが込められている。まさに伝統と進化の両方を感じられる、そんな店だった。

『うさぎやCAFÉ』店舗詳細

住所:東京都台東区上野1-17-5/営業時間:9:00~18:00/定休日:水/アクセス:地下鉄銀座線上野広小路駅から徒歩3分

取材・文・撮影=柿崎真英