和風の玄関をくぐるとおしゃれなビアパブ風に
神田駅から徒歩2分、西と南の2方向にある八光ビルの階段を下りると、白い暖簾を下げた引き戸の玄関が見えてくる。看板には店名「KARAKURI」の下に「CRAFT BEER」「SAKE」「NATURAL WINE」「ODEN」「BOTTLESHOP」とある。
「からくりは幾つもの歯車が噛み合ってできるもの。我々スタッフやお客様、食品、酒類など、いろいろな物が噛み合ってできた店だから“KARAKURI”なんです」とは店長の山本恭士(やすし)さん。店名の下に列記した文言も、品揃えを知らせるとともに、店を構成する大切な歯車を表しているようだ。
玄関の造りから店内も和風と予想していたが大間違い。ピカピカに磨かれたグラスが下がるカウンターが正面にあり、左右にテーブル席がある。壁のモニターにはドリンクメニューが映し出され、スタイリッシュなビアパブといった感じ。和と洋のギャップが何とも愉快だ。
自慢のおでんは醸造酒にマッチする味付けで
食欲そそる香りを辿ると、カウンター内におでん鍋を見つけた。だしは鰹節と昆布でとり、味付けはビールや酒、ワインなどの醸造酒にマッチする関東と関西の中間を意識しているそうだ。
おでん種は定番12種と季節限定2~3種。一番人気の大根は3日かがりで仕込む自信作であり、ひと工夫することで芯まで味を染みこませている。ちょこんとのせたとろろ昆布の香りがまたよい。こんにゃくは日本三名泉に数えられる岐阜県下呂温泉から取り寄せたもので、刺し身で食べられるものをあえておでんに使う。つるんとした食感でクセがなく、だしがよく染みている。
ふんわりとしたはんぺんは東京深川のおでん専門店『美好商店』、玉子は栃木県から濃厚な味の那須御用卵、そのほかのおでん種も店主が惚(ほ)れ込んだものだけを使っている。
ビールや日本酒の“レギュラーがない”ことにこだわる
カウンターでひときわ目を引くビールサーバー。8個のタップ(注ぎ口)があり、それぞれに異なるクラフトビールの樽がつながれている。店主の山本さんはクラフトビールと日本酒を扱う飲食店に5年勤務。その後、クラフトビールの輸入にも携わり、国内・海外のクラフトビールに精通している。
クラフトビールは全て生もので旬がある、という考え方から、1つの樽が空になると別会社の樽に替える。この日はデビルクラフト(東京都)のインヴィジヴルタッチ、麦雑穀工房(埼玉県)のCIA、箕面ビール(大阪府)のバレルエイジ ド インペリアル スタウトなどがラインアップされていた。
日本酒、自然派ワインも1本ずつ購入するので、いつも常備してあるレギュラーはない。どんな醸造酒と出合えるかは当日のお楽しみだ。このほか、店主は酒販免許を取得しており、ボトルショップコーナーでは厳選したビールやワインをテイクアウトできる。
今日はどんな味に出合えるだろう。そんな期待を胸に訪れてほしい、そんな店だ。
取材・文・撮影=内田晃