厳選地酒との調和。ひと仕事加えた魚料理『肴や味泉』【月島】
かつて宮内庁御用達の仲卸に勤めていた経験から魚を覚え、「うまい魚といい日本酒を」と荒木眞一さんがオープンさせたのが『肴や味泉(あじせん)』。この店で真っ先に注文するなら、刺身盛り合わせ一人前2000円〜と煮穴子1500円〜をおいてほかはない。艶やかな旬魚の刺し身は、皮目をあぶったり、藁(わら)焼きにしたり、ひと手間加えている。自慢の煮穴子は大ぶりの天然物を使い、骨切りして極弱火で1時間かけて炊くことで、とろける食感だ。
『肴や味泉』店舗詳細
魚を知り尽くし、こよなく愛す店主の店『野毛ウミネコ』【桜木町】
店主の齋藤佑一さんが三浦半島の油壺まで足を運んで仕入れてくる魚は、抜群の鮮度。「魚を捌(さば)くのが趣味」と話すだけに、休みの日にもほぼ釣りに出かけるほど魚づけの日々を送る。多くの客が注文する刺盛は、厚切りの刺し身のプリッとした身がたまらない。創業以来煮汁を注ぎ足しで使用する鰆(さわら)の煮付けは、魚出汁が凝縮した煮汁もおいしい。この味を求めて訪れるファンも多く、カウンター席は連日満席だ。
『野毛ウミネコ』店舗詳細
和の料理人の腕がなる!5つの味や技法を堪能『食堂 ユの木』【月島】
料亭や旅館で修業した店主・土屋為芳さんが板場に立つ。店名に「食堂」とあるが、突き出し6品を味わうと「懐石料理店だ」と思わされる。和食の「五味、五色、五法」を取り入れ、甘い・酸っぱいといった味や、煮る・蒸すなどの各技法が入るように意識しているという。自ら豊洲に足を運んで目利きする魚介類は、刺し身はもちろん、いわし梅煮、藁焼きのカツオを干して熟成させた熟成かつおなど、料理人の技が光る一皿を味わえる。
『食堂 ユの木』店舗詳細
魚のプロが営む納得の価格と味『魚草』【御徒町】
“飲める魚屋”として知られ、上野アメ横という立地もあって開店時から客足が絶えない。当初は鮮魚店として創業したが、店頭で生ガキなどを食べられるサービスを始めたところ話題となり、客の要望に添う形で酒の提供もスタートした。「鮮魚は長崎などの漁師から直接仕入れ、タラバガニは前職から付き合いのある業者から仕入れています」と店主・大橋磨州(ましゅう)さん。だから納得! 質の高いものを手頃な価格で提供できるのだ。
『魚草』店舗詳細
新鮮で上質な刺し身や濃厚煮魚を地酒で堪能『肴処 岳志』【東小金井】
刺し盛りには、本マグロの中トロや太刀魚(たちうお)の炙りなどが彩り、プリプリの食感に鮮度の良さを実感する。『肴処 岳志(たけし)』の看板料理の一つ、金目鯛かぶとの煮付けは、コクと甘みのある濃厚な煮汁が燗酒との相性がよい。「磯自慢」や「菊姫」といった日本酒の品書きを見ると、どれも魚料理との調和が楽しみだ。締めに必ず味わいたい「はまぐり雑炊」は、ハマグリとコンブ、カツオ出汁の風味が奥深く、いい香りとやさしい味わいにほっこりする。
『肴処 岳志』店舗詳細
全国津々浦々の厳選魚介をお手頃に『三六九』【高円寺】
豊洲からの仕入れか、産地直送の天然物を使った刺盛が秀逸で、この日はマダイやサワラが並ぶ。「天然のいいものは突き抜けたおいしさがあります」と『三六九(みろく)』店主・中島雄一郎さん。北海道余市のブランド魚・天上鰤(てんじょうぶり)を本ワサビで味わい、東京・東村山の豊島屋酒造の「屋守(おくのかみ) 純米中取り」をグイッと口に含めば、魚と酒の旨味が広がり、次の一口を促す。絶妙な塩気のイクラの出汁漬けや煮穴子などもおいしい。
『三六九』店舗詳細
朝獲れ魚介を楽しむ創作料理とワインの酒房『貝呑』【神田】
豊洲市場直送で二次冷凍しないため、魚介本来のおいしさを堪能できる。店頭にはその日仕入れた魚介類が並び、気に入ったものを選んで料理してもらうことも可能だ。おすすめの活貝ソテーは、その日の仕入れにより種類も変わる。約7種類あるソースから好みを選べるので、味の組み合わせを考えるのも楽しみだ。あぶりや昆布締めで楽しむ洋風刺身盛り合わせ、本日の鮮魚炭火焼きなど、ワインとのマリアージュもたまらない。
『貝呑』店舗詳細
取材・文・撮影=アド・グリーン 撮影=小野広幸、岡田孝雄、丸毛透
『散歩の達人 東京名酒場』より