【こころも体も懐もあったかい本格派たち】

大将が作る、極冷の酎ハイ。『愛知屋』[鐘ケ淵]

小鍋仕立ての牛豆腐700円は半熟卵がトロリとのる。串焼きは160円~。
小鍋仕立ての牛豆腐700円は半熟卵がトロリとのる。串焼きは160円~。

下町の多くの酒場で使われる琥珀色の風味付けエキスと、甲類焼酎をブレンドして半シャーベット状まで冷やす。これを強い炭酸水とともに一気にグラスに注ぐ。これで氷を入れずとも最後まで冷たさもキレも変わらず飲み干せる、酎ハイ340円が完成する。アテは、濃口醤油とザラメで煮込んだ、定番の牛豆腐700円。そして、焼き物がまた実に合う。山梨の紅富士鶏は柔らかく臭みも一切ない。これは酎ハイが進むわ……。

奥に長いカウンター席では常連も新規客もズラリと並び、楽しく飲み進める。
奥に長いカウンター席では常連も新規客もズラリと並び、楽しく飲み進める。
大将が作る先代直伝の酎ハイを飲みに、今や遠くからも客が訪れる。
大将が作る先代直伝の酎ハイを飲みに、今や遠くからも客が訪れる。

『愛知屋』店舗詳細

住所:東京都墨田区墨田3-41-17/営業時間:17:00~23:00(日・祝は16:00~)/定休日:水/アクセス:東武スカイツリーライン鐘ケ淵駅から徒歩9分

母娘で数十年守る、大衆酒場の風格!『丸好酒場』[八広]

牛ハツ刺300円、牛モツ煮込み400円ともに鮮度抜群の旨味にタレの辛みが合わさる。
牛ハツ刺300円、牛モツ煮込み400円ともに鮮度抜群の旨味にタレの辛みが合わさる。

「昔は朝7時から夜中の1時までやってたんだから」。先代女将がサラリと語る言葉に下町酒場の矜持(きょうじ)が輝く。三交代で働く職人さんたちが大挙訪れた、カウンターだけの店には、かつては席の後ろで立ち飲みする客までいたという。その頃と変わらず、毎朝芝浦の食肉市場から届く新鮮なもつを、大鉄鍋でグラグラ煮こむ。味は濃いめで、旨味も濃い。まずはこれを一口、そして氷なしでもキンキンに冷えた酎ハイ300円でグッといく。もう、こたえられない。

カウンター内には、今日も変わらず煮込み用の大鍋とそれを守ってきた2代目女将。
カウンター内には、今日も変わらず煮込み用の大鍋とそれを守ってきた2代目女将。
創業時の写真も飾られている。
創業時の写真も飾られている。

『丸好酒場』店舗詳細

住所:東京都墨田区東向島6-63-6 /営業時間:16:00~22:30(日は12:00~20:00)/定休日:月・火/アクセス:京成押上線八広駅から徒歩5分

本格派なのに“八丁堀価格”『LES TONNEAUX』[八丁堀]

ボトルワイン3200円~、グラスワイン600円~。まずは前菜のイタリア産生ハムの盛り合わせ1892円。
ボトルワイン3200円~、グラスワイン600円~。まずは前菜のイタリア産生ハムの盛り合わせ1892円。

前身は大正12年(1923)創業の「入船屋酒店」。長年、地元で愛された老舗が2010年にフレンチビストロとして生まれ変わった。ミシュランビブグルマン受賞店で、コスパが高い“八丁堀価格”とあって連日予約で満席になる。オーナーが現地で試飲してから買い付ける日本未輸入の南仏ワインや珍しいリキュールも人気。スタッフは全員ソムリエの資格を持っているので、オーダーの際は味の好みを伝えて相談してみてはどうだろう。

メインは見るからに食欲をそそる骨付き仔羊のロースト マスタードソース添え2530円。
メインは見るからに食欲をそそる骨付き仔羊のロースト マスタードソース添え2530円。
約50席は、ほぼ毎日予約で埋まるという。
約50席は、ほぼ毎日予約で埋まるという。

『LES TONNEAUX』店舗詳細

住所:東京都中央区八丁堀2-8-2/営業時間:17:30~22:00LO/定休日:日・祝/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩2分

熊本は酒も料理も絶品。『焼酎ダイニング だけん』[八丁堀]

焼酎は酒器に入れてお猪口で飲むという熊本の伝統スタイル。熊本直送の馬刺し900円。店のマスコットのくまモンは常連客からのプレゼント。
焼酎は酒器に入れてお猪口で飲むという熊本の伝統スタイル。熊本直送の馬刺し900円。店のマスコットのくまモンは常連客からのプレゼント。

月島の一軒家で9年間営業したのち、「店全体に目が行き届く規模でやりたい」と八丁堀に移転。とはいえ、今でも客の半分は月島時代の常連さんとのこと。「だけん」とは熊本の方言で「だから」という意味で、焼酎も料理も熊本のものにこだわっている。しゃぶしゃぶに入れる鴨頭ネギなど、東京ではここでしか味わえない食材も。ちなみに、常にカウンター席に陣取っているくまモンは、混んでくると席を譲ってくれるとか。

じゃがじゃが鍋(宮崎豚のしゃぶしゃぶ)800円。
じゃがじゃが鍋(宮崎豚のしゃぶしゃぶ)800円。
カウンターには檜の一枚板を使用。
カウンターには檜の一枚板を使用。

『焼酎ダイニング だけん』店舗詳細

住所:東京都中央区八丁堀2-19-10/営業時間:17:00~23:00/定休日:日・祝/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩3分

安酒場と侮ることなかれ!『居酒屋金太郎』[新宿御苑前]

自家製チャーシュー(ラーメン添え)は煮汁がスープ。だし巻きたまご、牛タン刺し身各450円。
自家製チャーシュー(ラーメン添え)は煮汁がスープ。だし巻きたまご、牛タン刺し身各450円。

ほとんどの料理が1人前450円! それだけでも驚くが、なかには自家製チャーシューのラーメン添えなるものが。「どんなのだろって思うじゃない? それよ」と、ほくそ笑むのが大将の金ちゃんだ。料亭などを渡り歩いた腕と目利きで、築地仕入れの旬魚、肉塊、目玉の牛タンを安く仕入れ、旬味、創作と、味な料理を幅広く揃える。さらに、節分や月見などの季節行事に合わせ、「ひまつぶしだよ」と粋な酒肴も用意。“ちょいと一杯”が長尻になる。

「間がもつと思ってさ」と出す3点盛りがお通し。寿司や田楽など、小躍りしたくなるラインナップだ。
「間がもつと思ってさ」と出す3点盛りがお通し。寿司や田楽など、小躍りしたくなるラインナップだ。
金ちゃんこと佐藤金三さん。
金ちゃんこと佐藤金三さん。
予約で埋まることも多い。
予約で埋まることも多い。

『居酒屋金太郎』店舗詳細

住所:東京都新宿区新宿2-8-10/営業時間:17:30~22:30ごろ/定休日:日(連休の場合は最終日)/アクセス:地下鉄丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩3分

故郷の家庭の味で地酒を『季節料理・長崎名物皿うどん 利代』[代々木]

皿うどん1980円が食べきれない場合は持ち帰りも可。
皿うどん1980円が食べきれない場合は持ち帰りも可。

先代の母上自慢の名物料理が皿うどん。その味を引き継ぐのは、2代目の畑順一さんだ。長崎県から仕入れる揚げ麺を、具材満載の餡で覆い尽くす。「一人前だとこの味にならなくて」と、夜は2人前からの提供だが、一人で平らげていく人も。餡が染みると麺はパリパリから柔らかに変化し、つまみにもってこい。時々で変わる銘酒とじっくりやりたい。

ひょうきんな畑さんと、美人母娘の美幸さんと愛里さん。
ひょうきんな畑さんと、美人母娘の美幸さんと愛里さん。
小上がりは和み席。
小上がりは和み席。

『季節料理・長崎名物皿うどん 利代』店舗詳細

住所:東京都渋谷区代々木2-26-2/営業時間:11:45~14:00・18:00~23:00/定休日:日・祝/アクセス:JR・地下鉄代々木駅から徒歩4分

【日本酒にこだわりあり!】

味わい深い出汁と燗酒。『日本酒バー 慶』[根津]

ヘシコなど約8種から選べる珍味3種864円と釜竹の出汁を使った千両茄子と桜えびの揚げ出し豆腐702円。
ヘシコなど約8種から選べる珍味3種864円と釜竹の出汁を使った千両茄子と桜えびの揚げ出し豆腐702円。

根津のうどんの名店『釜竹』の姉妹店で、築約100年の元和菓子屋を改装して営む。日本酒担当の尾形寛さん曰く「地酒は生酛(きもと)、山廃など味わいのしっかりしたものを中心に常時30種ほど。品書きが下段になるにつれ、旨味の濃い銘柄になってます」。合わせる料理を担当するのは同世代の遠藤真弥(しんや)さん。仕入れたお酒に合うよう作るのが“本日の一品”だ。特に『釜竹』の奥深い出汁を使ったおひたしなどの料理は、米の旨味が濃い燗酒と最高のペアリング。

『日本酒バー 慶』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中1-2-14/営業時間:11:30~14:30LO・17:30~21:00LO(月はランチのみの営業)/定休日:日/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩4分

同じ銘柄を深くいつまでも。『ゆう』[代々木上原]

のびやかな旨味とほのかな苦味の「八〇原酒2014」1080円150㎖には、富山県産のカニがたっぷり入ったカニクリームコロッケ1944円の旨味が同調する。
のびやかな旨味とほのかな苦味の「八〇原酒2014」1080円150㎖には、富山県産のカニがたっぷり入ったカニクリームコロッケ1944円の旨味が同調する。

日本酒は「王祿(おうろく)」しかない。でも、一つの銘柄だけでこんなに奥が深いなんて驚きだった。例えば、旨味たっぷりのカニクリームコロッケには同調するように重なってふくらみ、鰤(ブリ)を焼いた香ばしい料理とは、互いに個性が響き合って深い味わいになる。「王祿ほど引き出しがある日本酒はなかなかないです」と店主の井本有祐さんは熱っぽく言う。繊細な味から熟成した酒まで20種類以上の中から、つまみによって合う酒を考えるのが楽しいという店主。「どうやったらもっと王祿をおいしく飲んでもらえるのか。ただ、そればかりを考えています」。

真鯛と冬野菜の炊いたん1500円には「超王祿」1296円150㎖を、鰤のこがし醤油焼き1人前1800円(2人前~)には香ばしい「意宇・生原酒」1944円150㎖の燗酒が合う。
真鯛と冬野菜の炊いたん1500円には「超王祿」1296円150㎖を、鰤のこがし醤油焼き1人前1800円(2人前~)には香ばしい「意宇・生原酒」1944円150㎖の燗酒が合う。
王祿に惚れ込んだ店主の井本さん。「酒の進化も変化もずっと見守り続けていたい」。
王祿に惚れ込んだ店主の井本さん。「酒の進化も変化もずっと見守り続けていたい」。

『ゆう』店舗詳細

住所:東京都渋谷区西原3-22-12/営業時間:17:30~23:00LO/定休日:月/アクセス:小田急線・地下鉄千代田線代々木上原駅から徒歩3分

蔵元に惚れ込んだ店主の酒肴。『作』[上石神井]

橋本家の癒やし酒でもあるという「神亀」純米甘口の酒800円(正一合)と牡蠣とホタテ貝燻製680円。「私が作るつまみをすべてつないでくれる酒です」。
橋本家の癒やし酒でもあるという「神亀」純米甘口の酒800円(正一合)と牡蠣とホタテ貝燻製680円。「私が作るつまみをすべてつないでくれる酒です」。

「神亀」の話になると顔をほころばせる店主の橋本宏行さん。純米酒の祖であり神亀の味を造った故・小川原良征社長とは、家族ぐるみの親交があったという。「神亀は懐の深い酒です。一見、ゴツい酒なのですが浸るとやさしさが染みるようにわかるんですよ。まるで小川原さんの人柄みたいです」。特に“純米甘口の酒” と自家製の燻製は、こちらに来たら外せない組み合わせ。「神亀」の枯れた風味と燻製の燻(いぶ)された香りがピタリと重なり、酒の甘みが全体を包むようにゆっくりと口に広がる。しみじみと離れがたく、ずっと飲んでいたい親密な相性だった。

蒸したてのあん肝とあん肝ステーキ680円(手前)、自家製ベーコンを使った山芋もっちり焼き680円。
蒸したてのあん肝とあん肝ステーキ680円(手前)、自家製ベーコンを使った山芋もっちり焼き680円。
お店には「竹鶴」や「玉川」「悦凱陣(よろこびがいじん)」など約50種類がそろう。
お店には「竹鶴」や「玉川」「悦凱陣(よろこびがいじん)」など約50種類がそろう。
店主の橋本さん。
店主の橋本さん。

『作』店舗詳細

住所:東京都練馬区上石神井1-19-9-101 /営業時間:18:00~翌3:00/定休日:水/アクセス:西武新宿線上石神井駅から徒歩5分

直球の広島愛に蔵元も太鼓判!『ほじゃひ』[五反田]

安浦直送カキのソテー瀬戸田産レモン添え1380円(冬季のみ提供)と和風コンニャク観音ネギ540円も酒が進む!
安浦直送カキのソテー瀬戸田産レモン添え1380円(冬季のみ提供)と和風コンニャク観音ネギ540円も酒が進む!

広島一色の店である。広島の山海の幸を使ったつまみに、合わせるのは広島の日本酒。広島出身の店主・疋田(ひきだ)多賀志さんと親交がある蔵元の酒のみをそろえている。「香りの華やかなタイプからしっかりした燗酒で旨い酒まであって、広島の日本酒は幅広いんです」。あれこれつまんだ締めに必ず食べたい本格お好み焼きには、穏やかな旨味が特徴の「神雷」が合うと教えてくれた。酒と重なることで、焼けたソースの香ばしさもキャベツの甘みも引き立つ相性。どちらもさらにおいしくなって酒が止まらず、なかなか締められないのが、あぁ悩ましい!

日本酒は「雨後の月」や「賀茂金秀」など広島の地酒のみが23銘柄そろう。「広島の日本酒を東京からもっと広めたい」。
日本酒は「雨後の月」や「賀茂金秀」など広島の地酒のみが23銘柄そろう。「広島の日本酒を東京からもっと広めたい」。
店主の疋田さんが作る本格お好み焼き・肉玉そば980円(広島の観音ネギは+220円)と「神雷」小540円。麺は茹でたてを使う。
店主の疋田さんが作る本格お好み焼き・肉玉そば980円(広島の観音ネギは+220円)と「神雷」小540円。麺は茹でたてを使う。

『ほじゃひ』店舗詳細

住所:東京都品川区東五反田1-12-9 イルヴィアーレ五反田ビル8F/営業時間:17:30~22:30LO(土・日・祝は14:00~20:00ごろ)/定休日:不定/アクセス:JR・私鉄・地下鉄五反田駅から徒歩3分

【おでんを肴にする贅沢】

しみじみ沁みるしみしみのおでん。『REITEN』[八丁堀]

おでん盛り合わせとズワイガニのクリームコロッケはともに880円、ホイス410円。
おでん盛り合わせとズワイガニのクリームコロッケはともに880円、ホイス410円。

28年間、この場所で営業していた“お婆ちゃんの釜飯屋” を継ぐ形で2003年にオープン。「ゼロからのスタート」ということで店名を「レイテン」にした。人気は白モノを中心に旬の素材を使った東京おでん。昆布とかつお節で取る王道かつシンプルな出汁は一年を通して身に沁みる。昭和の味、ホイスは約2割の客が懐かしがって注文するそうだ。

客層の多くは近くで働く会社員。出張帰りにふらっと顔を出す常連もいる。
客層の多くは近くで働く会社員。出張帰りにふらっと顔を出す常連もいる。
大通りから細い路地に入ると温かいあかりが見えてくる。
大通りから細い路地に入ると温かいあかりが見えてくる。

『REITEN』店舗詳細

住所:東京都中央区八丁堀3-20-11/営業時間:17:00~23:00LO/定休日:土・日・祝/アクセス:JR京葉線・地下鉄日比谷線八丁堀駅から徒歩3分

心も体もほどける味わい。『上燗屋 富久』[新宿三丁目]

昆布やかつお節で丁寧に取った出汁のおでんは、大根、豆腐各300円、紅生姜、つみれ各450円など具がいっぱい。「日本城」700円(1合)の上燗とどうぞ。「40年の歴史が刻まれた日本酒とおでんです」。
昆布やかつお節で丁寧に取った出汁のおでんは、大根、豆腐各300円、紅生姜、つみれ各450円など具がいっぱい。「日本城」700円(1合)の上燗とどうぞ。「40年の歴史が刻まれた日本酒とおでんです」。

主人の杉原親さんが築いた『上燗屋 富久』は、昭和54年創業。混沌(こんとん)とする新宿三丁目の飲み屋街で、静かに歴史を重ねてきた。現在、店主は不在だが、名物のおでんの味を引き継いだのが、もともと20年来の常連だったという佐藤美貴さん。「富久の味を守りながらもっとおいしくしたい。お父さんよりも、おでん愛は強いですよ(笑)」。創業時から扱う主人の古里である和歌山の「日本城」を、年季の入ったチロリでほどよく温めてもらった燗酒は、深みがあって繊細なおでんの出汁に溶けるように合う。灯りがともるように、身も心もすみずみまで温かくなる。

おつまみセット1600円は、佐藤さん手製のイワシの梅煮や茄子のみぞれ煮などたくさんのおばんざいから3品選ぶことができる。
おつまみセット1600円は、佐藤さん手製のイワシの梅煮や茄子のみぞれ煮などたくさんのおばんざいから3品選ぶことができる。
調理担当の佐藤さん(左)とサービス担当の加藤野奈さん。
調理担当の佐藤さん(左)とサービス担当の加藤野奈さん。

『上燗屋 富久』店舗詳細

住所:東京都新宿区新宿3-12-4/営業時間:17:00~21:00LO/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄新宿三丁目駅から徒歩3分

【極上のカキで一杯】

極上海のミルクを立ち飲みで。『立喰い処 酒喰洲』[人形町]

厚岸(あっけし)活から付かき490円、かき揚げ出し650円。地酒は「酔鯨 特別純米生しぼりたて」1合680円など常時13種ほど。かき料理は3月末まで。
厚岸(あっけし)活から付かき490円、かき揚げ出し650円。地酒は「酔鯨 特別純米生しぼりたて」1合680円など常時13種ほど。かき料理は3月末まで。

築地や千住で仕入れる新鮮魚介の刺し身は、なんと1枚ずつ注文可能(計3枚~)。「おいしい魚を知ってほしくてさ。日本は海の国だから!」と料理人として魚に携わり、約半世紀の櫻井満さん。立ち飲みには珍しく、質のいい北海道・東北の生ガキや、揚げ出し豆腐のカキ版・かき揚げ出しも用意。一粒出汁ごと啜(すす)り「米鶴 純米生しぼりたて」780円を合わせれば、カキと品のある出汁の旨味がより花開く。「新店では手打ちそばもやる予定だよ」。

店主と清水園美さんで営む(写真は旧店舗)。新店も立ち飲みで雰囲気は変わらない。
店主と清水園美さんで営む(写真は旧店舗)。新店も立ち飲みで雰囲気は変わらない。

『立喰い処 酒喰洲』店舗詳細

住所:東京都中央 区日本橋人形町2-15-10/営業時間:17:00~22:30LO/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄半蔵門線水天宮駅から徒歩4分

豊富な品書きにカキマニアも破顔。『sake×oyster BAR 石花』[渋谷]

牡蠣フライ、五島の天然塩で熟成させた牡蠣の塩辛、生牡蠣の三種盛り。季節で価格は変動。「九郎左衛門 裏・雅山流 香華」。
牡蠣フライ、五島の天然塩で熟成させた牡蠣の塩辛、生牡蠣の三種盛り。季節で価格は変動。「九郎左衛門 裏・雅山流 香華」。

生ガキはもちろん、焼きもフライも1個ずつ頼めるので、ソロでのカキ飲みにも重宝。「せっかくだから食べ比べてみて」と店主・渡辺敏康さんに促され、生牡蠣の三種盛りを頼むと、能登産は磯感が強く、坂越(さこし)産はややクリーミー。育つ海域で味もかなり違う。そこに「日高見純米初しぼり」を流し込めば、カキの旨味が広がり、これぞ口内調理! 品書きにはハムカツなど大衆酒場の肴もあり、カキ党もそれ以外も仲良く飲める酒場なのだ。

「カキの焼きおにぎりやグラタンもぜひ」と店主。
「カキの焼きおにぎりやグラタンもぜひ」と店主。
カウンター席。
カウンター席。

『sake×oyster BAR 石花』店舗詳細

住所:東京都渋谷区猿楽町6-12 片岡ビル1F/営業時間:18:00~23:00LO/定休日:日(祝は不定)/アクセス:JR・私鉄・地下鉄渋谷駅から徒歩8分

オイスターとオモシロを大切に。『かきんちゅ』[阿佐ケ谷]

岩手の生牡蠣一本松745円、牡蠣の山芋チーズ焼き637円、牡蠣の土鍋蒸し1058円(シメの雑炊626円)。バスペールエール734円。
岩手の生牡蠣一本松745円、牡蠣の山芋チーズ焼き637円、牡蠣の土鍋蒸し1058円(シメの雑炊626円)。バスペールエール734円。

生ガキは例えば坂越421円など比較的安く、これ目当ての常連も多い。しかも月曜は生ガキを頼むともう一個無料、カープが勝った日はカキフライ5個108円に! 「昔は広島が弱かったけど今は強くて大変(笑)。でも面白さ優先でやってます」と店長・割田陽介さん。カキ好き必食が牡蠣の土鍋蒸しだ。熱々の蒸しガキを、日替わりで2種揃うクラフトビールで流し込むのが最高に幸せ~。シメはもちろんカキエキスがにじみ出た絶品雑炊で!

店内には野球グッズがずらり。20時まで全ビールが約4割引き。
店内には野球グッズがずらり。20時まで全ビールが約4割引き。

『かきんちゅ』店舗詳細

住所:東京都杉並区阿佐谷南3-34-15 2F/営業時間:18:00~翌4:00(金・土・祝日前は~翌5:00)/定休日:無(不定あり)/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩3分

カキの幸せペアリング。『麦酒庵 大塚店』[大塚]

生ガキはおとふせ950円(左)など。カキとカキ殻を使って醸すオイスタードライスタウト小650円(右)、ナギサビールペールエール小550円。
生ガキはおとふせ950円(左)など。カキとカキ殻を使って醸すオイスタードライスタウト小650円(右)、ナギサビールペールエール小550円。

「生ガキなら、味はしっかり対抗しつつ、風味を活かすいわて蔵ビールのオイスタードライスタウトや、カキのコハク酸の旨味を広げる龍勢生酛(きもと)純米がおすすめ」とペアリング博士の店主・水田善之さん。牡蠣の煮こごりを南紀白浜のナギサビールで試してみると、煮こごりの醤油系の旨味、品のある味と、麦芽のやわらかな香りがきれいにマッチ。罇生のクラフトビール、生ガキともに10種ほど揃うので、注文に迷ったら水先案内人に聞くべし。

牡蠣クリームコロッケ2個800円には久保本家の生酛のどぶ900円を燗で。
牡蠣クリームコロッケ2個800円には久保本家の生酛のどぶ900円を燗で。
「日本酒も約200種揃えてます」と店主。
「日本酒も約200種揃えてます」と店主。

『麦酒庵 大塚店』店舗詳細

住所:東京都豊島区北大塚2-27-1 吉松ビル2F/営業時間:18:00~24:00(日・祝は15:00~23:00)/定休日:月(祝の場合は翌日)/アクセス:JR山手線大塚駅・都電荒川線大塚駅から徒歩1分

【ふわふわだし巻き玉子はいかが?】

とろける舌触りのだし巻き玉子。『やまぐち』[蒲田]

天使のだし巻き玉子650円。ふんわり。
天使のだし巻き玉子650円。ふんわり。

店主の山口典孝さんは、「このだし巻きで宇宙を感じてほしいんです」と語る。割烹で20年、2015年に開業してから、客が食べたことがないようなだし巻き玉子を研究し続け、現在の焼き方にたどり着いた。銅のフライパンで火加減を均一にし、強火でオムレツのように固め、薄焼き玉子で包み込む。アツアツのまま口に含むと、その瞬間に舌の上でほろほろと溶け、だしがふわりと香り立つ。甘さ控えめな塩味で、酒のおかわりが欲しくなる。

天ぷら盛り合わせ980円。薄くて口当たりが軽い衣の天ぷらと、50種類以上揃えている焼酎380円~が店のイチオシだ。
天ぷら盛り合わせ980円。薄くて口当たりが軽い衣の天ぷらと、50種類以上揃えている焼酎380円~が店のイチオシだ。
強火がポイント!
強火がポイント!
陽気な山口さん。
陽気な山口さん。

『やまぐち』店舗詳細

住所:東京都大田区蒲田5-2-4 梅島ハイツ1F/営業時間:17:00~翌2:00/定休日:日/アクセス:JR・私鉄蒲田駅から徒歩4分

明太子入りだし巻き玉子がたまらない。『二軒目BAR』[新宿三丁目]

具入り。明太子出し巻き780円。
具入り。明太子出し巻き780円。

浅草や巣鴨の懐石料理屋で修業を積んだ料理長の桑野永(ひさし)さんは、「切った瞬間から感動してほしい」と、だし巻きに対する意気込みを語った。明太子を中心に、薄焼き玉子を手早く巻き、焼きあがったらすぐ皿にのせ、客のもとへ。ナイフで割ると、幾重にも層をなす玉子の中心から、真っ赤な明太子がとろり。一口ほおばれば、プチプチの食感と心地よい塩気。かつおと昆布のだしが混ざり、口中に広がる。名物の焼酎と合わせて楽しみたい。

とろりとあふれ出る明太子。
とろりとあふれ出る明太子。
鶏刺し盛り合わせ1580円。鹿児島の鶏肉店から直で仕入れた地鶏と200種類を超える全国の焼酎580円~が名物。
鶏刺し盛り合わせ1580円。鹿児島の鶏肉店から直で仕入れた地鶏と200種類を超える全国の焼酎580円~が名物。
左から桑野さん、店長・友野竜輔さん、麻生涼太さん。
左から桑野さん、店長・友野竜輔さん、麻生涼太さん。

『二軒目BAR』店舗詳細

住所:東京都新宿区歌舞伎町1-2-17/営業時間:18:00~翌3:00LO/定休日:日/アクセス:地下鉄新宿三丁目駅から徒歩3分

【最高のシメを食べたい】

締めはデミグラスソースのオムライス。『早稲田 源兵衛』[早稲田]

オムライス850円。
オムライス850円。

昭和のはじめに焼き鳥屋として創業。「初代が丸鶏をさばくのが下手で、骨に付いた肉を削いで作ったのがシューマイなの」とは、4代目の宮田彦一郎さん。カニやホタテ入りの名物は大ぶりで、早稲田大OBにファンが多く、地方発送も請け負う。そして2代目は食堂、3代目は洋食『スイス』、4代目は寿司屋で修業し、代を重ねて肴が百花繚乱(ひゃっかりょうらん)に。オムライスのデミグラスソースも一から手作り。「父の兄弟子は元首相官邸食堂の料理人。同じ味らしいですよ(笑)」。

シューマイ350円、焼鳥(よりどり2本一皿)350円の正肉とつくね、天鷹180㎖ 550円は燗もいい。
シューマイ350円、焼鳥(よりどり2本一皿)350円の正肉とつくね、天鷹180㎖ 550円は燗もいい。
4代目(左)とバイトの田路(とうじ)くん。早稲田大応援部OBだ。
4代目(左)とバイトの田路(とうじ)くん。早稲田大応援部OBだ。

『早稲田 源兵衛』店舗詳細

住所:東京都新宿区西早稲田2-9-13/営業時間:16:00~23:30LO/定休日:3・13・23日/アクセス:地下鉄東西線早稲田駅から徒歩8分

ナポリタンミーツグラタンの妙味。『大衆居酒屋 伊勢周』[船堀]

スパグラタン700円。
スパグラタン700円。

1952年創業の縄暖簾(のれん)をくぐれば、L字カウンターを囲み、梅エキス入りの元祖焼酎ハイボール片手の常連でにぎやか。メニューは、釣り師持参の江戸前の天ぷらや、口中でとろける馬刺しなど、とにかく迷う。家族で通えるよう、食事類も豊富だ。なかでもスパグラタンは、とろアツのグラタンからナポリタンが。「1つの素材を多用してメニューを作るから苦肉の策で」と、3代目店主の尾崎浩之さんは笑うが、これが会心の一撃。時間を要すため注文はお早めに。

煮込み(無料)、レバ刺し風馬刺し600円、天ぷら盛合せ850円はキス、 エビ、野菜など5種。夏は江戸前ハゼも。元祖焼酎ハイボール450円。
煮込み(無料)、レバ刺し風馬刺し600円、天ぷら盛合せ850円はキス、 エビ、野菜など5種。夏は江戸前ハゼも。元祖焼酎ハイボール450円。
尾崎一家。
尾崎一家。

『大衆居酒屋 伊勢周』店舗詳細

住所:東京都江戸川区松江3-3-4/営業時間:16:00~23:00/定休日:木/アクセス:地下鉄新宿線船堀駅から徒歩15分

濃厚な絶品ミニハヤシライス。『炭火串焼 十三や』[小川町]

絶品ミニハヤシライス750円。
絶品ミニハヤシライス750円。

紀州備長炭で焼き上げるのは、つくば鶏、茜鶏などの銘柄鶏肉。さらに、刺し身でもイケるクルマエビやニンニクの芽など酒の香りを引き立てる味揃いだ。「始めたときはまだ素人感覚で、せめて食材にはこだわりたくて」 と店主の高橋靖也さん。シメは来店時の予約が無難だ。焼きおにぎりや牛ヒレ丼もあるが、まかない生まれのハヤシライスがいい。牛ヒレの端肉に赤・白ワイン、梅酒、リキュールを加えて1週間煮込んだもので、コクが深く後味軽やか~。

おかませ串5本1400円はお通し(写真はイワシの甘露煮)込み。活車海老は入荷状況により付く。地酒1杯500円~。アウグスビールも置く。
おかませ串5本1400円はお通し(写真はイワシの甘露煮)込み。活車海老は入荷状況により付く。地酒1杯500円~。アウグスビールも置く。
高橋さん。
高橋さん。

『炭火串焼 十三や』店舗詳細

住所:東京都千代田区神田小川町2-4 芙蓉ビル1F/営業時間:18:00~23:30(水のみランチあり。11:30~14:00)/定休日:日・祝/アクセス:地下鉄新宿線小川町駅から徒歩1分

取材・文=フリート横田、石原たきび、鈴木健太、山内聖子、佐藤さゆり・高橋健太(teamまめ) 撮影=金井塚太郎、山出高士、井原淳一、オカダタカオ、鈴木康史、高野尚人

ざっくばらんでちょっとリーズナブル。だけれども、中身は本格的。ただいま前のひと息バー。まっすぐ帰るのがもったいない夜は、こんなバーを思い浮かべてみよう。
狭い都心にあって、昔から人々を癒やしてきた空間がある。アーチの下、暗がりの穴倉「ガード下」だ。戦後70年以上が経つ今も、そこには灯がともる。東京のガード下にしっかりと残る、奇跡の愉楽をご堪能あれ!