アクセス
鉄道:JR・私鉄・地下鉄池袋駅から東武東上線・JR八高線で約2時間の松久駅下車。
車:関越自動車道練馬ICから同道を利用し、寄居スマートICまで約64km。同ICから美里町中心部まで約2km。町域南側へは関越自動車道花園ICも利用可。
ダチョウの秘めたるポテンシャルにも興味津々『美里オーストリッチファーム』
世界一大きな鳥であるダチョウの飼育・繁殖施設で、ふれあい牧場での見学やエサやり(有料)を楽しめる。ビッグサイズの卵や加工食品、グッズなどを扱う売店には、他に類を見ない「ダチョウ博物館」を併設。抽出・精製したダチョウ油を配合したコスメは高浸透・高保湿が特長で、愛用する常連客も多いそう。
県内最多の古墳の里
散策がてら古墳・文化財巡りも楽しめる
562基と埼玉県内で最も多くの古墳が造られた美里町(1994年の埼玉県教育委員会報告に基づく)。町内には塚本山古墳群をはじめとする大古墳群が点在。数多くの出土品からは渡来人の影響がうかがわれ、地形の特徴が奈良県の飛鳥(あすか)地域に似通っていることから「さいたまの飛鳥」をうたっている。遺跡の森総合公園内にある『美里町遺跡の森館』(入館無料。9~17時、月休〔祝の場合は翌火休〕。埼玉県美里町木部574 ☎0495-76-0204)の常設展示室では古墳時代の展示・解説に力を入れており、長坂聖天塚(しょうてんづか)古墳から出土した方格規矩四神鏡系和鏡(ほうかくきくししんきょうけいわきょう)を筆頭に、貴重な史料が一堂に集まる。文化財巡りのマップは散策に便利だ。
店舗での直売に特化した埼玉県で一番小さな蔵元『横関(よこぜき)酒造店』
創業は明治13年(1880)。地酒銘柄「天仁(てんじん)」は火入れを行わない生酒がメインだ。アルコール度数20度の天仁原酒720ml 1210円はやや甘口で濃醇な味わい。人気を博しているのが酒粕・塩・ザラメで漬け込んだ無添加奈良漬で、ウリ・ショウガ・キュウリの詰め合わせは250g 831円ほか。
色・味わい・香りの三拍子揃った日本茶を販売『茶舗(ちゃほ)いこた』
「産地に足を運んで見極めた茶葉を、自らブレンドし、お客さまへ提供しています」と代表の井古田悦男さん。お茶に関する造詣が深く、質問にも丁寧に答えてくれるのが心強い。美里乃舞100g1188円など緑茶各種に加え、店内で抹茶600円も味わえる。5~10月限定販売のかき氷も好評だ。
国産無垢材の家具を製作『家具屋Azuki』
家具職人の加藤明宏さん・あずささんが営むオーダー家具の工房。シンプルなデザインながら、自然に見える木目の組み合わせ方や接合部の加工技術など、職人ならではのこだわりが随所に垣間見える。4人がけテーブル30万円~、イス10万円~などで、要望にも柔軟に対応。
住宅地にあるテイクアウト専門洋菓子店『Rogue(ローグ)』
彩り豊かな生菓子(500円台中心)と10種以上の焼菓子(300円台中心)が店内にズラリ。「地元の旬の食材を中心に、オリジナルのお菓子を提供しています」と店主の小暮すみれさん。コミュニティーの場として地域に溶け込んでいる様子も微笑(ほほえ)ましい。
カウンターからボックス席まで幅広い客層に対応『パウリスタ珈琲店』
隣の本庄市で7年間、現店舗で丸40年間と長きにわたり地域に根づく自家焙煎珈琲店。店の顔であるパウリスタブレンド650円のほか、スパゲティー、グラタン、ピザ、ハンバーグからうどんにケーキ、パフェまで、フードメニューの充実ぶりにびっくり。焙煎豆はもちろん、厳選した器具も販売。
四国八十八ヶ所霊場を境内の裏山に再現「眞東寺」
真言宗智山派の寺院。境内の裏山には四国八十八ヶ所霊場の縮小版を各寺院の位置関係を念頭に再現し、参拝すると現地を巡拝したのと同じ霊験・功徳(くどく)が得られる。起伏のある巡拝路は全長約1.4kmで、本場の約1000分の1とした点にも信仰の篤(あつ)さがうかがえる。
地域に寄り添う和菓子店『菓子処たかはし』
皮とこしあんの両方に味噌を練り込んだ黒みそまんじゅう151円は1950年の創業以来の看板商品。絶妙な食感のみさとパイ各194円は、ブルーベリーあん・かぼちゃあん・小倉あんの3種がある。例年10月の収穫時期に合わせて期間限定でえごま大福も店頭に並ぶ。
えごまのアイスやラー油も積極的に商品化「美里EGOMAファーム」
遊休農地を活用し、食害に遭いにくいとされるシソ科の植物えごまを無農薬で栽培。搾油(さくゆ)機で抽出したえごま油には、ちまたで健康によいとされるα-リノレン酸が多く含まれる。搾油所のある『円良田(つぶらた)特産センター』(9~15時、月・金休。埼玉県美里町円良田508 ☎0495-76-3710)のほか、『菓子処たかはし』や『JA埼玉ひびきの美里直売所』でも販売。
県内で最も多く古墳が造られた「さいたまの飛鳥」
埼玉県には二つの「みさと」がある。一つは県の東南端に位置し、東京都と千葉県に隣接する「三郷市」。車で移動する方々にとっては、交通の要衝である三郷ジャンクションのある地としてなじみ深い存在だろう。もう一つが今回訪れた「美里町」だが、知名度は決して高くない。事実、今回の旅先を私から伝え聞いた拙妻は、三郷市へ行くものと勘違いしていたのだから、何をかいわんやである。
そんな美里町だが、意外にも県内で最も多く古墳が造られた地だと初めて知った。手にした地図を頼りに町内を巡ると、解説板が掲示された古墳群に加えて、小さな盛土にしか見えない起伏までもが古墳だと知り、その密集ぶりに驚かされる。また、国指定史跡の水殿瓦窯(すいでんかわらかま)跡をはじめとする遺跡も数多く、『横関酒造店』の敷地に残る「こぶヶ谷戸(がやと)祭祀遺跡」のわずかな痕跡を目にしたときは、「えっ、これも遺跡とは」と意表を突かれた。町の中央に位置する複合施設の名称が「遺跡の森総合公園」であるのも大いに納得がいく。
現地パンフレットに記された「さいたまの飛鳥」とのキャッチフレーズを目にした際は、「さすがに大げさでは?」と感じたものだが、そんな疑念も一気に吹き飛ぶ充実ぶりである。
丹念に細かくたどっていき出会った、魅力あるスポットや人
古墳や遺跡もさることながら、最も関心があるのは今の町の姿である。最寄り駅である八高線松久(まつひさ)駅前は閑散とした風情で、町内に商店街は見当たらず、スーパーマーケットはわずか1軒のみ。平坦地の多くを宅地より畑が占め、町域南部を傾斜のなだらかな低山が取り囲んでいる。町外からこの地に移り住み、工房を構える『家具屋Azuki』の加藤夫妻が口にした「都会ではないが、かといって極端な田舎でもないのがいい」との言葉がしっくりきた。
決して派手な土地柄ではなくても、丹念に細かくたどっていくと魅力あるスポットや人に出会えるのが徒然旅のだいご味だろう。「本来は国内有数の産地であるブルーベリーの収穫期に当たる夏前後がおすすめの季節なんですけどね」と残念そうに語る美里町農林商工課の飯島美和さんに、あえて春先の地元情報を尋ねたところ、数々のヒントを教わった。おかげで多くの車が行き交う県道沿いからグーグルマップを駆使しても見つけられない穴場まで、町内を幅広く訪ね回ることができ、思いのほか充実した旅となった。
仕上げに、毎年8月15日に町を代表する伝統行事「猪俣の百八燈」が催される堂前山に足を運んでみた。すでに火を焚(た)く塚がこしらえられ、手入れの行き届いた山頂部からは、群馬県の赤城山や榛名(はるな)山を見通せる。眼下に目を移すと、「美しい里」の名が似合うのびやかな風景が広がっていた。
【耳よりTOPIC】盆祭り会場が春はお花見のスポットに
毎年8月15日に催される「猪俣(いのまた)の百八燈(ひゃくはっとう)」は、かつて地域を治めた猪俣一族の霊を慰める盆祭りとして、町民の誰もが知る一大行事。原則として大人が一切関与せず、猪俣地区の子供たちが祭りを取り仕切るのが特色で、400年以上の伝統を誇る。会場となる堂前(どうぜん)山山頂にはソメイヨシノが植えられ、例年3月下旬~4月上旬の開花時期に合わせて多くの花見客が訪れる。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2026年4月号より






