炭の匂いと喧騒(けんそう)がのんべえを店内へ誘(いざな)う『やまと屋』
長さ二間ののれんの奥には、楽しく飲む酔客たち。「広い間口で中の活気が伝わる店にしたかった」と町田出身の店主・平尾慶さん。酒は三冷ホッピー440円に下町ハイボールやホイス各418円まであり、大衆酒場好きの心をつかむ。当日仕入れの豚モツを焼くもつ焼きは、アミ脂を挟んだチレの濃厚味増だれがホイスと合うし、ニンニク醤油が癖になるハラミはキンキンのホッピーと相思相愛!
『やまと屋』店舗詳細
半々合からちびちびやれる左党の天国『蔵家 SAKELABO』
町田郊外の酒販店『リカー・ポート蔵家』が、ペアリングや幅広い酒の味を体感できる立ち飲み店を駅近にオープン。毎週木曜に変わる日本酒10種は、半々合(45㎖)から注文可能。さらに、蔵元から仕入れる酒粕を使う特製酒粕もつ煮込みハーフ253円など小サイズで頼める肴もあり、楽しみ方は多彩。酒によってはあえて生原酒をお燗、大吟醸をロックで提供するなど、まさに酒の実験室!
『蔵家 SAKELABO』店舗詳細
一頭仕入れと生肉にこだわる馬肉酒場の本命『柿島屋』
ルーツは「馬喰(ばくろう)」という、2020年で創業136年の名店。山梨の牧場で脂肪分少なめに育ててもらった馬を仕入れており、生のロースとヒレをさばく馬刺し上1320円はほんのり甘く、口でとろけるほどやわらかい。肉皿(煮込み)550円は甘辛の醤油味で酒肴にぴったり。うめ割やぶどう割各300円など昔ながらのお酒、座って薬味の種類だけを言えば馬刺しが出てくる常連など、随所に老舗の風格を感じさせるのだ。
『柿島屋』店舗詳細
こぢんまりした店に詰まる町田の幸『立ち飲み 町呑屋』
町田産の米で醸した純米酒「尾根桜」300円をはじめ日本酒は15種、ウイスキーはオールドグランダッド400円など約10種も! 「ここは町田酒販協同組合が母体だから酒の質は間違いないよ」と隣で赤ら顔の常連さん。つまみも町田産の里芋の唐揚げや、町田の小林豆腐のがんもが入った、おでんセット各350円など町田応援節が全開。それらを肴に町田の陽気な酔客たちと杯を交わすのが最高に楽しいのだ。
『立ち飲み 町呑屋』店舗詳細
いい味の夫婦とお出汁に心が“ほっ”『風燦』
趣(おもむき)ある一軒家で、渋い吉崎裕さんとチャーミングな芳美さんが切り盛り。「魚とお出汁が主役」(裕さん)という店の真打ち、サワラの唐揚げは皮パリパリのサワラとゴボウの唐揚げに、お出汁をジューッとふりかける。薄口醤油を使った甘みのある出汁と上品な白身の競演に酒が止まらず、次の肴に刺身盛合せを注文。刺身盛り合わせ1人前1000円~って……。「自転車で相模原の市場まで買いに行くんだけど、チャリじゃ大変だろって同情して魚を安くしてくれるんだ(笑)」。
『風燦』店舗詳細
鎌倉街道を北上し、いざ、絶品焼き鳥征伐!『炭火焼鳥 いざ、』
町田駅からバス10分の立地ながら、毎日ほぼ満席という鎌倉街道沿いの繁盛店。「昔は波乗りに夢中だったけど、今は食材探しにハマっちゃって」という中原健さんが発掘する食材は、熊肉から有機野菜、川海苔まで幅広い。特に鶏料理は、天草大王はたたき900円に、青森の桜姫は五目釜めし800円に、日向鶏は焼き鳥にと垂涎(すいぜん)の品書き。さらに入り口脇の駄菓子が無料とあれば千客万来。当分波乗りは無理ですな、ご主人。
『炭火焼鳥 いざ、』店舗詳細
若き日本酒王子による夢の地酒実験室『日本酒ラボ』
酒屋勤めだった水津祐輔さんが、29歳のとき「お客さんの飲んだ反応を、その場で見たくて」と一念発起。3240円で地酒70種飲み放題という、素晴らしき店を開いた。30代の杜氏が頑張る東灘醸造の「鳴海(なるか)」から、十四代で有名な高木顕統プロデュースの「花邑(はなむら)」まで、水津さんが旨いと思った全国の銘酒がずらり。つまみは持ち込み自由なので「この総菜、デパ地下で半額だったの、食べて」などお隣同士で盛り上がれるのも愉快。グラスの単品は70ml330円、100ml440円。
『日本酒ラボ』店舗詳細
褐色の空気と旬の味、町田で希少な正調酒場『初孫』
駅前の喧騒を逃れ、路地の小さな入り口をくぐると電球で褐色に照らされたコの字カウンター。そこに座するは酒の飲み方を知る手練(てだ)れたち。40年余の歴史を誇る老舗酒場は、店名通山形の銘酒「初孫」が主役だ。「先代の親父が実際に蔵を見て、名前と味が気に入ったらしくて」と現店主・高橋英臣さん。合わせる肴は、カウンター上の大皿からチョイス。例えば、秋はキヌカヅキ(里芋)や白神のマイタケ、ハタハタなどで旬を味わいたい。
『初孫』店舗詳細
取材・文=鈴木健太 撮影=丸毛 透、金井塚太郎