山のように具材が盛られる大野菜タンメン。『虎林』[荻窪]

大野菜タンメン900円と餃子400 円。どちらから先に食べようか。

山のように具材が盛られる、その名も大野菜タンメン。野菜は食感を残しながら、町中華らしいほっとする旨味と塩気の効いたスープをたっぷり吸っていて、箸が止まらない。餃子は注文を受けてから一つひとつ包む。寸胴鍋からスープを注いで蒸し焼きにするので、皮まで旨味をまとって艶やかでもっちりだ。肉厚ではないからこそ、主役になりきらないところが良い。店内の色々なメニューに餃子がセットで付いているのも、なるほどなあと思う。それにしても、このタンギョウは安心感のかたまりだ。物腰やわらかな店主の人柄がにじみ出ている。

丁寧に鍋を振るい、丁寧に盛り付ける。店主にとっては当たり前の動きでも、つい見とれてしまう。
手つきのやわらかさが、そのまま餃子に伝わっていくようだ。
赤い椅子が映える年季の入った店内で、夫婦二人で切り盛り。静かに時が流れていく。

『虎林』店舗詳細

住所:東京都杉並区荻窪4-32-8/営業時間:11:30~15:00・18:00~22:30/定休日:日・祝/アクセス:JR中央線・地下鉄丸ノ内線荻窪駅から徒歩3分

ボリューム満点、名物タンメン。『天龍』[亀戸]

タンメン825円は、この価格とは思えないほどの大ボリューム。

自分が知る限り、タンメンの器としては最も大きいと思う。1967年に創業した『天龍』は、2019年3月に一旦(いったん)閉店するも、2020年9月に復活オープンした。作り手こそ変わったが、丼も浅草開化楼の特製麺もレシピも、そして量も当時のままだ。大量の野菜をじっくりと鍋で煮込むため、野菜の味がしみ出して、あっさりながらも滋味深いスープに仕上がっている。餃子も同じく大ぶりで、食べ応え十分。餡はショウガがしっかり効いていて、タンメンと交互にいただけば、最後までテンポよく食べられる。腹いっぱい食べたい時に、もってこいのタンギョウだ。

手作り焼餃子5個入り380円。
多くのメニューは初代から指南を受けてその味を守り、さらに上海料理も新たに加わった。
再オープンしてまだ間もないが、少しずつ常連が戻ってきているという。

『天龍』店舗詳細

住所:東京都江東区亀戸6-56-9/営業時間:11:00~15:00・17:00~24:00(土・日・祝は11:00~24:00)/定休日:無/アクセス:JR総武線・東武亀戸線亀戸駅から徒歩5分

素材の味が生きる、色鮮やかな一杯。『白龍トマト館』[新江古田]

トマトタンメン1080円に使われる野菜は、季節ごとに産地を厳選。玉子餃子1040円の焼き目は、まるでこちらにほほえんでいるようだ。

ひと目見て、目新しいタンメンだなあと思ったが、初代が開業した1957年から名物というから驚きだ。豚バラで出汁を取った澄んだスープに、白くてやわらかい優しい麺が浮かぶ。食べ進めるうちにトマトの酸味、白菜の甘み、セロリの香りがどんどん溶け出していき、くせになるみずみずしさだ。玉子の羽根付き餃子は、ピリッとショウガが効いていて、プレーンな玉子の味ともタンメンとも相性良し。卓上のにんにく醤油は、餃子だけでなくタンメンにも投入してみてほしい。すると薄口で上品だったスープからにんにくの風味が立ち上り、これまたやみつきになる旨さなのだ。

『白龍トマト館』店舗詳細

住所:東京都中野区江原町3-17-1/営業時間:11:30~14:20LO・17:00~21:40LO(店舗に要確認)/定休日:月/アクセス:地下鉄大江戸線新江古田駅から徒歩3分

真摯な情熱が込められた“竹ノ子”。『奇珍樓』[山手]

竹ノ子そば756円。

創業97年。初代から受け継ぐ仕事を愚直に守り続ける真摯な店だ。たとえば乾燥メンマ。干した堅い竹の皮を、こまめな火入れと水替えを繰り返しながら10日かけて戻していく。厚さ約3㎜の皮はふっくらと厚みを持ち、約2㎝に。そこに秘伝のタレで味付けするという、驚異的な手間のかけようなのだ。メンマをもっと食べたい!という客の声から、竹ノ子そばが誕生。そこに極細の自家製麺がたおやかに寄り添う。噛みしめて味わいたい。

スープのダシは国産豚のスジが主体。豚骨、シイタケなども入る。
3代目・黄国栄さん。
10日たってやっとメンマを仕上げる。
手前が戻し始めて3日目の竹の皮。右奥は4日目、左奥が6日目。
レトロな佇まい。長年通うお客に愛される。

『奇珍樓』店舗詳細

住所:神奈川県横浜市中区麦田町2-44/営業時間:11:30~15:00・17:00~21:00/定休日:水・木(月に1回)/アクセス:JR根岸線山手駅から徒歩10分

湖南省出身の初代から継ぐ薬膳。『味芳斎 支店』[御成門]

牛肉麺1500円(平日ランチは1300円)。

「父親が子供の頃食べていた味を再現したいってね」と、店で提供しはじめた日のことを振り返る藤山振東さん。タイプの異なる2種の唐辛子、花椒、八角など約10種の香辛料と30㎏にも及ぶ牛のほほ肉を合わせ、煮込むこと約3時間。一日寝かせて味を落ち着かせて初めて料理に用いられる。ほろりとほどける牛肉からしみだす辛味と旨味。毛穴から噴き出す汗。みずみずしいモヤシは口のほてりを鎮める安らぎの味。混ぜずにとっておこう。

柔らかくジューシーなほほ肉がゴロゴロ入る。
これらの香辛料と紹興酒などを、大量の肉とともに煮込む。
店主の振東さんと、息子の輝丈さん。

『味芳斎 支店』店舗詳細

住所:東京都港区芝大門1-10-1 全国たばこビル1F/営業時間:11:00~15:00・17:00~22:00(土・祝の夜は17:00~21:00)※変更する場合もあり。/定休日:日/アクセス:地下鉄三田線御成門駅から徒歩2分

女性を虜(とりこ)にする“レバタン“。『珍珍軒』[上野]

レバニラ湯麺900円。

鶏ガラや豚骨で取った塩味のスープのタンメンにレバニラ炒めをオンしたレバニラ湯麺。通称、レバタンである。レバーには隠し味に醤油やゴマ油を少々。香ばしくもパワフルな味わいを演出。3代目・河田幸一郎さんも「僕自身、他店で同じメニューを見たことがありません」と断言。キャベツやニンジン、野菜たっぷりで女性客にも人気のメニューだ。

レバーが引き立つよう、塩気はあえて控えめに。自家製ラー油をかけても美味。
野菜はすばやく炒め、シャキシャキに!
モミジや野菜でいい出汁が出る。

『珍珍軒』店舗詳細

住所:東京都台東区上野6-12-2/営業時間:10:00~23:00/定休日:月(祝の場合は翌)/アクセス:JR・私鉄・地下鉄上野駅から徒歩1分

豚骨+卵麺+とろろの一体感。『龍朋』[神楽坂]

とろろラーメン820円。

品書きの「とろろラーメン」の文字に、一瞬で目が止まる。店主 ・松﨑陽子さんによると、かつて青森県出身の3兄弟が同店でアルバイトをしていたのを機に、青森の名物を取り入れようと生み出したとか。スープは、開店当初は澄んだ醤油味だったが、12年目にして突如、豚骨に路線変更。「うまい具合に豚骨ブームにのってお客さんが増えてね。いや、マジで」とご主人は何ともファジー。鶏とレタスを盛る「東京ラーメン」など、自由なアイデアが光る。

豚骨のほか、煮干しからも出汁を取る。とろろのネバリが麺と一体に。
とろろはスープに浮かべて温めてから盛り付ける。

『龍朋』店舗詳細

住所:新宿区矢来町123 第一矢来ビルB1/営業時間:平日11:00~23:00、土11:00~22:00 ※コロナで時短営業中のため20:00まで/定休日:日・月(祝日の場合)/アクセス:地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩1分

プリプリ、新鮮なカキが主役!『中国料理 小花』[東京]

新鮮生牡蠣のスープそば1100円(夜は1760円)。

生カキの水揚げの解禁日に合わせ、毎年10月1日に登場する、新鮮生牡蠣のスープそば。この日を待ちわび、遠方から足を運ぶお客もいる。同店は中国料理店でありながら、江戸前の職人による寿司も楽しめる稀有な店。毎日、河岸で新鮮なネタを買い付けることが、生ガキを惜しみなく用いる名物の発想につながった。カキの衣はサックリ香ばしく、噛めばじゅわりと濃厚な汁気。スープに油気とカキの風味がしみ、得もいわれぬ旨味が混然一体に。

丸鶏で出汁を取る。タピオカ粉、卵白が入る、もっちりとした太麺は食べ応え十分。
クラシックな店内。
サッと油通しをすることで旨味が倍増。

『中国料理 小花』店舗詳細

住所:東京都千代田区丸の内3-3-1 新東京ビル地下1階/営業時間:11:00~14:00・17:00~22:00 ※変更する場合もあり。/定休日:土・日・祝/アクセス:JR・地下鉄東京駅から徒歩1分

珍しい餃子入りらーめん。『嵐屋』[武蔵小金井]

水餃子入りらーめん700円。ワンタン麺はよくあるが、餃子がラーメンに入っているのは珍しい。

店主五十嵐裕司さんが目指すのは、いつものお客がまた来てくれる店。餃子は修業時代に働いていた店の味を引き継いだもので、多くのお客がその小ぶりな餃子をサイドメニューとして注文する。「小さいから水餃子にもぴったり」の餃子はなんとラーメンにもイン。珍しい餃子入りらーめんは、まかない飯をお客の要望でメニュー化したという。濃い味の醤油スープに泳ぐ餃子はモチモチとしていて、食べ応えさらにアップ。ここでしか味わえない!

ちゃーはん550円と最高の相性の餃子は7個で300円とかなりお得。
「多い日は餃子を1000個作ることもある」と店主の五十嵐さん。

『嵐屋』店舗詳細

住所:東京都小金井市本町5-18-13/営業時間:11:30~24:30(土は~22:00)/定休日:日・祝/アクセス:JR中央線武蔵小金井駅から徒歩4分

構成=フラップネクスト 取材・文=下関マグロ、沼由美子、半澤則吉 撮影=本野克佳、オカダタカオ、小野広幸

“す”ラーメン(かけラーメン)と聞くと、スープと麺だけしかないから「味気ない」と感じる人が多いのではないだろうか。今回は、トッピングを極力廃し、本来の味を楽しめる東京近郊の“す”なラーメンにこだわってみた。そこで出合ったのは、意外なほどバラエティ豊かなラーメンたち。美しくもすがすがしい究極の一杯、ぜひ食していただきたい。
高級レストラン風やカフェ風と、オシャレなラーメン屋が増えてきた。さらに、ラーメン店ながら本格的な料理まで食べられてしまう店もある。「……ちょっと高いな」なんて先入観は、口にすればすぐに吹き飛ぶだろう。パワフルな味わいやじんわり染み入る滋味。そんな高価でクリエイティブなラーメンが味わえる都内の4軒をご紹介。一度食べれば、惜しみなく財布の紐がゆるむこと間違いなし!