かさま歴史交流館井筒屋
歴史や観光情報が得られる観光客や市民の交流拠点
門前通りの突き当りに見える3階建ての木造建築は、旅館だった昔から笠間のランドマーク的存在。明治時代中期に建てられた当時の雰囲気を残しながらリノベーション、交流拠点として生まれ変わった。観光情報や、笠間城を中心とした町の歴史を知ることができる。
笠間日動美術館
美術館で初となるさかなクンの展覧会
ヨーロッパ印象派からエコール・ド・パリへと続く巨匠の作品、パレットコレクションなどを数多く展示。7月23日〜9月22日には「さかなクンのギョ苦楽展」を開催。身近な画材で表情豊かな海の仲間たちを描いた作品約80点を展示する。
門前の町なみ探訪
お参りをすませ昭和風情の昔町へ
日本三大稲荷の一つにも数えられ、年間350万人が参拝に訪れ初詣者数茨城一を誇る笠間稲荷神社。その門前を中心に、笠間の町は発展してきた。この一帯は戦災に遭わなかったためか、老舗の料亭や旅館、看板建築など戦前から続く店や建物が多い。震災後に一新された表の門前通りを歩いたら、ぜひ路地裏へ。コールタール塗りのトタン葺き民家、数年前に解散した見番、ほぼ全壊に近い元映画館など発見の連続で探索が非常に楽しい。
佐白山(笠間城跡)
時朝以来600年機能した「続100名城」の山城跡
標高207mの山頂付近に城の遺構があり山城ハイクに絶好。城跡を大胆にめぐる観光道路は1962年の完成。観光ブームに沸いた高度成長期の遺産だ。『忠臣蔵』の浅野家が城主だったこともあり、赤穂転封の57年後に浪士の討ち入りが起きた。ちなみに心霊スポットで有名だが、私的には期待外れだった。
●ハイキングコースは3㎞・所要約60分。茨城県笠間市笠間3613
座頭市の碑
悪党を斬りまくる時代劇、最強キャラは笠間生まれ
1962年にシリーズ化された映画『座頭市』で、勝新太郎が演じた市は笠間生まれの設定。『新座頭市物語 笠間の血まつり』やリメイク版で何度か市内ロケが行われた。記念碑が立つ公園は、富士山の別名がある小高い丘。市内に富士山と呼ばれる山は3座あるが、楽に行けるのはここのみ。
●見学自由。茨城県笠間市笠間616-7笠間つつじ公園内 ☎0296‐72‐9222
坂本九歌碑
今も笠間の人々に愛される九ちゃん
笠間の時報のメロディは12時が『上を向いて歩こう』、17時が『見上げてごらん夜の星を』。その理由は、坂本九(1941 〜1985)の母方の故郷が笠間だった縁で戦時疎開していたから。川崎に帰る小学1年生までの4年間、多感な少年時代を笠間で過ごした。歌手として成功後「第二の故郷」笠間に、さまざまな形で恩返しをした。
●見学自由。茨城県笠間市笠間616-7
柏屋
インスタ映え!な特大油揚げが人気
「常陸秋そば」を店頭で打つ姿が目を引く、明治中頃創業のそば処。稲荷神社の門前だけに「稲荷そば」温・冷各880円が人気。ふっくらなお揚げはほどよい肉厚で甘め。「そば寿司」5個700円、「菜の花いなり寿司」5個650円はテイクアウトあり。古い掛け時計や木の食器棚、階段などレトロな調度にも癒やされる。
つたや
笠間名物「そばいなり」を考案した老舗のそば処
明治8年(1875)創業、5代にわたる技術と伝統を生かして「常陸秋そば」をヤマイモでつないで打つ。やや細めで上品な感じのそばは、しっかりとコシがあって喉越しがいい。手揚げした油揚げにタレを染み込ませ、そばを詰め込んだ名物の「そばいなり」は、新そばを使うため9月下旬〜5月の季節限定。
八百屋カフェ Okai
レトロな町家でいただく野菜たっぷりのランチ
八百屋が経営するカフェ。常陸牛入りれんこんハンバーグ、つくば鶏の照り焼きなど地場の食材も味わえるランチメニューは6種各1300円(ドリンク付き+200円)。生野菜の新鮮さと多さは八百屋直営ならではだ。窓際のカウンター席から門前通りを見下ろして、ゆったりとランチを。
笠間の家
自然光の利用が巧みなくつろげる名建築
陶芸家の故・里中英人のアトリエ兼住居を利用したギャラリー&カフェ。著名な建築家、伊東豊雄氏設計の建物は一見の価値あり。ドリンク500円。8月に笠間の祭りを紹介する企画展『登り窯まつり展』(18 〜30日)がある(変更の可能性あり)。
回廊ギャラリー 門
自然の光や風が、器を生き生きさせるアート空間
アートギャラリーが点在する「笠間ギャラリーロード」沿いにある。モダンな蔵と屋敷をイメージした2つの建物を結ぶ片側25mの回廊に、笠間焼の作品を中心に常時80人ほどの作家の多彩な作品が並ぶ。回廊の奥側は個展のギャラリースペースで、2週間ごとに替わる展示が楽しみ。
石切山脈
6000万年前に誕生した御影石の壮大な屏風
東西10㎞、南北5㎞にわたり、深さは1500mに達するという稲田石の岩盤。稲田石は建材や墓石に多用され、東京駅丸の内広場、国会議事堂、最高裁判所、日本橋など都内でもよく目にする身近な石材。長石、石英、黒雲母の3種の鉱物が結晶した花崗岩の一種で、長石と石英が多く含まれ澄んだ石肌と光沢が美しい。採石場は特撮モノのロケなどに昔からよく使われ、座頭市映画では勝新が大暴れした。
楞厳寺
山あいの禅刹で拝む鎌倉期の千手観音像
約380年の長きにわたって笠間一帯を治めた常陸笠間氏の菩提寺。祖の笠間時朝が寄進した笠間六体仏のうち、建長4年(1252)制作の千手観音立像を安置する。また、切妻造りの山門は室町中期の建立で禅宗様式の四脚門。仏像と山門はともに国の重要文化財だ。
唐桶山
マイク片手に熱唱ハイキング
北関東道を走るたびに気になるトンネル。案の定、真上は唐桶山。標高232.1mのヤブ山で、トンネル西側から山の真南に回り込んだ場所が登り口らしい。だが四等三角点がある山頂からは多方向に踏み跡が。ヤブを突いて自由に登る人が多いようだ。近くには日本最低標高の三峰山(標高177.8m)、前山、富士山など手ごわいヤブ山も居並ぶ。
●茨城県笠間市本戸
合気神社
「合気道の産屋」と称される聖地
昭和18年(1943)に建立された日本唯一の合気道の神社。「和の武道」といわれる合気道は、開祖の植芝盛平翁がこの地で修行を重ね、日本古来の武術を発展させ生み出したもの。向かいに道場があり、世界中から人々が集まり修行に励む。ちなみに翁は5月号ツウ旅で取りあげた和歌山県田辺市の出身で、彼の地にも銅像がある。
●参拝自由。茨城県笠間市吉岡26
人車軌道
かつて笠間を走った3カ所のトロッコ軌道
笠間駅と笠間稲荷神社近くまで延長1.4㎞を結んだ笠間人車軌道は観光客を運んだ。大正4年(1915)に開通、途中で動力化され昭和5年(1930)まで存続した。岩間の軌道は難台山の丁場と常磐線岩間駅を結んだ石の運搬用。明治45年(1912)ごろ開通、昭和初期の閉山に伴い廃止された。石切山脈の石を稲田駅に運んだ軌道は探索が容易。1965年まで使われたためか痕跡がほぼ残る。
●笠間1756(復元車両展示)、稲田、岩間駅〜難台山城跡付近だった裏山の散策も楽しい。
筑波海軍航空隊記念館
司令部庁舎が現存する希少な旧軍航空隊史跡
多くの遺構が残る基地跡。開隊10年ほどは「赤とんぼ」こと九三式中間練習機が舞う練習基地だったが、戦争末期に実用部隊が配備され特攻隊も編制された。病院管理棟として長く使われた旧司令部庁舎は、映画『永遠の0』のロケ地になったのを機にクラウドファンディングにより取り壊しを免れ、保存公開の道が開けた。
笠間・吾国愛宕ハイキングコース
望外な涼しさ、意外な急坂、低山縦走の「笠間アルプス」
石岡との市境をたどる約17㎞の縦走コース。最高標高こそ553mだが、累計標高差が1100m以上あるので侮ってはいけない。吾国山、難台山、愛宕山の3大ピークの間に小山がいくつかあり、それぞれでキツめのアップダウンが待っている。水場もない。とはいえ道はとても歩きやすく、途中数箇所で里に下りられるため気分は楽。さまざまなルートが設定でき、トレランにもいい。
●所要約6時間。JR水戸線福原駅・JR常磐線岩間駅が起終点。
北山公園
ローラー滑り台が人気な水と緑と花のオアシス
自然の地形を活かしたローラー滑り台は、強烈な下半身マッサージが不要であればマットを管理棟で借りたい。格安なオートキャンプ場(要予約)を併設しており、県央観光のベースにもいい。泊まる際は近くにある日本最古の酒蔵『須藤本家』の酒をぜひ。
取材・文・撮影=飯田則夫
2020年8月号より