東急+JR+京急の一大ターミナル

東急池上線と多摩川線のくし形終着駅ホーム。
東急池上線と多摩川線のくし形終着駅ホーム。

JR蒲田駅の1日平均乗降客数は144,934人(2019年)、東日本管内で21位、ちなみに20位恵比寿、22位吉祥寺に挟まれた21位である。大ターミナルと言っていい数字だが、恵比寿や吉祥寺に比べると、ずいぶんあか抜けない街でもある。

蒲田の象徴と言えば、東急の駅ビル「東急プラザ」にある「屋上かまたえん」の観覧車がまず挙げられる。このレトロで味わい深い風景は、この街が昭和の時代から発展を遂げたターミナル都市であることを物語っている。

屋上かまたえん。ランチタイムは大人気。
屋上かまたえん。ランチタイムは大人気。

蒲田が位置するのは東京の最南の大田区、そのなかでも最南端に近い。街の中心部を呑川という黒い川が流れ、多摩川を渡れば神奈川県。ここから川崎、横浜に広がる京浜工業地帯にあって、どちらかというと中小の町工場が多いエリアである。そのせいか労働者が羽を休めるような安くて旨い居酒屋、黒い湯が特徴的な温泉銭湯が隆盛を誇った。つまり蒲田は高度経済成長を陰で支えた労働者のオアシスだったである。

商店街と横丁がボーダーレス

アーケード商店街「サンライズモール蒲田」。
アーケード商店街「サンライズモール蒲田」。

これは城南エリア全体の特徴でもあるが、商店街と飲み屋の境界が曖昧である。

蒲田駅を西口を下りて、まず目につくのは「サンライズモール」と「サンロード」という名のアーケード商店街。昼間はおばちゃんたちが行き交う庶民的な風景だが、いわゆるチェーン店は比較的少なく、大田区きっての老舗家具店『亀屋百貨店』やワークマンのローカル版『KKワークショップ』など地元ローカル感が色濃い素敵な商店街だ。

おもしろいのは、商店街と並行して飲み屋街が広がっていること。まず目立つのは駅西口の東急蒲田駅前通り、通称「バーボンロード」だ。名前に反して洋酒の店は少なく、大衆酒場や小料理屋など庶民的な酒場が鈴なりのように連なっている。北側にある「クロス通り」も飲み屋街。小さな居酒屋やスナックが散見されるが、その空気はどこか乾いた肌触りだ。

反対の駅東口も、もちろん繁華街。アロマスクエア、太田区民ホールアプリコ(この辺りにあつて蒲田撮影所があった)などの周辺に無数の酒場、スナック、風俗店が連なるが、駅前は西口以上にごちゃっとした印象を受ける。

そのごちゃっとした繁華街の先に出現するのが、京急蒲田駅につながるアーケード商店街「あすと」。いろんなタイプの店が混然一体となったアーケード街で、商店街なのか飲み屋横丁なのか判然としないのが楽しい。京急蒲田駅は2012年に全面リニューアルしたが、以前は昭和風情ふんぷんの木造駅舎で、今も駅周辺の路地裏にはレトロな風情が漂っている。

京急蒲田駅へと続く「あすと」の入り口。
京急蒲田駅へと続く「あすと」の入り口。
東京随一の酒場密集地である蒲田。西口バーボンロードや 東口中央通りなどに酒場が連なる23区の最南端の大人の街。今回は、新定番となりつつある新進気鋭の優良店から、リーズナブルに楽しめる昔から続く、古き良き老舗店まで数多くの店舗をご紹介。心地よく夜が更けてくる蒲田の街で、ほろ酔い行進曲を謳歌してみてはいかが?
蒲田のそば屋を食べ歩くと、日本酒に力を入れている店が多いことに気づく。さすがに飲んべえタウンといわれるだけはある、と感心させられる。どの店もそばへのこだわりも強く、酒・肴・そばの三位一体で、そば好き飲んべえを魅了する。

居酒屋、餃子、とんかつ。蒲田グルメは高レベル

『まるやま食堂』のまるとくロースかつ定食。
『まるやま食堂』のまるとくロースかつ定食。

蒲田で飲食と言えばまず居酒屋。銀座に2店舗ある『三州屋』のルーツが実はここ蒲田だったときいて驚く人も多かろう。そのほか、毎朝芝浦の食肉店で仕入れるモツ焼きのいとや、ビル一棟丸ごと大衆酒場の鳥万などは蒲田を代表する居酒屋。立ち飲みならバーボンロードでひときわ目立つやきとん 豚番長、駅東口の『さしみや五坪』をはじめ人気目白押しだが、なかなか入れないのが惜しい。酒飲みは早朝6時30分から飲める信濃路や、10時開店、オープンエアで飲める定食屋壱番隊を要チェックだ。

蒲田名物としてすっかりおなじみとなった羽根つき餃子。その元祖は、八木功さんが昭和58年開業した你好と言われる。間もなく功さんの兄弟がそれぞれ歓迎金春『大連』を、甥っ子が春香園を開店。代替わりした店も多いが、その多くは支店やフランチャイズを展開、いまや八木ファミリーの店は城南地区の餃子の代名詞となった。

もう一つ蒲田で見逃せないのがとんかつである。とんかつ御三家とか四天王とか称され、グルメ界を席巻しているが、その中心にあるのが『丸一』『檍(あおき)』両店。『檍』の主人丸山正一さんが前にやっていて現在息子さんが継いだのがまるやま食堂で、やはりとんかつが名物。そのほかさんきちすみっこ、最近できたばかりの雑色『七十朗』も注目だ。

その他、純喫茶、そば、ラーメン、カレーもレベルが高いが、ここでは蒲田のソウルフードとして60年にわたって親しまれているインディアンを紹介しておきたい。黒いカレーと透き通ったスープの中華そば。二つとも食べるの?と驚くかもしれないが、客の8割はセット(定食)で注文するというのだから素晴らしい。

蒲田の名物といわれる羽根付き焼き餃子。その生みの親といわれるのが『你好本店』の創業者・八木功さんだ。『你好 恵馨閣(にいはお けいしんかく)』は、八木さんの娘、『你好本店』とともに蒲田の餃子御三家に数えられる『歓迎(ホァンヨン)本店』は妹、『金春(こんぱる)本館』は弟、そして、『中国料理 春香園(しゅんこうえん)』は甥っ子にあたる。八木ファミリーが蒲田の餃子を盛り上げているのだ。
とんかつ好きの人には言わずと知れたとんかつの激戦区・蒲田。老舗名店、人気行列店が軒を連ね、とんかつがうまい店は枚挙にいとまがないほど。その中から人気の6店をピックアップ。とんかつのイメージが変わるような極上の味わいをご堪能あれ!
ビッグタウンではあるけれど、街並みにどこか懐かしさが漂う蒲田。庶民的な街だから、スタバより純喫茶のほうが似合いそう。歴史のある店も多いので、自慢のコーヒーやフードメニューを楽しみながらゆったりとしたひと時を過ごしたい。

銭湯値段で楽しむ天然温泉の贅沢

全浴槽が温泉の『はすぬま温泉』。
全浴槽が温泉の『はすぬま温泉』。

黒湯の温泉も外せない。というか、品川区南部からこの辺りの銭湯は基本的に天然温泉であり、大半は黒湯。銭湯である以上東京都銭湯組合の取り決め通り400円台で入れる。あげて行けばきりがないが、『蒲田温泉は10時開店、宴会場の人気メニューは釜飯と大田汐焼きそばという庶民の味方。改正湯は昭和4年創業の老舗、壁面の金魚の泳ぐ大水槽が心和ませる。2017年リニューアルオープンしたはすぬま温泉は、ステンドグラスも美しいネオ大正ロマンにあふれた新感覚デザイン。この辺りの温泉銭湯エリアを「大田温泉郷」と呼ぶ人も多い。確かに人も羨むような桃源郷である。

黒湯温泉で有名な蒲田には数多くの銭湯がひしめき合い、巷では「大田温泉郷」という呼び名もあるほど。昔ながらの銭湯から新しい形の銭湯まで、蒲田の銭湯12軒を一挙ご紹介。

蒲田で見かけるのはこんな人

渋谷や恵比寿、五反田あたりから吹いてくる城南のファッションセンスは、中目黒や自由が丘、大井町や大森、戸越や旗の台を経由し、それぞれに進化や退化を遂げながら蒲田に吹き溜まりカオスと化す、そんな気がする。

昼間の商店街の主役はほぼ女性と言っていい。ヤングからおばちゃんまでいわゆる主婦層が中心だ。が、そのファッションセンスはよく見ると独特。いわゆる流行を追うというよりは、我流、いやオリジナリティを追求するスタイルが目立つ。ユニクロ、無印って何のこと? 目立たなきゃ意味ないじゃん的な出で立ちだ。しかしちゃんと似合っているのだからすごい。さすがは『ユザワヤ』の街。ビーズで決めた女性など、もしかしたら自作かもしれない。

飲み屋街にいるのは、まあ普通の人種。明るいうちは『KKワークショップ』系のブルーカラーが目立ち、暗くなるとサラリーマンの天下。そんなに他所(よそ)と変わっちゃいないけれど、時たまやたら決め決めな紳士の姿を見かける。しかし、これまた独特の色彩センス……カオスの街は目の保養になります。

いつか呑川に帰る日

今にも動き出しそうな「タイヤ公園」の怪獣たち。
今にも動き出しそうな「タイヤ公園」の怪獣たち。

ここまで繁華街蒲田について書き連ねてきたが、実は蒲田駅は広大な住宅地の入り口でもある。駅を起点にちょっとでも歩けばすぐに普通の住宅が広がっていることに気づくはずだ。東急線や大森方面に行けば山の手ムード、京急沿線の雑色や六郷土手方面には下町情緒が色濃く漂う。京浜東北線から見える西六郷公園、通称「タイヤ公園」も必見だ。夕方、近所の団地やマンションの子供たちが集う風景は、ノスタルジックを通り越して、『ウルトラQ』のパラレルワールド感さえ漂っている。

ある飲み屋で出会った常連客(50代・男)に聞いた話。小学生時代の彼には親友がいた。親友は勉強ができ努力家で正義感が強く、城南地区では珍しい中高一貫校に進学。有名大学を出てキャリア官僚になった。東京西部に引っ越してから親交は途絶えたが、省庁でも順風満帆の出世街道を進んでいると聞いていた。が、ある日突然政治家がらみのスキャンダルに巻き込まれ新聞に顔が載り同級生たちを驚かせた。あっという間に失脚し、詰め腹を切るように辞職、そして人知れず民間法人に下ったと聞いた。「何をしたかどうかなんてどうでもいいから、帰ってきたらと思うんです」と常連客は言った。帰ってきたとして、どうするんです?「さあ。黙って二人で橋の上から呑川を見るんじゃないですか。昔みたいに」

どんなに時代が変わっても、この街には城南の風や水が吹き溜まりっている。蒲田っ子はいつかそこに帰るのだろう。

 

取材・文=武田憲人 文責=さんたつ/散歩の達人編集部 イラスト=さとうみゆき

JR中央線の中央特快が停車し、総武線の始発・終点でもある「三鷹」は、吉祥寺から西へひと駅。ビル群が遠ざかり空がパーンと広がる、のびやかな東京都下の玄関だ。緑も豊かで空気がうまいと感じるが、断じてローカルではない。都会のおもしろみと身近な自然がバランス良く混ざり合って、華やかでも地味でもない心地よい独自文化をゆらゆらさせている。
千住は広い。日光道中の千住宿は、北千住(足立区)から南千住(荒川区)まで、全長4㎞にも及んだというから驚きだ。今回取り上げる「北千住」はその北3分の2ぐらい。隅田川と荒川放水路に挟まれた日光街道(国道4号線)の東西に広がる楕円形のエリアである。JR北千住駅の乗降客数は東日本管内で9位、なんと上野や秋葉原より上。そしてSUUMOが選ぶ「穴場な街ランキング」では4年連続で1位に選出。つまり今もっとも活気のある下町なのである。
浅草寺とその参道である仲見世商店街を中心として東西に広がる浅草。世界的にも有名な観光地であり、一時は日本人よりも海外旅行者の方が目立っていたが、コロナ以後は江戸情緒あふれる“娯楽の殿堂”の風情が復活している。いわゆる下町の代表的繁華街であって浅草寺、雷門、仲見世通り、浅草サンバカーニバルなどの観光地的なイメージや、ホッピー通り、初音小路のような昼間から飲める飲んべえの町としてとらえている人も多いだろう。また、和・洋問わず高級・庶民派ともに食の名店も集中するエリアだ。
水辺の下町でおすすめはどこ?と聞かれたら、私は深川と答える。特に清澄白河から森下にかけて辺りが最高だ。それはここが“水の都”だからなのだが、今はコーヒーの街としての方が名が売れている。だから、まずコーヒーの話から始めましょう。
東京23区のど真ん中に位置し、靖国通りと白山通りが交わる神保町交差点を中心に広がる街、千代田区神田神保町。  この街の特徴をひと言でいうと、なんといっても「本の街」ということになる。  古書店や新刊書店が多くあつまり、その規模は世界一とも言われている。だがそれだけではない。純喫茶、カレー、学生街、スポーツ用品街、中華街などなど、歩くほどに様々な顔が垣間見えるのが面白い。ある意味、東京で一番散歩が楽しい街ではないかと思うほどだ。  
JR西荻窪駅を中心として北は善福寺川、南は五日市街道あたりまで広がるこの街。「西荻窪」という地名は1970年に廃止され現存しないが、“西荻(ニシオギ)”という街の存在感はむしろ年々増している。吉祥寺駅と荻窪駅の間に位置し、「松庵」など高級住宅地を擁するせいで、中央線の中では比較的上品なイメージで語られることも多い。しかし、ひとたびこのエリアを歩けば、上品などころかかなり個性的な地だということが分かるだろう。店主がそれぞれの哲学を貫く店と、それらを愛してやまない住民が集まる、けっこう熱くてヘンな街なのだ。
いまや東京を代表する散歩スポットととなったこのエリア。江戸時代からの寺町および別荘地と庶民的な商店街を抱える「谷中」、夏目漱石や森鴎外、古今亭志ん生など文人墨客が多く住んだ住宅地「千駄木」、根津神社の門前町として栄え一時は遊郭もあった「根津」。3つの街の頭文字をとって通称「谷根千」。わずか1.5キロ正方ぐらいの面積に驚くほど多彩な風景がぎゅっと詰まった、まさに奇跡の街なのである。
東京最北端の繁華街として栄える赤羽。その中心部にあるJR赤羽駅は、1日10万人近い乗降者数を誇る要衝駅として、街のにぎわいを支える。 駅の東口には昔ながらの横丁や商店街がドシンと構え、昼間から酔ったオヤジが管を巻いていたり、威勢のいいお母さんたちが井戸端会議に花を咲かせていたり。かと思えば女子に受けそうなバーやカフェもある。駅の西側にはショッピングモールやスーパーマーケットが並び、学生や子育て世代からも人気のエリアだ。
高円寺は、キャラの濃い中央線沿線のなかでもひときわサイケで芳(こう)ばしい街だ。杉並区の北東に位置し、JR高円寺駅から、北は早稲田通り、南は青梅街道までがメインのエリア。中野と阿佐ケ谷に挟まれた東京屈指のサブカルタウンであり、“中央線カルチャー”の代表格とされることも多い。この街を語るときに欠かせないキーワードといえば、ロック、酒、古着、インド……挙げ始めればきりがない。しかし、色とりどりのカオスな中にも、暑苦しい寛容さというか、年季の入った青臭さのようなものが共通している。