家族の笑顔と新鮮なモツが最高の酒肴『もつ焼 大阪屋』
ネオン煌(きら)めく南銀座から逃れ、暖簾をくぐると2代目女将・赤坂治子さんの「いらっしゃい」という温かい声。名物のやきとんを焼くのは息子の架月(かづき)さんで「大宮の食肉市場で2年間働いたのでモツの扱いは自信があります」。薄膜を丁寧にはがし軽く包丁でたたいたカシラはジューシーで、シロは大腸を使っており脂プルプル。「5歳の頃から遊びに来てたこの店を潰したくなくて継ぎました」という3代目の話を聞くと、酔いがさらに深まるのだ。
『もつ焼 大阪屋』店舗詳細
並ぶ短冊に心躍る酒飲みの竜宮城『ろばた焼 北海』
短冊メニューが店内をぐるりと囲み、カウンターの氷には鮮魚や貝が彩りよく並ぶ。カワハギやアジが泳ぐ水槽の前では、ねじり鉢巻きの男衆が手際よく魚をさばいており、この風景だけで気分が高揚!「代表と私で毎日大宮市場に仕入れに行ってます。旨味も水分も抜けるから炉端焼きを含め冷凍ものは使いません」と店長の浅野裕史さん。確かに生にしん焼きは身がふっくら、キンメの刺し身は脂ノリノリ。「冬はズワイや毛ガニも登場します!」。
『ろばた焼 北海』店舗詳細
日本酒党笑顔のほぼ全酒純米以上!『角打ち 酒屋の隣』
3代続く酒屋『石丸酒店』直営のため、全国の銘酒を良心価格で味わえる。「流行りや知名度に関係なく、店主の石丸と私がうまいと思った食中酒向けの地酒を中心に置いてます」と料理長の伊藤浩靖さん。例えば能登の白菊特純450円は大宮市場から仕入れる白身魚の刺し身の品のある味をひきたて、神亀手造り純米酒400円を燗で飲めば塩牛スジ大根500円の旨味が膨らむ。週1~ 2回日本酒の品ぞろえが変わるので、左党は足しげく通うべし。
『角打ち 酒屋の隣』店舗詳細
知られざるラム酒と出合う、味わう『Bar R』
開店は2016年3月。揃えるラム酒は200種を超え、さらに毎月必ず新しい種類をラインナップしている。マスターの柴田博美さんは、「多種多様な文化の中で造られているため柔軟性があって自由度が高く、まだまだ知られていない銘柄があります」と、その魅力を語る。冬の一杯目でトライしたいのが、ホットバダードラム。シナモンやクローブなどのスパイスに蜂蜜、バター入り。ダークラムを使った深い味わいのホットカクテルだ。
『Bar R』店舗詳細
県産のヨーロッパ野菜をカクテルで『The Bar Sazerac』
マスターの山下泰裕さんは、大宮のオーセンティックバーや都内のミクソロジーカクテルのバーで経験を積み、2018年2月にこのバーを開いた。アルゼンチンタンゴやクラシックの流れる重厚感のある店内で提供するのは、「ここでしか飲めないカクテル」。たとえば、さいたまヨーロッパ野菜研究会の珍しい国産野菜をカクテルで提供。ジンのラインナップにも力を入れ、国内外産100種を揃える。
『The Bar Sazerac』店舗詳細
大宮の酒場と言えば、この店抜きには語れない『いづみや本店』
もとは定食屋として開業したため、開店は朝の10時。高く抜けのよい天井の周囲に、ぐるりと設えられた採光窓から日の光が差し込み、その光の向こうには壁一面に圧巻の手書きメニュー短冊。まだ日の高いうちからこの空間で、端正な佇まいの肉豆腐をつまみに、梅割をちびちびとやる時間には、他に替えがたい喜びがある。「長いお客さんとは、みんな友達みたいになっちゃって」と言って楽しそうに働く店員さん。大宮を代表する大衆酒場は、決して気取らず、しかしきちんと店の味わいを守り続ける、この街の奇跡そのものだ。
『いづみや本店』店舗詳細
大迫力のマグロの頭に仰天!『いろは三世』
暖簾をくぐると奥のカウンターの上に、マグロの頭がドンと置かれているのが目に入る。これを指さし、「その刺し身は頭のこの部分ね」を説明してくれるのは店主・新井國広さん。顎あごや頬など、同じ頭でも部位によって味が変わるという。毎朝仕入れるマグロの頭の刺し身は脂がのっていて、酒が進む。お店は1946年の創業で、新井さんが3代目ということで「三世」なのだそう。リーゼントがキマった名物店長だ。
『いろは三世』店舗詳細
おでんを肴に全国のレアな日本酒を『おでんと魚菜 基』
埼玉県産野菜をはじめ、この店のおでん種は個性豊か。利尻昆布、トビウオ、魚のアラでとる出汁は、京風の上品で控えめな味付け。約20銘柄がそろう日本酒は、全国各地から厳選。随時入れ替わるので、訪れるごとにおすすめを聞いてみたい。おでんと並んで店の二枚看板が刺し身。大間のマグロ、高知のシマアジなど、各地の旬が並ぶ。冬場には、高知や九州産のクエのしゃぶしゃぶも登場する。
『おでんと魚菜 基』店舗詳細
地酒愛から生まれたほぼ全蔵飲み放題『酒蔵 栄楽』
創業60年の居酒屋で1年前に始めたのは、埼玉県内34蔵の酒の飲み放題(2000円)。ほぼ全蔵網羅するのは現在こちらだけらしい。「数年前に仙台で地元の人の通う酒場に行ったら、全部宮城県の酒だったので衝撃を受け、コレだ! と。埼玉の人は地方の酒は知ってても地酒を知らない人が多くて残念だと思っていたんです」と30代の店主・安田大輔さん。飲み放題は先入観なしで気軽に飲めるようにと考えてのこと。さらに飲んだ酒を忘れないよう全種類のラベルのコースター(しかもQRコード付き)やスタンプカードも自作する。料理は刺し身に焼き物、炒め物に煮物と和食全般。串天ぷらと〆鯖の新旧名物はぜひお供に。
『酒蔵 栄楽』店舗詳細
取材・文=高木健太、下里康子、平野貴大、光松 瞳、本田直子、パリッコ、沼 由美子、鈴木健太 、風来堂 撮影=加藤昌人、オカダタカオ、井上洋平、井原淳一、金井塚太郎、本野克佳、門馬央典