うりんぼう
埼玉地酒に特化した店のパイオニア!
うっかりすると見逃しそうな入り口だが、その先を進めば、靴を脱いで上がるくつろぎの空間が待っている。2005年の開店時から、アルコールは生ビール以外、全て埼玉の酒。現在は13ほどの蔵元から直接仕入れ、定番の4本と月替りの地酒を合わせ、ぬる燗に合うものを中心に、常時10本以上が揃う。「埼玉の地酒だけだし、ぬる燗の店だし、当初は相当変わった店と思われたでしょうね」と店主の佐藤紀子さん。ぬる燗は酒の味を引き出し、料理の味も引き立てるよさがある。こと埼玉の酒は「冷、燗両方いけて、料理に合う」のが魅力という。おつまみの食材も、調味料から野菜、米、卵まで県産にこだわる。飲みも食いも埼玉ずくめだ。
『うりんぼう』店舗詳細
角打ち 酒屋の隣
1世紀超えの蔵で味わう厳選地酒と肴
格子戸を引くと、むき出しの天井に、足元は土間。1世紀超えの古蔵を活かしたこの角打ちは、創業100年以上の老舗酒屋『石丸酒店』が始めた。取り扱う酒は店主・石丸弁二郎さんが「自分が飲んでおいしいもの」を前提に厳選した独特なラインナップで、県内では神亀酒造をはじめ5蔵から仕入れる。「やっぱり地産地消というか、地酒を応援したいよね」。1杯の量は、冷酒でグラスに70ml、燗酒はぐい飲みで90ml。控えめな量なのでさまざまな酒を飲み比べられる。特筆すべきはつまみの質。日本酒に合わせた魚介料理が主で、板前さんが毎朝市場で目利きし調理。一手間かけた品々は、角打ちの域を超えている
『角打ち 酒屋の隣』店舗詳細
酒蔵 栄楽
地酒愛から生まれた ほぼ全蔵飲み放題
戦後間もないころに創業した居酒屋で最近始めたのは、埼玉県内34蔵の酒の飲み放題(2000円)。ほぼ全蔵網羅するのは現在こちらだけらしい。「数年前に仙台で地元の人の通う酒場に行ったら、全部宮城県の酒だったので衝撃を受け、コレだ!と。埼玉の人は地方の酒は知ってても地酒を知らない人が多くて残念だと思っていたんです」と30代の店主・安田大輔さん。飲み放題は先入観なしで気軽に飲めるようにと考えてのこと。さらに飲んだ酒を忘れないよう全種類のラベルのコースター(しかもQRコード付き)やスタンプカードも自作する。料理は刺し身に焼き物、炒め物に煮物と和食全般。串天ぷらと〆鯖の新旧名物はぜひお供に。
『酒蔵 栄楽』店舗詳細
米や じゅんの助
2つのいい米を味わえる喜び
和食一筋の料理人・本田淳さんが2015年に開店。店名は日本酒の“米”とご飯の“米”2つの米を表している。酒は有名酒をあえて置かず、好みと感覚で選んだ日本各地の銘柄が並ぶが、メニューの筆頭が埼玉の酒なのはうれしい。「地酒だし、頑張ってもらいたいから。ここ越谷は東京から帰ってくる街。埼玉のものでなければ都内には何でもありますしね」と、埼玉の酒に力を入れ、現在5、6蔵の酒を常時用意する。ちなみに燗なら「神亀」甘口や「九重桜」熟成8年純米原酒がおすすめ。確かな腕を感じる繊細な料理で杯が進んだら、締めもお忘れなく。土鍋炊きの吉川産有機コシヒカリは噛むほどに味わい深く、ため息ものだ。
『米や じゅんの助』店舗詳細
取材・文=下里康子 撮影=加藤昌人