【埼玉の地酒基礎知識】
酒造りの起源は約400年前。灘などからの下り酒が飲まれて いた江戸のための新たな酒の供給源として、平野で米どころの埼玉県に酒蔵が造られた。面白いのは蔵元の出身。中山道から来た近江商人か、酒大国の越後人か、地主と、大きく3系統に分かれる。酒蔵が集中するのは荒川、利根川流域。比較的軟水で口当たりのいい荒川水系か利根川水系の伏流水を仕込み水に使う。実は県産の酒米もあり、その名も2004年に開発された「さけ武蔵」 。熊谷周辺や川越、旧大利根町で主に栽培される。また、平成17年には埼玉県酒造組合による「彩の国酒造り学校」も開校。ちなみに現在35蔵を数えるが、ピークは昭和38年の78蔵。

うりんぼう

埼玉地酒に特化した店のパイオニア!

常時ある「天覧山」「寒梅」(これは新酒)、「菊泉」「直実」「釜屋 生酛仕込」1杯120mlで400円〜(燗は150mlで+50円)。ねぎ塩炒め450円、おでん3点盛り500円。

うっかりすると見逃しそうな入り口だが、その先を進めば、靴を脱いで上がるくつろぎの空間が待っている。2005年の開店時から、アルコールは生ビール以外、全て埼玉の酒。現在は13ほどの蔵元から直接仕入れ、定番の4本と月替りの地酒を合わせ、ぬる燗に合うものを中心に、常時10本以上が揃う。「埼玉の地酒だけだし、ぬる燗の店だし、当初は相当変わった店と思われたでしょうね」と店主の佐藤紀子さん。ぬる燗は酒の味を引き出し、料理の味も引き立てるよさがある。こと埼玉の酒は「冷、燗両方いけて、料理に合う」のが魅力という。おつまみの食材も、調味料から野菜、米、卵まで県産にこだわる。飲みも食いも埼玉ずくめだ。

「埼玉の地酒は食中酒にちょうどいいの」唎酒師の資格も持つ佐藤紀子さん。
膝や腰に優しい籐製の丸椅子も。
三角屋根の入り口と杉玉が目印。

『うりんぼう』店舗詳細

住所:埼玉県さいたま市浦和区高砂1-5-9 2F/営業時間:17:00~22:00/定休日:日・祝・第2~5土/アクセス:JR各線浦和駅から徒歩2分

角打ち 酒屋の隣

1世紀超えの蔵で味わう厳選地酒と肴

「飲み手の感性で選んでみてください」店主の石丸弁二郎さん。

格子戸を引くと、むき出しの天井に、足元は土間。1世紀超えの古蔵を活かしたこの角打ちは、創業100年以上の老舗酒屋『石丸酒店』が始めた。取り扱う酒は店主・石丸弁二郎さんが「自分が飲んでおいしいもの」を前提に厳選した独特なラインナップで、県内では神亀酒造をはじめ5蔵から仕入れる。「やっぱり地産地消というか、地酒を応援したいよね」。1杯の量は、冷酒でグラスに70ml、燗酒はぐい飲みで90ml。控えめな量なのでさまざまな酒を飲み比べられる。特筆すべきはつまみの質。日本酒に合わせた魚介料理が主で、板前さんが毎朝市場で目利きし調理。一手間かけた品々は、角打ちの域を超えている

2階は4〜10名の予約席。
店は酒屋の左隣に。
「九重桜」、「花陽浴」は350円、「鏡山」400円。他に「神亀」のビンテージ熟成生原酒もあり。下仁田葱と鶏団子の小鍋、タラ白子ポン酢500円。
会計は前金払い。
お燗は錫のチロリで。

『角打ち 酒屋の隣』店舗詳細

住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-403/営業時間:17:00~21:30LO/定休日:日・月・祝/アクセス:JR・私鉄大宮駅から徒歩7分

酒蔵 栄楽

地酒愛から生まれた ほぼ全蔵飲み放題

「世界鷹」、「豊明」、「藍の郷」各1合750円。魚介や野菜で25種ある串天ぷら1本150円。

戦後間もないころに創業した居酒屋で最近始めたのは、埼玉県内34蔵の酒の飲み放題(2000円)。ほぼ全蔵網羅するのは現在こちらだけらしい。「数年前に仙台で地元の人の通う酒場に行ったら、全部宮城県の酒だったので衝撃を受け、コレだ!と。埼玉の人は地方の酒は知ってても地酒を知らない人が多くて残念だと思っていたんです」と30代の店主・安田大輔さん。飲み放題は先入観なしで気軽に飲めるようにと考えてのこと。さらに飲んだ酒を忘れないよう全種類のラベルのコースター(しかもQRコード付き)やスタンプカードも自作する。料理は刺し身に焼き物、炒め物に煮物と和食全般。串天ぷらと〆鯖の新旧名物はぜひお供に。

店内は全60席。掘りごたつの部屋もある。
厚切りの〆さば木の葉造り700円は昔からの名物。
店内2つの冷蔵庫に収まる埼玉の地酒。
「三酒きき酒セットもおすすめです」板場で調理を担当する3代目の安田大輔さん。

『酒蔵 栄楽』店舗詳細

住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町2-159 安田ビル2F/営業時間:11:30~13:30(土は休)、17:00~23:00/定休日:日・祝/アクセス:JR・私鉄大宮駅から徒歩3分

米や じゅんの助

2つのいい米を味わえる喜び

好きな飲み物(日本酒は120ml)と小鉢、刺し身、お通し付きで1700円の晩酌セット。「亀甲花菱」、「武蔵野」、「豊明」など酒の単品は120mlで550円(夜は+消費税)。

和食一筋の料理人・本田淳さんが2015年に開店。店名は日本酒の“米”とご飯の“米”2つの米を表している。酒は有名酒をあえて置かず、好みと感覚で選んだ日本各地の銘柄が並ぶが、メニューの筆頭が埼玉の酒なのはうれしい。「地酒だし、頑張ってもらいたいから。ここ越谷は東京から帰ってくる街。埼玉のものでなければ都内には何でもありますしね」と、埼玉の酒に力を入れ、現在5、6蔵の酒を常時用意する。ちなみに燗なら「神亀」甘口や「九重桜」熟成8年純米原酒がおすすめ。確かな腕を感じる繊細な料理で杯が進んだら、締めもお忘れなく。土鍋炊きの吉川産有機コシヒカリは噛むほどに味わい深く、ため息ものだ。

「冷やでも燗でもお好みでお出しします」本田淳さんが1人で切り盛りする。
土鍋白ごはん1合450円。
駅から離れた住宅地に佇む店。店内は終日禁煙。

『米や じゅんの助』店舗詳細

住所:埼玉県越谷市弥生町3-37岡安ビル地下1階/営業時間:12:00~14:00(月休)・18:00〜23:00/定休日:日/アクセス:越谷駅から徒歩2分

取材・文=下里康子 撮影=加藤昌人