温故知新を体現、アップデートする老舗『カヤバ珈琲』【日暮里駅】
昭和13年(1938)開業の老舗。2006年に先代が亡くなり一度閉店したものの、地域にとって大切な場所を絶やしたくないと、NPO団体を中心に復活したのが2009年のことだ。「お客様には時間を忘れてのんびりゆったりとした時間を過ごして欲しいですね。そのためには私たちの努力が何よりも大事だし、温故知新の気持ちを忘れずにいたいです。本当に素敵な建物をお借りできているので」と、マネージャーの成瀬真理子さん。もともと住居として使われていた2階は、畳の上にちゃぶ台と座布団が並び、晴れた日は心地よい風が抜ける。
『カヤバ珈琲』店舗詳細
秘密基地のような空間で、ゆったり流れる時間を満喫。『雨音茶寮』【千駄木駅】
イギリス育ちで古い建物やデザイン性が高いものが好きというオーナーの那須野浩美さんが「ピンと来て」開業を決めたのがこの建物。扉を開けると細長い空間が広がり、2階には屋根裏のような部屋がある。カフェのようで、茶室のようで、誰かの秘密基地に迷い込んだような気分にもなれる空間だ。「自分がわくわくするするかどうかが全て」という那須野さんの言葉にも納得だ。ランチにぴったりの雨音ごはんは、小鉢が4品と、ごはん、出汁、そしてお茶漬けのおともが、丸いお盆に乗って運ばれてくる出汁茶漬けのセット。上品でやさしい味だ。
『雨音茶寮』店舗詳細
東北復興支援店を併設、ランチもよりどりみどりの『Cafe yue』【日暮里駅】
墓地の脇の静かな路地裏にあるこの店は、カフェメニューはもちろんのこと、モーニングやランチ、デザートメニュー、そしてアルコールとおつまみも充実している。オープン以来人気の商品だというローストビーフ丼は、黒毛和牛のメス牛の肉をふんだんに使った一皿だ。また、岩手県、宮城県、福島県のおいしいものや工芸品が勢揃いする東北物産店「東北基地エール」が併設されている。会津本郷焼のアクセサリーから牛タン、缶詰や乾物、そして福島の桃まで、アンテナショップのような品揃え。谷中の街を満喫しながら、遠いみちのくの魅力にも触れ、応援できるカフェなのだ。
『Cafe yue』店舗詳細
こだわりのブレンドコーヒーをお供に過ごす、『COUZT CAFE』【根津駅】
「肩肘張らずに過ごせることに重きを置きました」と、プランナー・デザイナーであり代表を務める椿ひとみさん。窓際にカウンター席、奥にソファ席がある店内は広々としていてのんびりできる雰囲気だ。店長の宮田さんが焙煎所での研修中に選りすぐりの珈琲豆からブレンドした「宮田ブレンド」は、後味がすっきりとしてくせがなく、コーヒーがあまり得意ではない人でも飲みやすそうな口当たり。このほかにもコーヒーの種類が多く、来るたびに違うものを選んで飲み比べてみるのもたのしそうだ。また、時期ごとに内容が変わるランチプレートも大満足のボリューム。ぜひともお腹をすかせて訪れたい。
『COUZT CAFE』店舗詳細
急須で淹れるコーヒーと和やかなひとときを楽しむ『百舌珈琲店』【千駄木駅】
三隅さんと佐々木さんの2人で営むこの店は、急須珈琲が看板メニュー。フレンチプレスに近い味わいで、紙のフィルターを通さないため豆の油分が残り、まろやかでやさしい飲み口だ。また、フードやスイーツのメニューもこだわり満載。にんじんの甘みにスパイスのアクセントが効いたキャロットケーキは、繊細なバランスでコーヒーによく合う。お客さんとの交流をきっかけに、アイディアをもらったりインスピレーションを得たりすることもあるそうで、「2022年に谷中から移転したのですが、その時はうちに寄るために通勤経路を変えてくれた方もいました。近所の、地元の方に支えられてます」と三隅さん。
『百舌珈琲店』店舗詳細
住宅地に潜む隠れ家で食べる熱々のドリア!『yorimichi cafe』【千駄木駅】
店内には、アンティークの家具やレコードプレイヤー、窓にはステンドグラス、変わった形のランプシェード、そして棚に並ぶ雑貨の数々。イングリッシュガーデンのような、宝物を寄せ集めたガレージのような雰囲気のなかで味わうのは、開店当初からの看板メニューであるドリアだ。エビやブロッコリーなどの具材がゴロゴロとのった上にたっぷりのチーズとベシャメルソースがかかっていて、ほっとする優しい味。「同じ材料でも組み合わせを変えたりすることで、頻繁に来てくださる方が選べるようにしています」と店主の配島彩さん。物販スペースもあり、茶葉や雑貨を買うこともできる。
『yorimichi cafe』店舗詳細
元銭湯の建物で自家焙煎のエスプレッソを。『MIYANO-YU』【根津駅】
「カフェとは知らずに、お風呂セットを持って来てしまう方も時々いらっしゃるんです」と、店長の大里恵未さん。2008年に約60年の歴史に幕を下ろした銭湯「宮の湯」の建物を、複合施設として活用するうちの1軒だ。一番人気は、自慢のエスプレッソを使ったフラットホワイト。ラテやカプチーノとも似ているがミルクの層が少なめで、コーヒーの味がしっかりわかる。また、メインのエスプレッソだけでなく抹茶メニューも充実していて、銭湯という日本の文化を満喫できる空間のなかで堪能する味は格別! お隣のパン屋さん『根津のパン』のパンが持ち込みOKというのもうれしい。
『MATCHA&ESPRESSO MIYANO-YU』店舗詳細
手作りのやさしい定食ランチが格別の『kitchen haco』【根津駅】
イチオシメニューは、大分の郷土料理でもある鶏めしに豚汁やデリがつく鶏とごぼうのごはんセット。ごはんはジューシーな若鶏のもも肉のうまみにゴボウとゴマの香り、豚汁は大きな大根やニンジンがゴロゴロと超具だくさん。オーナーの「お腹いっぱいになってほしい」という思いが込められた一品だ。朝8時開店で、ごはんと豚汁はモーニングでも食べられるというのがうれしい。また、もともと歯科医だった木造建築をリノベーションした建物は、2階まで吹き抜けになっていて開放感があり、スタイリッシュだけれどあたたかい空間だ。
『kitchen haco』店舗詳細
リノベ建築活用の先駆け『HAGISO』の一角で営む『HAGI CAFE』【千駄木駅】
芸大生たちがアトリエ兼シェアハウスとして使っていた「萩荘」というアパートをリノベーションした“最小文化複合施設”『HAGISO』。その1階で営むカフェ『HAGI CAFE』には、食材で日本をめぐる定食「旅する朝食」のほか、カレーやスイーツ、アルコールにおつまみまでバラエティ豊かなメニューが揃う。オープン当初からある定番メニューのサバサンドは、カリッと焼き上げたサバに、塩漬けレモンとマスタードがアクセント。1枚のトーストをポケット状に切ってサバを挟んであり、テイクアウトでも食べやすいのがポイントだ。隣接するギャラリースペース『HAGI ART』は、展示会のほか音楽やパフォーマンスなどの公演イベントの開催も多い。
『HAGI CAFE』店舗詳細
子連れ大歓迎、こだわりのパングラタンを頬張りたい『つむぐカフェ』【千駄木駅】
夫婦で営むこの店の売りは2つ。ひとつめはパングラタンで、こんがり焼けたチーズの香りに、ベシャメルソースが染みこんだトロトロのパンがたまらない! 具のパンもベーコンも自家製というから驚きだ。また、ふたつめは子供連れ大歓迎ということ。「自分たちが子供を連れて行きたいと思える場所にしたいと考えました。それで、来ていただいた家族と子育ての話なんかもできたらいいなって」と店主の谷貝さん。椅子やテーブルの高さが低く落ち着く雰囲気で、小上がりの席もあり、ぬいぐるみやおもちゃも用意されているなど細やかな心遣いが光る。千駄木の路地でいつも子供の笑い声が聞こえて来る、あたたかな空間だ。
『つむぐカフェ』店舗詳細
古本に囲まれてコーヒーを味わえる『books&café BOUSINGOT』【千駄木駅】
ひとまずコーヒーを注文するもよし、書店と同じようにぶらりと立ち寄って本棚を眺めるもよし、その両方が叶う店がこの『books&café BOUSINGOT』だ。店内の蔵書は約2000冊で、羽毛田さんが学生時代に専攻していたというフランス文学に関するものも多い。ドリンクは、コーヒー、紅茶、チョコレートドリンクから、カクテルやウイスキーなどのアルコールも揃う。フランスの典型的な飲み方であるカフェ・クレームは、エスプレッソにたっぷりのミルクが入ってまろやかで飲みやすく、読書のお供によさそう。夕方の開店時間は細かく決まっていないため、SNSの「オープンなう」のお知らせをチェックしてから向かおう。
『books&café BOUSINGOT』店舗詳細
チャイで心も体もあたたまる『CHAI ful NEZU』【根津駅】
インド式の甘いミルクティー・チャイを味わえる店。「地域や家庭ごとに工夫や変化がある。既成概念にとらわれず、その土地の風土にあったものでいい、というラフなところが好きですね」と店主が話すチャイの魅力に触れられる。スパイスなしのプレーン500円のほか、ジンジャー600円、6種類のスパイスが入ったマサラ650円から選べる。全体的に甘さ控えめなので、甘いものが苦手だという人でも飲みやすそう。コーヒーなど他のドリンクもあるが、ここに来たならばぜひチャイをいただこう。ホットサンドやケーキ、パイなどとあわせていただくのもおすすめだ。
『CHAI ful NEZU』店舗詳細
取材・文・撮影=つるたちかこ、中村こより