温故知新を体現、アップデートする老舗『カヤバ珈琲』【日暮里駅】

人気メニューのたまごサンド1000円と、先代から引き継いだココア入りのアレンジコーヒー、ルシアン600円。
人気メニューのたまごサンド1000円と、先代から引き継いだココア入りのアレンジコーヒー、ルシアン600円。

昭和13年(1938)開業の老舗。2006年に先代が亡くなり一度閉店したものの、地域にとって大切な場所を絶やしたくないと、NPO団体を中心に復活したのが2009年のことだ。「お客様には時間を忘れてのんびりゆったりとした時間を過ごして欲しいですね。そのためには私たちの努力が何よりも大事だし、温故知新の気持ちを忘れずにいたいです。本当に素敵な建物をお借りできているので」と、マネージャーの成瀬真理子さん。もともと住居として使われていた2階は、畳の上にちゃぶ台と座布団が並び、晴れた日は心地よい風が抜ける。

時間を忘れてのんびりできる2階席がおすすめ。
時間を忘れてのんびりできる2階席がおすすめ。
春夏秋冬、朝・昼・夕方、どの時間帯に訪れても絵になる佇まい。
春夏秋冬、朝・昼・夕方、どの時間帯に訪れても絵になる佇まい。

『カヤバ珈琲』店舗詳細

秘密基地のような空間で、ゆったり流れる時間を満喫。『雨音茶寮』【千駄木駅】

じっくり考えごとをするにもよさそう。
じっくり考えごとをするにもよさそう。

イギリス育ちで古い建物やデザイン性が高いものが好きというオーナーの那須野浩美さんが「ピンと来て」開業を決めたのがこの建物。扉を開けると細長い空間が広がり、2階には屋根裏のような部屋がある。カフェのようで、茶室のようで、誰かの秘密基地に迷い込んだような気分にもなれる空間だ。「自分がわくわくするするかどうかが全て」という那須野さんの言葉にも納得だ。ランチにぴったりの雨音ごはんは、小鉢が4品と、ごはん、出汁、そしてお茶漬けのおともが、丸いお盆に乗って運ばれてくる出汁茶漬けのセット。上品でやさしい味だ。

雨音ごはん1500円。器もひとつひとつ色や形が違ってかわいい。
雨音ごはん1500円。器もひとつひとつ色や形が違ってかわいい。
築年数推定70〜80年の古民家を改装している。
築年数推定70〜80年の古民家を改装している。

『雨音茶寮』店舗詳細

東北復興支援店を併設、ランチもよりどりみどりの『Cafe yue』【日暮里駅】

入り口から燦々と陽の光が差し込む店内は、広々として落ち着く空間。
入り口から燦々と陽の光が差し込む店内は、広々として落ち着く空間。

墓地の脇の静かな路地裏にあるこの店は、カフェメニューはもちろんのこと、モーニングやランチ、デザートメニュー、そしてアルコールとおつまみも充実している。オープン以来人気の商品だというローストビーフ丼は、黒毛和牛のメス牛の肉をふんだんに使った一皿だ。また、岩手県、宮城県、福島県のおいしいものや工芸品が勢揃いする東北物産店「東北基地エール」が併設されている。会津本郷焼のアクセサリーから牛タン、缶詰や乾物、そして福島の桃まで、アンテナショップのような品揃え。谷中の街を満喫しながら、遠いみちのくの魅力にも触れ、応援できるカフェなのだ。

至高のローストビーフ丼(サラダ、スープ付)Mサイズ1880円。Sサイズ1480円、L2280円もある。
至高のローストビーフ丼(サラダ、スープ付)Mサイズ1880円。Sサイズ1480円、L2280円もある。
「東北基地エール」はカフェとは別の入り口だが、奥でつながっている。
「東北基地エール」はカフェとは別の入り口だが、奥でつながっている。

『Cafe yue』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中6-3-12/営業時間:8:00~11:00(木は〜10:00)・11:30~17:00LO(土・日は〜19:00LO)/定休日:月(祝の場合は翌平日)/アクセス:JR日暮里駅から徒歩7分、地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩10分

こだわりのブレンドコーヒーをお供に過ごす、『COUZT CAFE』【根津駅】

宮田ブレンド560円(おかわり280円)。
宮田ブレンド560円(おかわり280円)。

「肩肘張らずに過ごせることに重きを置きました」と、プランナー・デザイナーであり代表を務める椿ひとみさん。窓際にカウンター席、奥にソファ席がある店内は広々としていてのんびりできる雰囲気だ。店長の宮田さんが焙煎所での研修中に選りすぐりの珈琲豆からブレンドした「宮田ブレンド」は、後味がすっきりとしてくせがなく、コーヒーがあまり得意ではない人でも飲みやすそうな口当たり。このほかにもコーヒーの種類が多く、来るたびに違うものを選んで飲み比べてみるのもたのしそうだ。また、時期ごとに内容が変わるランチプレートも大満足のボリューム。ぜひともお腹をすかせて訪れたい。

COUZTプレート1100円。この日は豚スペアリブのホロホロBBQがメインだった。
COUZTプレート1100円。この日は豚スペアリブのホロホロBBQがメインだった。
雑貨や焼き菓子を販売するショップコーナーも。
雑貨や焼き菓子を販売するショップコーナーも。

『COUZT CAFE』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中2-1-11/営業時間:12:00〜19:30LO(金・土は〜21:00LO)/定休日:水/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩5分、または同千駄木駅から徒歩9分

急須で淹れるコーヒーと和やかなひとときを楽しむ『百舌珈琲店』【千駄木駅】

急須珈琲1000円と、キャロットケーキ800円。
急須珈琲1000円と、キャロットケーキ800円。

三隅さんと佐々木さんの2人で営むこの店は、急須珈琲が看板メニュー。フレンチプレスに近い味わいで、紙のフィルターを通さないため豆の油分が残り、まろやかでやさしい飲み口だ。また、フードやスイーツのメニューもこだわり満載。にんじんの甘みにスパイスのアクセントが効いたキャロットケーキは、繊細なバランスでコーヒーによく合う。お客さんとの交流をきっかけに、アイディアをもらったりインスピレーションを得たりすることもあるそうで、「2022年に谷中から移転したのですが、その時はうちに寄るために通勤経路を変えてくれた方もいました。近所の、地元の方に支えられてます」と三隅さん。

不忍通りと団子坂の交差点からすぐ。軒先のベンチに座ってバスを待つ人の姿を見ることも多い。
不忍通りと団子坂の交差点からすぐ。軒先のベンチに座ってバスを待つ人の姿を見ることも多い。
カウンター越しに会話も弾む和やかな店内。
カウンター越しに会話も弾む和やかな店内。

『百舌珈琲店』店舗詳細

住所:文京区千駄木3-36-7/営業時間:8:00~18:00/定休日:月(祝日の場合は翌日)/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩1分

住宅地に潜む隠れ家で食べる熱々のドリア!『yorimichi cafe』【千駄木駅】

yorimichi風ドリア1150円とカフェラテ630円。
yorimichi風ドリア1150円とカフェラテ630円。

店内には、アンティークの家具やレコードプレイヤー、窓にはステンドグラス、変わった形のランプシェード、そして棚に並ぶ雑貨の数々。イングリッシュガーデンのような、宝物を寄せ集めたガレージのような雰囲気のなかで味わうのは、開店当初からの看板メニューであるドリアだ。エビやブロッコリーなどの具材がゴロゴロとのった上にたっぷりのチーズとベシャメルソースがかかっていて、ほっとする優しい味。「同じ材料でも組み合わせを変えたりすることで、頻繁に来てくださる方が選べるようにしています」と店主の配島彩さん。物販スペースもあり、茶葉や雑貨を買うこともできる。

どの席で過ごすか、わくわくしながら選ぶのも楽しい。
どの席で過ごすか、わくわくしながら選ぶのも楽しい。
入り口からすでに楽しげな雰囲気!
入り口からすでに楽しげな雰囲気!

『yorimichi cafe』店舗詳細

住所:東京都文京区千駄木2-7-13 TYビル1階/営業時間:11:00~19:00/定休日:火・水/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩7分

元銭湯の建物で自家焙煎のエスプレッソを。『MIYANO-YU』【根津駅】

カランコロンと風呂桶の音が聞こえてきそう。
カランコロンと風呂桶の音が聞こえてきそう。

「カフェとは知らずに、お風呂セットを持って来てしまう方も時々いらっしゃるんです」と、店長の大里恵未さん。2008年に約60年の歴史に幕を下ろした銭湯「宮の湯」の建物を、複合施設として活用するうちの1軒だ。一番人気は、自慢のエスプレッソを使ったフラットホワイト。ラテやカプチーノとも似ているがミルクの層が少なめで、コーヒーの味がしっかりわかる。また、メインのエスプレッソだけでなく抹茶メニューも充実していて、銭湯という日本の文化を満喫できる空間のなかで堪能する味は格別! お隣のパン屋さん『根津のパン』のパンが持ち込みOKというのもうれしい。

フラットホワイト650円と、抹茶ラテ650円。
フラットホワイト650円と、抹茶ラテ650円。
不忍通りと言問通りの交差点からすぐの路地にある。
不忍通りと言問通りの交差点からすぐの路地にある。

『MATCHA&ESPRESSO MIYANO-YU』店舗詳細

住所:東京都文京区根津2-19-8 SENTOビル1F/営業時間:10:00~19:00/定休日:不定/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩2分

手作りのやさしい定食ランチが格別の『kitchen haco』【根津駅】

鶏とごぼうのごはんセット(大分風)1320円。
鶏とごぼうのごはんセット(大分風)1320円。

イチオシメニューは、大分の郷土料理でもある鶏めしに豚汁やデリがつく鶏とごぼうのごはんセット。ごはんはジューシーな若鶏のもも肉のうまみにゴボウとゴマの香り、豚汁は大きな大根やニンジンがゴロゴロと超具だくさん。オーナーの「お腹いっぱいになってほしい」という思いが込められた一品だ。朝8時開店で、ごはんと豚汁はモーニングでも食べられるというのがうれしい。また、もともと歯科医だった木造建築をリノベーションした建物は、2階まで吹き抜けになっていて開放感があり、スタイリッシュだけれどあたたかい空間だ。

ブロックリーブレックファスト(紅茶)550円。
ブロックリーブレックファスト(紅茶)550円。
抜け感のあるオープンキッチンで、お客さんとスタッフの距離も近い。
抜け感のあるオープンキッチンで、お客さんとスタッフの距離も近い。

『kitchen haco』店舗詳細

住所:東京都文京区根津2-19-6/営業時間:8:00〜17:00/定休日:月/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩2分

リノベ建築活用の先駆け『HAGISO』の一角で営む『HAGI CAFE』【千駄木駅】

サバサンド980円とHAGISOブレンド630円。
サバサンド980円とHAGISOブレンド630円。

芸大生たちがアトリエ兼シェアハウスとして使っていた「萩荘」というアパートをリノベーションした“最小文化複合施設”『HAGISO』。その1階で営むカフェ『HAGI CAFE』には、食材で日本をめぐる定食「旅する朝食」のほか、カレーやスイーツ、アルコールにおつまみまでバラエティ豊かなメニューが揃う。オープン当初からある定番メニューのサバサンドは、カリッと焼き上げたサバに、塩漬けレモンとマスタードがアクセント。1枚のトーストをポケット状に切ってサバを挟んであり、テイクアウトでも食べやすいのがポイントだ。隣接するギャラリースペース『HAGI ART』は、展示会のほか音楽やパフォーマンスなどの公演イベントの開催も多い。

店内の片側はギャラリースペース『HAGI ART』、もう片側がカフェの客席。
店内の片側はギャラリースペース『HAGI ART』、もう片側がカフェの客席。
黒い外壁がシックで目を引く。
黒い外壁がシックで目を引く。

『HAGI CAFE』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中3-10-25/営業時間:8:00〜10:00LO、12:00〜16:00LO(土・日・祝は〜19:00LO)/定休日:不定/アクセス:JR日暮里駅、地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩5分

子連れ大歓迎、こだわりのパングラタンを頬張りたい『つむぐカフェ』【千駄木駅】

パングラタン1000円は副菜2種とスープ付き。
パングラタン1000円は副菜2種とスープ付き。

夫婦で営むこの店の売りは2つ。ひとつめはパングラタンで、こんがり焼けたチーズの香りに、ベシャメルソースが染みこんだトロトロのパンがたまらない! 具のパンもベーコンも自家製というから驚きだ。また、ふたつめは子供連れ大歓迎ということ。「自分たちが子供を連れて行きたいと思える場所にしたいと考えました。それで、来ていただいた家族と子育ての話なんかもできたらいいなって」と店主の谷貝さん。椅子やテーブルの高さが低く落ち着く雰囲気で、小上がりの席もあり、ぬいぐるみやおもちゃも用意されているなど細やかな心遣いが光る。千駄木の路地でいつも子供の笑い声が聞こえて来る、あたたかな空間だ。

河越抹茶ラテ(ホット)650円。アイスもある。
河越抹茶ラテ(ホット)650円。アイスもある。
店内はゆったりと20席ほど。
店内はゆったりと20席ほど。

『つむぐカフェ』店舗詳細

住所:東京都文京区千駄木2-8-3/営業時間:11:00〜19:00/定休日:日・祝(その他不定休あり)/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩6分、根津駅から徒歩9分

古本に囲まれてコーヒーを味わえる『books&café BOUSINGOT』【千駄木駅】

店内にはテーブル席が12席ほど。
店内にはテーブル席が12席ほど。

ひとまずコーヒーを注文するもよし、書店と同じようにぶらりと立ち寄って本棚を眺めるもよし、その両方が叶う店がこの『books&café BOUSINGOT』だ。店内の蔵書は約2000冊で、羽毛田さんが学生時代に専攻していたというフランス文学に関するものも多い。ドリンクは、コーヒー、紅茶、チョコレートドリンクから、カクテルやウイスキーなどのアルコールも揃う。フランスの典型的な飲み方であるカフェ・クレームは、エスプレッソにたっぷりのミルクが入ってまろやかで飲みやすく、読書のお供によさそう。夕方の開店時間は細かく決まっていないため、SNSの「オープンなう」のお知らせをチェックしてから向かおう。

カフェ・クレーム550円。
カフェ・クレーム550円。
夕暮れ時、不忍通りの一角に飴色の灯りが点る。
夕暮れ時、不忍通りの一角に飴色の灯りが点る。

『books&café BOUSINGOT』店舗詳細

住所:東京都文京区千駄木2-33-2/営業時間:夕方〜22:00/定休日:火/アクセス:地下鉄千代田線千駄木駅から徒歩2分、根津駅から徒歩10分

チャイで心も体もあたたまる『CHAI ful NEZU』【根津駅】

月替わりメニューのシナモンラム(ホット)650円と、エッグタルト250円。
月替わりメニューのシナモンラム(ホット)650円と、エッグタルト250円。

インド式の甘いミルクティー・チャイを味わえる店。「地域や家庭ごとに工夫や変化がある。既成概念にとらわれず、その土地の風土にあったものでいい、というラフなところが好きですね」と店主が話すチャイの魅力に触れられる。スパイスなしのプレーン500円のほか、ジンジャー600円、6種類のスパイスが入ったマサラ650円から選べる。全体的に甘さ控えめなので、甘いものが苦手だという人でも飲みやすそう。コーヒーなど他のドリンクもあるが、ここに来たならばぜひチャイをいただこう。ホットサンドやケーキ、パイなどとあわせていただくのもおすすめだ。

やさしい色合いの木の扉が目印。
やさしい色合いの木の扉が目印。
白い壁のすっきりとした空間で、アンティークのカウンターや小さなシャンデリアがアクセント。
白い壁のすっきりとした空間で、アンティークのカウンターや小さなシャンデリアがアクセント。

『CHAI ful NEZU』店舗詳細

住所:東京都文京区根津2-19-4/営業時間:11:30〜18:00(日は〜17:00)/定休日:火・水/アクセス:地下鉄千代田線根津駅から徒歩1分

取材・文・撮影=つるたちかこ、中村こより

散歩にぴったりのエリアとしてすっかり定着した谷根千。特に谷中ぎんざは食べ歩きのイメージも強いけれど、ランチ処も百花繚乱なのです。坂の多い街を登ったり下ったりしてお腹がすいたら、こだわりの味をたらふく食べられるお店へ、いざ!
いまや東京を代表する散歩スポットととなったこのエリア。江戸時代からの寺町および別荘地と庶民的な商店街を抱える「谷中」、夏目漱石や森鴎外、古今亭志ん生など文人墨客が多く住んだ住宅地「千駄木」、根津神社の門前町として栄え一時は遊郭もあった「根津」。3つの街の頭文字をとって通称「谷根千」。わずか1.5キロ正方ぐらいの面積に驚くほど多彩な風景がぎゅっと詰まった、まさに奇跡の街なのである。