主役は羽釜で炊いたツヤピカごはん『深川 ごはん屋 おゝ貫』[門前仲町]
小窓越しに見えるのは、羽釜が3つ並んだ竃。店主 ・大貫泰宏さんは「薪炊きのごはんを食べて育ち、修業先も期せずして羽釜炊きの店ばかり」と相好を崩す。親類が丹精込めた茨城産コシヒカリとともに、昆布とシイタケを忍ばせて羽釜で炊けばふっくら艶やか。米の甘みも際立つ。また、さば節と宗田がつおの出汁の味噌汁が風味芳醇(ほうじゅん)。素材の旨味がくっきり際立つおかず類も名脇役揃いだ。
『深川 ごはん屋 おゝ貫』店舗詳細
辛みの奥に深い繊細さ。満腹必至のタイ料理『Mae Ping』[門前仲町]
ハーブや野菜を千葉県のタイ野菜専門農家から仕入れ、店主のヌンさんは故郷のタイ北部の味を再現。昼なら金曜限定スペシャルランチを狙いたい。大皿の迫力に圧倒されていると、「まずはこれ」とヌンさんは皿中央の豚肉とトマトのディップ・ナムプリックオーンを指差した。キャベツやニンジンといった温野菜とともに口へ運ぶと、辛さとみずみずしさが口中で融合。食欲は即トップギアに入る。
『Mae Ping』店舗詳細
柔らか&ジューシー味の組み合わせは無限大『とりサンド unmarl』[門前仲町]
どう組み合わせるか、とりサンドの注文には、うれしい悲鳴が上がる。「仕事をひととき忘れられる時間になったら」 と、代表の山口恵摩さん。揚げ鶏はスパイス香る衣をまとい、ラードのコクが加勢して旨味濃厚。対して蒸し鶏はしっとりとして上品な味。その上、バンズは全粒粉が芳しい茶色と低温焼成の白の2種あり、ソースは季節限定を含む6種も揃える。組み合わせ次第の味変化に驚くばかり。
『とりサンド unmarl』店舗詳細
辛さが自在に加減できるまろやかブリトーボウル『cafe & bar MEDIUM』[清澄白河]
内装を手掛けるオーナーが飲み屋として始めたが、 「前任のメキシコ人店長から一気にメキシコ化が進みました」と、現店長の藤原唯さん。看板はブリトーボウルだ。ジャークチキン、ワカモレソース、タコミートが満載で、思いの外やさしい味わい。卓上のハバネロソース次第で表情が一変するのも楽しい。スパイス入りひき肉の自家製ヒートアップソースをのせた激辛版もあり、汗をかくのも一興だ。
『cafe & bar MEDIUM』店舗詳細
包丁さばきで決まるマグロの舌触りに脱帽『和DININGこころ』[森下]
寿司屋で修業した店主の西田幸路さんが豊洲で目利きした魚が目白押し。 「まだまだ満足のいく仕上がりにいかないな」 と、西田さんは職人気質をのぞかせるが、カラリと揚げた天丼、注ぎ足しの煮汁で炊く銀ダラなど、昼はかなりお値打ちだ。まぐろ丼がまたいい。一頭買いを、部位ごとに包丁の入れ方を変え、煮切り醤油にさっとくぐらせると、艶やかで舌触りなめらか。香りも立ち、多幸感が半端ない。
『和DININGこころ』店舗詳細
最後の一滴まで味わい尽くしたいスープ『スプスパ』[住吉]
ホテルのフレンチ出身の店主・元矢学さんが作るのは、スープスパゲティー。皮付きニンニク、鷹の爪、ローリエをとろ火で煮込んだ自家製オイルが決め手で、 「オリーブオイルや生クリームは買ったことがないですね」 と笑う。魚介満載のソースを、鶏、昆布、かつおでとった出汁で割り、このオイルをたらり。口に運ぶたび、ぐんぐん香味が増していく。 「最後はリゾットに」と小ライス付きなのも心憎い。
『スプスパ』店舗詳細
ごはんもお酒も進みまくる燻製ずくめ『Smoked Bar KoO』[門前仲町]
スモークウッドやチップ、コーヒー粉、茶葉、ピートパウダー、ザラメなどを、食材に合わせて独自にブレンド。自家製燻製の中でも、熟成させたハムやベーコンは酒肴に最強だ。さらに、ごはんやパンに合うよう改良を重ねた燻製ランチが稀有だ。燻製塩、燻玉なども用いられ、鼻に抜ける薫香に恍惚(こうこつ)必至。「シャルキュトリ職人を目指す」店主の独創的な技が冴えまくる。
『Smoked Bar KoO』店舗詳細
魚と三浦野菜がせめぎ合う奥深い味わいのパスタ『taverna Nome』[清澄白河]
「昔から魚好き。イタリアンなら魚料理ができるなと思って」と、店主の岩坂玄太郎さんは豊洲市場仕入れの魚介を軸に献立を決める。タイやヒラメ、スズキなど、身は料理に、頭やアラ、中骨は出汁にと、余すことなく使い切るのが信条だ。合わせるのは、三浦半島の農家から仕入れる味の濃い野菜。素材の力を信じてシンプルに仕上げれば、魚の風味が上品で奥深い旨味に。ワインが恋しくなる。
『taverna Nome』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり、高橋健太(teamまめ) 撮影=井原淳一、鈴木奈保子