スタート:JR中央線 武蔵小金井駅ー(25分/1.7㎞)→武蔵野公園ー(13分/0.9㎞)→野川公園ー(20分/1.3㎞)→龍源寺(近藤勇の墓)ー(3分/0.2㎞)→大沢の里古民家ー(2分/0.1㎞)→出山横穴墓群8号墓ー(5分/0.3㎞)→大沢の里水車経営農家ー(20分/1.3㎞)→三鷹市 星と森と絵本の家ー(3分/0.2㎞)→国立天文台ー(15分/1.0㎞)→神代植物公園ー(14分/0.9㎞)→深大寺ー(3分/0.2㎞)→ゴール:京王バス・小田急バス 深大寺バス停
今回のコース◆約8.1㎞/約2時間/約1万歩/高低差★☆☆/体力度★★★
1 武蔵野公園
春の花々が公園を彩る
野川沿いに約25万㎡の敷地をもつ公園。くじら山と呼ばれる丘に立てば、野川の向こうに「はけ」が連なるのが見える。3月下旬~ 4月下旬には40種類、約600本の桜が咲き、野川沿いのハナミズキ並木も白い花を咲かせる。
2 野川公園
国際基督教大学のゴルフ場が前身
40万㎡もの面積の広大な公園。緩やかな起伏がある芝生広場はゴルフ場だった名残だ。国分寺崖線の下部に位置する自然観察園では、崖下から湧く地下水が池をつくり、周辺では四季折々の鳥や昆虫、花を見られる。
3 龍源寺(近藤勇の墓)
新選組ファンの聖地
新選組局長・近藤勇の生家に近い曹洞宗の寺。門前に六地蔵や庚申塔などと並んで近藤勇の胸像や近藤勇と天然理心流の碑がある。本堂の裏手に回れば近藤家の墓所があり、近藤勇の墓や辞世の句を刻んだ石碑が立つ。
4 大沢の里古民家
里山の風景を伝える水辺と民家
明治35年(1902)に建築された田の字形の四つ間取りの典型的な農家母屋。ワサビ栽培や養蚕などを営んでおり、1980年まで民家として使用されていた。周辺にはワサビ田が残り、ホタルが飛び交う水辺もある。
5 出山横穴墓群8号墓
ちょっと怖い! 古代人の墓
国分寺崖線には、7世紀中期~ 8世紀初頭にかけて造営された横穴墓がある。ここもその一つで、丘陵の斜面に横穴を掘り遺体を埋葬した。人骨模型を展示する墓内が公開され、音声ガイドを聴きながら見学できる。
6 大沢の里水車経営農家
200余年前の水車小屋と茅葺(かやぶ)き民家
文化14年(1817)から5代にわたって水車経営を行ってきた峯岸家。「しんぐるま」と呼ばれる両袖型の大型水車は、製粉精米用としては全国でも最大規模。同10年(1813)ごろ建築の母屋をはじめ、土蔵、製粉小屋などが残る。
7 三鷹市 星と森と絵本の家
大正・昭和をしのぶ、懐かしい空間
大正時代建築の国立天文台の官舎を保存活用した施設。昭和30年以前に使われていた調度品を飾った館内はどこか懐かしい雰囲気。星や宇宙に関する絵本の原画を展示する回廊ギャラリーや、約2500冊の絵本が並ぶ読書室などがある。
8 国立天文台
鬱蒼(うっそう)とした森の中で星と宇宙に親しめる
国立天文台の本部。大正10年(1921)建築の第一赤道儀室、同13年建築のゴーチェ子午環室、同14年建築の子午儀資料館などが公開され、天文学の歴史的な建築物や観測装置などを間近に見ることができる。
9 神代植物公園
甘い香りが漂う、早春のうめ園
約4800種類10万本の樹木を植えた日本有数の植物公園。ばら園、つつじ園、うめ園など植物の種類ごとに30ブロックに分かれ、四季折々の景観を見せてくれる。武蔵野の面影を残すクヌギやコナラが茂る雑木林が美しい。
10 深大寺
都内では浅草寺に次ぐ古刹
奈良時代の天平5年(733)の創建。元三(がんさん)大師堂に安置される慈恵(じえ)大師(元三大師)像は厄除け大師として信仰を集め、3月3・4日に行われる厄除元三大師大祭ではだるま市も開催される。釈迦堂に安置される飛鳥時代後期作の釈迦如来倚像は国宝。
深大寺 水神苑
健康さんぽの仕上げは薬膳料理
深大寺界隈では数少ない本格日本料理を看板とする店。なかでも注目は薬膳料理。先付、御椀、造里(刺し身)、焼物、揚物、そば、デザートが付く和の薬膳には、すべての料理に生薬などの薬膳食材が使われ、そばにも黒ゴマを練り込み、黒ゴマつゆで食べる。料理は一品ずつ提供されるので、ゆっくり味わうことができる。
【コース解説】
小金井・三鷹・調布一帯の地形は武蔵野台地と呼ばれる。ここには古多摩川の流れによって削られた河岸段丘があり、野川の北には高低差15〜20mの崖線が東西に走っている。この崖線のことを武蔵野地方では「はけ」といい、これから歩く野川沿いの道は「はけの道」と呼ばれる。連雀通りを右に折れ、坂の途中から『はけの森美術館』に入る。庭は深い森に包まれ、はけから湧く水が小さな池を造っている。
住宅地を抜け、小金井新橋を渡って野川沿いへ。野川を挟み武蔵野公園や野川公園が連なり、広大な緑の空間をつくる。野川沿いは川辺の道を歩くことができる。水面では水鳥が遊び、足元には草が芽吹き、桜の季節が待ちどおしい。「春の小川はさらさら行くよ」。そんな歌が似合う、のどかな光景だ。
国立天文台で建築散歩 花の公園は早春の息吹き
富士見大橋をくぐって、次の泉橋から土手上の道に上がり、御狩野(みかりの)橋を右に折れて近藤勇の墓がある龍源寺へ。この先、大沢の里古民家、出山横穴墓群8号墓、大沢の里水車経営農家などに立ち寄りながら国立天文台を目指す。
国立天文台裏門から入ると『三鷹市 星と森と絵本の家』が近い。建物は大正4年(1915)建築の国立天文台の旧官舎。古い電話機や足踏み式のミシンを飾った館内にレトロ感が漂う。
『国立天文台』では、口径20㎝の望遠鏡やレプソルド子午儀など、天文ファン垂涎(すいぜん)の観察機器を見学できる。公開されている第一赤道儀室、子午儀資料館、ゴーチェ子午環室はいずれも大正時代の建物で、建築散歩のスポットとしても見ごたえがある。
国立天文台前の横断歩道を渡り、緩やかな坂道を上って神代植物公園へ。5月のバラが有名だが、72品種、210本のウメが咲く早春は、随所で春の芽吹きが見られ、清楚な美しさを感じられる。武蔵野の自然を残す雑木林を抜けて、深大寺門から出れば、すぐ先に深大寺開山堂北門がある。
深大寺では釈迦堂に安置される国宝釈迦如来倚像(いぞう)をぜひ拝観したい。飛鳥時代の7世紀後半の鋳造といわれ、端正な顔を拝観するだけでも心が穏やかになってくる。
深大寺の門前には、名物のそば屋が立ち並ぶ。店頭にゲゲゲの鬼太郎やねずみ男の像が立つ『鬼太郎茶屋』も気になるスポットだ。
取材・文・撮影=塙 広明(アド・グリーン)
『散歩の達人』2021年2月号より