扉の奥で、甘~い宝石たちが待っている『菓子ヒトトキ』
薄茶の壁面に木の引き戸。ガラリと開ければ、煌(きら)めくショーケースに目を奪われる。「旬の食材を使っていて」と、店主の谷口伸吾さん。この日は小夏のタルトやレモンのショートケーキといった柑橘の爽やかな風味のケーキがズラリと並ぶ。また、定番のガトーショコラも外せない。口中に運べば、ミルクチョコレートやカラメルのしっとりとした甘みに頬がゆるむ。
11:00~18:00、日・月休(不定休あり)。
☎04-7186-7692
Instagram:kashi_hitotoki
みりんと醗酵で体が癒やされる~『Odaidoco ととのいごはんとおやつ』
店主の道脇みちよさんは、腸活をきっかけにみりんのポテンシャルに開眼。『白みりんミュージアム』でキッチンマネージャーも務め、2026年5月に開業した。「みりんや醗酵食材で体を整えて」。看板は彩り豊かな御膳だ。季節野菜の冷スープに主菜の鶏団子、こぼれ梅の甘酒、みりんシロップの白玉などの、優しい味わいが胃袋に染み渡る。
11:00~16:30LO(ランチは~14:30LO)、月・火・水休。
☎なし
Instagram:odaidoco_nagareyama
本物のアートはあふれる緑のその奥に『森の美術館』
風に揺れてザワザワ音を立てる竹林に、武骨な建物。足を踏み入れれば、優美な展示に心を揺り動かされる。「子供たちに本物を見せてあげたくて」と、館長の森忠行さん。近隣の学校の授業のため、開放日も作っている。展示を観たら、喫茶室でコーヒー飲んでゆったり。なんて贅沢な時間!
入館料大人600円、中・高生300円、小学生以下無料。
10:00~16:00(入館は〜15:30)、月・火休。
☎04-7136-2207
選びがたし多種多様な魅惑のパン『Kushino no Panya』
「パンを買うその時間を、ちょっと特別にしたくて」と、店主の櫛野雅之さん。どんと構える大理石のテーブルに、白壁には木の設(しつら)え。そこに並ぶパンは多彩で、選ぶのにひと苦労だ。国産小麦が香る食パン、バゲット、総菜パン、どれもいいが、人気のアルヴェアーレは外せない。ハチミツを練り込んだフワ甘生地に、松の実がアクセント。食事にもおやつにも、やみ付きになる。
11:00~18:00、月・水休。
☎04-7156-8110
流山の新名物はハムとソーセージだ!『ハム・ソーセージ職人の店 Umami』
「流山の手みやげになるものを」と、2021年に開業。長年、老舗ハムメーカーで腕を磨いた店主の武藤孝雄さんの謹製ハムやソーセージ、ベーコンが看板だ。妻・清子さんが「一番人気」と太鼓判を押すのは、ロースハム厚切りステーキ。これをフライパンにジュワ~。想像するだけで腹が鳴る。流山のみりんを使ったレバーペーストなど、地産食材を使った品も魅力。
10:00~17:00、日・月・火休。
☎04-7199-2877
部屋に加わる彩りを想起させる植物店『Tou+(トウタス) Plants』
暮らしに合わせたアイテムを提案する植物店として2022年に開業。観葉植物や多様な鉢が目に映るが、「最近、念願だったブックコーナーも作って」と、店主の佐藤康昭さん。店内の一角に設けられた本棚スペースには、流山の『図書出版みぎわ』が選書した本がズラリ。また、ボタニカルハーブティの販売も。店内を見回し、彩られた自分の部屋を妄想する。
10:00~18:00(土・日・祝は12:00〜)、木休。
☎04-7114-2980
甘みとスパイスの融合した風味に、ハマる『キミとティラミス(Work & Kitchen AZ CAFE)』
「辛いことがあった時、ティラミスで元気をもらえた」とは、店主の加藤直哉さん。自身も誰かに元気を与えようと、シェアキッチン『AZ CAFE』で開業した。国産とイタリア産のマスカルポーネを独自配合したティラミスは、トロリとなめらか。自家製スポンジの甘みも加わり、うっとり。もう一つの看板・チャイを啜れば、ガツンと香るスパイスで、次のひと口に誘われる。
11:00~17:00、木・金・土のみ営業。
☎080-4006-1046
腕利きシェフの激ウマフレンチ『bistro 5ans(サンカン)』
店主の我妻英雄さんは「肩ひじ張らずに、フレンチを楽しんでほしくて」と、品書きはアラカルトのみ。パテ・ド・カンパーニュを口中に運べば、舌の上でほろりと崩れ、頬がゆるむ。メインのパエリアは、ご飯に染みたカモ出汁の風味がブワッ。柔らかな鴨肉とアーティチョークがうまみを引き出し、掻き込む手も、酒も止まらない。
18:30~翌2:00(土は~翌1:00、日は18:00~22:00)、木休。
☎なし
メール:[email protected]
現在進行形で未来をつくっている
松戸出身の僕にとって、隣町の流山は「陸の孤島」だった。10代の頃、バイクで流山街道を流していたら、明かりがほとんどない農道に出て、満天の星空に驚いたことがある。だから、10年ほど前、初恋の女性から「結婚して、流山に移住した」と聞いて「なんでそんなところに」と、首を傾げた。今となって街の進化を目の当たりにし、彼女に「すごい先見の明だ」とLINEを送ると、「まさかここまでになるとは」と、返って来た。
「私も埼玉県の農村育ちでね」とは、『森の美術館』館長の森さん。「この場所を見つけた2012年頃はマンションもなくて、懐かしい田園風景が広がっていたんですよ」。その景色に心奪われた森さんは、4年がかりで美術館を作り、2016年に開館。そこから10年で風景は変わったが、「来館者の方々に、裏の竹林で採れたタケノコをお裾分けしたら、後日、タケノコごはんにしてお返ししてくれて」と、農村よろしく、微笑ましいご近所付き合いが残っているらしい。
同じく2016年に開業した『Kushino no Panya』の櫛野さんは、「これから街ができていく、その予感にワクワクして」と、直感に従って、店を構えた。「今でも人が増えていて、子供も多い。子供が多いということは、未来がある街だと思うんです」。言われてみれば、街の至る所で子供たちの歓声が聞こえる。
「開業前、タイに住んでいたので、子供が野生児に育っちゃって」と、はにかむ『Umami』の武藤孝雄さん。「そんな野生児も、のびのび過ごせるほど自然豊かなんですよねえ」。
それを聞いた妻・清子さんは「春が好きなんですって。冬眠明けのヘビを捕まえるのが楽しいから」と笑う。「この令和の世に?」と、思ったが、店舗のすぐ横を流れる運河の河川敷を見ていて納得。あふれるような草の匂い! これは、全力で駆け回りたくなっちゃうよな~。
穏やかな風情の中に熱いチャレンジ精神
「所縁(ゆかり)はなかったんですが、自分が研究していたみりんを追っていたら、流山にたどり着きました」とは、『Odaidoco』の道脇さん。みりんの老舗『かごや』で話を聞いて感銘を受け「みりんツアー」を開いていたら、『白みりんミュージアム』の代表の目に留まり、キッチンマネージャーに。2026年、2階に流山所縁の切り絵が並ぶ自店舗を開業した。
もしや、流山はチャレンジ精神を刺激する街なのかもしれない。「起業したいという、機運は高いです」とは、『キミとティラミス』のある『AZCAFE』代表の福田有紀さん。行政書士としての知見を生かして、コワーキング、飲食店、菓子キッチンの3種のシェアスペースを提供。利用者や客同士がつながり、新たな動きが生まれることも多いという。
暮らしを想像しても、何かを始めることを想像しても、明るい予感を抱かせる。迂闊にも、「僕も何か始めようか」と、思ってしまうほどに。きっと、流山の進化はまだ終わらない。
取材・文=どてらい堂(高橋健太) 撮影=井上洋平
『散歩の達人』2026年7月号より







