手土産にも喜ばれるモダン漬物『佐藤留美商店』【越谷】

留美さん(左)が山東菜漬けの仕事で出会った仲間と営む。
留美さん(左)が山東菜漬けの仕事で出会った仲間と営む。
漬物550円~は旬野菜次第で替わる。パッケージもキュートでギフトにも最適だ。
漬物550円~は旬野菜次第で替わる。パッケージもキュートでギフトにも最適だ。
「味に納得して選んでほしい」と、店内は試食を推奨。すべて無添加・保存料なしで、旬味の香りと歯触りに目を見張る。
「味に納得して選んでほしい」と、店内は試食を推奨。すべて無添加・保存料なしで、旬味の香りと歯触りに目を見張る。

祖母のおみ漬けや、母が作るいかにんじんなどで育った店主・佐藤留美さんが「越谷は農家さんが多いし、野菜がおいしい」と漬物を手作り。郷里山形の郷土料理・だしがヒントの「白メシがススム漬け」は「納豆や鮭にも合います」。春キャベツとセロリのレモンペッパーやトマトなど、漬物の概念を覆すモダンでみずみずしい味揃いは酒肴にもぴったりだ。

11:00~19:00(土・日は~17:00)、火・祝休。

民家裏に武蔵野うどん文化の伝導師あり『武蔵野うどん 越ヶ家』【蒲生】

南さんが推す豚ぶっかけうどん400g950円はイートイン限定。
南さんが推す豚ぶっかけうどん400g950円はイートイン限定。
定番人気は肉汁つけうどん400g950円。
定番人気は肉汁つけうどん400g950円。
冷凍1050円も用意する。
冷凍1050円も用意する。

民家の裏に回ると秘密の空間が現れる。店主の南信行さんは川島町の名店『庄司』の味にほれて修業。「亡き父が独学で始めた製麺室を活用しました」と実家で開業した。テイクアウト専門のはずが、要望に応えてイートインを設けると8割が食べていくように。圧力鍋でゆでた埼玉県産小麦の手打ちの弾力たるや。

11:00~15:00(うどんがなくなり次第終了)・15:30~19:00(予約時のみ)、不定休。
☎050-3575-3676

お屋敷の一角で香味異なるお茶を利き比べ『お茶を贈る人』【越谷】

『はかり屋』(越谷)の風情を生かした燻銀空間。カウンターでお茶を淹れる所作も美しい。
『はかり屋』(越谷)の風情を生かした燻銀空間。カウンターでお茶を淹れる所作も美しい。
オーガニック茶葉を求める人が絶えない。
オーガニック茶葉を求める人が絶えない。
利き茶セット1500円。
利き茶セット1500円。
ギフトパック1200円はデザイン性高し。「ごはんと合わせるとおいしさが増す」ランチの釜炒り茶300円は自分へのごほうびに。
ギフトパック1200円はデザイン性高し。「ごはんと合わせるとおいしさが増す」ランチの釜炒り茶300円は自分へのごほうびに。

お茶の可能性に目覚めたオーナーが、全国各地のオーガニック茶園を行脚。飲み心地や口当たりのいいお茶が揃い、旧日光街道に面した店蔵でくつろぐ時間が至福だ。その日のおすすめ3種を水出しで提供する利き茶セットは緑茶、ウーロン茶、和紅茶などの味変化とともに、越谷の旬野菜で作る自家製浅漬け3種とのペアリングも楽しい。

10:30~16:30、火・水休。
☎050-5472-2194

住宅街の小さな店で手に入れる大ぶりおやつ『おやつ工房ひびのや』【大袋】

人気のマフィン280円~はきび砂糖の甘みがやさしい。
人気のマフィン280円~はきび砂糖の甘みがやさしい。
路地にあるので迷子注意。
路地にあるので迷子注意。
おやつパンも大ぶり。
おやつパンも大ぶり。
自販機販売もあり。
自販機販売もあり。

引き戸を開ければ、木造りのほっこり空間。ショーケースに並ぶ焼き菓子やパンが日替わりで並び、客の来店とともに次々と消えていく。店主の渡邊裕子さんはパン屋勤務の経験を基に天然酵母&国産小麦で手作り。「我が子のために作っていたので、大きくなってしまいました」と笑う。また、クラフト作家による雑貨も木製家具に満載。合わせて物色したい。

11:00~16:00、金・土休。

古民家カフェで心と体を整える『a.myu & village』【越谷レイクタウン】

秋雨のカレー&冬の白いカレーのあいもりはサラダ・ドリンク付きで1880円。
秋雨のカレー&冬の白いカレーのあいもりはサラダ・ドリンク付きで1880円。
加藤さん(中央)はテラスを新設中。
加藤さん(中央)はテラスを新設中。

オーナーの加藤広美さんが古民家の空き家にひと目ぼれし、夫妻でリノベ。“再生”をコンセプトにしたカフェを開店した。庭木を眺める南西の窓が印象的だ。軸はスパイスカレー。ルーは鶏ガラをベースに、スパイスや野菜のレシピを変えた6種で、色も香りも鮮やかな2種のあいもりが体を整えてくれる。お粥を用いたグルテンフリーのチーズケーキ550円もはずせない。

11:00~15:30LO、不定休。
☎048-911-3375

山門をくぐり、ソウルフード団子をほおばれ『虹だんご本店』【越谷レイクタウン】

だんごは1本210円。大量にテイクアウトする客も多い。
だんごは1本210円。大量にテイクアウトする客も多い。
「団子は幼い頃からおやつ」と冨田さん。
「団子は幼い頃からおやつ」と冨田さん。
素焼きだんごとあんこセット2本450円は通好み。
素焼きだんごとあんこセット2本450円は通好み。
家康も泊まった『大聖寺』山門の先、桜の参道に立つ。
家康も泊まった『大聖寺』山門の先、桜の参道に立つ。

米穀店だった創業者が作った宮城県の登米(とめ)産ひとめぼれの串団子は、越谷のソウルフード。先代が急死し、母と2世代で手伝いに通った冨田普介さんが引き継いだ。1本80g前後の大ぶりは食べ応え満点。注文ごとに焼くため、表面は香ばしくもっちもちだ。甘だれが人気だが「素焼きは米の甘みが感じられますよ」。春は桜と藤の競演を眺める縁台でほおばれる。

9:30~17:00(売り切れ次第終了)、火・不定休。
☎048-988-0248

美容室!? の中はめくるめくお宝ワールド『古物屋 話』【越谷】

「用途はないけど造りが素敵」な雑貨を揃える吉田さん。
「用途はないけど造りが素敵」な雑貨を揃える吉田さん。
英国の足付きコップやタバコ型灰皿、家具もあり。
英国の足付きコップやタバコ型灰皿、家具もあり。
雑貨陳列の棚、アーチ窓、アールの天井は美容室の名残。週2日の不定期営業だが、遠方からも客が訪れる。
雑貨陳列の棚、アーチ窓、アールの天井は美容室の名残。週2日の不定期営業だが、遠方からも客が訪れる。

川のほとりに立つのは昭和な美容室。店主の吉田達矢さんは「ズボラなだけですが」と笑いつつも、看板もそのまま残して、店内に古着とビンテージ雑貨を並べることに。コレクション熱から始まった雑貨は、アフリカンマスク、モダンなライト、ハワイ土産の灰皿など、時代も国もバラバラ。1時間、2時間、ぐるぐる回遊して発掘する人が絶えない。

13:00~18:30、不定休。

宿場町の夜を灯す、現代アート×バー『FRINGE』【越谷】

自身の歯型を用い、グミで制作した関口さん作の自画像。日に日に表情が変わる作品もある。
自身の歯型を用い、グミで制作した関口さん作の自画像。日に日に表情が変わる作品もある。
“酒と芸術”と刺しゅうした白のれんがクールだ。
“酒と芸術”と刺しゅうした白のれんがクールだ。

美大生時代は版画、会社員時代は壁画を制作していた関口潮さんは、病をきっかけに「言葉を介さずとも伝えられる手段」として現代美術を学び直し、作家自ら発表の場を設けるアーティスト・ラン・スペースを地元で開店。企画展は随時。ライブは不定期。生マッシュルームサラダ、キーマカレー、麻婆豆腐など酒のアテもナイス。

18:00~22:00(土は15:00~、日は12:00~17:00)、月・火休。

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“好き”を大切に、マイペースに街とつながる

駅の周りにコンパクトに商店が集まり、あとは住宅地が広がる越谷。一見、どこにでもありそうな街だが、『武蔵野うどん 越ヶ家』で早速、のけぞった。住宅地の小さな門扉を開け、民家裏手に回ると、手作り感満載のイートイン小屋が現れ、特異な立地に探検心がくすぐられまくる。「越谷はもともと武蔵野うどん文化圏ではないです」と、店主の南信行さんは話すが、丁寧な手打ちがファンを増やし、武蔵野うどん認知が広がっている様子だ。

大相模調節池は越谷レイクタウンのシンボル。
大相模調節池は越谷レイクタウンのシンボル。

『おやつ工房ひびのや』もまた、住宅地の民家。「子供たちが独立したので」と、渡邊裕子さんは路地に面した和室2部屋を店と工房に改装して開店。さらに、近所の空き家も活用し、作家たちとマルシェをしたり子ども食堂を開いたりと、コミュニティーの場を設けている。

「都会でもなく、田舎でもない。人の距離感がちょうどいい場所なんです」と話すのは『a.myu & village』の加藤広美さんだ。抱っこ紐から始まったアパレル業を営み「子育て中も、子育て卒業世代も元気に働きたい女性が多いです」と、雇用創出を図るために奮闘。「新しいヒトやコトを面白がって受け入れてくれる街です」とほほえむ。

春には菖蒲やチューリップが咲く葛西親水緑道。
春には菖蒲やチューリップが咲く葛西親水緑道。

越谷は、日光街道3番目の宿場が置かれた街の一つ。往来がにぎやかだったからこそ、もてなしの心と外に開かれた大らかさを持っているのだろう。田園地帯に張り巡らされた水路の端に桜、菖蒲などの花が季節を謳歌(おうか)するよう手入れ、冬枯れの季節ですら、空と水の澄んだ世界を散歩する人の多いこと。川をたどれば、古来より崇敬を集める久伊豆神社や、奈良時代創建の大聖寺(だいしょうじ)、埼玉鴨場の隣には越谷梅林公園などが点在し、徳川家にまつわる歴史の層が厚い。その反面、西洋の湖畔を彷彿(ほうふつ)とするニュータウンの越谷レイクタウンもあり、若い世代がのびやかに暮らしている。

徳川家ゆかりの古刹『大聖寺』本堂では七福神がお出迎え。
徳川家ゆかりの古刹『大聖寺』本堂では七福神がお出迎え。

続々芽吹きはじめたニューカマーたち

『お茶を贈る人』は伊賀焼の土鍋ご飯の塩むすび1800円も評判だ。
『お茶を贈る人』は伊賀焼の土鍋ご飯の塩むすび1800円も評判だ。

食文化も魅力だ。大聖寺参道名物のだんごの味を守るのは、創業者とは血縁関係のない冨田普介さんだ。「引き継いだあと、昔からのお客さんにありがとうって言ってもらえてうれしかった」と胸を撫(な)で下ろす。

また、冬季限定の山東菜漬けが幻の名産として浸透しているせいか、老若男女に関わらず漬物ラバーズが多く見受けられる。『お茶を贈る人』では、お茶請けに越谷野菜の漬物が添えられ、『佐藤留美商店』の漬物はギフトとしても人気がうなぎ上り。「農家さんが『漬物に使って』と旬野菜をたくさん持ってきてくれるんです。人が本当にあたたかい」と、佐藤留美さんは目尻を下げながらクロモジ茶を振る舞い、どんどん試食を勧める。さらには、地元プロバスケチーム・越谷アルファーズのホームゲーム時には屋台を出し、鮭と白メシがススム漬けを具にした山形県産つや姫のおにぎりを販売。盛り上げにもひと役買っていた。

Bリーグ・越谷アルファーズのお膝元。
Bリーグ・越谷アルファーズのお膝元。

歴史ある街に残る古い建物の再生・活用も始まっている。その一つが川べりの『古物屋 話』だ。吉田達矢さんは最初、お屋敷を活用した『はかり屋』の一角、曜日替わり店舗「naya」で開業したが、手狭になったのを機に古い物件を探り当てた。目の前の緑道を散歩する人が絶えないものの、美容室の店構えそのままゆえに、古着&雑貨店だと気づかない人が多いと苦笑するが、年配のご婦人が懐かしがって訪ねてきたことも。「越谷は趣味の店が少ないけれど、だからこそ、好きを共有できるよう、発信をしていきたい」と吉田さん。

見事な屋敷が複合施設『はかり屋』に変身。
見事な屋敷が複合施設『はかり屋』に変身。

夜の帳(とばり)が降りた頃、越ヶ谷宿の一角におでんの提灯が灯(とも)った。ガラス窓からのぞき見えるのは、現代アートとバーカウンター。「越谷は文化の匂いがしないので、あえてここを作りました」と、『FRINGE』の関口潮さんは2階のアトリエで作家活動を続けながら、夜な夜なギャラリーバーを開いている。「ギャラリーだと短い時間でパッと眺めるだけですが、ギャラリーバーなら飲んでいるうちに気になってくる作品もありますから」と、さまざまな作家に作品を依頼し、2カ月ごとに企画展を開催。越谷で活動するスカバンドのライブも不定期で催し、大人と子供がともに楽しむ姿がほほえましい。そのうえ、関口さんは料理センスが抜群。土曜昼酒、日曜ランチにもうってつけだ。実はここ、昭和な元ブティックでトイレがない。でも、心配ご無用。2軒隣の『はかり屋』と管理団体が同じで、もよおしたらそちらへゴー。「イベントなどで、もっとお互い回遊できるようになれたら」と、期待も膨らませる。

ベッドタウンに見えた越谷は、底知れぬポテンシャルに満ち、ゆるやかにアップデート中。歩くたびに新たな顔を見せてくれるのだ。

取材・文=林 さゆり 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2026年3月号より