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【荻窪】グルメの街に根差した店の絶品ランチを

老舗の飲食店が並ぶ荻窪北口駅前通商店街。
老舗の飲食店が並ぶ荻窪北口駅前通商店街。

「グルメタウン」の異名を持つ荻窪。戦後の闇市が転じて、駅の北側を走る青梅街道沿いにラーメン店が次々と生まれたことに端を発するという。1980〜90年代、バブル期に巻き起こった全国的なラーメンブームで認知されるようになったこれら「荻窪ラーメン」を供する店をはじめ、駅周辺には遠方から訪れた客が行列をなす名店が揃い踏みだ。

変わらず在り続ける荻窪ラーメンの尊さ『春木家本店』(荻窪)

荻窪には「ハルキヤ」というラーメン店がふたつある──。駅にほど近い青梅街道沿いの『荻窪中華そば 春木屋』には行ったことがあるものの、もう1店は未経験。というわけで迷わず『春木家本店』へ。

店主の古川さん(写真左)と母・喜代子さん。
店主の古川さん(写真左)と母・喜代子さん。

三代目店主の古川善啓さんによると、1931(昭和6)年に創業した『春木家本店』から独立し、1949(昭和24)年に初代の妹夫婦の開いた店が『春木屋』だという。「三角形にカットする海苔は今も一緒なんですよ」

中華そば720円、煮卵100円と大根おろしで食べる炙りチャーシュー800円。
中華そば720円、煮卵100円と大根おろしで食べる炙りチャーシュー800円。

中華そばはやさしい醤油味のオーソドックスなスープ。古川さんいわく「煮干しに鶏ガラ、香味野菜でだしを取っています。てらいのなさに〝いつも変わらないね〟と言ってくださるお客さんが多いですね」。「ほっとする……」という言葉が思わず口を衝いて出た。

もともと蕎麦店だったため、日本蕎麦との二枚看板。
もともと蕎麦店だったため、日本蕎麦との二枚看板。

店が荻窪の街と共存しながらいつまでも変わらず在り続けるために、「初代と駅まで歩くときには欠かさず近所の方に挨拶して、銭湯のコミュニケーションでは失礼がないように。町内の行事にも協力してね」と古川さん。「街に生かされているのだから」とさりげなく話してくれた。

■DATA:春木家本店
住所:東京都杉並区天沼2-5-24/営業時間11:00~15:00・17:00~21:00/定休日:木/アクセス:JR中央線荻窪駅から徒歩7分

移転予定! 特製ソースのさっぱり酸味で箸が進むハンバーグ『洋食 ツバキ亭』(荻窪)

取材のため1杯のラーメンを担当編集者と分け合ったこともあって、腹にはまだ余裕が。そこで「もう一食」を求めて『洋食 ツバキ亭』を訪れた。目指すは「伝説継承!ツバキソース」が絶品と噂のハンバーグステーキだ。

ランチメニューのハンバーグステーキ980円。温玉は別途100円。
ランチメニューのハンバーグステーキ980円。温玉は別途100円。

特製の「伝説継承!ツバキソース」をたっぷり絡めてハンバーグを頬張ると、トマトとレモンの爽やかなソースの酸味で箸がどんどん進む。支配人の椿一心(つばきいっしん)さんによれば、「かつて下北沢にあった“ 伝説の”人気洋食店『マック』のソースの味を継承しており、オマージュの意味を込めてソース名の頭に“ 伝説継承”と付けた」とか。

ノリの良いスタッフの皆さん。右が椿さん。
ノリの良いスタッフの皆さん。右が椿さん。

六本木でバーを経営していたオーナーが荻窪に惹かれたのは、「50代以上の落ち着いたお客さまが多く、手をつないで歩く老夫婦がいらっしゃるような街だったから」。実は同じ荻窪で、2023年の年明けに移転が予定されている。「中央線沿いの旧インテグラルタワー(Daiwa荻窪タワー)向かいのビル2階へ。大きな窓から電車が眺められますよ」。

移転前の店看板。
移転前の店看板。

■DATA:洋食 ツバキ亭
住所:東京都杉並区上荻1-6-12 2F(移転前)、上荻1-4-10 2F(移転後)/営業時間:11:00~15:30・17:00~22:00LO(ドリンクは22:30LO)/定休日:不定/アクセス:JR中央線荻窪駅から徒歩2分(移転前・移転後)
※営業時間と定休日は2022年11月時点の移転前の情報。新店舗での営業は問い合わせを。

【西荻窪】雑貨と純喫茶の魅力にどっぷりはまり日常を忘れる

「ピンクの象」が道行く人々を見守る西荻南口仲通街。
「ピンクの象」が道行く人々を見守る西荻南口仲通街。

西荻窪はかつて多くの文化人が暮らしたお屋敷街で、彼らが家を手放す際に書籍や古道具を売ったことから、現在も古本やアンティーク雑貨を取り扱う店が多いという。喫茶店やカフェも豊富で、昔ながらの老舗も。SNS映えに終始しない味わい深さが魅力の街といえるだろう。

くすっと笑えるシュールな人形やアクセサリー雑貨の宝庫『cikolata SHOP(チコラータショップ)』(西荻窪)

デザイナーの大石さんが抱える人形は、ウインナー5500円に霜降り肉6600円。
デザイナーの大石さんが抱える人形は、ウインナー5500円に霜降り肉6600円。

トルコ語で「チョコレート」を意味する『cikolata』のショップには、ブランドデザイナーの大石さちよさんが家庭用編み機で一点ずつ作ったニットの人形をはじめ、世界中から買いつけたユニークなアクセサリーや雑貨が所狭しと並ぶ。

アクセサリーも手作り。一点3080円から。
アクセサリーも手作り。一点3080円から。
店先の椅子に腰かけるピーナッツの人形。
店先の椅子に腰かけるピーナッツの人形。

大石さんがこの地に店を構えたのは、2012年。会社員時代は吉祥寺在住だったが、独立のタイミングでアトリエを兼ねる広い部屋を求めて西荻窪に移り住んだ。結婚・出産を経て感じる西荻窪の魅力は「こぢんまりまとまっていて人と人がつながりやすいところ。個人店や専門店も多く、野菜は青果店で、肉は精肉店で買い求める生活が人間らしいと感じます」。

■DATA:cikolata SHOP(チコラータショップ)
住所:東京都杉並区西荻南1-18-10/営業時間:12:00~19:00/定休日:月~木/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩7分。

ウッディなぬくもりあふれる純喫茶『どんぐり舎(や)』(西荻窪)

取材時は南天の実が店頭を彩るポイントになっていた。
取材時は南天の実が店頭を彩るポイントになっていた。
どの席も良い雰囲気で落ち着ける。
どの席も良い雰囲気で落ち着ける。

休憩がてら純喫茶『どんぐり舎』へ。亡くなった兄から2007年に店を引き継いだマスターの河野(かわの)三郎さんは「山小屋風のウッディなインテリアは、兄の趣味が反映されていてね」と話す。

チーズケーキセット880円でひと息。
チーズケーキセット880円でひと息。

名物ピザトーストのセット930円を注文する声が続々と聞こえる中、東京女子大学近くの菓子店『Sreamy』から取り寄せているというチーズケーキ単品420円を頬張る。コーヒーは「姉が自家焙煎している」というほろ苦ブレンド単品540円を。濃密なベイクドタイプのチーズケーキと苦味と酸味のパンチが効いたコーヒーのバランスがちょうどいい。

かれこれ40年近くこの地に住む河野さんは「何を生業に暮らしている人かわかるくらいの距離感でご近所付き合いがある西荻窪が好き」と話す。「よく“ここが無くなったらどこへ行けばいいの?” とおっしゃる常連さんがいるんです。この店に愛着を持ってくださっているのが嬉しいですよね」と笑顔を見せた。

■DATA:どんぐり舎(や)
住所:東京都杉並区西荻北3-30-1/営業時間:10:00~21:00/定休日:無/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩2分

【高円寺】店の個性が溶け込む街で異彩を放つ、独自スタイルの古道具店とカレー店

高円寺パル商店街には古着店が多数。
高円寺パル商店街には古着店が多数。

「サブカルチャーの聖地」と呼ばれて久しい高円寺に降り立つ。近年はこの街で不遇をやり過ごした芸人の活躍が目立つ一方で、路上に座り込みギターをかき鳴らす男性ロッカーや丸メガネに全身ペイズリーのセットアップで闊歩するようなヘッドフォン女子も健在。夢追い人の個性やモラトリアムが尊重され、古着店やライブハウスなどで表現欲求を満たす機会も多い高円寺で、オンリーワンの異彩を放つ2店を訪ねた。

独自の通貨と仕入れで古道具の活性化を促す『新しい人』(高円寺)

店内には、店主の小池雄大(通称:小池ん)さん独自の審美眼で買いつけた品々から、客の持ち込みで集まったアイテムまで、小池んさんいわく実に多彩な〝嘘と本当〟が並ぶ。古着に靴といった実用性の高いものが奥に配置されているかと思えば、1990年代に流行した芸能人プリクラや編みぐるみのアニメキャラクターなどが棚の目立つ位置にレイアウトされているのが興味深い。いずれも日本円でなく、「こい券」という独自通貨の単位で値段が付されている。

取材日は「1こい券=120円」だった。
取材日は「1こい券=120円」だった。
オリジナルの手拭い各15こい券と、ブリーフ10こい券。
オリジナルの手拭い各15こい券と、ブリーフ10こい券。

小池んさんは「もう一歩奥やもう一本裏通り」をモットーに仕入れを行う。「インターネットで調べて出てくる範囲のアイテムには、僕でなくてもたどり着ける。それより嗅覚を働かせ、実際に足を運んだ地で発掘したおもしろい古道具の方が売れていくんです」。

長仙寺の裏手にひっそりたたずむガレージ風の店舗。
長仙寺の裏手にひっそりたたずむガレージ風の店舗。

こうした独自の感性が受け入れられるのも寛容な高円寺ならでは、と思いきや……小池んさん自身は「選んで高円寺にオープンしたわけじゃないんです」と穏やかに一蹴する。「この人通りの少ない感じと、店からの景色が力抜けてて良いなあ」とインスピレーションが働いたという店舗で、今後も小池んさんの揃えるアイテムから目が離せない。

■DATA:新しい人
住所:東京都杉並区高円寺南3-56-5-105/営業時間:だいたい15:00~だいたい20:00/定休日:不定/アクセス:JR中央線高円寺駅から徒歩3分。

地方イベントと高円寺の往来と妄想で生まれる豊かなカレー『妄想インドカレーネグラ』(高円寺)

再び腹が減り『妄想インドカレーネグラ』へ。行ったことのないインドのカレーを妄想してつくる、というコンセプトがユニークだ。旅と電車が好きな店主の大澤思朗さんは、高円寺の店と、地方郊外へ出向きイベント出店する二足の草鞋をエネルギッシュに履きこなす。

土佐食材のミールス1300円。タンドリーチキン300円を添えて。
土佐食材のミールス1300円。タンドリーチキン300円を添えて。
店主の大澤さん。
店主の大澤さん。

大澤さんが旅の途中で出合った食材を持ち帰って作るメニュー。取材時に提供していたのは土佐食材のミールスだった。「キジ出汁と大豆のダル」「四方竹(しほうちく)と高知しらすのアチャール」など、どれもやさしく淡い味付けでどこか懐かしい。提供は食材がなくなり次第終了。一期一会である目の前の一皿が尊く感じられる。

店頭では雑貨も販売されている。
店頭では雑貨も販売されている。

高円寺では近隣の店舗と連動してイベントを企画することも。「高円寺には小さなコミュニティがいくつも存在していて、どこかに属しながらも横断して暮らすことのできる自由さが心地いいですよね」と大澤さん。高円寺でのつながりで生まれたカレーを地方イベントに、地方で仕入れた食材を週末などに営業する店で提供するカレーに。この豊かな往来、無限に楽しめそうだ。

DATA:妄想インドカレーネグラ
住所:東京都杉並区高円寺南3-48-3/営業時間・休みはInstagramで確認を/アクセス:JR中央線高円寺駅から徒歩5分

【阿佐ヶ谷】一日の締めは、ディープ空間で本とお酒に酔いしれる

赤提灯が軒を連ねるスターロード商店街。
赤提灯が軒を連ねるスターロード商店街。

駅の南北に延びるケヤキ並木、阿佐谷パールセンター商店街をはじめとする活気ある街並み、ファン垂涎の企画で愛されるミニシアターや小劇場──。多くの顔を持つ阿佐ヶ谷には、かつて井伏鱒二、太宰治ら作家が形成した「阿佐ヶ谷文士村」と呼ばれるサークルがあった。その気質を受け継いだような知的でクリエイティブな街には、ブックカフェや名曲喫茶など趣味性の高いディープなスポットが点在。自分の好みを確立した人に“刺さる”街といえるだろう。

阿佐ヶ谷住人の脳内が反映された本棚『古書コンコ堂』(阿佐ヶ谷)

店頭の「百均本」を覗いてから帰途につく会社員の姿も。
店頭の「百均本」を覗いてから帰途につく会社員の姿も。

散歩の最終地、阿佐ヶ谷では閉店時間間際の『古書コンコ堂』でおもしろそうな古本を探した。ラインナップは文芸に人文、美術、漫画、絵本と幅広い。演劇好きの筆者は、故・蜷川幸雄が記した自伝的エッセイ『千のナイフ、千の目(まなざし)』(1993年・紀伊國屋書店)を手に取った。

買取本を精査する店主の天野さん。
買取本を精査する店主の天野さん。
入り口近くの棚には入荷したばかりの本が並ぶ。
入り口近くの棚には入荷したばかりの本が並ぶ。

西荻窪の『古書音羽館』で働いていた店主の天野智行さんは、2011年に独立。阿佐ヶ谷は買取本の質が極めて高く「ここ5年ほど市場へ仕入れに出ることなく、買い取りの本だけで棚を作っていますが、それはすごいことです」と阿佐ヶ谷住人の知的好奇心やレベルの高さに感心しているという。 

そんな店内は「阿佐ヶ谷に住んでいる皆さんの脳内が反映されていると言って差し支えないんじゃないかな」と天野さん。定期的に覗いて、住人気分を味わいたくなる古書店だ。

■DATA:古書コンコ堂
住所:東京都杉並区阿佐谷北2-38-22/営業時間12:00~20:00(土・日・祝は~19:00)/定休日:火/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩5分

コロナ禍による半年間の休業と、長期間の時短営業から復活した喫茶バー『よるのひるね』(阿佐ヶ谷)

最後はゆっくりアルコールを楽しもうと、本や漫画が置いてある喫茶バー『よるのひるね』へ。店主の門田克彦さんが夜に開ける店のため、営業時間は18時〜翌1時と遅め。仕事終わりに一人でくつろぐ客のほか、中央線カルチャーの香り漂う各種イベントを楽しむ人もいる。

夜のとばりが下りる頃、営業開始。
夜のとばりが下りる頃、営業開始。

店内では漫画家のトークイベントや、応援するアーティストのライブを開催している。コロナ禍による半年間の休業と長い時短営業期間を経て復活し、中止していたイベントも再開した。

店主の門田さん。
店主の門田さん。
人気ドリンクのシークワーサーサワー650円。
人気ドリンクのシークワーサーサワー650円。

開店20周年を迎えた店内にある蔵書のうち、門田さんが選ぶ永遠のスタンダードは「やっぱり『ガロ』から『アックス』の流れに関わる漫画ですね。水木しげるさん以下の諸作は鉄板」。「福満しげゆきさん達も強いですね」──。そんな話を聞きながら、シークワーサーサワーのグラスを傾けた。

■DATA:よるのひるね
住所:東京都杉並区阿佐谷北2-13-4/営業時間:18:00~翌0:30LO/定休日:火/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩1分

取材・文・撮影=岡山朋代