すべては血洗島からはじまった~渋沢栄一と仲間たちの足跡をたどる①
大河の主役が渋沢栄一に決まった、と聞いたとき、失礼ながら「そんなドラマチックな人だったっけ?」と思ったのも事実。近代日本で最も有名な実業家、会社をたくさん作った人。人望も厚く真面目な男だが、波乱万丈なイメージはない。だが、調べてみると案外、面白い。特に前半生。黒船来航から戊辰戦争を経て明治維新、そして文明開化。天保11年(1840)生まれなので、明治維新の年に28歳。「日本が最も激しく変化した時期」に、生誕してから10代、20代、30代と駆け抜けたことになる。しかも、裕福だったとはいえ農家の倅(せがれ)が徳川家に雇用され、ヨーロッパへ足を運び、やがて日本一の実業家となる。日本一の「成り上がり男」といってもいい。そして彼の傍(かたわ)らにいた、常に志を共にする仲間や、才気を認めた主君など、名脇役たちもいる。渋沢自身はもちろんのこと、『青天を衝け』に登場する人物たちの足跡が残る土地を訪ね歩き、これから数回に渡って紹介していきたい。とはいえまずは、渋沢自身だ。まずはその幼少期の足跡をということで、出生の地、岡部藩を訪ねた。