癒やしと食をテーマにした複合施設内の日帰り温泉

駐車場に隣接して立つアクアイグニス吉川美南。シックな外観が大人の施設であることを演出している。
駐車場に隣接して立つアクアイグニス吉川美南。シックな外観が大人の施設であることを演出している。

吉川美南駅西口に降り立つと目の前に大型ショッピングセンターのイオンタウン吉川美南が立つ。隣接するアクアイグニス吉川美南は、“癒やしと食”をコンセプトにした複合施設で、『アクアイグニス武蔵野温泉』は、“癒やし”を担う日帰り温泉施設。

建物に向かって1階右側に世界的パティシエ辻口博啓氏が監修するショコラトリー『LE CHOCOLAT DE H(ル ショコラ ドゥ アッシュ)』があり、店名を掲げた欧文の看板文字が目に止まる。階段を挟んで左側に『アクアイグニス武蔵野温泉』があるが周辺に目立つ看板もなく、気を付けていないと見逃してしまうのではないかと思えるほど控え目なエントランスだ。この景観を見ただけで、一般的なスーパー銭湯とは一線を画する施設であることがわかる。

ちょっと秘密感があるエントランス。のれんをくぐれば大人の湯処が広がる。
ちょっと秘密感があるエントランス。のれんをくぐれば大人の湯処が広がる。

内湯と露天合わせて4つの浴槽に茶褐色の温泉を注ぐ

加水なしの源泉を注ぐ上段の浴槽は、湯船の底が見えないくらいの茶褐色だ。
加水なしの源泉を注ぐ上段の浴槽は、湯船の底が見えないくらいの茶褐色だ。

エントランスを抜けると木と白壁がつくり出す洗練された空間が広がる。受付カウンターのすぐ先に浴室への入口がある。浴室は特に大きいというわけではないが、露天風呂側が全面ガラス張りになっているので明るく開放感がある。

内風呂には加温した源泉を注ぐ2段の浴槽と、白湯の大きめの浴槽の計3つの浴槽がある。源泉は地下1500mから湧出する含よう素-ナトリウム-塩化物強塩泉。冷え症や疲労回復、健康増進に効果があり、湯冷めしにくいという。たしかに、茶褐色の湯を見ていると「効きそう!」と思わせるし、実際に入ってみると湯上がりのポカポカ度が高く、体の芯から温まる湯であることがわかる。露天エリアは植栽と石畳が美しく、露天風呂にも源泉が使われ、かたわらには寝ころび湯もある。

左側が源泉風呂の下段、右側は白湯の浴槽。ガラス窓の向こうに露天風呂が見える。
左側が源泉風呂の下段、右側は白湯の浴槽。ガラス窓の向こうに露天風呂が見える。

浴槽は内湯と露天合わせて計5つ。ジャグジーやジェットなどの機能浴はなく、炭酸泉もサウナもない。種類豊富な浴槽を楽しみたい方には少し物足りないかもしれないが、落ち着いてゆっくり温泉を楽しむなら十分だ。何より駅からこんなに近くで、時間制限もなく、源泉風呂を格安料金で楽しめるのは魅力だ。

露天風呂は湯船も広くゆったりしているので、のんびりと過ごすにはぴったり。
露天風呂は湯船も広くゆったりしているので、のんびりと過ごすにはぴったり。

「湯を浴びる」という新しい温浴体験

ルフロは岩盤浴とミストサウナを合わせたような新しい体験。館内着で横になれば、じんわりと汗が噴き出てくる。
ルフロは岩盤浴とミストサウナを合わせたような新しい体験。館内着で横になれば、じんわりと汗が噴き出てくる。

『アクアイグニス武蔵野温泉』のユニークな温浴施設にLe Furo(ルフロ)がある。火山層の鉱石を細かく砕き、高圧の釜に投入して高密フィルタでドリップして温泉成分だけを溶解してミスト化する。Le Furoとは、このミストが充満した浴室で発汗を促すミネラルミストサウナだ。つまり、ミストそのものが温泉であることが一番の特徴で、「湯を浴びる」というのはこのことを示す。

数回の入浴の途中、オリジナルのミネラル入りウォーターを飲みミネラル補給することで代謝がアップし、疲労回復、ダイエットにもつながり、肌の潤いも増すという。少々値は張るが、美と健康のためなら試してみる価値はありそうだ。4000円(入館料別。1回2時間まで。タオル・館内着・ミネラル入りウォーター付き)。利用する場合は入館時にフロントで予約を。

休憩コーナーに漫画がないのも、この施設のスタンスの表れ

階段式の休憩コーナー。浴室から出たところにあるので湯上がりの待ち合わせに最適。
階段式の休憩コーナー。浴室から出たところにあるので湯上がりの待ち合わせに最適。

湯上がりは本棚と読書スペースがある休憩コーナーへ。本棚に漫画はなく、アート系やライフスタイル本などが中心。かたわらにはテーブルとイスが並び、Wi-Fiも使えるので、ノートパソコンを持っていけばコワーキングスペースとしても利用できる。

フードコートまいもん食堂。
フードコートまいもん食堂。

注目は「まいもん食堂」。北陸金沢を拠点とした金沢まいもん寿司がプロデュースしたフードコートで、海鮮ばらちらし、三色丼、金沢カレー、醤油つけめんなど、和洋中さまざまな料理を味わえる。どの料理も日帰り温泉としては珍しいほどクオリティが高いが、なかでも『LE CHOCOLAT DE H』のスイーツを食べられるのはうれしい限りだ。

辻口シェフ監修のスイーツを味わえる。日帰り温泉で、これだけクオリティの高いスイーツが味わえるのは珍しい。
辻口シェフ監修のスイーツを味わえる。日帰り温泉で、これだけクオリティの高いスイーツが味わえるのは珍しい。

一流料理人プロデュースの飲食店が勢ぞろい

上質な空間が広がるアクアイグニス吉川美南で温泉と食を楽しめば、身も心もリフレッシュできる。
上質な空間が広がるアクアイグニス吉川美南で温泉と食を楽しめば、身も心もリフレッシュできる。

『アクアイグニス武蔵野温泉』で“癒やし”を満喫したら、アクアイグニス吉川美南のもう一つの魅力である“食”も楽しみたい。

1階には『LE CHOCOLAT DE H』があり、2階には辻口博啓氏のベーカリー『Mariage de Farine(マリアージュ ドゥ ファリーヌ)』をはじめ、世界の料理人1000人にも選ばれた奥田政行シェフの自然派イタリアン『Al-ché-cciano(アル・ケッチァーノ)』、南青山にある『4000 Chinese Restaurant(ヨンセンチャイニーズレストラン)』、中華の達人・菰田(こもだ)欣也氏のカジュアルチャイニーズレストラン『麻婆点心館』など、日本を代表する一流料理人がプロデュースする店が勢ぞろい。

アクアイグニス吉川美南の施設長・福島智雄さんは、「温泉、ルフロ、飲食施設などで、ワンランク上の休日を楽しんでください」と話す。

たしかにその言葉どおり、上質な空間が広がるアクアイグニス吉川美南での温泉や食のひと時は、日常を忘れ、少し優雅な気分で過ごすことができる。この雰囲気を楽しむだけでもここに来る価値がある、そう思わせる施設だ。

取材・文=塙 広明 写真=アクアイグニス武蔵野温泉