マヂカルラブリー

大宮一番街の大宮ラクーン前。月20本以上のライブに出るため定期券で電車通勤をしていたマヂラブ。
大宮一番街の大宮ラクーン前。月20本以上のライブに出るため定期券で電車通勤をしていたマヂラブ。

左:屋号「野田氏」こと野田クリスタル/ 1986年、横浜市出身。右:「太し」こと村上/ 1984年、愛知県新城市出身。コンビ結成15年目。2017年のM-1決勝戦で最下位を喫すも2020年に優勝。ニッポン放送「マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0」に出演中。

【大宮ラクーンよしもと劇場】
大宮ラクーン6階、吉本興業の常設劇場。大宮セブンを始め、人気芸人がほぼ毎日出演。週末は寄席も。JR各線・私鉄大宮駅東口から徒歩1分。☎048-782-6871。座席数141席。公演情報はyoshimoto.co.jp/omiya/をチェック。

「夜チームが楽しくて毎日が愉快でした」

それぞれ個人戦で結果を出し始めた8年目の「大宮セブン」たち。
それぞれ個人戦で結果を出し始めた8年目の「大宮セブン」たち。

——「大宮セブン」に選ばれたきっかけから教えてください。

野田 : ある日、本社に呼び出されたんです。「あなたたちの仕事は年に5本でした。大宮行きますか」と。都落ちだ、もう東京の王道コースを諦めにゃならんのかなとシンプルに思いました。

村上 : 左遷だなと。飛ばされた感、ありましたねえ。

野田 : でも大宮でしか生きのびるすべがない。

村上 : 大宮と同時にできた幕張『よしもと幕張イオンモール劇場』は、東京で活躍中の芸人の集まりで、華やかでおしゃれ。

野田 : 一方大宮は、人気が出ないやつらと、芸歴をやたら重ねたやつらの“野良犬集団”。その野良の中でもAチーム、Bチームがあって、僕たちはBチーム。やや認知度のあるAチームの金魚のふんとしてネタをやらせてもらうという始まりでした。

村上 : 最初の2年は月に20日以上、高円寺から定期券で通って、そのうち、大宮がすごく近く感じるようになって(笑)。

野田 : 僕も吉祥寺から定期通勤。

村上 : 楽しみは、『デリカ チャオ』の唐揚げを食べること。

*デリカ チャオ……「全大宮芸人が大好き」なお弁当屋さん。唐揚げ、カレーが人気。大宮駅から徒歩3分。☎048-644-7984

野田 : 駅前でチラシ配って、唐揚げ食べて、ハロウィンで仮装して街歩いて、唐揚げ食べて。

村上 : 寄席終わりに赤はっぴ着てポストカード配って。唐揚げ食べる(笑)。

野田 : 誰も吉本の劇場が大宮にあるなんて知らないから、高校生が僕たちのパネル見て「誰だこいつら?」って。俺と目が合って「あ、いた! おーい、マヂカルラブリ〜」って。お前ら、おぼえとけよ……って。

村上 : 売店にプリクラ機があって、5公演の通し券買うと、お目当ての芸人とプリクラが撮れるっていうのをやってた時は、芸人仲間から「お前ら、客とプリクラ撮ってんだって?」って。

野田 : ネタで客を呼べない、プリクラ芸人……。

村上 : 劇場を暗くして埼玉の奥地から届いたホタルをお客さんと見る会とかもやりましたね。

野田 : 主役は芸人じゃなくホタル。なのに、あんまり光らないからふっふっふう〜! って。

村上 : みんなで息吹きかけたら、ホタルが翌日全滅してて。

野田 : ホタルもストレスで絶命する。そんな地獄の始まりです。

村上 : そのうち、劇場が終わってから地元の方々と飲みに行ってチケットを買ってもらう「大宮夜チーム」というのができたんです。支配人が『スーパーオートバックス 大宮バイパス』さんや『清水園』さんなど、地元の有力者の方々と僕らを引き合わせてくれる会。

野田 : ある日、ライブが始まると客席に老人がぽつんと座ってる。お客さん一人なのに、チケットはすごい売れてる奇怪な状況。

村上 : あのおじいちゃんは、2列分の券を買ってくれますから。

野田 : 夜チームに一切関わらなかった僕は、ありがたいような……複雑な気持ちでした。

 

*スーパーオートバックス 大宮バイパス……店長のお笑い好きが高じ、お笑いステージが誕生。ライブを毎月開催。JR川越線西大宮駅から徒歩20分。☎048-621-0189

*清水園……明治3年(1870)創業、老舗の風格漂う結婚式場。大宮駅から徒歩10分。☎048-643-1234

お金持ちの接待に励む終演後の「夜チーム」

村上 : 夜チームは、来れる人が限られてますからね。『Borabora 大宮店』っていうカラオケできるお店で、お金持ちのおじいちゃんが「アンパンマンマーチ」を歌うのを、きっちり盛り上げて、「今度施設に呼んでください。安くても行きますから!」って。おじいちゃんを喜ばせるために女友達を呼んで、一緒にわいわい飲んで食べて楽しめるメンバー。「えんにち」(〜2017)の望月さんはじめ、完璧な布陣で臨んでましたから。

野田 : 地元の名所やイベントの営業にも呼ばれるようになって。

村上 : 『清水園』さんは、ご令嬢が大宮セブンをめちゃめちゃ応援してくれて、お祭りや催しに呼んでくれたり、チャペルの階段の踊り場でネタやらせてくれたりしてね。

野田 : これが一切ウケない。基本スベる。むしろスベりに行く。

村上 : そうね、ただひたすら時が過ぎるのを待つ(笑)。

野田 : 「お神輿事件」も忘れられない。大宮の祭りで劇場裏の大通りをお神輿が通る時、道の端に作った即席舞台でネタをやるんだけど、お神輿が移動するにつれお客さんも一緒に流れてく。お神輿が舞台に戻る頃には、ネタもぜんぜん変わってる、という。

村上 : ウケようもないパターンですね。

野田 : ショッピングモールでやった時も、2000人くらいお客さんいるのに、僕たちのネタはゼロ笑い。ひとクスッもないなと思ってたら、そのあと「ハリセンボン」さんが出て、ばおんばおん大爆笑。あとで「やっぱハリセンボン面白いね。なんかつまんない芸人も出てた」ってツイートが流れてくる。

村上 : 「タモンズ」と出たソニックシティの「スピーカー逆向き事件」もありましたねえ。

野田 : なぜか、スピーカーが舞台側に向いてて、声が客側に一切届いてない(笑)。屋台が出てて、それに並んでる人も屋台だけを見てる。待ってる時ぐらい、ネタやってる舞台を見たらいいじゃない。屋台よりかちょっとだけ、面白いはずじゃないか!?

村上 : 屋台のほうが、ちょっとだけ面白かった……んだろうね。

——そんな「タモンズ」と約束したことがあったとか?

村上 : 「大宮セブン」が始まった時、大波さんに「ブレずに行きましょうね」って。大宮の寄席で10分の尺に慣れるとテンポが違ってくる。そこでウケることを追求したら、(メジャーで)売れるのは遠くなる感覚はあって。漫才師なんだからM-1は目指してましょうって言いました。

野田 : 俺は、大宮セブンをすぐ抜けると思ってたから。でも、絵が見えたの。ここで村上と俺が死ぬ絵が見えたの、まじで。大宮で俺ら詰んでる……って思った時に、いや待て。詰んでると言えるところまで、まだやってない。M-1をもっと真剣にやろう、勝ちに行けるネタを一回作ろう、ここで死んでたまるかって。

村上 : その頃の僕は、毎日を楽しんでました。すっかり夜チームの仲間との絆も深まり、これはこれで幸せだなぁ〜って。

 

インタビュー全文は、発売中の『散歩の達人』2022年3月号でお楽しみください!

【最新ライブ情報】この春、新メンバーが登場! ?  大宮セブンライブ特別編
~さようなら市民会館おおみや。こんにちは新メンバー。~

日時: 3月18日
会場: 市民会館おおみや 大ホール
時間: 開場17時30分 開演18時30分(約120分)
料金: 前売り3500円 当日4000円
出演: 大宮セブン( 囲碁将棋/マヂカルラブリー/GAGタモンズ/ジェラードン<アタック西本、かみちぃ>すゑひろがりず/大宮セブン新メンバー)
FANYチケットにてチケット好評発売中!!

取材・文=さくらいよしえ 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2022年3月号より一部抜粋