動物初詣はいかにして始まったのか?

イラストレーターとして活動する前、3年ほどデッサンの学校に通っていた。その学校のK先生や、同期の友人とはいまだに交流が続いており、たまに集まってはイベントや山登りに行ったり、食事をしたりする間柄である。

12年前、その集まりの中で誰かが「干支の動物にまつわる寺社へ初詣に行こう」と発案し、その時から「動物初詣」が我々グループの恒例行事となった。「初詣をそんな軽々しく扱ってもいいものか、毎年決まった寺社に詣でなければいけないのではないか」と考える人もいるかも知れない。しかしそもそも現在のようなスタイルの初詣は明治以降の比較的新しい文化でもあり、鉄道各社の戦略によって生み出された行事だということは、平山昇氏により指摘されている(参考文献『鉄道が変えた社寺参詣』交通新聞社新書)。となれば、初詣はもっと自由なものであっても良いのではないか。そんなわけで「動物初詣」がスタートしたのである。

スタートは2009年の丑年

動物にまつわる寺社には、「動物が神の使い(眷属、神使)として扱われている」「動物自体が神として祀られている」「狛犬のような動物の像がある」など、さまざまなパターンがある。このような寺社は全国にあるが、我々が気軽に行くことができる東京近郊の寺社を中心に行き先を選ぶことにした。

「動物初詣」が発案されたのは2008年。次に迎える新年、2009年は丑年である。そこで我々は、文京区にある「牛天神」北野神社に参詣することにした。

後楽園近くにある牛天神。(2009年)

菅原道真と牛は縁が深く、そのためどの天満宮も「牛に関わりがある」と言えるのだが、この「牛天神」は特に源頼朝の願いを叶えた牛型の岩(各地の天満宮に置かれる「撫で牛」像の由来ともなった岩)の発祥の地でもあり、丑年に最適の参詣先でもあった。

境内には牛の像がある。(2009年)
源頼朝が腰掛けたといういわれのある牛型の岩。(2009年)

2011年卯年は浦和、2012年辰年は門前仲町

2011年(卯年)の新年には、浦和にある調(つき)神社に参詣した(2010年《寅年》がないではないか、とお気づきの方もいらっしゃるかと思うが、さまざまな理由で初詣に行けない年もあったのである。同様に2013年《巳年》、2017年《酉年》も行けていない)。調神社は「つき」という読み方から月待信仰が生まれ、月の動物とされるウサギが神使として考えられるようになったとのことだ。そのため狛犬ならぬ狛ウサギをはじめ、境内の至る所にウサギが配されており、なんともかわいらしい。

2012年(辰年)には、門前仲町にある深川不動尊境内の深川龍神に詣でた。

深川龍神の水鉢。(2012年)

龍が水を吐く水鉢に願い事を書いた紙札を浸すと、それが溶けて龍神様に願いが届くということだったので皆それぞれに試したが、「いい出会いがありますように」と記した友人Kさんの札だけはいつまでも溶けず水面に浮かび続けた。あれから8年が経つが、Kさんにいい出会いがあったかどうか、怖くて聞けていない。

友人Kさんの願い札だけはいつまでも溶けなかった。(2012年)

2014年午年は目黒、2015年未年は府中、2016年申年は虎ノ門

2014年(午年)、中目黒にある目黒馬頭観音を訪れた。こちらは頭上に馬の顔を置いた馬頭観音を祀った小さな観音堂である。夜に訪れてしまったがために肝心の馬頭観音の姿ははっきり見えなかったのだが、馬の息災、ひいては現代の交通安全にも御利益があると聞き、「事故に遭いませんように」と祈願した。

中目黒駅近くの賑わっている一角にある目黒馬頭観音。(2014年)

2015年(未年)の初詣はなかなか決まらなかった。全国で見ると、その名もズバリの「羊神社」が名古屋や安中にあるのだが、東京から行くには少々遠い。そんな時、府中の大國魂神社は、境内に羊の像があるわけではないが羊が祀られているという話を聞き、行き先に決めた。ところが、大國魂神社はそうでなくとも毎年初詣客の多い神社である。昼過ぎに呑気に赴いたところ、境内の外まで連なる大行列。我々はその行列を見るなりクルリと踵を返してランチに向かった。志が弱い。

2016年(申年)には、虎ノ門にある栄閑院を訪れた。江戸時代に猿回しに扮した泥棒がこの寺に逃げ込んで改心し、その泥棒が置いて行った猿が寺の人気者になったという由来から「猿寺」とも呼ばれる寺である。境内には狛犬ならぬ狛サルが置かれていた。

 

栄閑院境内にある猿の像。(2016年)
狛猿なのでもう一匹。(2016年)
ふと屋根を見上げると隅にも猿が。(2016年)
屋根の反対側にも!(2016年)

2018年戌年は秩父、2019年亥年は御嶽

2018年(戌年)、2019年(亥年)はともに自然を堪能する初詣となった。山登りが得意なK先生のおかげである。秩父・三峯神社には「お犬様」と呼ばれる山犬信仰があり、御岳山・武蔵御嶽神社の本殿脇の皇御孫命社には狛犬ならぬ狛猪が設置されている。寒風吹き付ける1月の山を歩きながらの動物初詣も悪くない。

秩父・三峯神社参道入口にある犬像。(2018年)
お犬様も対。(2018年)
武蔵御嶽神社の狛猪。(2019年)
狛猪、お尻がかわいい。(2019年)

2020年子年は横浜、そして2021年丑年は……?

一転して、2020年(子年)には横浜にある戸部杉山神社を訪れた。7世紀半ばに創建された歴史ある神社であるが、創建1350年を記念して、2002年に御祭神の大国主命の使いである狛ネズミが境内に建てられた。小槌を持った雌雄の狛ネズミは台座が回るようになっており、願いを込めて回す参拝客の行列が後を絶たなかった。

戸部杉山神社の狛ネズミ。雌雄二体がある(2020年)

そして来年、いよいよ干支が一回りした。コロナ禍の現在、各寺社は終夜参拝を取りやめたり、分散参拝を呼び掛けたりしている。1月中くらいに参拝できれば、といったゆったりした気持ちで、2021年の干支、牛にまつわる寺社を今から探したいと思う。

願いを込めて台座を回す。(2020年)

絵・取材・文=オギリマサホ

2011年の11月、私は年賀状のデザインに悩んで公園にいた。その時ふとひらめいてしまったのだ。児童公園には実にいろんな種類の動物遊具がある。もしかすると十二支(じゅうにし)が揃うのではないか。そしてその十二支遊具にライダーの格好をしてまたがった写真を年賀状にすれば、12年分の年賀状デザインを考えずに済むのではなかろうか、と。ライダーの格好なのはただ単に私がバイク乗りだからだ。
2011年から始まったオギリマサホの「十二支ライダー」年賀状シリーズ。辰(たつ)巳(へび)午(うま)と最初の3年は順調に乗りこなしてきたが、未(ひつじ)、申(さる)の年、ライダーの前に大きな困難が立ちはだかったのだった……。 
「十二支ライダー」年賀状シリーズもいよいよ佳境。2016年の干支(えと)であるサルの撮影中、筆者は大変なピンチに遭遇することとなった。つまり、ライダー危機一髪!
日本各地の和菓子店や土産物店で売られるもなかには、さまざまな形があることを前回述べた。もはや、もなかで表現できないものはないのではないかという勢いである。今回はその中でも、動植物をかたどったもなかについて見ていきたい。
観光客向けに作られた土産物の菓子には、大きく分けて二種類ある。その地の特産品を利用した菓子と、その地の観光名所や名物をかたどった菓子だ。後者の場合、パッケージに観光名所等の写真や絵が印刷されているのみで、中身は普通のクッキーやまんじゅうであることも多い。しかし、菓子本体が名物の形をしていることもあり、それは大抵「もなか」ではないだろうか。