クルマもなか、バイクもなか、電車もなか

まず自動車型のもなかについて見てみたい。トヨタ自動車のおひざ元である愛知県豊田市では、市内の多くの和菓子店で自動車もなかを販売している。その中でも『つたや製菓舗』の「幸せのくらうん最中」は、その名の通りトヨタの代表的な車種「クラウン」をかたどったもなかで、高級感漂うデザインとなっている。

 

幸せのくらうん最中。角目ライト、ドアミラー、王冠型エンブレムなどの特徴から、 「いつかはクラウン」のキャッチコピーで有名な7代目クラウン(1983年発売)がモデルではないかと思われる。(2017年)

SUBARUの企業城下町として知られる群馬県太田市の『伊勢屋』でも、「スバル最中」が販売されている。1961年の発売以降、時代とともにかたどられる車種が変わっており、現在の「スバル最中」はレガシィB4がモデルとなっているとのことだ。

 

スバル最中。これから先、またモデルチェンジがあるかも知れない。(2019年)
スバル最中は包装紙もいい味を出している。(2019年)

乗り物もなかは、単に生産地にちなんだものとは限らない。鈴鹿8耐など主要なオートバイレースが行われる鈴鹿サーキット近くの『とらや勝月』では、疾走するライダーをかたどった「ライダーもなか」が販売されている。

 

ライダーもなか。複数台を並べてみたくなる。(2020年)

電車もなかは、路面電車やモノレールなど小型車両をかたどったものが多い。「都電もなか」(菓匠明美)、「江ノ電もなか」(扇屋)、「多摩モノレール最中」(高幡まんじゅう松盛堂)などの電車もなかは、車両のイラストが描かれた小箱に入れられており、もなかを食べ終わった後も電車遊びが楽しめるようになっている。

都電もなか。中に求肥が入っている。(2015年)
都電もなかの個包装箱には各種の車両イラストが描かれている。(2015年)
都電もなか10輌入りの箱は、車庫のデザインになっている。(2015年)
多摩モノレールもなか。実際の車両に忠実な造形。(2017年)
多摩モノレールもなかの個包装も車両デザイン。(2017年)

バルブもなか、けん玉もなか……

これら乗り物を「工業製品」という観点で見ていくと、工業製品をかたどったもなかも数多くある。滋賀県彦根市は地場産業としてバルブ生産が盛んであり、このバルブをかたどった「バルブもなか」(風月堂)が販売されている。また、現在のようなけん玉の形が生み出されたのが広島県廿日市市であることから、市内では「けん玉もなか」(和洋菓子ながお)が販売されている。こうしたもなかによって「へぇ、彦根ってバルブ生産が盛んなんだ」「廿日市ってけん玉発祥の地なんだ」と知る人も多く(私もそのうちの一人である)、もなかが地域産業に貢献している良い例であると言えよう。

バルブもなか。玉型弁をデザインしたものと思われる。(2018年)
けん玉もなか。小倉・柚子・抹茶味がある。(2018年)

しかし、もなかは日持ちがしない

このような変わった形のもなかを探し求めることは、私にとってはもはや旅の目的の一つとなった。これを私は「もな活」(もなか活動の略)と呼ぶ。とは言え、何も遠くに行く必要はない。地元の和菓子店にこそ、普段は気づかない「形の変わったもなか」が潜んでいるかも知れないのだ。近場を巡って素敵なもなかを発見する「もなか散歩」を多くの人に勧めたいところなのだが、それにあたっては何点か注意しておかなければならないことがある。

まず、もなかは余り日持ちがしない菓子であるということだ。土産用に真空パック詰めされているもなかもあるが、餡が詰められた瞬間からもなかの皮は湿気を吸っていく。たとえば私は以前、関西旅行に行った際に尼崎で「ホームラン最中」(尼銘)を購入した。野球ボール型のもなかに魅力を感じたからである。店員さんには「すぐに食べてくださいね」と言われたのだが、旅の途中ということもあり、翌日帰宅するまで持ち歩いてしまった。その結果、もなかはすっかりシナシナになり、こちらの気持ちもすっかりシオシオのパーになってしまった。「もなかを入手したらすぐに家に帰る」ことを心掛けたい。

野球ボールの真ん中に「ホームラン」と書かれたデザインだが、シナシナになってしまった。(2018年)

もなかを崩さずに運搬する画期的手段

また、もなかの皮は大変崩れやすい。贈答用の箱詰めになっているもなかはともかく、自らのお土産用に1個2個購入するといった場合には持ち運びに大変気を使う。

友人が山形土産に買ってきてくれた「王将最中」(浅沼菓子店)。気を付けて持ってきてくれてはいたのだが、やはり角が崩れてしまう。(2018年)

そこで提案したいのが「もなか用箱」を持ち歩くことである。日の出町の『幸神堂』で「山荘最中」を購入する際、恐る恐る持参した紙箱(たぬきもなかが入っていた箱である)を差し出すと、店員さんが快く応じてくれた上、包装紙まで掛けてくれた。大変ありがたいことである。

 

前回のコラムで紹介した王子『狸家』の「狸最中」が入っていた箱を「もなか用箱」とした。(2018年)
日の出町の『幸神堂』では、持ち込みのもなか用箱に綺麗に包装紙をかけてくれた。(2018年)
綺麗に収まっている「山荘もなか」。(2018年)
バイクで運搬したにもかかわらず、どこも崩れずに持ち帰ることができた。(2018年)

問題があるとするならば、箱を持ち歩くとカバンの中でかさばることだろうか。しかし私は最近、その解決策を見出した。それはサンドイッチケースなどの「折り畳める箱」である。これならばカバンにも忍ばせやすく、いつ素敵なもなかに出会っても崩さずに持ち帰ることができる。

私の現在の「折り畳みもなか箱」。カープ柄なのは個人的な趣味である。(2021年)
折り畳めばコンパクトに持ち運ぶことができ、どんな時も安心してもなかが買える。(2021年)

ぜひ皆さんもカバンにサンドイッチケースを忍ばせて、「もな活」に参加してみませんか。

 

絵・取材・文=オギリマサホ

観光客向けに作られた土産物の菓子には、大きく分けて二種類ある。その地の特産品を利用した菓子と、その地の観光名所や名物をかたどった菓子だ。後者の場合、パッケージに観光名所等の写真や絵が印刷されているのみで、中身は普通のクッキーやまんじゅうであることも多い。しかし、菓子本体が名物の形をしていることもあり、それは大抵「もなか」ではないだろうか。
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【編集部より】新年あけましておめでとうございます。オギリマサホさんによる当連載、現在「もなか」がテーマの第2回が終わったところで、今回は第3回の予定でしたが、巡り合わせよく2021のお正月が間に挟まってしまいました。毎年干支の動物にライダー姿で跨る「十二支ライダー」の年賀状(メールのみ)が出版界をざわつかせているオギリマさんですが、それと似て非なる年中行事として「動物初詣」も続けておられるとか。「だったら、ジミな『もなか』は一回飛ばして十二支初詣の話を書いてくれませんかねえ?」という編集部の願いが叶い、今回のテーマは動物初詣と相成りました。もなかファンの皆様には大変申しわけございませんが、ちょっと我慢してください。
街を歩いていると、「消火栓」とか「防火水槽」などと書かれた赤い円形の標識を目にする。しかし「消防水利」と「防火水槽」と「消火栓」はそもそもどう違うのだろう? そしてあの赤色はどのように経年変化していくのだろう? などの疑問をきっかけに防災について興味を持ってもらうというのはどうだろう?
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梅雨が明けて暑さが厳しくなってきた。例年であればマスクのマの字も話題に上らない季節であるが、今年は街行く人のほとんどがマスク姿である。マスク姿になっているのは生身の人間ばかりではない。こちらのコラムでは3月に、薬局の店頭にいるパンダ人形・ニーハオシンシンのマスク姿を調査した。その後4月16日に全国に緊急事態宣言が発令されると、シンシンばかりでなく、全国の銅像や店頭人形がこぞってマスクを着けはじめたのである。不要不急の外出を控えなければならない身としては、直接その姿を見に行くこともままならず、毎日のように地域ニュースで報じられる「○○像がマスク姿に」という情報をちまちまと収集していた。