全国の産地から直送の魚は食べに行く価値あり!『サカナヤマルカマ』

はじまりは鹿児島県阿久根と鎌倉の交流プロジェクトからはじまった魚の移動販売で、その際に北鎌倉台商店街を訪れたのが店舗オープンのきっかけ。阿久根や小田原など全国の産地から仕入れた魚がずらりと並ぶ。今泉台出身・元町内会長の田島幸子さんが代表理事となり、看板娘として活躍! 店先の通りを活用して刺し身やフライで飲める角打ちやコラボイベントを行い、酒好きや食通からも熱い視線を集める。

11:00~18:00、月~水休。
Instagram:@sakanaya.marukama

美と健康をテーマに商店街の魅力を人から人へ『HAREYA 鎌倉』

「さまざまなイベントを通して人と人をつなぎ、コミュニティーを作りたい」と話す、店主の津下恵子さん。まず取り入れたのが、カラフルな布の上で体を動かすシルクサスペンション。このほかにも、三浦半島の朝採れ野菜販売や日曜日に不定期でオープンする茶屋、ピラティス、ヨガ、タロットなどのワークショップを開催し、商店街に人を呼ぶ地道な活動を継続中。

11:00~17:00、不定休。
Instagram:@hareyakamakura

ヒストリーから生み出す特別なジュエリー『deux larmes (ドゥ・ラルム) Atelier&Gallery』

西鎌倉出身ながら、今泉台に引っ越してから商店街の存在を知ったというデザイナーの東満里奈さん。一人一人の背景を聞き、歴史を落とし込んで作られるジュエリーは唯一無二。オープン当初は「こんな場所で大丈夫?」とも言われたそうだが、最近では関西や四国など遠方から訪れる人も増えてきた。マリッジリングやベビーリングのほか、節目を祝う記念ジュエリーを作るのもすてきだ。

11:00~16:00、不定休。
Instagram:@deux.larmes

コーヒーも空間もゆったりと味わい深い『野村珈琲』

店主夫妻共通の趣味がアンティークで、店内の家具や絵画などはコツコツ集めていたもの。ノスタルジーな商店街とはまた異なるゆるやかな時間が流れ、本をめくる音や穏やかな話し声といったささやかな音が心地よい。コーヒーは手回しロースターの自家焙煎豆をネルドリップ。どっしりと深みのある「夜船」500 円のほか深煎りが中心。ブラウニー400円やトーストなども用意。

10:00~17:00、月休(日は不定)。
Instagram:@nomura_coffee

店主とのおしゃべりと極薄たい焼きが名物『一丁焼き こたろう』

カセットコンロの強烈な炎で鋳型を包むように焼き上げる。「宇宙でここだけ」の言葉にそそられる金時甘納豆のうす焼き600円は、豆の素朴な風味が広がり、表面はカリッ中はもっちり。元々は奈良と京都の行列店で、テレビ出演も多い。番組を観て来てくれたお客さんにも「せっかくここでやるなら面白いほうがいいでしょ」と、近隣のお店の紹介を欠かさない。

10:00~18:00(あんがなくなり次第終了)、不定休。
☎090-3238-0297

パンへの熱い思いをじっくり伝えられる場所『Cailloux(カイユー)』

小学生時代から天然酵母パンを作っていたという店主の吉田浩気さん。ものづくりの延長で美術に進んで教師をしていたが、諦めきれずにパン屋になる夢を実現した。100%国産オーガニックの小麦やソバ粉などを使ったハード系の天然酵母パンが中心で、パン・ド・カイユー1200円(ホール)など。「時間をかけて作るので、会話をしながら選んでほしかったんです。ここはまさに理想通り!」。

11:30~17:00、日~水休。
Instagram:@pain_cailloux

ご近所さんのための超アットホーム居酒屋『山や』

創業約60 年の酒販店から若者が集う酒場を経て、コロナ禍後に焼き鳥居酒屋に。現在は3 代目の山田隆史さんからバトンタッチされた手塚仁啓さんが店を切り盛りする。手塚さんは今泉台で育ち、約10年前にここに通っていた常連客の一人。客はご近所さんがほぼ9割で、犬の散歩中に立ち寄る人も多いので、店内も犬連れOK ! ジューシーな焼き鳥は1 本190 円~、日本酒550円~など。

営業は水・金・土の17:00~24:00。
☎0467-45-0577

商店街を変えた新参者たちの軌跡

休日はハイキング帰りの客も多い『サカナヤマルカマ』の角打ち。
休日はハイキング帰りの客も多い『サカナヤマルカマ』の角打ち。

人気の少なかったシャッター商店街に風穴を開けたのは、2021年にオープンした『HAREYA 鎌倉』の津下さん。古民家再生の物件探しでこの場所に出合った。「面白くなる!という直感があったんですけど、お客さんが全然来なくて失敗したーって(笑)」。

そんなときに突然テレビに取材され、その番組を観ていた『一丁焼きこたろう』が「お店をやるのにちょうどいい」と、2022年に奈良から移転。続いて、コーヒー店をやるのが夢だった『野村珈琲』の野村夫妻が『山や』の間借りでカフェをはじめた。また、別の人がやっていた間借りカフェのランチで出されていたのが『Cailloux 』吉田さんが作るパンだった。「ハード系が受け入れられるか試させてもらったんです」。

散歩の休憩がてら、たい焼きを食べながらちょっとおしゃべりするのが日課のご近所さんも。
散歩の休憩がてら、たい焼きを食べながらちょっとおしゃべりするのが日課のご近所さんも。

こうして2023年に『野村珈琲』と『サカナヤマルカマ』、2024年に『Cailloux 』が独立オープンし、あれよあれよと商店街に新しい店舗が増えていった。

『野村珈琲』の手作りの北鎌倉台商店街マップ。商店街への思いがつづられている。
『野村珈琲』の手作りの北鎌倉台商店街マップ。商店街への思いがつづられている。

商店街ぐるみのイベントもスタート

2025年に『deux larmes 』が仲間入りしたことで新たなステージの扉が開いた。店主・東満里奈さんの夫・徐哲さんは以前から地方活性化の必要性を感じていたそう。「盛り上がりつつある商店街と出合って動かずにはいられませんでした」。2026年3月には徐さんの声かけでイチゴのイベントが開催され、約5000人の町に1000人が来場。遠目に見ていた近所の人の姿も見られるようになった。

さらに休日となれば、店先にテーブルを出して開かれる『サカナヤマルカマ』の角打ちも大盛況。広報・狩野真実さんは「鮮度と丁寧な下処理には自信があります。こだわってやっていれば人は来てくれます」と、手応えも感じている。

角打ちではフライや刺し身に合う九州の焼酎も。
角打ちではフライや刺し身に合う九州の焼酎も。

こたろうさんはコピーライター、吉田さんは美術教師、狩野さんはアパレル、『サカナヤマルカマ』の田島さんは元町内会長など異なるキャリアや個性を持つのも強みだ。「鎌倉のチベット」と呼ばれる不便な場所だからこそ、ただ者ではない人が集まるのかもしれない。「ここに来れば面白いことがあると思える“みんなの通り”にしたいですね」と話す田島さんの願いがかなうのもそう遠くない!

取材=井島加恵 撮影=yOU
『散歩の達人』2026年6月号より