春日部っ子思い出のパンも再現『Bakery nico.1(ニコイチ)』【春日部】
「毎日来ても飽きないように、楽しめるように」と店主・大塚和(わたる)さんは、曜日や季節ごとに違うパンを常時約40種類焼き上げる。10種類の小麦粉を用意し13種類もの生地を作り分けるそう。2024年の開店時からあるプリンパンは、高校時代の購買で食べてきたパン屋「まつば」の思い出の味を自己流に再現。昔ながらのプリンの味がいい。
8:00~18:00(土・祝は8:30~)、日・第1・3・5月休。
☎080-4128-0251
日常の一部にしたいコーヒーと焼き菓子『AWESOME COFFEE STAND』【春日部】
アメリカンカルチャーが薫る小粋な内装のスペシャルティコーヒーの店。自家焙煎を含めた4つの単一品種とブレンドの計5種類の豆が買え、抽出方法はフレンチプレスかペーパードリップを選べる。「朝も昼も気軽に寄れる、日常の一部になりたいです」と店主の上地蔵(うえちおさむ)さん。妻・理沙さん手焼きの菓子がコーヒーに相性よく寄り添う。
8:00~16:30(土・日は~18:00)、水・第1・3木休。
☎048-796-3505
春日部発のアパレルブランドがここに『RUDIE'S LOCAL SHOP』【春日部】
1991年に春日部駅東口で古着屋として創業し、今では2つのオリジナルブランドを扱うアパレルショップ。丈夫な素材を多用したストリートテイストのTシャツやパーカー、小物類が並ぶ中、2020年からは『クレヨンしんちゃん』のコラボ商品の姿も!「うちらしいデザインに落とし込んでいます。お客さまの層もかなり広がりましたね」と店長の清水正弘さん。
12:00~18:00、水・木休。
☎048-763-6996
憧れの家具に囲まれウキウキランチ『TAKUMI SALONE』【春日部】
『匠大塚 春日部本店』1階のカフェは266平方メートルもの広い客席に高級家具をゆったり配置。家具フロアで人気の飛騨高山の家具やトチノキ、モンキーポットの一枚板テーブルなどに実際座って食事ができる。シェフによる料理は、サラダのドレッシングもパンも自家製で、「今日の逸品ランチ」やカレーに使うお米は春日部産のコシヒカリだ。
11:30~18:00LO(料理は~15:00)、火休。
☎048-812-7837
時を忘れて迷いたくなるレコードラビリンス『A-1 ミュージック』【春日部】
レンタルレコード店時代も含めて45年続く中古レコード店。約1万枚あるという在庫数はレコード7割、CD3割で、邦楽が強めだがオールジャンルの品揃え。特に圧倒されるEPの多さ、シングルCDのラインアップが熱い。「EPは今セール中で10枚以上買うと半額。安さもよそには負けません」と笑う藤井一義さん。ビクターの球体スピーカーも現役で、いい響き!
11:00~19:00、水休。
☎048-754-7841
1000通りの中に運命の出会いが!?『一ノ割珈琲工房 10$COFFEE(テンダラーズコーヒー)』【一ノ割】
5年の移動販売を経て2009年に開店した井上恭一さんの店は、オーダーを受けるごとに少量対応の焙煎機で焼きたてのコーヒーを提供。気づけば50種類にも増えた豆を20段階の焙煎度合いで焼き分ける。「この組み合わせで1000通りはできる計算。どんなお好みにも合わせられるはずです」。ボトルキープのように飲めるオーダーメードコーヒーにも挑戦してみたい。
11:00~19:30LO(日は~17:00)、木休。
☎048-733-7361
誰かの蔵書でつながる居場所的私設図書室『暮らし図書室』【武里】
本を通して人や街がつながる場をと、運営メンバー3人が5軒長屋の1軒で2023年より開設。市の特産品である桐箪笥を集めて活用した棚に並ぶのは、60名以上の本棚オーナーによる個性豊かな蔵書。誰でも無料で閲覧でき、登録料300円を払えば1カ月3冊まで借りられる。月2200円~で本棚オーナーも募集中。イベントも多数開催。
10:00~17:00、土・日休。
☎なし
肉と野菜と一緒に楽しむ国産ワイン『肉とごはんと時々やさい mohawk(モホーク)』【春日部】
杉戸町出身の長野明さんが手掛けるのは、地元の野菜や全国の生産者から直接仕入れる肉を使ったフレンチベースの創作料理。ドリンクは冷蔵ケースから自由に取り出せるセルフスタイルで、ワインは国産オンリー。「日本ワインの奥深さに感動して、地元の『志村酒店』さんから仕入れています」。元菓子職人だけありデザートまで大満足!
17:00~21:00LO(昼は1組限定、要予約で営業)、火・水休。
☎048-752-1129
しんちゃん目当てに外国人観光客もやって来る
電車を降りると迎えてくれる陽気な発車メロディ。春日部駅のホームを歩く子供がごきげんで口ずさむそのフレーズは、アニメ『クレヨンしんちゃん』のオープニング曲だ。見渡せば、駅にも通りにもしんちゃんで、外国人観光客の目当てもしんちゃん。すごい! ここまでしんちゃんづいているとは。
「もうねえ、それしかないから」と、とある店のご主人は苦笑い。あるカフェでは、ロケ番組が撮影に来たとお客さんが色めき立つなか、「春日部って行く所なくない?」と自虐的なひと言。ならば探してみましょ、春日部の魅力を。
とはいえ、駅は高架工事の最中で、東口も西口も駅周りは更地が目につき、整備中の道路あり、閉店した「イトーヨーカドー」ありで、正直少しさみしい印象も。
「パン屋も昔はもっとあったし、今はちょっと中途半端な状態かな。高架化は5~6年後に終わるらしいです」と教えてくれたのは、春日部高校出身の『Bakery nico.1』の大塚和さん。ここにはプリンが丸ごと入った夢のようなプリンパンがある。聞けば、2020年に惜しくも閉じた八木崎の老舗パン店の名物が、市内あちこちで自然発生的に再現されているという。なんと素敵な現象! これはほかのプリンパンもめぐらねば。
名物といえば、高架化でなくなる予定の駅北側の開かずの踏切も期間限定の“迷物”だろう。
「日本でも有数の待ち時間らしくて、20分開かないことも。踏切待ちの車からサッとコーヒーを買いに来る方もいますよ」とは、すぐ脇のレトロな建物で2022年から営む『AWESOME COFFEE STAND』の上地蔵さん。警報機の音が常に聞こえる店内で目を引く大きな窓はショーウインドーの名残。実はブティックだった店舗を活用しているそう。
「春日部はシャッターが下りたままの古い店が多いのですが、それがもったいなくて。若い人が雑貨や古着とかのお店を開いたら、街はもっと楽しくなるんじゃないかなって思うんです」
確かに、歩けば次々と時代を感じる渋くていい味の建物と出合える。これは街の宝。大切にして生かしてほしいなあ。
日光街道、粕壁宿のあったかすかべ大通りも商家の蔵や昭和の商店建築が点在。漂うレトロ感がたまらない。そんな中にドーンと鎮座するのは春日部ルーツの『匠大塚』。日本最大級という規模に圧倒されるが、かつて街のにぎわいの中心だった「ロビンソン百貨店(西武)」の建物だと聞いて納得。華麗な大箱リノベーション例だ。高級家具はそうは買えないけれど、併設する『TAKUMI SALONE』でせめてしばしの間いい家具に触れよう。「日光東照宮を建てた宮大工が、米がおいしくて住みやすかった春日部に根を下ろし、桐箪笥を作るようになったと言われています。弊社会長の父も桐箪笥職人でした。桐箪笥文化のある春日部は、いい家具を見てきた人が少なくないと思います」と、営業企画部の鈴木博則さん。昔も今も家具と縁ある街なのだな。
さて、1駅隣の一ノ割駅に着ければ、なんと焙煎の香り。小さな地上駅でありながら駐輪場の多さに驚きつつ見つけたのは、駅の裏で香ばしいアロマを放つ『一ノ割珈琲工房 10$COFFEE』だ。
「都心に通えるほどよい距離感で、ごみごみしていないのが春日部の好きなところ。一ノ割は意外と人が多いから自転車も多いんです。でも、大きなロータリーがあるような駅になったら、うちのような店は生き残れないかもしれませんね」と、店主の井上恭一さん。
余白のある、整いすぎてない面白み
マンモス団地で知られる武里駅では、シャッター商店街に生まれた『暮らし図書室』が楽しそう。本を介して街の人の居場所になっている。おまけに駅周りには古書店も新刊の総合書店もある。何気に本と親しめる街なのだ。
「武里団地ができた頃を知る人には、今の街は静かで物足りないかもしれません。でも余白のある、整いすぎてない感じが面白い。飲み屋さんも多くてはしご酒できるのも魅力。昼からカラオケの音が聞こえるんですよ」と、運営者のの伊藤はるかさんが笑う。
そういや、『RUDIE’S LOCAL SHOP』の代表・片柳聡さんも言ってたっけ。「何か少し足りない感じ。でも、生活するには刺激が強すぎてもね……。こういう春日部だから心地がいいのかも」と。
何でもぎゅぎゅっと詰まったピカピカの街は確かに便利。けど、限りなくのどかな、隙だらけの春日部が好きだ。街の隙こそ散歩の醍醐味。それはきっと再開発前夜の、今のうちだ。
取材・文=下里康子 撮影=高野尚人
『散歩の達人』2026年3月号より






