大人も子供もみんな大好き『ぱくぱく』
いつ誰が訪れても食べたいパンがある安定の品揃え。50種類弱あるパンのどれもが安価で、ついつい買いすぎてしまう。店内には冷えた麦茶のサービスがあったり、店舗横には飲食できるテラス席があったり。「外にある小屋は、キッズルームにできたら!」と店主の山下浩太さん。2025年で開店から1年、このエリアの憩いの場になりそうな予感。
9:00〜18:30(土・日は〜16:00)、月休。
☎︎042-405-1326
日替わり店主が淹れる自信作を『キャッツパジャマ』
毎日店主が替わるシェアリングコーヒーショップ。コーヒーを生業にしたい人が挑戦&失敗できる場所であり、地元の人たちが通勤・通学、帰宅前にも立ち寄りやすい路地裏の穴場だ。水曜日はおしゃべり好きの『bibere』店主、週末はマネージャーの小川俊太郎さんのコーヒーでひと休み……のはずが気づけば長居は必至。
8:00〜16:00・17:00〜23:00、無休(夜は不定休あり)。
国分寺で見つけたスウェーデン『BACKEN(バッケン) Swedish pastry & coffee』
オーナーの小原愛さんが、第二の故郷として毎年足を運んでいるスウェーデン。「コーヒーとおやつ、そして会話を楽しむフィーカ文化を広めたい」と2013年から活動する中、2024年、国分寺にお店を構えた。入り口すぐにあるショーケースには、店内奥の厨房で焼き上げる現地ではおなじみのパンやスイーツも。店内の一部は愛犬の入店もOK。
9:00〜17:00(土・日・祝は〜18:00)、火休。
こんなお宝が!? 古本の宝島『七七舎(しちしちしゃ)』
人も土地も古本もすべては“ご縁”だという店主の北村誠さんの選書はニッチで、価格は常識破り。店の外にどっさりと置かれた書籍、コミック、雑誌、絵本のどれもが税込み100円で、他ならもっといい値で売られているとか。古いマッチや地図など、古本以外にも気になるものが多々。地元民だけでなく、わざわざ遠方からここだけの一冊を掘り起こしにくるのも納得だ。
11:00〜20:00、火休。
☎︎042-359-0830
身構えたのち至福が極まる『モラトリアム』
雑居ビル3階、入り口前には入店に関しての禁止事項が……。身構えるものの、店内は想像をはるかに超える心地よさ。店主の石井克智さんが全国で発掘したコーヒー豆で淹れる、一杯の風味や口当たりに衝撃を受け、採算度外視の甘味に幸福を感じる。“猶予期間”の意味を持つ店名の通り、忙しい日常にふとした休息を与えてくれる場所だ。
13:00〜19:00(金・土は〜23:00)、月・木休。
西国分寺に爆誕した無人の古着屋『FAR WEST TOKYO』
アニメやバンドTシャツなど、海外から直輸入されたアメカジの古着500点以上を取り扱うほか、アクセサリーは多摩地区の古着屋の中では最大級の点数なのだそう。販売スタイルが無人なのは「気を使わずに買い物を楽しみたい」という店主・田村成さんの実体験から。結果、シニアや親子連れなど、意外な層も昼夜問わず気負いせずにふらりと立ち寄れる場所になっている。
10:00〜22:00、無休。
のんべえの五感を射貫く手料理『お酒とスパイス dalmacija(ダルマチア)』
スパイスと酒をこの上なく愛する店主の藤原竜太さんが手作りする料理は、どれも杯が進む味。頻繁に入れ替わる豊富なメニューもレシピも基本はオリジナル。お客さんからの突然の要望にも柔軟で、メニューにない一品をある材料で作ってしまうことも。オープン約3カ月の新店ながら、多くの常連がぞっこん。
11:30〜14:00・18:00〜23:00、木休(不定休あり)。
坂を上り下りした先にあるたまらなくいい店
坂、坂、坂。なだらかであれ急であれ、とにかく国分寺という街は坂が多い。今夏も猛烈な暑さで、平坦(へいたん)な道を歩くのも厳しいのに坂って……と、ひるんではいけない。坂を上り下りした先にある店がたまらなくいいんです!
スウェーデン語で「坂」を意味する店名が付けられた『BACKEN』。店があるのはまさに坂の途中。オーナーの小原さんに、スウェーデンは坂道の多い国なのかを尋ねると「“BACKEN”と書かれた道路の看板を見かけるかも」とのこと。「もしかして、国分寺とスウェーデンは似ているのか!?」と、勝手に異国に親近感を抱いたら、不思議なくらい坂が素敵な街のシンボルに思えてくる。
『dalmacija』も駅から店に向かう途中に坂がある。学生時代も坂の麓エリアに住んでいたという店主の藤原さんに、坂と常連さんの関係について聞いてみた。
「ここのお店をオープンする前に駅近くの飲食店で働いていて。今は近所の方も多いですけど、そのときのお客さんもわざわざ坂を下って来てくれますよ」
そうなのだ、坂なんてなんてことないのだ。
二つとない名店と人情味あふれる人と
気さくだったり、面白かったり。店主やスタッフさんに会いたい、話したい、と坂のことは気にもせず、自然と足が向いてしまうお店も多い。
『ぱくぱく』店主の山下さんは、縁もゆかりもない国分寺で開業した。背中を押された一つが、この街に住み、お店を営んでいる人たちの人柄だったと当時を振り返る。「今、一緒に働いてくれている人たちも本当にいい方ばかりで。この場所を選んでよかったです」。
かつての国分寺が、ヒッピーの聖地で富裕層の別荘地でもあったことを教えてくれたのが『七七舎』店主の北村さん。この街の古今に詳しく、あれこれ聞きまくってしまった。あぁ、もっと聞いていたかった!
『FAR WEST TOKYO』は無人営業の古着屋。トラブルはないのかオーナーの田村さんに愚問を呈してみる。「想像されていることはほとんどないですよ。良心的なお客さんばかりです」と、笑われた。
さんぽの休憩場所として外せないのは、やっぱりおいしいコーヒーとスイーツがあるお店だ。
「個人店が多くて、いいコーヒー屋さんもたくさんあるんです」と『モラトリアム』店主の石井さん。どうやら国分寺は同業者同士の横のつながりが強いよう。『キャッツパジャマ』マネージャーの小川さんたちと「コーヒーの街として、コーヒーフェスやマルシェなどをやりたいね〜」という、ときめかずにはいられない話があがっているとかいないとか。
そうそう、今回訪れたどのお店も贔屓(ひいき)にしているお店について自分のことのように熱心に話し、教えてくれた。お客さんも「ここ、いいのよ」「これ、おいしいですよ」ととてもフレンドリー。いろいろあるご時世だけど、人と人とが豊かにつながっている国分寺、なんとも心地よくて感慨深い。
最後に、坂の多いこの街を人生訓の一つである“三つの坂”に当てはめてみた。「上り坂」、「下り坂」、「まさか」のいい店と人だらけ!
取材・文=新居鮎美 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年9月号より







