アクセス
電車:JR新宿駅から中央本線で約1時間30分の大月駅下車。
車:中央自動車道八王子ICから大月ICまで約45km、大月ICから大月市中心部まで約2km。または八王子ICから談合坂スマートICまで約32km、談合坂スマートICから鳥沢地区まで約7km。
大月桃太郎伝説
伝説の舞台があちらこちらに
桃太郎といえば岡山が有名だが、大月も負けていない。百蔵(ももくら)山から流れてきた桃から「桃太郎」が生まれ、隣市・上野原の犬目で「犬」、鳥沢で「鳥(キジ)」、猿橋で「猿」を家来にし、「鬼」の棲む岩殿山へ退治に出かけたとか。伝説を裏づけるまことしやかな痕跡が点在し、訪ね歩くのも楽しそう。「大月市観光案内所」や「ローソン大月一丁目店」では桃太郎関連のおみやげも扱っている。
●市内各所
猿橋
猿が対岸へ渡る姿が構造のヒントに
桂川の流れが生んだ深い渓谷をまたぐ、長さ30m余りの橋。橋脚を使わず、切り立った両岸から四層のはね木により支えられており、珍しい構造から江戸時代には岩国の錦帯橋、木曽の桟(かけはし)と並び、日本三奇橋と呼ばれた。猿橋から大月市郷土資料館まで遊歩道が延びている。
●山梨県大月市猿橋町猿橋
栄月製菓
歯の丈夫な方はぜひ挑戦したい大月銘菓
祖父・清水利治さんが1965年に始めた煎餅店を、現在は孫の吉田紘規(ひろき)さんが守る。大月伝統の厚焼木乃実煎餅は精製した山椒の実などを混ぜた小麦粉を3枚重ねで焼いたもので、とにかく硬い。紘規さん考案の御城印煎餅は白餡風味で、クッキーのようなさっくりとした歯ごたえだ。厚焼木乃実煎餅・御城印煎餅各3枚入り756円ほか。
大月てんこ盛り基地
大月のすべてが凝縮した狭小ワールド
正式名は大月市観光協会が運営する大月市観光案内所だが、現地を訪れた取材担当が思わずこのように命名。観光情報はじめ富士山関連みやげ、陶芸・ガラス作品、桃太郎グッズから書籍や農産物まで、大月に関するありとあらゆるネタが、三畳間ほどの空間にぎゅっと詰まっている。
秀麗富嶽(ふがく)十二景
前山の先に麗しき富士を見通す
大月市域にあり、富士山の眺望に恵まれた山頂を市が独自に選定。大月駅近くの岩殿山から市境の奈良倉山、九鬼山、本社ヶ丸まで、バランスよく散らばっている点からも、市の全域が富士山の眺めのよい地であることがうかがえる。十二景だけに全部で12座と思いきや、一景に対して2座選出されているエリアも複数あり、全部で20座の名が挙がっているのはご愛嬌か(笑)。
●市内各所
岩殿(いわどの)山ふれあいの館
入館には坂道をしばし歩く覚悟を
大月駅の北東に屹立(きつりつ)し、秀麗富嶽十二景の一つでもある岩殿山。その中腹に立つ中世の館を模した公共施設で、1階は「白簱史朗写真館」、2階では写真コンテスト入選作や岩殿城ゆかりの小山田氏にまつわる資料を展示している。
酵母パン屋トゥルシー
週2日、金・土のみ営業の自然派パン
添加物や卵を使わず、ドライオーガニックレーズン酵母にこだわる。時間をかけて低温発酵させた生地を焼き上げたパンは、バゲット360円、シナモンロール230円、発酵バターのクロワッサン230円、レーズン山食430円(写真上)など。いずれもしっかりした弾力で、素材の個性が際立つ濃厚な味わいだ。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山
大月が誇る「日本一の山」とは?
大月市北部、大菩薩嶺から南へ延びる主稜線(甲州市との市境)上にあるのが牛奥ノ雁ヶ腹摺山。「うしおくのがんがはらすりやま」と読み、日本一長い山名としてひそかに人気を集める。秀麗富嶽十二景の一つだけに眺めもよく、日本一長い山名のピークから日本一高い富士山を遠望するのもなかなか乙だ。登山口の大峠から山頂まで標準コースタイムで2時間半ほど。
月のうらがわ
山歩きの帰りに立ち寄りたくなる
大月駅近くの小路沿いにあり、店頭に掲げられた風変わりなキャッチフレーズは「革とコーヒーとアウトドアに、なりたい店」。革製品を手がける店主・山田亜里さんの工房と食事もできるカフェ、ロゴジュエリー入り熊鈴4180円など革を用いた小粋な山道具などが揃うショップが渾然(こんぜん)一体となり、居心地のよい空間を生み出している。
笹子隧道(ずいどう)
昭和前期の面影漂う国登録有形文化財
日本橋と下諏訪を結んだ旧甲州街道。道中随一の難所とされた笹子峠直下を貫くように、約2年間の工期を費やし昭和13年(1938)に延長239m、幅3mの隧道が完成。以来、1958年に新笹子隧道が完成するまで幹線として利用された。坑門両脇の柱形装飾や赤レンガが印象深い。
●山梨県大月市笹子町黒野田
矢立(やたて)の杉
歴史を見守り続ける森の生き証“樹”
国道20号から旧甲州街道へ入り、笹子隧道へ向かう途中の森に堂々と立つ樹齢千年を超す杉の老樹。戦国時代、出陣する武士が必勝を祈願し、杉に矢を射ったのが名の由来とか。周辺には展望デッキやゼンマイ式音声ガイドが整備されている。山梨の巨樹・銘木100選にも認定。
●山梨県大月市笹子町黒野田
笹一酒遊館
カフェを併設した開放的な蔵元直営店
江戸時代初期にルーツをもつ山梨を代表する老舗蔵元・笹一酒造。手造りで高品質の酒造りにこだわり、香りを抑えつつも味わいの濃い“極上の食中酒”を目指している。酒遊館には日本酒はじめ、ワイン、焼酎、グッズなどが揃い、試飲も可(一部銘柄は有料でつまみ付き)。
あいさつ街道
通りがかると心がほっと和む
笹子川の支流・藤沢川沿いのありふれた生活道路を、現地の育成会が2017年に命名。集落手前の立て看板には「何人もかならず挨拶を交わすよう通行人に申しわたす」と記され、住民と滝子山登山のハイカーがあいさつを交わす様子も見受けられる。富士山の眺めもよい。
●山梨県大月市初狩町下初狩
【コースガイド】
大月の地名の由来が参道や境内に
市内駒橋の三嶋神社にかつて大ケヤキがあり、「大槻」(槻はケヤキの古名)と刻まれた石碑が残る。地名の由来は諸説あり、その一つだ。
岩殿山登山は迂回ルートで
岩殿山ふれあいの館から山頂への登山道は当面通行不可。山頂へは畑倉登山口または浅利登山口から稚児落し経由の登山道を利用のこと。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2021年11月号より