朝倉彫塑館

彫刻家の壮大なる心の中をのぞいてみよう

明治40年(1907)の建築当初は小さな建物だった。増改築を重ね、現在の形になったのが1935年ごろ。敷地全体が国の名勝に指定されている。

谷中を散策中、誰かに見られている気がした、なんて経験はないだろうか? 見上げれば、屋上から通りを見下ろす男の像。彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼住居だった場所が、彼の作品を展示する美術館となっている。かの「大隈重信像」をはじめ、どれも生き生きとした表情。プライベート空間だった「素心の間」では、畳でくつろぎ、中庭を眺めつつ朝倉のいた時代に思いを馳(は)せてみたい。晴天なら屋上へ。さっきの男に、ここでやっと会える!

展示室は元アトリエ。
「素心の間」からの眺め。ツートンカラーのコンクリート建築は建物自体が作品のよう。
蔵書が並ぶ書斎。
屋上にも「砲丸」などの作品が。
愛猫家としても知られる朝倉。「吊された猫」の緩んだ顔に和む。

『朝倉彫塑館』店舗詳細

住所:東京都台東区谷中7-18-10/営業時間:9:30~16:30(入館は~16:00)/定休日:月・木(祝の場合は翌平日)・展示替え期間/アクセス:JR・私鉄日暮里駅から徒歩5分

小金井市立はけの森美術館

作品からにじみ出る温もりに素直に浸ってみる

2階展示室には、中村の作品や遺品を展示。内容は不定期に入れ替わる。

明治から昭和を生きた洋画家 ・中村研一。彼の死後、富子夫人は作品を後世に伝えるため、美術館を開設した。後に小金井市に寄贈され、はけの森美術館となった。そんな空気に吸い寄せられるように、藤田嗣治ら多くの画家仲間がアトリエを訪れたという。交友関係を辿り、同世代の作家を紹介する企画展もしばしば開く。過去には朝倉文夫が作った猫の彫刻を展示するなど、キャラの立った切り口が評判だ。

美術館附属喫茶棟「musashinoはけの森カフェ」は、かつて夫妻が暮らしていた場所。
「婦人像」(1963年)。晩年は、富子夫人を数多く描いた。
「出雲取手付猫面壷」。猫をモチーフにした作品も多い。

『小金井市立はけの森美術館』店舗詳細

住所:東京都小金井市中町1-11-3/営業時間:10:00~17:00(入館は~16:30)/定休日:月(祝の場合は翌日)・展示替え期間/アクセス:JR中央線武蔵小金井駅から徒歩15分

lucite gallery

隅田川を渡る風を感じながら作品と対峙するひととき

出品作家にはベテランもいれば、若手もいる。

引き戸を開け、「こんにちは」と言って靴を脱ぐ。足触りのいい板張りの床が建物の来歴を物語るようだ。ここは、昭和初期に人気を博した芸者歌手 ・市丸が生活していたところ。隅田川沿いにあり、現在はギャラリー、カフェとして営業中だ。企画展の作家はオーナーの米山明子さんが選ぶ。陶器や着物、絵画などジャンルは幅広いが、「モノ自体にパワーを感じる」ことが基準だという。お茶でもしながら、この場の空気ごと味わいたい。

企画によって、玄関やカフェスペースにも作品が設置される。見逃さないで!
カフェのテラス席から、隅田川と東京スカイツリ ーが見える。

『lucite gallery』店舗詳細

住所:東京都台東区柳橋1-28-8/営業時間:11:00~18:00(展示により変更あり)/定休日:不定/アクセス:JR総武線・地下鉄浅草線浅草橋駅から徒歩5分

DIGINNER GALLERY

自由が丘の裏通りに潜む現代アートの新メッカ

ニコラス・テイラーが撮影したプライベートなバスキアの写真展を実施。

小さな空間だが、天井は吹き抜けで意外と開放感がある。このギャラリーらしからぬ構造を逆手に取ったキュレーションが、まさに唯一無二。2階から1階の床に映像を投影したり、1枚だけ厳選してバンッと大判にし、展示にメリハリをつけたり。一方、2階はロフトほどの広さしかなく、観る者を自然と内省的にする。とことん咀嚼(そしゃく)し、誰かと話したくなったら、1階という下界に下りて、オーナーの鈴木宏信さんと語らうのもいい。

ひと際目を引く白い建物。
外界から遮断された2Fスペースはよりプライベートな空間になる。

『DIGINNER GALLERY』店舗詳細

住所:東京都目黒区自由が丘1-11-2/営業時間:12:00~20:00/定休日:月/アクセス:東急東横線・大井町線自由が丘駅から徒歩1分

Gallery SU

建物の持つ力が作品の魅力を引き出す

部屋ごとに、扉のデザインが少し異なる。

1936年ごろに建てられた集合住宅「和朗フラット」の一室。築年数に反してとても初々しい木造の洋館で、住人たちがいかに大切にしてきたか自然と伝わってくる。展示するのは、画家のロベール・クートラスを中心に、ユニークで、そして朗らかな雰囲気を持つ現代作家の作品。ベンチで休憩したり、いったん外に出て建物を眺めたり、中に戻ってまた作品を鑑賞したりして、時間をかけて噛みしめると味わいが増すだろう。

窓から差し込む光が心地よい。午前中と夕方ではまた雰囲気が違う。
林友子さんの棒オブジェ。木と土を素材に独自の手法で制作 。
クートラスのカード画「カルト」。つい手に取りたくなるミニサイズ。

『Gallery SU』店舗詳細

住所:東京都港区麻布台3-3-23 和朗フラット4号館6号室/営業時間:12:00~19:00/定休日:展示期間のみオープン(会期中は火)/アクセス:地下鉄南北線六本木一丁目駅から徒歩8分

日動画廊本店

銀ブラの待ち合わせは老舗画廊でいかが?

常設展示は1~2週間ごとに入れ替わるので、いつ来ても新しい作家に出会える。

牧師だった創業者の長谷川仁さんが洋画商の道に進んだのは1928年のこと。当時まだ国内では洋画の流通路が確立されておらず、周りに同業者はいなかった。いわば開拓者だ。巨匠から新人作家まで幅広い作品を扱い、作家からの信頼も厚く「この画廊になら」と預けられる作品も多い。“銀座の画廊”と聞くと敷居が高いと感じるかもしれないが、ギャラリートークなど気軽に美術の世界に触れられるイベントも随時開催。扉を開ければ、きっとお気に入りの一枚に出合えるはず。

人間の闇を描き出し、熱狂的なファンを獲得した鴨井玲の作品。
外堀通りに面した正面入り口に鎮座する大きな石像が目印。

『日動画廊本店』店舗詳細

住所:東京都中央区銀座5-3-16/営業時間:10:00~18:30(土・祝は11:00~17:30)/定休日:日/アクセス:地下鉄銀座駅から徒歩2分

MISAKO & ROSEN

注目エリアのパイオニア的存在

広い壁に、小さな作品を1点展示するのがおもしろい。

「魅力的な商店が多い大塚には、東京のリアルがある」と、オーナーのローゼン美沙子さんとジェフリーさん。2006年に根をおろし、現代アートのマーケットを独自の方法で広げてきた。国内外の作家27人が所属する「コマーシャル・ギャラリー」として、企画展示や販売、さらに作家を世界へ紹介する。2017年の新装を機に、以前あった団欒(だんらん)用の階段に替わるライブラリーを作った。ここでは、アート談議や2人が愛する地元自慢話に花が咲く。

展覧会期間外も営業。加賀美健氏や持塚三樹氏の作品に遭遇。
平田晃久氏設計、植物が顔を出すビルに。
ローゼン美沙子さんとジェフリーさん。

『MISAKO & ROSEN』詳細

住所:東京都豊島区北大塚3-27-6-1F/営業時間:12:00~19:00(日は12:00~17:00)/定休日:月・火・祝 展示会を行っていないときは休館/アクセス:JR山手線大塚駅・都電荒川線大塚駅前停留場から徒歩8分

XYZ collective

個性際立つ地階のギャラリー

写真は「シルバニアファミリービエンナーレ2017」展。(撮影=田中和人)

ダーツバーを居抜きで借りた、日本には数少ない「アーティストランスペース」。つまり、作家が営むギャラリーだ。代表は、ディレクターでもあるCOBRA(コブラ)さん。「作って発表、販売をしながら活動を続ける方法は?」と、3人の仲間と模索しながら運営する。立地も入り口の雰囲気もギャラリーの印象からかけ離れるが、最たる驚きは、イルカが泳ぐ壁画。これは元から描かれていたもの。「ダサい絵の前の展示も、おもしろいでしょ」と、ニヤリ。

怪しい入り口。
自作品を手にするCOBRAさん。後方にミニギャラリー「THE STEAK HOU SE DOSKOI」が。

『XYZ collective』詳細

住所:東京都豊島区巣鴨 2-13-4 B02/営業時間:展示期間中 13:00~19:00 (日は13:00~18:00)/定休日:月・火・水/アクセス:JR山手線・地下鉄三田線巣鴨駅から徒歩4分

KAYOKOYUKI

路地に潜むアートへの入り口

駒込銀座商店街の裏手にひっそり潜む。(撮影=Masaru Yanagiba)

横長の窓の向こうは白くて四角い空間で、築数十年になる建物の武骨な味が活きている。オーナーは、結城加代子さん。「日常の延長に、いろんな表現が転がっていることを伝えたい」と、ギャラリー勤務を経て、2015年にオープンした。のぞけば中がよく見えるので、アートとは無縁だったご近所さんが立ち寄ったり、ここで初めてアート作品を買う人もいる。背中合わせの『駒込倉庫』とは年に数回、合同で展覧会を開き、行き来して楽しめる。

若きオーナー結城加代子さん。「同世代の作家と次のアートシーンをつくれたら」
この日は防火シートに描かれた大田黒衣美氏の作品が展示されていた。

『KAYOKOYUKI』

住所:東京都豊島区駒込 2-14-2/営業時間:ギャラリーホームページ等でご確認ください。/定休日:ギャラリーホームページ等でご確認ください。/アクセス:JR・地下鉄駒込駅から徒歩1分

金柑画廊

外まであふれんばかりの遊び心

「TAIZO MATSUYAMA:GOOD HOLIDAY.」の様子。(2017年9月取材当時)

人通りが多いとはいえない商店街に、だいぶこぢんまりしたギャラリーがある。スペース的に作品の点数は限られるんじゃ、と思いきや、企画次第で壁に直接ペイントしたり、あえて本棚を入れることもあるそうで、見せ方、空間そのものが作品になりうるのだ。展示ごとに作るカタログは、オーナーの太田京子さんと作家がアイデアを出し合い、冊子になったり、タブロイドになったり、判型も紙質もさまざま。この遊び心、半端じゃない!

キンカンパブリッシングが発行したカタログ。
「古書の販売も」と太田さん。

『金柑画廊』詳細

住所:東京都目黒区目黒4-26-7/営業時間:12:00~19:00/定休日:月・火・水(祝は営業)/アクセス:JR・私鉄・地下鉄目黒駅から東急バス「大岡山小学校前」行きなどで6分の「元競馬場前」下車3分

gallery201

作家宅に遊びにきたような錯覚

「Jo Motoyo Solo Exhibition」では、インスタレーションや写真作品が並んだ。(2017年9月取材当時)

マンションの一室にあり、部屋番号は「201」。実体はゲストハウス付きギャラリーで、作家は展示期間中ここに宿泊し、来訪客に応対する。オーナーの櫛田潤さんは、「地方や海外の若手は宿泊費がかさむため、なかなか東京で個展を開けないと聞きます。そのハードルをなくしたくて」と笑顔。ちなみに客は靴を脱いで「おじゃまします」と部屋に上がる。作家のプライベートを垣間見たようで近しく思え、長居したくなるかも!

あえて寝室に作品を展示する作家も。

『gallery201』詳細

住所:東京都品川区北品川6-2-10 島津山ペアシティ 201/営業時間:展示によって異なる/定休日:展示によって異なる/アクセス:JR・私鉄・地下鉄五反田駅から徒歩10分

取材・文=信藤舞子、松井一恵(teamまめ) 撮影=木村心保、金井塚太郎、鈴木奈保子、門馬央典