都会の喧騒から隔絶されたニューレトロ喫茶『喫茶サテラ』(渋谷)
2020年オープンと年月は浅いが、老舗の風格が漂う。ここで48年間営業していた『青山茶館』のカウンターの棚や柱など歴史の染み込んだ建具を残して改装。ニューレトロな空間で味わうのは、練乳とクリームチーズを使ったやさしい甘さの濃厚プリン。大きな型で焼いてからカットするため、外は固めで中はとろん。コーヒーに詳しいスタッフが淹れるのは浅煎り、中煎り、深煎りから選べるが、プリンと合わせるなら中煎りがおすすめ。
ほのかな灯りと静かに流れる時間に癒やされる『高山珈琲』(神田)
つい通り過ぎてしまいそうな植栽の緑に覆われた入口。「隠れるように落ち着ける場所にしたくてあえて路地裏に決めました」と穏やかに語る店主の高山正秀さん。ウェッジウッドのカップが並ぶ棚や重厚感のある木造りのインテリアは、自ら設計に携わった理想の空間でもある。そんな特別な雰囲気とネルドリップで抽出されたオールドビーンズブレンドを味わいに通う常連客は多い。口溶けのよい自家製ニューヨークチーズケーキとの相性も格別。
こだわりの濃く苦く甘い一杯『神田伯剌西爾』(神保町)
純喫茶には珍しい囲炉裏席まで備えた古民家風情の空間に心が落ち着く。マンデリンからモカマタリまで幅広く揃うストレートコーヒーを楽しめるが、「一番のこだわりは神田ぶれんどです」とは、焙煎から手がけ、コーヒーを淹れ続けて30年になる店長の竹内啓さんだ。5種類の深煎り豆がブレンドされた重厚感のある苦味、その後口に広がる甘みの余韻が心地よい。苦味が好きな人におすすめだ。
秘密にしたいレトロな空間『キアズマ珈琲』(雑司が谷)
昭和7年(1932)の建物をカフェとしてリノベーションして2009年にオープン。木目を生かした内装は、昭和の面影を残す一方でモダンさも垣間見える。自家焙煎した豆を、店主の高安宏昌さんが丁寧に一杯ずつネルドリップで淹れている。使い切る分量だけ焙煎するため、いつでも鮮度のよい豆を使用できるという。焙煎したての豆をラム酒に漬けて作るという自家製のコーヒーラム700円は、いつもと違う味を楽しみたいときにぴったり。
アンティーク家具で居心地のよさをデザイン『トンボロ』(神楽坂)
マスターは建築家の平岡伸三さん。1998年に内装など自ら手がけ喫茶店を開業した。一枚板のカウンターなど自然の造形美を生かしたテーブル席が味わい深い。アンティークの椅子は「目線が合うよう2cm切りました」と、カウンター越しに常連との会話も楽しんでいる。ブレンドは香りと酸味、コクと苦味の2種類各600円があり、気分に合わせて選びたい。コーヒーのお供にはホットケーキ600円やプリン400円など自家製スイーツが心を射抜く。
都会の一角で心和らぐ『珈琲 王城』(上野広小路)
「私はこの店の一番のファンです」そう話すのはオーナーの玉山珉碩さんだ。昭和時代から変わらない歴史ある店内の雰囲気に、自然と安心感を覚える。この店の看板商品であるチョコレートパフェ1100円は、たとえ人を待っている時間でも、のんびりくつろいでいってほしいというお客様への思いから、まろやかな甘さと20cm以上もある大きさを受け継いできた一品。玉山さんをはじめとしたスタッフの『珈琲 王城』への愛に包まれて、都会の一角でやさしいひとときを感じられる。
絵本から出てきたようなホットケーキ『Cafe' 香咲』(外苑前)
メニューブックには香り立つような水彩画タッチの料理がずらりと並ぶ。親しみと愛情が伝わる絵は、ご主人でペインターのジョナサン・ヒーバートさんによるもの。なかでもホットケーキは母の代から続く看板メニューで、今は娘の岩根愛さんが焼き上げる。バニラビーンズの芳醇な香りに、バターの塩気、メイプルシロップの甘さ、生クリームのコクが相まって、頬張るごとに幸せを感じてしまう一品だ。
ステンドグラスがつくり出すノスタルジックな喫茶『泥人形』(千駄ケ谷)
怪しげな店名からは想像がつかないが、地下に潜るとステンドグラスがノスタルジックに彩る空間が広がっている。ベルベットの木製椅子に腰を沈めればどこか古い洋館にいる気分になれる。親兄弟も料理人という店主の林秀雄さんは、ナポリタンやオムライスといった喫茶メニューにとどまらず、中華鍋を振るって作り出すメニューは幅広い。ランチどきにはコーヒーメーカーを使用するが、喫茶時間にはサイフォンで抽出したブレンドコーヒーが味わえる。
昭和から愛され続けるトースト『珈琲 アロマ』(浅草)
1964年の開業以来、ポップアップトースターでカリふわに焼きあげるトーストメニューが人気。マスターの藤森甚一さんは「理想の食感に焼けるの」とご近所の老舗「ペリカン」のパンを用いる。メニューにはないが、常連客の要望からいろいろな味を見繕ったトーストセットも生まれた。これを見た落語家の入船亭扇橋さんが親しみを込め“ゴミ箱”と命名。常連客はアラカルトとも呼ぶ。
ゴージャスな店内で優雅にくつろぐ『伯爵 巣鴨店』(巣鴨)
広い店内は大きな生花や西洋彫刻、シャンデリアなどバブル期の社交場の雰囲気を残すゴージャスなインテリア。黒ベストに蝶ネクタイの店員さんによる丁寧な接客も古きよき時代を思い起こさせる。クラシカルな椅子に腰を下ろし、ブレンドコーヒーと甘いもので優雅にくつろぎたい。喫茶メニューが充実しているうえ、モーニングから夜遅くまで、さまざまな時間帯で心地よく過ごせるのもうれしい。
構成=都恋堂