アクセス
鉄道:JR・地下鉄東京駅から常磐線ほか特急利用で約1時間10分の水戸駅下車。関東鉄道バスに乗り換え茨城町中心部まで約35分。
車:三郷JCTから常磐自動車道・北関東自動車を利用し、茨城町東ICまで約85km。同ICから茨城町中心部まで約5km。
満潮時に太平洋の海水が逆流する汽水湖『涸沼』
茨城町をはじめ、鉾田(ほこた)市、大洗(おおあらい)町の3市町にまたがる周囲約23.9kmの汽水湖。希少な水鳥などが生息する点が評価され、2015年5月にラムサール条約湿地に登録された。町内の湖畔には親沢公園、広浦公園、網掛(あがけ)公園が点在し、憩いの場として親しまれている。やまとしじみの生息地であることから伝統的な手掻きでのしじみ漁も盛んで、涸沼周辺にはしじみ販売店のほか、調理して提供する店も点在。
涸沼探訪前にまずは立ち寄りたい『涸沼水鳥・湿地センター』
海跡湖であり、関東地方唯一の汽水湖である涸沼のなりたちをはじめ、恵まれた自然環境や生息する動植物などをコンパクトに紹介。館外の見晴らしデッキからは穏やかな涸沼の様子も一望できる。対岸の鉾田市内には同センターの観察棟がある。
涸沼北畔に位置する広大な公園『涸沼自然公園』
起伏を生かした園内には散策路や木道が整備され、高台に位置する太陽の広場からは涸沼を一望。開園時間中、管理事務所ではレンタサイクルの貸出・返却にも対応している。通年利用可能なキャンプ場(有料、定休日あり)や売店も併設も併設。
涸沼の恵みを存分味わえる『うおふね』
2代目店主で漁師でもある長洲竹識(ながしたけし)さん自ら涸沼で捕ったやまとしじみやしらうお、身が柔らかいはぜを提供。天ぷらやフライの定食も充実しており、うな重2800円、うな丼2500円など、うなぎ料理も人気だ。あれこれ食べ比べたい方には一品料理もある。
涸沼に面した清潔でアットホームなキャンプ場『Hillbilly Camping』
涸沼を前にしたテントサイト(平日4950円、休前日8250円)5区画、テントなしで気軽に楽しめるコンテナハウスサイト(平日8250円、休前日1万4850円)3区画のみのコンパクトなキャンプ場。静けさを保ち、快適に過ごせるよう利用は1組3名まで。コイン式のシャワールームもある。
郷愁を覚える懐かしい屋台の味『𠮷田商店』
涸沼南畔の県道16号沿いにはためく幟(のぼり)が目印。大判焼き150円は小倉あん、白あん、カスタードの3種が基本。焼きそば500円、たこ焼き6個入り500円のほか、かき氷300円やソフトクリーム300円も通年販売している。懐かしい味を目当てに、週末には県内外から多くの客が訪れるとか。
自家製鶏ハムと副菜が評判の新顔カフェ『オテントサマ』
月替わりのランチプレート1400円(スープ付1600円)はメイン料理に副菜4種が付き、胸肉を使った店自慢の鶏ハムが加わる。自家製シロップを用いたドリンクや固めの食感のたまごプリンなど、カフェメニューにも若きオーナーシェフのこだわりを感じる。
国指定史跡の埴輪窯跡を公園として整備『小幡(おばた)北山埴輪(はにわ)製作遺跡』
1987~88年に調査・発掘が行われ、全国一の多さを誇る59基もの埴輪窯跡が発見された遺跡。8つの工房跡、4カ所の粘土採掘坑跡も確認されており、出土した土器は6世紀中頃~ 7世紀前半の古墳時代のものと推定されている。一帯は広々とした公園として整備され、散策がてら見学するのもよい。
見事な土塁や空堀に圧倒される中世の城郭跡『小幡城跡』
舌のような形状の台地を生かした中世の城・小幡城。築城の経緯や城が歩んだ歴史は諸説あり、いまだはっきりしないものの、迷路のような堀底道(ほりぞこみち)を進むと、まるでタイムスリップしたかのような錯覚に陥る。随所に詳細な案内板が立っているのも興味深い。本丸井戸跡は落城に際し、お姫様が身を投げた悲しい伝説も残る。
時間をかけて買い求めたくなる豊富な品揃え『ポケットファームどきどき茨城町店』
JA全農いばらき直営の直売所。農産物をはじめ、常陸(ひたち)牛などの精肉や手づくりハム・ソーセージの販売、イートインでのグリル料理も提供する森のベーカリー&カフェ(~16時)、植物や花を扱うフラワーポケット、バーベキューサイトが集まる。
腸活を促す発酵メニューが充実の週末限定カフェ『納屋cafe』
自家製の糀(こうじ)を随所に用いた発酵ランチは定番のHakkoハンバーグ膳~ジャポネソース~に月替わりの3種が加わる。厳選した近隣食材一覧を記したボードも好印象だ。ドリンクやテイクアウトOKのスイーツも種類豊富で、甘糀・塩糀・醤油糀も販売。
湖畔で緩やかに流れる時間の経過
私自身もその一人だが、茨城県は知っていても、茨城町の存在を知らない読者は案外多いのではないだろうか。ましてや町の位置となると皆目見当がつかない。調べたところ、水戸市のすぐ南隣に位置する自治体なので、いわゆる県央地域と呼んでよいだろう。手にした現地のパンフレットには「茨城県東茨城郡茨城町」と「茨城」が3つも並んでいたので、ここまでくれば茨城県の盟主を堂々と名乗ってもよさそうな気がする。
そんな茨城町の顔といえば涸沼だろう。一見したところ、捉えどころのない茫洋(ぼうよう)とした水面が広がっているように思えたが、目を凝らすと多くの水鳥が羽を休め、しじみ漁にいそしむ漁師の姿が見え隠れしている。かつては海の一部だった涸沼は満潮に合わせて海水が流入する関東唯一の汽水湖で、それゆえ他の湖にはない独自の生態系を育んでいるという。
茫洋とした水面の印象同様、湖畔にも喧騒はさほど感じられず、緩やかに流れる時間の経過は、思わず「涸沼時間」と呼びたくなるほどだ。そんな「涸沼時間」を思い思いに満喫しているキャンパーの姿をうらやましげに眺めながら、涸沼エリアを静かに離れた。
埋もれた魅力に触れ、小旅行気分を楽しむ
中心部である役場界隈も、思いのほか物静かなたたずまいで、涸沼探訪時に抱いた町の印象は大きく変わらなかった。強いて言えば、今回お邪魔した『オテントサマ』のある町域北部のロードサイドに多くの店舗を見かけたが、これは隣接する水戸市の余波といったところだろうか。
そんな思いを抱えながら足を運んだ「小幡北山埴輪製作遺跡」と「小幡城跡」は、訪れる人は多くないものの、いずれも見ごたえがあり、個人的な印象ながら、もっとPRしてもよいのではと感じたほどである。
さらに先を目指し、絶え間なく来客でにぎわう『ポケットファームどきどき茨城町店』から奥まった地で見つけたのが『納屋cafe』だ。一帯は、これまで目にした景色から一転し、これぞ里山といった心落ち着く景観が広がっていた。注文した発酵ランチを待つ間、窓外ののびやかな風景を眺めていると、涸沼からここまで、変化に富んだ小旅行を味わったような心持ちになってきたのだから、なんとも身勝手なものである。
さて、今回で徒然旅はひと区切りとなるが、思いに任せ、気になる土地へ毎月足を運んできた。大半が初訪問の地であり、少なからず緊張感を抱きながらの旅ではあったが、行く先々での思わぬ出会いや不思議な縁に何度助けられたことか。地図を眺めると、気になる土地はまだまだありそうだ。時にはよそ者ならではの身勝手な感性に導かれながら、引き続き埋もれた魅力を探る旅を続けるとしよう。
【耳よりTOPIC】約30種1万株のあじさいがお出迎え
涸沼自然公園を会場に繰り広げられる初夏の風物詩「ひぬまあじさいまつり」。第16回を数える2026年の会期は6月13日~7月12日で、6月28日にはステージショーをはじめ、フードブースやクラフトショップの出店、木工体験やワークショップなどの各種イベントを開催。フォトコンテストも開催されるので、園内探索がてら、腕自慢の方はチャレンジしてみては。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2026年7月号より







