はじめて反町駅に降り立った。
実はこの連載の第1回目の神奈川駅編、第2回目の東神奈川駅編では近くを散歩していて、第3回目の最後でパンを食べたのは「反町公園」という名前の公園だった。
今回は何を見つけられるだろう?
とにかく静かで便利! モデル校にもなった小学校が大人気
反町駅の出入り口は一つのみ。
屋根が緑色でどことなくメルヘンな印象をうける。目の前には横浜新道という大きな通りがある。
まずは以前行った反町公園とは反対側へ攻めてみることにしよう。
すると屋根付きのちょっとレトロな看板の商店が並ぶ通りがあった。
この日は残念ながら定休日のお店が多いようでみんな閉まっていた。
週末の午前だからか閑散としていて、人はまばら。
地図を見て、見晴らしのよさそうな公園に向かってみることにした。
すべり台とブランコだけがある小さな高島山公園に到着。ちょっと坂をのぼっただけだけど、周辺を一望できて、思った以上に見晴らしのいい公園だ。
反町出身だというお母さんにお聞きした話と、このあと出会った人たちから聞いた情報をまとめると、反町は以下のような街のようだ。
・横浜駅に近くて便利なのに、人がいなくて静か。
・横浜みたいな人ごみに出たくない人にはちょうどいい。
・スーパーは魚がとてもおいしい『ビックヨーサン』や、月・金は野菜が安い『文化堂』、『トップパルケ』も便利でおすすめ。
・『嶋田青果店』という八百屋さんがにぎわっている(残念ながらこの日は定休日)。
・ラーメン屋の激戦区で、若い男性向けのこってり系から女性向けのあっさりまでたくさんあってよく長蛇の列ができている。
・公立の青木小学校はモデル校にもなっていて大人気。青木小学校への入学を目的に引っ越ししてくるほどの人気で、学区を狭めることになったほど。
・マンションもたくさん増えた。単身者向けマンションが人気ですぐ埋まる。
・横浜新道や首都高の入り口が近くて、車を使う人にとっても便利。
・新横浜駅も近いから新幹線へのアクセスも良く、羽田空港も割と近い。
・治安がいい。
評判の良い小学校に入学するために引っ越してくる人がいる、という話が印象的だ。
気になってあとでその青木小学校を調べたところ、違う学年の子供たちが同じ階で過ごす「縦割り」配置や、子供たちが友達の良いところを書いて伝え合う「やさしい心の郵便箱」など温かみを感じる取り組みをしている学校のようだ(参考:https://interview.itot.jp/14044)。
すでに治安の良さをバシバシ感じる。
ラーメン激戦区にある、ファミリーに優しいラーメン屋さん
ラーメン屋の激戦区情報も頭から離れない。
いくつか候補をいただいたなかで、「あっさりでおいしい」とすすめてくれていたラーメン屋さんへ向かってみることにした。
『しなちく亭』にはファミリーが多く並んでいた。
中に入るとL字型カウンターになっており、調理場が広くて解放感があって入りやすい雰囲気。
ラーメン屋さんによってはルールがあって緊張するお店もあるけど、ここは女性も子供連れも入りやすくてよさげである。
食べているとふと、ラーメンを店の外に持って行く姿が目にとまった。
なにかと思ったら外に止まっている車で待機している年配の男性に渡していた。
どうやら家族で来たものの、店内への移動が困難な方のようだ。
おいしいだけでなく髪留めの配慮や、そういった常連さんたちとの温かい光景も含めて、このお店がすっかり好きになってしまった。
なお、お店のお母さんからは近くのパン屋さんと焼き鳥屋さんをおすすめされたのだけど、この日(日曜日)は休みだった。
反町に行くときは日曜日を外したほうがよさそうだ。
反町公園には子供たちにサックスを吹いてくれる人がいる
お次は『しなちく亭』からすぐの所にある反町公園へ。
連載第2回目の東神奈川駅編で、最後にパンを食べた公園だ。
散歩好きには共感してもらえると思うけど、こうやって自分の頭の中の地図がつながるの、めちゃくちゃ快感である。
反町公園はまあまあ広い。
遊具で遊んでいたり、キャッチボールをしたり休んでいたり、と各々の休日を楽しんでいる。
あとで知ったのだがサックスの男性は、子供が近寄ってくると子供が喜びそうな曲を吹いたり、リクエストに応えてくれるのだそうだ。
次に会うことがあればぜひリクエストしたい。
こちらの男性は、電車の交通も便利だけど首都高の入り口も近いし車を運転する人にも住みやすいですよ、と教えてくれた。
私は自分が運転しないからか今まで頭に浮かばなかった大事な情報だ。
男性はさらに、居酒屋やユニークな古本屋などが並ぶ通りについて教えてくれたり、歩きやすい緑道も教えてくれた。さっそく向かってみよう!
東横線の跡地「東横フラワー緑道」でビール!
教えてもらったのは東横フラワー緑道。
みなとみらい線の開業にともない、東急東横線が地下化されたことで生まれた線路跡。東白楽駅から横浜駅までの約1.4kmが、横浜市によって緑道として整備されたのだそうだ。
なんて素敵な使い道だろう。
地下とつながっているグレーチングから、たまに電車が通る音が聞こえる。
以前は地上を走っていた電車が、今は地下を走っている。その実感がわき、未来にいるなあ、と思う。
しかもこの道を歩いていれば横浜駅に迷わずたどり着けるっていうのが分かりやすくていい。
横浜駅方面に進んでみると、クラフトビール屋さん『THRASHZONE』を発見した。
もう少し横浜駅寄りの鶴屋町という所にハードコアやメタルを流す音楽好きから人気の飲み屋があるそうで、ここはそこで出しているビールのテイクアウトやテイスティングができる店舗らしい。
私がお店の方に話を聞いている間に続々とビール好きや鶴屋町のお店のファンの方がきた。店内にはオリジナルTシャツなどのオシャレなグッズも並んでいて、ビールと共に買っていく人もいる。
気づけば席は埋まっていた。
この日は天気も良くてビール日和だったのだ。そりゃあ飲まずにはいられない。
スタッフのお姉さんは、この辺りは平坦で歩きやすいことや、この先にあるトンネルをくぐれば横浜駅がすぐですね、と教えてくれた。
え、トンネル!?
トンネルをくぐればそこは横浜駅とこんぴらさん
東横フラワー緑道を引き続き横浜駅方面に向かうと、最初の起点の反町駅にあたった。
反町駅の横に緑道は続いており、さらに進むと、ほんとだ、トンネルがある!
東京横濱電鉄の開業とともに作られた高島山トンネルは大正15年(1926)と、今からちょうど100年前に開通。
電車が通るためのトンネルがいまや最短距離で駅まで歩けるように使われているの、超便利だ。
トンネルはどこでもドアのように、別の景色が開けるのがおもしろい。
のんびりとした雰囲気だった反町の景色が、トンネルを抜けると高層ビルが立ち並ぶエリアに突入することになる。
さらにおもしろいのが、トンネルの隣には金毘羅様が祀られている神社があり、これが緑豊かで一気に大自然なのである。鳥たちが勢いよくさえずっている。
源頼朝が創建したと伝わる神社で、東海道を行き来する旅人や神奈川港を利用する船乗りたちの安全祈願の場として栄えたそうだ。参拝者がけっこういる。
さっきまで平坦で快適な道を散歩していたので急な自然はギャップがあっておもしろかった。
元美術の先生のお店で、アートと昔の地図を見ながらしっとりと飲む
さて、最後に訪れたのは反町公園で息子さんとキャッチボールを楽しんでいたお父さんおすすめのお店。
反町にははしご飲みコミュニティーがあるくらい居酒屋がたくさんあるそうで、いくつかの候補をもらっていた。
その中で今回締めに選んだのは『美棟 TARATARA(ビトウ タラタラ)』というお店。タラタラという響きが呑気に聞こえて気に入ったのだ。
タラタラという響きから、てっきり大衆居酒屋の想像をして行ったが訪れてみるとガラス張りのおしゃれなお店だった。
開店時間の16時ちょうどに伺ってみると、女性の店主さんが招いてくれた。
壁にはいろいろな作品が飾られている。
もともと美術の先生をされていたそうなので、てっきりご自身の作品かなと思いきやそうではない。自分の作品だとなんだか息苦しい、と、お友達の作品だったり自分がいいなと思う作品を飾っているそうだ。
店内にはこのあたりの昔の写真が載っている冊子なども置かれていて、今日歩いたところを先生に聞いてもらい、一緒に散歩の復習をした。
このへん、戦前までは遊郭があったのか。
先生の「このあたりの急がない・ゆったりしている雰囲気が好き」という言葉も、今日一日中歩いたからこそとても共感できて、なんだかうれしかった。
井波さんはなんと町内役員だった。公園で街の様子を聞いたときに説明がよどみないと思ったらそういうことか。
井波さんは地引網体験や観月会コンサートなどのイベントを企画したり、街を盛り上げる重要人物だったのだ。
少しおしゃべりさせてもらったあと、地元の飲み会に向かっていった。まさに「はしご飲みコミュニティー」の人だった。
先生は他にも、教え子たちがこのお店に来るのよ、と教えてくれた。
中には落語家を目指している教え子もいて、こちらのお店で落語を披露する会をやったそうだ。
教え子たちが今でも先生を訪ねられるってとても素敵だなあ。
私も久々に、自分が習った美術の先生たちの顔を思い出した。
とこんな感じで、たくさんの元生徒さんたちのお話を聞きながら、人生っていろいろあるなあ、としっとりと飲んで散歩は終了。
反町で出会った皆さま、ありがとうございました!
さて、次はどの「隣の街」に行こうか。
取材・文=小堺丸子 撮影=橋田玲子、小堺丸子







