アクセス
鉄道:JR・地下鉄東京駅から東海道新幹線で約50分の三島駅下車。富士急シティバスに乗り換え、裾野駅まで約20分。須山・十里木方面へも同バスを利用。
車:東名高速道路東京ICから同道を利用し、裾野ICまで約93km。同ICから裾野市中心部まで約6km。
ハート型の小窓越しに拝殿を見通す『須山浅間(すやませんげん)神社』
霊峰・富士を御神体として仰ぎ奉る日やまとたけるのみこと本武尊ゆかりの古社で、富士山世界文化遺産構成資産の一つ。石段を昇り詰めた先では樹齢約500年の老杉が社殿を見守り、あたりは厳粛で森閑とした雰囲気が色濃く漂う。境内の一角には慶長16年(1611)築と伝わるかつての本殿も安置されている。季節感を織り込んだ図案の月替わり御朱印も評判だ。社務所開所日時は不定。
迫力ある富士山に見惚れる好展望地「愛鷹(あしたか)連峰」
富士山の南南東に横たわる山塊の総称で、一般的には「愛鷹山」の名で知られる。最高峰の越前岳(標高1504m)を中心に登山道が延びており、一年を通じて登山者の姿が絶えない。眺望のよさでも知られ、とりわけ黒岳山頂から望む富士山はまさに絶景。体力に自信のない場合は、駐車場からひと登りの十里木(じゅうりぎ)高原展望台に足を運ぶのも一案だ。
受け継いだ味を頑なに守る『手打ち蕎麦 ふかさわ』
「そば本来の味や香りを感じられるせいろをぜひ」と2代目店主の渡邊利和さん。自慢の二八そばはその日使う分だけを毎朝打ち、注文に合わせて提供。落ち着きある店内にはジャズが流れ、窓外に目をやりながらゆったり過ごせる。来店の際は予約が望ましい。
各地から人が集まる人気カフェの隣に、新たな立ち寄りスポットがお目見え『nog cafe』/『十里木(じゅうりぎ)商店 & TARON』
野口希美枝さん・茂樹さん夫妻が営むカフェと商店&アンティークショップが閑静な別荘地に並び立つ。開店と同時に多くの客が訪れる『nog cafe』は手の込んだ洋風メニューが豊富で、ドリンクのみの注文も可。隣には、日用品に加えてこだわりのジャムやハチミツ、オリジナルブレンドコーヒーなどを置く『十里木商店』と、アンティークの食器・小物・照明のほか服やアクセサリーも扱う『TARON』が2024年末にオープン。食後にふらりと足を運んでみたい。
雄大な風景に抱かれながらゆったり寛ぐ『裾野温泉 ヘルシーパーク裾野』
富士山を見通す開放感が人気の日帰り温泉。加水はせず自家源泉100%の湯は弱アルカリ性で肌触りがなめらか。塩分が強いため保温効果が高く、入浴後も湯冷めしにくい。かけ流しの水風呂には富士山の伏流水を利用している。レストランも併設(営業時間は異なる)。
夜明け前の仕込みから販売まで一人で切り盛り『まちコッペ』
具材にこだわり手間をかけながらも、価格は驚くほどリーズナブルな住宅地のパン屋さん。「パン生地を触ったり考えたりするのが楽しいんですよ」と店主の江崎真智子さん。調理パン・菓子パンのほか、サンドイッチ・コッペパンなども販売。
玄武岩溶岩流の断面も観察できる「五竜(ごりゅう)の滝」
富士山の噴火に伴う溶岩流の末端に当たる一枚岩の上を流れ落ちる幅約100m、高さ約12mの5条の滝で、裾野市中央公園内にある。黄瀬(きせ)川本流にかかる3条の雄滝と支流にかかる2条の雌滝に分かれ、吊り橋「五竜のかけはし」から全容を見られる。
発酵食を取り入れたお弁当店『まごころごはん むすひ』
心と体にやさしいをモットーに、自然素材の総菜・お結び・弁当を販売。日替わり弁当900~1000円には自家製塩麹を用いた食材が必ず入り、お気に入りの総菜も選べる。お結び250円、春巻き200円などの単品も購入可能で、弁当は事前予約がおすすめだ。
厳選メニューから心地よい音の演出まで妥協なし『喫茶瑪瑙(めのう)』
深煎りながらすっきりとした後味の自家焙煎コーヒーは、時期により豆が変わるが常時3種類を用意(販売もあり)。定番のガトーショコラ450円は、繊細な生地や濃厚な味わいに思わずうなる。軽食のカレートロニカ1000円やクラフトビールも提供。
見知らぬ酒との思わぬ出合いに期待が高まる『福屋酒店』
開口一番「品揃えが偏っていますんで」と4代目店主の服部怜さんがにやり。名の通った酒や蒸留酒は見当たらず、燗に合う山陰の日本酒や滅多に見かけないクラフトビール、高価格帯の自然派ワインが店を埋め尽くす。一部の酒は有料試飲もOKだ。
富士山の麓に点在する個性的な店
「うわっ、これはすごい!」
と思わず感嘆の声が漏れたのは、愛鷹連峰の東端に位置する黒岳山頂から冠雪した富士山を見通したときのことだ。富士山の好展望地は数あれど、ここ黒岳からの眺望には宝永4年(1707)に大噴火した火口跡の迫力も加わり、厳しい山容にただただ圧倒されるばかりである。
さて、左右に大きく裾野を伸ばした富士山の手前にあるのが、愛鷹連峰北麓に広がる十里木エリアの別荘地で、足を運ぶと、今回お邪魔した『手打ち蕎麦 ふかさわ』や『nog cafe』のほかにも、個性的な店が点在しているのが興味深い。時季を違たがえて再訪すれば、異なった表情の富士山とともに、新たなる発見もありそうだ。
十里木エリアから、富士山須山口登山歩道の起点でもある『須山浅間神社』までの標高差は300mほど。途中、急な下り坂もあり、なるほどこの地が雄大すぎる裾野の一部であることを実感する。緩やかな下り勾配はその先も続き、ふと振り返ると、そんな様子を見守るように、どっしり構えた富士山の姿が見通せた。
振り切った潔さから心意気が伝わってくる
箱根外輪山を見据えながらさらに下っていくと、いくつもの工場脇を通り抜け、ようやく平坦になったあたりが市の中心部だった。
ここでも富士山の様子が気になり、コンビニの駐車場や民家の間から幾度も見上げたが、至るところビュースポットだらけで、「裾野」の名にも合点がいく。独立峰だけあり急に雲がかかることもあり、「あの雲、どこかに消えてくれないかな」と一喜一憂したが、気を揉んでいるのは私くらいで、地元の方にとって富士山が気まぐれなのは日常の光景のよう。周囲の誰も気に留めていないのが、ある意味うらやましい。
JR御殿場線を越えた先にある『まちコッペ』や『まごころごはん むすひ』は、いずれも手間ひまかけた商品を、「こんな値段でいいんですか?」と驚くほど手頃な価格で提供している。どちらも店主の温和な人柄が反映されているのだろう。
旅の仕上げに『喫茶瑪瑙』を目指したが、すぐに見つからない。行きつ戻りつしていると、駐車場の奥の簡素な小屋にかかるのれんが目に入った。カウンターのみのシンプルな店内ながら、流れる音楽からコーヒーを淹れる所作、内装に至るまで、店主・石戸さんの思い描く世界が凝縮されており、その潔さが心地よい。オーディオにはとんと疎いため、「この機器は何ですか」と尋ねたりしながらゆったりとした時間を過ごし、帰り際に「こちらも立ち寄っては」と教わったのが近くの『福屋酒店』である。
店で待ち構えていたのは、個性的な品揃えの面々だった。ここは一つ、今の気分に合った酒を見繕ってもらい、手土産にするとしよう。
【耳よりTOPIC】見事な柱状節理を間近にできる
富士山麓を流れ下る佐野川の流れが、玄武岩溶岩流を侵食して誕生した自然の奇勝・景ヶ島渓谷。その末端部に露出しているのが高さ約10m、幅約70mの屏風岩で、谷壁に沿うように明瞭な柱状節理(溶岩が冷えて収縮し、垂直に割れ目が入った六角形の柱状の岩)を観察できる。駐車スペースから未舗装路をほんの3分ほど下った先にあるが、訪れる人も少ない穴場だ。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2026年2月号より








