①1日30食限定のカレーを食べ逃すな!
優しくおなかを満たし、元気をくれる『Curry Kitchen 梟(アウル)』【橋本】
目当てはグルテンフリーのスパイスカレー。穏やかな滋味と程よい刺激を併せ持つ、店主の佐藤陽子さんが「家庭の味の延長」と称する一皿。定番のスパイスをあえていくつか省き、昆布出汁など3種のスープでまろやかな印象に。肩ロースを圧力鍋でホロホロになるまで煮込んだポーク(ライスM)1100円が好評。他にはチキン、挽肉ナスも。1日30食限定。
11:00~14:30LO、火休。
☎042-610-2055
②とっておきのおやつを調達しよう
素材と素材が響き合う、日常を彩るおやつ『うたたね舎』【橋本】
にっこり笑うスパイスぼうや250円は、シナモンとカルダモンが香るクッキー。全粒粉のキャロットケーキ460円を頬張ると、パッと複数のスパイスが舞う。店主の阿部良美さんが「引き算のレシピ」を心がけて作るのは、素材を生かした「気軽なおやつ」。品揃えは日によって替わり、旬の果物や野菜など、その日仕入れた食材から考える品々も楽しみ。
10:00~17:00、火・水休。
☎080-2148-8811
③庭園でじっくり癒やしの時間を
風に揺れる草木や池のコイを眺める「香福寺」【橋本】
室町時代に創建され、その後江戸時代に中興。現住職の森山真宏(しんこう)さんは、町田の『旧白洲邸 武相荘』も手がけた作庭師・福住豊さんに依頼し、境内に「雑木の庭」を造った。風が吹くと木漏れ日が揺れる、心地よい池泉回遊式庭園。ぐるっと巡れば、点在している小さな石像が語りかけてくるようだ。池ではコイが元気に泳ぎ回る。コイのエサも販売。
9:00~17:00(コイのエサやりは~16:00)。
☎非公開
④コーヒーを入り口に世界を広げよう
コーヒー&アート談義に花を咲かせる『8-18(ハチ イチハチ)』【橋本】
ドリップを待つ間、展示されているアートを鑑賞。「店内に陶芸の工房も併設しています」と、コーヒーを差し出しながら辻村文太郎さんが言う。自家焙煎のブレンド500円やスペシャルティコーヒー700円は浅煎りから深煎りまで揃い、どれも豆の特徴を生かした味わい。15時以降はバー営業も。クラフトビール700円。
●10:00~15:00(金は~22:00、土は15:00~22:00、日・祝は11:00~19:00)、無休。
奥深きペアリングの世界へようこそ『finn coffee』【橋本】
「まずお菓子を選び、それに合うドリンクを質問してくださる方が多いです」。おすすめを聞くと、店主の河野志津乃さんが気さくに答えてくれる。自家製の焼き菓子が評判で、塩チョコスコーン290円には、カカオに似た余韻のダークブレンド520円を提案。しっかりしたコクが焼き菓子の香ばしさを際立てる。レモンケーキ360円。
10:00~19:00(土・日・祝は~18:00)、水・木休。
⑤アメリカンな雑貨に囲まれる
雑貨も気になるけどおしゃべりも尽きない『NEXT MARKET』【南橋本】
DULTONをはじめ、インテリア雑貨がずらり。店のロゴ入りTシャツ3000円は、店内のシルクスクリーン印刷機で手刷りしたオリジナル。「地名入りのものは友人のハンバーガー屋が作りました」。そう話しつつ、私物のレコードからBGMを選ぶ青嶋敏昭さん。不定期に音楽イベントも主催するなど、トピックが満載。
11:00~18:00(土・日・祝は12:00~)、水休。
☎042-703-4011
⑥夜はしっぽりしめたい
昭和の大衆食堂でビール片手にひと息『よしの食堂』【橋本】
創業58年の大衆食堂で、品数は優に100以上。乾いた喉にビールを流し込み、ニンニクがガツンと効いた牛肉のスタミナ炒め800円をかき込めば、明日の英気を養える。店を切り盛りするのは、横山浩一さんとその家族。腹ペコならライス250円(味噌汁付き)を追加するのも手だ。瓶ビール(大)700円。
11:00~13:30LO・17:00~19:30LO、月・火休(臨時休あり)。
☎042-772-4717
波に揉まれても守ってきた“橋本らしさ”
橋本駅南口を出ると、リニア中央新幹線神奈川県駅(仮称)の予定地はすぐそこ。工事現場を一望できる「さがみはらリニアひろば」では、トンネルの大きさを再現した円形ベンチ「リニアベンチ」が人気だ(開園日はJR東海のサイト内「神奈川西工事事務所からのお知らせ」で要確認)。街は、今まさに過渡期。再開発が進む駅周辺と、期待を抱きつつ、マイペースを保つ人々のコントラストが面白い。
庭に面した縁側から、靴を脱いで上がる『うたたね舎』。古い民家を改装し、押入れをDIYした陳列棚に商品を並べている。庭は大家が管理しているが「誰でも出入り自由。保育園の散歩ルートにもなっていますし、近所の人が花を摘みにきます」と、店主の阿部良美さん。なんておおらかなんだ。
以前、阿部さんは橋本駅北口付近でカフェを営んでいたが、そちらは2021年2月に閉店。その後『うたたね舎』を始めた。元の店舗は「橋本でカフェをやりたい」と話していた客に引き継いでもらったらしく、それが『finn coffee』の河野志津乃さん。良縁が実って良かったな。
コーヒーショップも少しずつ増えている。それぞれキャラが立っていて、2024年4月にオープンしたばかりの『8-18』では陶器市やマルシェも開催するそう。先日のイベントでは近所の子供たちが集まって卓球をしたり、まるで縁日のようなにぎわいだったとか。一方、週末と祝日のバー営業の際には大人たちが集い、コーヒーだけでなくクラフトビールなどめずらしいお酒を嗜(たしな)む。
手がけているものが多すぎて「何屋か分からないとよく言われます」と笑う『NEXT MARKET』の青嶋敏昭さん。雑貨屋は2024年で3年目だが、本業はなんと不動産屋。この道約20年のベテランだ。事務所兼店舗があるのは、青嶋さんが生まれ育った下九沢団地の敷地内。音楽イベントを企画してきた経験を生かし、「DJやキッチンカーを呼んで、みんなが楽しんでくれるイベントを定期的に開催したい」とひそかに企む。
日が沈み『よしの食堂』の看板に明かりが灯(とも)る頃。厨房で腕を振るっていた横山浩一さんに、駅周辺の再開発について尋ねると、自らの子供時代と比較。「あの頃は大きな工場がどんどんできて、人口が急増した時代だったなあ」。
大きな変化を受け入れ、同時に自分たちらしい文化を育んできた橋本は、これからさらにどう変わっていくのだろう。
取材・文=信藤舞子 撮影=原 幹和
『散歩の達人』2024年11月号より