『喫茶タイムマシン』レトロ&ポップな80年代にロックオン![江古田]
「1階の特注ゲーム機は元自宅のリビングテーブルで、壁のドット絵は趣味で描いているもの」と、40年かけて集めた畑さん夫妻のコレクションが満載のテーマパーク的喫茶店。2024年4月に開店したばかりだが、早くも新旧の少年少女たちのサロンと化している。
『ヴィエイユベーカリーカフェ&ギャラリー』パン屋さんで本とアートにも出合う[江古田]
卵やバターを極力使わない食事パンが主。実家や農家直送の食材でジャムも作る。空間の大半は月替わりアート&古本カフェ。店主の大山哲司さんは「パンを買いに来たついでに楽しんで」と、パンと本と珈琲セット800円も用意。
・14:00~20:00(日・祝は12:00~18:00)、月・火休。
・☎03-5996-3485
『ぐすたふ珈琲』アートや演劇人も愛する香りと空間[江古田]
薄茶色の起毛生地を壁や天井に張り、赤いベルベットの椅子がカウンターに沿って並ぶ。手回しロースターで直火焙煎する店主の茅根和司さんは、豆に湯を点滴してネルドリップ。元スナックの色香漂う空間で香り深き至福の一杯を。
・10:00~18:00、水休。
・☎03-3951-5511
『百年の二度寝』雑貨店の奥でひっそり営業中[江古田]
雑貨店『オイルライフ』を突き抜けると奥に現れるのが小さな本屋だ。店主の河合南さんが「お客さまの顔が浮かぶ」新刊を軸にセレクト。社会派、江戸文化、食文化関連に加え、希少な雑貨、個性派ZINEにも垂涎だ。作家と出版社をつなぐイベントも開催。
・13:00~19:00(金は~20:00)、月・木休(不定休あり)。
・☎なし
・Instagram:mukadeyabooks
『snowdrop』新旧の作家が混在する約5坪の小宇宙[江古田]
ひと目で見渡せる小さな古本屋では約6000冊がお出迎え。児童文学、美術、日本文学などが床にも山積みで、古書と最近の本が入り混じる。「まず何ページか読んでみて、好きな作家を探して」と店主の南由紀さん。
・12:00~20:00(水は14:00~)、不定休。
・☎03-6356-5426
『武蔵野音楽大学 楽器ミュージアム』古今東西の麗しき楽器が集結[江古田]
「鍵盤楽器」「管弦打楽器」「日本の楽器」「世界の民族楽器」と、4つのエリアで約1700点を展示。2022年にリニューアルし、一般公開が始まった。美しい装飾のピアノ、平安~鎌倉期と推定される笙(しょう)など見どころ満載。楽器の誕生と変遷を知る貴重な歴史資料に心躍る。
・12:00~16:00(予約制)、火・水・第2土のみ開館。
・一般500円(小学生300円)。
・☎03-3992-1410
『Jet Gelato SAKURADAI』ジェラート片手にテイクオフ![桜台]
空色の壁に描かれた飛行機がインパクト大。滑走路風の店内は「コロナ禍で空いた会議室を活用しました」と、運営する地元企業『大沢電装』社長の大澤正拓さん。「どうせなら」と自身も制服姿に身を包む。店内奥で作る自家製ジェラートは、季節限定フレーバー多し。
・12:00~18:00(金は~17:00)、月~木休。
・☎なし
・Instagram:jetgelato_sakuradai
『旬の肴かかわり』気張らぬ風情で旬魚を満喫[練馬]
魚はどれもピッチピチ。包丁を握るトウくんは元漁師で目利きが抜群、自由な発想で創作料理を編み出す。前職場で意気投合した女将のまりこさんが推す地酒とじっくり味わいたい。
・11:30~13:30LO・17:30~23:00LO(土・日・祝は夜のみ、日は22:00LO)、水休。
・☎03-6694-4906
『sokit(ソキット)』タウンユースできる小粋なアイテム満載[練馬]
アウトドアのネットショップ実店舗として週3日営業。ユニセックスのシャツやボトムス、軽量&コンパクトのギアなど、洗練されたデザインが揃い、街中でも使えるものばかり。国内唯一の取り扱い品や、日本総代理店として扱うメーカーなど、ここでしか出合えないアイテムも多数。
・12:00~18:00、金~日のみ営業。
・☎03-3994-3822
『111(いちいちいち)』気軽な雰囲気ながら料理は本格派![豊島園]
横浜中華街などで中華道を邁進(まいしん)してきた店主の吉冨貴明さん。最初あっさり、後から怒涛の辛味と旨味が押し寄せる担々麺は甜麺醤(テンメンジャン)も一から手作り。麻婆豆腐は3種、よだれ鶏は2種の豆板醤をブレンドし、餃子は手作りするもちもちの皮から肉汁があふれる外せぬ味だ。
・11:30~14:30・17:30~21:30、水休。
・☎050-3503-6946
『ねりま中古カメラ きつね堂』フォルムも格好いいお宝カメラがザクザク[練馬]
ニコン、キヤノン、ライカ、ポラロイドに二眼レフなど、フィルム、デジが混在。「家に眠っているカメラなどを大事に買い取ります」と店主の小田聡さん。修理・整備済みが並ぶほか、未チェック品だらけの棚で宝探しする常連の姿も。
・11:00~18:00、日・月・祝休。
・☎03-5848-3776
『大谷輪韻蔵(おおたにワインぐら)』日本ワインのポテンシャルを体感[練馬]
山梨の「イケダワイナリー」で日本ワインに開眼した店主の大谷雅彦さん。常時7種類をグラスで用意。つまみ付きお試しセット1100円もお得だ。味噌と酒粕のピザなど和風メニュー中心で金目鯛の開き1078円など、小田原の干物も激推し。
・17:00~23:00LO、火・不定休。
・☎なし
・Instagram:ohtani_wine_gura
『もてなし処 鈴ひろ』食材の香味が際立つ和食の数々[練馬]
活アジに米粉の衣をまとわせたアジフライの軽い歯触りといったら。長野の農家から届く無農薬野菜も旬の息吹を放つ。豊洲仕入れ魚を用い、料理の隅々まで丁寧な仕事ぶり。好みの酒と合わせたい。
・11:30~14:00・16:30~22:30(土・日・祝は11:30~22:30)、月昼・木休。
・☎050-5462-3598
語りだしたら止まらなくなる、偏愛さんが巣食う
楽器を背負った学生も闊歩(かっぽ)する江古田は、昭和の名残を漂わす商店街が縦横無尽に走る。一見、フツーな感じだが、界隈をぶらつくと、昔ながらの商店に紛れるようにこぢんまりした店があったり、路地の奥に新しい店が潜んでたり。店に入ってみても、店主はわりと放置プレー。こちらから声をかけるまで、余計なことは話さない。
しかし、話しかけたい素振りを見せると一転、破顔して堰(せき)を切ったように話し出す。『ぐすたふ珈琲』の店主はコーヒーや古道具への愛着が止まらないし、『喫茶タイムマシン』では居合わせた客を交えて1980年代のポップカルチャー話に花を咲かせる。ZINEやアートの作家たちに対する熱量が抑えられない『百年の二度寝』の河合南さんは「ここは西武線ですけど、バスでつながってる中央線からカルチャーの風が入ってきます」と笑う。アートや音楽関係者も多く暮らす街ということもあってか、好きな事を貫く気質も濃く、扉を開けるたび、パラレルワールドを旅する心地にすらなる。
「ここは、田舎みたいな隣近所との付き合いがある街です」と話すのは、小麦とアートと音楽の話が交錯する『ヴィエイユ』の大山哲司さんだ。自身も古書店『snowdrop』南由紀さんに選書を依頼し、南さんは「大山さんは扱いが丁寧。うちでは狭すぎて置けないポップアップ絵本も親子でゆっくり選んでもらえます」と、顔をほころばす。さらには、「学生さんの視点に感化され、今までスルーしていた作家も置くようになりました」と、みずみずしい感性も柔軟に吸収。そうした身近な交流が各々の好きなものへの愛を深める。
桜台へと歩を進めると、垣根の花が季節を謳歌(おうか)し、小さな畑で野菜が青々と育つ。そんな住宅地に、技術系企業がなぜか飛行機をモチーフにしたジェラート屋を始めていた。あら、ここにも風が吹いてきている?
そして予想通り、チェーン店が乱立する練馬駅周辺ですらも、偏愛店主らのお店が誕生していた。シャレたアウトドアショップ『sokit』では、店主の山アイテムへのこだわりが止まらないし、中古カメラ店『きつね堂』では「1930年代のカメラが手に入るとテンションが上がります」と、静かに目に光を宿す。
江古田から吹く風が練馬を席巻するのもきっと間近。アンテナに引っかかったら、臆せず話しかけてみるべし。店主たちの秘めたる「○○愛」に触れ、新たな世界への旅が始まる。
取材・文=林 さゆり 撮影=鈴木奈保子
『散歩の達人』2024年6月号より