落ち着いた雰囲気が上質の湯処を期待させる

『豊島園 庭の湯』のエントランス。
『豊島園 庭の湯』のエントランス。

豊島園駅を降りると、数年前とは風景が違っていた。以前は、駅から出ると遊園地「としまえん」の入口が見えたが、遊園地が閉園したいま、一帯では2023年春に開園予定の映画『ハリー・ポッター』のテーマパークの工事が進んでいるのだ。

工事の囲いを横目に緩やかな坂を下っていくと、ほどなく『豊島園 庭の湯』が見えてくる。都内屈指の人気を誇る日帰り温泉施設で、「中学生未満お断り」を謳(うた)うだけに、エントランス部にも落ち着きが感じられる。

フロントで更衣ロッカーの鍵と作務衣風の館内着、タオル・バスタオルが入ったバッグを受け取る。バーデゾーンは水着着用なので、水着の用意がない場合は、レンタル水着もここで手配する。更衣室はゆったりしており、パウダールームも広い。更衣室に入っただけで、「大人の湯処」にふさわしいクオリティの高さを実感できる。

窓に映る日本庭園を眺めれば宿の温泉気分

手前が高濃度人工炭酸泉。露天風呂への出入口を挟んでメインの浴槽がある。
手前が高濃度人工炭酸泉。露天風呂への出入口を挟んでメインの浴槽がある。

まずは温浴ゾーンへ。浴槽は男女それぞれ内湯に4種類、露天に2種類の浴槽がある。高濃度人工炭酸泉を除くすべての浴槽に地下1445mから汲み上げた含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉が注がれている。

内湯にあるメインの浴槽に浸かれば目の高さに日本庭園が映り、都会であることを忘れてしまうような落ち着いたたたずまいを感じる。

まるで、宿の風呂に入っているような気分だ。この浴槽を挟んで、ソフトな刺激が体を包むマイクロバイブラ浴と、マッサージ効果がある寝浴が併設されている。湯船をはしごして、効果の違いを体感してみよう。

高濃度炭酸泉は1回15分程度を目安に入浴しよう。
高濃度炭酸泉は1回15分程度を目安に入浴しよう。

高濃度人工炭酸泉は一度に10人ほどが利用できる広さがある。湯に浸かるとすぐに肌に気泡が付着するのは、炭酸ガスの濃度が高いことの証し。耳を澄ませば湯面でプチプチと炭酸が弾ける音も聞こえる。ぬる湯になっているのでのんびり長湯を楽しめば、あまりの気持ちよさにうとうとしてくる。

日本庭園に囲まれた四季を映す露天風呂

木々に囲まれた露天岩風呂は、森林浴気分も楽しめる。
木々に囲まれた露天岩風呂は、森林浴気分も楽しめる。

露天エリアは、日本を代表する造園設計家・小形(おがた)研三氏が設計した日本庭園の一角に造られている。

この日本庭園が「庭の湯」の名の由来だ。野趣あふれる露天岩風呂と湯船を独り占めできる露天信楽焼風呂があり、いずれの浴槽にも茶褐色で少しとろみのある天然温泉が注がれている。

桜、新緑、紅葉など、季節の移り変わりを間近に感じることができる趣のある風呂だ。この緑あふれる空間を湯船に浸かりながら楽しむだけでも、ここに来る価値がある。

陶器の肌触りも優しい露天信楽焼風呂。浴槽に身を沈めれば、もったいないほどに温泉があふれ出す。
陶器の肌触りも優しい露天信楽焼風呂。浴槽に身を沈めれば、もったいないほどに温泉があふれ出す。

独立したスペースのサウナで「ととのう!」

ヨーロッパ調の意匠を施したテルマリウムサウナ。
ヨーロッパ調の意匠を施したテルマリウムサウナ。

内湯に併設するサウナは、サウナ室との急激な温度差を和らげるために、ガラス窓と扉で仕切った独立したスペースになっている。専用タオルが用意され、自由に使うことができるのもうれしいサービスだ。こんな配慮もサウナーを喜ばせる要因になっているようだ。

サウナは2種類あり、古代ローマ風呂の蒸し風呂方式を再現したテルマリウムサウナは低温のスチームサウナ。温められた床や壁、イスからじんわりと熱が伝わり、無理なく発汗が促される。アロマの香りも心地よく、壁面に置かれた水晶などサウナ室の装飾も凝っているので、贅沢な気分で入浴できる。

もう1室は、加熱した石に水をかけることで熱気を室内に循環させるフィンランドサウナ。定期的にスタッフがアロマ水をサウナストーンにかけて熱気を発生させるアロマサービスも行っている。サウナ室内には、高温の熱気が充満しているのでたっぷり汗を流せる。これぞ、サウナの醍醐味だ。

火照った体を引き締めるのが、温度18℃の冷水浴と、紐を引くと桶に入った水を浴びることができる桶シャワー。

かたわらに置かれたベンチやイスで休憩できるので、ひと休みしたらまたサウナへ。サウナ好きなら、このスペースから離れられなくなりそうだ。

カップルで楽しめる水着着用のバーデゾーン

大きな円形プールがあるバーデゾーン。壁側にスチームサウナや「ほっとタブ」を設置する。
大きな円形プールがあるバーデゾーン。壁側にスチームサウナや「ほっとタブ」を設置する。

温浴ゾーンを楽しんだら、水着に着替えてバーデゾーンへ。

まず目を引くのがガラス張りの広々とした空間と大きなバーデプール。中央に置かれたパワーストーンの水晶も存在感がある。

バーデプールには、ネックシャワーやボディマッサージ、フローティングマッサージ、歩行浴などが備えられ、周回することで体の各部位のマッサージが行え、疲労回復効果が得られるという。

長時間水に入っていても体に負担がかからないように水温は35℃に設定されている。11時~、14時~、16時~の1日3回、インストラクターが指導するアクアトレーニングやアクアウォーキングなどの無料プログラムもあるのでぜひ参加してみよう。

庭園の緑を間近に眺める屋外ジャグジーは、やわらかな肌触りの軟水を使用。
庭園の緑を間近に眺める屋外ジャグジーは、やわらかな肌触りの軟水を使用。

バーデゾーンの屋外エリアには、屋外天然温泉ジャグジーと屋外軟水ジャグジー、さらに山小屋風の屋外フィンランドサウナとスチームサウナがある。いずれも水着着用なので、ご夫婦やカップルが一緒に楽しめる。

バーデゾーンの楽しみはこれだけではない。奥に広がる1200坪の日本庭園は、山の中を思わせる雑木を生かした植栽が特徴で、自然の渓流を模した小川が流れている。散策路では四季折々の草花が彩りを添え、6月にはアジサイも咲く。サンダルが用意されているので、ちょっと歩いてみよう。

温浴施設で自然散歩を楽しめるなんて、きっとほかでは体験できないだろう。これも、『庭の湯』ならではの体験といえる。

山小屋風建物の屋外のフィンランドサウナは国内でも最大規模。
山小屋風建物の屋外のフィンランドサウナは国内でも最大規模。

6種の天然鉱石のヒーリング効果を体感する岩盤浴

岩盤浴は岩塩ヒーリングゾーンと薬石ヒーリングゾーンに分かれている。
岩盤浴は岩塩ヒーリングゾーンと薬石ヒーリングゾーンに分かれている。

岩盤浴は当日予約の完全入れ替え制。入館時にフロントで受付をすると岩盤浴着と予約カードが渡される。

予約時間が迫ったら更衣室で岩盤浴着に着替え、予約時間10分前に岩盤浴棟に行けば、予約カードと引き換えに専用タオルが渡される。

岩盤浴室は半円形になっており、鳳緑石(ほうりょくせき)、七宝石(しちほうせき)、トルマリン、甲翠(こうすい)、化石黄土(かせきおうど)、ゲルマニウム鉱石の6種類の天然鉱石が配置されている。これらの石が温められることで遠赤外線が放出され、体の芯から温まるというわけだ。じんわりと温まるので体に負担が少なく、無理なく発汗できる。

汗をかいた後は、クールルームやホールで体を冷やしひと休み。

岩盤浴エリアは日本庭園にもつながっているので、自然の風に当たってクールダウンするのもいい。これを2~3回繰り返すことで、体の中から健康になれるのだという。

憩う、食べる、癒やす……。アフタースパも充実

庭園を見おろしながらくつろげるリラクゼーションエリア。テレビモニター付きのイスもある。
庭園を見おろしながらくつろげるリラクゼーションエリア。テレビモニター付きのイスもある。

温浴ゾーン、バーデゾーン、岩盤浴とはしごすれば、たっぷり1日楽しめる。入浴後は、館内着に着替えてリラクゼーションエリアでゆったりくつろごう。庭園を見下ろすオープンリラクゼーションエリアは、テレビモニター付きのイスが並んでいる。籐製のイスを並べたリラックスチェアスペースはカップルで利用するのに最適だ。

うたた寝を楽しむなら室内を暗くしたクローズドリラクゼーションエリアへ。静かな音楽が流れ、水晶や炭などのマイナスイオン効果もあってリラックスできる空間になっている。女性専用エリアもあるので安心して休憩できる。

「食事処緑水亭」では和洋中の定食やスイーツを味わえる。クラフトビールやウイスキー、焼酎、日本酒など湯上がりの1杯を気軽に楽しめるバーカウンターもある。

ほぐし処やタイ古式療法「テワラン」、ヒーリングエステ「チャンティック」、あかすり&トリートメントの「美肌処/ボディクリーン」など、ボディケア&エステなどのサービスも充実しているので、自分へのご褒美に施術を受けるのもおすすめだ。

正直いって、2000円を超す入館料は少し高いと思っていたが、充実した温浴施設と心地よいサービスを受けられるうえ、1日たっぷり過ごせるのだから、むしろ安いと感じた。明日への充電ができる大人の休日を過ごすなら、おすすめの施設だ。

住所:東京都練馬区向山3-25-1/営業時間:10:00~23:00(最終受付~22:00)/定休日:無/アクセス:西武鉄道池袋線・地下鉄大江戸線豊島園駅から徒歩3分

取材・文=塙 広明 写真=豊島園 庭の湯