【紹介ルート】
三ノ輪橋→荒川一中前→荒川区役所前→荒川二丁目→荒川七丁目→町屋駅前→町屋二丁目→東尾久三丁目→熊野前→宮ノ前→小台→荒川遊園地前→荒川車庫前→梶原→栄町→王子駅前
気づけば寄り添っている、 昔も今も生活の足
レトロ調に仕立てられ、遊園地のアトラクションのようにワクワクする三ノ輪橋停留場。都電の発車を見送ったら、こちらもスタート。線路と並走するジョイフル三の輪は昭和の薫りプンプンで生活密着な店が多いけど、『なにかし堂』なんて不思議な図書室もできている。いつも見逃せない商店街だ。
荒川二丁目停留場の住宅地では、恐竜だらけのマンションにびっくり。
「ビルは圧迫感を与えてしまうから、せめて周りの方に楽しんでもらえるようにしたかったそうです」
とは、入居する『エクスカリー』の小林さん。店内は真っ黄色、カレー作りはインド人の“元カレ”から教わったというユニークな店だ。
荒川自然公園で、人工地盤であることも忘れる豊かな自然とコブハクチョウに癒やされたら町屋へ。都電目線で見る駅前はビルも人も多くてまるで大都会だ。
このコースだけで8つ! “○○前”の停留場
しかし都電の停留場名には“○○前”が多い。町屋駅前に熊野前、このコースだけで8つも! 駅や学校や神社などの身近な目印でさらっと済ますのが“生活の足”路線らしくていい。
「都電しか知らなかったから初めて見た京浜東北線は大きかった(笑)。でも都電は、この街と一緒で、人の距離感が近くて安心するんですよね」
とは、宮ノ前の『ARAKAWA ii VILLAGE(アラカワ イイ ヴィレッジ)』の川合理江さん。隅田川が流れるこの周辺は木工や金属加工、ガラスの工場が集まるものづくりの地だとも教えてくれた。確かに、住宅地と思って歩けばそこここで町工場を見かけるし、小台の『ミニ厨房庵』も元はプレス加工業だ。
「周囲のいいものを見つけてここで紹介して、ものづくりをサポートしていきたい」と川合さんは頼もしい。
さて、ゴールの王子駅前。サンスクエアでは北区みやげがざくざく買える自販機、ボウリング場の奥には穴場なレストラン『141 OUJI TABLE』も待っていた。思いがけぬ新幹線ビューのおまけつきで!
1. なにかし堂 [荒川一中前]
みんなの居場所でもある街の図書室
棚には絵本に漫画、小説、教育書にビジネス書など雑多な本が約2000冊。読んでいくのも借りるのも無料というからありがたい。「15時以降は子供が多くなりますが、大人も含めたみんなの居場所なんです」と店主の野口貴裕さん。
●13:00~19:00、水休。☎03-5604-5893
2. エクスカリー [荒川二丁目]
食欲もそそられる!? カレー色の空間
小林沙羅さん(左)が栄養士資格を持つ姉・綾乃さんと手がけるのは、米と合う南インドカレー。チキンカリー、茄子カリーなど4種類あり、パパド(豆せんべい)付き。ハーフ&ハーフ980円、チャイ500円。
●月・火11:30~15:00、週末(不定期)12:00~16:00のみ営業。☎なし。
3. 荒川自然公園 [荒川二丁目]
白鳥夫婦にも会える屋上オアシス
東京都下水道局三河島水再生センターの上に人工地盤を造り、1974年に開園した公園。荒川区の形をかたどったという白鳥の池には、本当にコブハクチョウがペアで暮らす。
●6:00~19:00(11月~3月は月により異なる)、第1・3木休。
4. アフリカ屋 [町屋駅前]
色柄が楽しいアフリカ布の世界
築60年近い木造家屋で1994年ごろから西アフリカの布を販売。店主が現地で買い付け中は、娘の日光(にっこう)さん(右)と孫のたえさんがお店番。日本人作家がアフリカ布と革で作ったポーチ4290円などもある。
●11:00~19:00、無休(不在時もあるので要確認)。☎090-1819-6171
5. n.r store(エヌアール ストア) [町屋二丁目]
ご年配にも愛されるベトナム風
東南アジアを愛する料理家の店主が営む料理店。看板メニューのバイン・ミー750円は4種類あり、レバーパテやベトナムハム、ソースまで手作り。意外とご年配にもファン多し。ベトナムコーヒー500円。内装は木工作家の夫が手がけ、鍋敷きなどの木工品も販売。
●11:30~15:00・17:00~20:00(土・日は11:30~18:30。現在持ち帰りのみ。夜は予約で店内利用可)、月・火休。☎なし
6. ARAKAWA ii VILLAGE(アラカワ イイ ヴィレッジ) [宮ノ前]
暮らしが華やぐモノとの出合い
鉛筆工場跡地に2年半前にオープンした複合施設。リトアニアの布製品やアメリカの文具、地元で作られた生花キャンドルや照明器具など、誰かにあげたくなる品が集まるギフトショップとインテリアショップが並ぶ。
●11:00~18:30、月・火・水休。☎03-6807-8195
7. ミニ厨房庵 [荒川遊園地前]
一家団結が育む精巧な小さき世界
約12分の1スケールのドールハウス用ミニチュアを制作・販売する工房。元プレス工場だけあり河合行雄さんによる金属製調理器具は材料も作り方もリアル。粘土物や木工は妻・朝子さんと娘・あさみさんが担当。
●10:30~16:00、不定休(予約制)。☎03-3893-0996
8. +h café(アッシュ カフェ) [荒川車庫前]
本場仕込みの味わいを堪能
ステンレス加工工場を転用した天井高のある店内で味わえるのは、パリ仕込みのタルト・タタン660円や自家製アイスクリーム627円などのスイーツやランチ。浅見和宏さん・博子さん夫妻が渡仏した際の思い出の品も飾られる。
●11:30~18:00、月・木休。☎03-4283-3780
9. 都電もなか本舗 菓匠 明美 [梶原]
いつまでも色あせない都電名菓
都電存続危機をきっかけに1977年に誕生した都電もなか1両160円。北海道産最高級小豆のあんこと求肥餅入りだ。7種類ある箱も楽しく、初代は奥から2番目(通称、赤帯)。手作りのビーズ都電ストラップ1045円と一緒にみやげにいかが。
●10:00~19:00、月休。☎03-3919-2354
10. 141 OUJI TABLE(いちよんいち オウジ テーブル) [王子駅前]
新幹線ビューのお楽しみも!
木と緑がコンセプトのレストランは意外にも本格中華料理が充実。新幹線がパノラマで楽しめる眺望も自慢。141特製黒酢スブタ1100円、北区名物ソース焼きそば880円、オレンジワイン・グラス660円。
●11:30~14:00LO・17:00~19:30LO、無休。☎03-5933-6955
取材・文=下里康子 撮影=オカダタカオ
『散歩の達人』2022年5月号より