とんかつ 三節(大塚)
高さ約20cmのど迫力に客も“ざわつく”一品
とんかつを食べに来た客が“ざわつく”というしょうが焼きは、老舗とんかつ店の隠れ人気メニュー。標高約20cmのキャベツの山に、肉が断崖絶壁のように盛られる。「肉は『でかい』が正義」と牧野隆さん。店内で精肉し、特上とんかつと同じ部位、豚肉を知り尽くすとんかつ屋だからできる傑作だ。ニンニクもドカンと利かしているが、肉質が良いからジャンクな味ではなく、むしろ上品。赤だしと一緒にいただけるのもとんかつ屋ならでは。
『とんかつ三節』店舗詳細
伊勢屋食堂(大久保)
市場の男たちに愛される王道!
淀橋市場の『伊勢屋食堂』は、しょうが焼きを語るうえで外せない店。ロースと豚バラ、2種類のしょうが焼きがあり、どちらもファンが多いが、脂身好きなら豚バラがおすすめだ。ふわふわでコク深い豚バラを、ネギ入りのつゆだく醤油ダレでいただく。「ショウガは国産。市場という場所柄、素材選びも手が抜けないんです」と2代目店主・田中博さん。これぞ王道、「和」のしょうが焼きは今日も市場の男たちに元気を与えている。
『伊勢屋食堂』店舗詳細
御定食 動坂食堂(日暮里)
エビ2本盛りの贅沢売り切れ御免の人気者
戦後からこの地で業種を変えながら続け、昭和40年代には食堂に。近くに大学があることから、多くの学生の胃袋を満たしてきた。一番人気はミックスフライ定食980円。肉、魚、野菜を織り交ぜ5種類ものフライを豪快に盛る。千住大橋に近い足立市場から仕入れるエビや白身魚は鮮度抜群。フルーツが隠し味の自家製のタルタルと魚介のフライは好相性。カツは柔らかいヒレカツで、思わず頬が緩む。ワカメと豆腐の味噌汁が脇を固める。
『御定食 動坂食堂』店舗詳細
西洋御料理 小春軒(人形町)
うれしい7種盛りの老舗洋食店
明治45年(1912)創業の東京を代表する洋食店の一つ。この店の特製盛合せ1500円は、エビフライ、白身魚フライなどミックスフライの定番ネタに加えて、カジキマグロとイカのバター焼きが加わりバラエティ豊か。細かいパン粉を使い、ラードで揚げるので衣はサックリして軽い。注目はカラスカレイを使った白身魚フライ。ふわふわで口の中でとろける。ごろっとしたジャガイモが入るポテトサラダは、自家製マヨネーズが味の決め手。
『西洋御料理 小春軒』店舗詳細
和定食・麦めし いとう(若松河田)
見た目と味わいのギャップにやられた!
開店して40年以上。2代目店主の伊藤文孝さんは、母・ウタさんのレシピを守り、店を切り盛りする。「ベースは白味噌ですが、色付けで少し赤味噌を入れて煮詰めると、この色になるんです」と、運ばれてきたサバの味噌煮は真っ黒。しかし、ほぐすとふんわり白い身が現れる。身から染み出た旨味と味噌のコクが凝縮された煮汁は、見た目と裏腹にさらりとした舌触りで、やさしい味わいだ。麦を混ぜ込んだ山形県産コシヒカリとの相性は言わずもがな。ご飯をかき込む手が、もう止まらない!
『和定食・麦めし いとう』店舗詳細
菱田屋(駒場東大前)
サバ本来の旨味を生かした、どでかい一皿
東大の仕出し弁当屋として開店してから100年余り。時代とともに形を変え、今は地域で人気の定食屋に。「ボリュームたっぷりで毎日食べても飽きない味を意識しています」とは、店主の菱田アキラさん。たっぷり半身を使ったサバの味噌煮は、皿からはみ出さんほどの大きさだ。ザラメと醤油を加えて水煮し、下味を付けたら、信州田舎味噌でさっと仕上げる。肉厚の身に煮汁を付けて頬張ると、プリっとした食感とたっぷりの脂、味噌の甘みが混ざり、舌の上で躍る。
『菱田屋』店舗詳細
季節料理 根本(市ヶ谷)
骨ごと食べられる極上の柔らかさに驚愕
「良い魚を、最高の味で食べてほしい!」と開業した店主の根本勝義さん。サバの味噌煮は10年以上の試行錯誤を経て店の名物になった。下処理したノルウェー産のサバを、翌日に10時間水煮し、3日目に味噌で煮付けて完成させる。太い背骨もろともほぐして口に運んでみると、とろけるような食感で固い部分は皆無。赤と白の合わせ味噌に酒粕香る濃厚なタレがしっかりと染み込んでサバの脂と混ざり合い、さらに深みが増す。
『季節料理 根本』店舗詳細
山角(下北沢)
サッと出る飯と肴と酒で、まったりと憩う
夜中まで通し営業の、貴重な存在。静かに流れる民放ラジオ、テキパキ働く女性スタッフに、なぜか妙に癒やされる。人気のチキン南蛮を筆頭に、メニューは超豊富。迷っていると、「一品料理もプラス200円で定食にできますよ」。やさしい指南でさらに迷うが、初来店なら名物の牛すじ煮込みを。下茹でして約5時間じっくり煮込むので、具のコンニャクやゴボウはこっくり、濃厚な汁は滋味深い。最後の一滴までもがご飯のおかずに、はたまた酒のアテになる。
『山角』店舗詳細
百瀬食堂(阿佐ケ谷)
料理、スイーツ、酒。信州の実りが凝縮
不動の人気は、店主の百瀬壽郎さんが郷里・松本の農産物を取り入れた定食だ。豊洲市場仕入れの魚もいいが、上州もち豚を使う主菜は、脂身の甘みが、鉄板でひとつひとつ焼き上げた野菜の香味、まろやかなゴマ&ゆずこしょうソースと重なりあう。兄が丹精込めたはぜ掛け天日干しのコシヒカリのご飯、姉お手製の根っこ入りシャキシャキ野沢菜にも頬が緩む。実家の隣家が作るふじがとろ~りバニラアイスととろけるタルトタタンにたどり着けたら、口福。
『百瀬食堂』店舗詳細
構成=アクトデザインラボ株式会社 取材・文=半澤則吉、桂水社中、高橋健太、佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ) 撮影=小野広幸、井原淳一、山出高士、加藤熊三、門馬央典