魔法のアジ料理『鰺家』(赤羽)
『鰺家』は定番の刺身定食に漬け丼、そして鰺フライ定食……と何から何まで鰺料理のオンパレードの鰺料理専門店。大人気の鰺家なめろう定食は佐賀の唐津湾で獲れた新鮮な鰺を堪能してほしいという思いから、通常のなめろうよりも粗めに叩き、アジの食感が楽しめるように。
なめろうに使われている味噌はお店オリジナルでご飯がグイグイと進む味付けに。あまりのおいしさから店長の中西さんのように光物の魚が苦手だったという人が好きになってしまったという伝説もあるほど! このお店でしか食べられないオリジナルメニューの鰺メンチや鰺のナゲットなどのアラカルトメニューも見逃せない。
『鰺家』店舗詳細
本格寿司屋に引けを取らない海鮮丼が人気『食堂もり川』(本郷)
明治時代から続く定食屋で、メニューはドーンとボリューミー。店主の松川大太(だいた)さんは「親元を離れて暮らす学生さんが、おなかいっぱいになれるように」と太っ腹だ。なかでも、驚くのは海鮮丼。築地や三崎から届いた旬の魚介十数種を惜しみなく盛り付け、本格寿司屋に引けを取らないと評判だ。肉厚のマグロは脂がトロリ、エビはプリッ、ホッキはコリッと各々の個性がはじけ、口中はたいそうにぎやか! 箸が止まらない。
『食堂もり川』店舗詳細
ボリューミーなシラスの二段構え『飯田橋 一代目 ほしの』(飯田橋)
山積みになった文庫本に、壁にはアイドルのポスター、テレビからは古い映画が流れる不思議空間。ランチ時は、とことんシラスが味わえるさらさら丼が好評。どんぶりに、まずはご飯。その上に明太子ペーストとシラスをのせ、もう一度ご飯をかぶせる。そして再び明太子とシラスを盛り、鮭とトビコをトピングする超ボリューミーな二段構えだ。シラスのほどよい塩分と明太子の辛味が絶妙。豊洲から仕入れたマグロを使った、中落ちネギトロ丼900円も人気。
『飯田橋 一代目 ほしの』店舗詳細
野菜・肉・魚と栄養バランスも◎『さくら本店』(飯田橋)
旬の和食がリーズナブルに味わえる。ランチは、さくら定食1種類のみ。ただ座って待っていれば、おいしい定食が運ばれてくる。メニューは日替わりで、この日はさばと大根の味噌煮、まぐろぶつ、鶏の南蛮漬。具沢山な味噌汁に、とにかく食欲が増すおかずが目白押し。その上ご飯はおかわり自由だ。旬の野菜、肉、魚をバランスよく盛り込むのも店主・吉澤重昭さんのこだわり。サラリーマンだけでなく、健康志向のOLにも人気というのもうなずける。
『さくら本店』店舗詳細
高さ約20cmのど迫力な一品『とんかつ 三節』(大塚)
とんかつを食べに来た客が“ざわつく”というしょうが焼きは、老舗とんかつ店の隠れ人気メニュー。標高約20cmのキャベツの山に、肉が断崖絶壁のように盛られる。「肉は『でかい』が正義」と牧野隆さん。店内で精肉し、特上とんかつと同じ部位、豚肉を知り尽くすとんかつ屋だからできる傑作だ。ニンニクもドカンと利かしているが、肉質が良いからジャンクな味ではなく、むしろ上品。赤だしと一緒にいただけるのもとんかつ屋ならでは。
『とんかつ三節』店舗詳細
市場の男たちに愛される生姜焼き!『伊勢屋食堂』(大久保)
淀橋市場の『伊勢屋食堂』は、しょうが焼きを語るうえで外せない店。ロースと豚バラ、2種類のしょうが焼きがあり、どちらもファンが多いが、脂身好きなら豚バラがおすすめだ。ふわふわでコク深い豚バラを、ネギ入りのつゆだく醤油ダレでいただく。「ショウガは国産。市場という場所柄、素材選びも手が抜けないんです」と2代目店主・田中博さん。これぞ王道、「和」のしょうが焼きは今日も市場の男たちに元気を与えている。
『伊勢屋食堂』店舗詳細
エビ2本盛りの贅沢フライ『御定食 動坂食堂』(日暮里)
戦後からこの地で業種を変えながら続け、昭和40年代には食堂に。近くに大学があることから、多くの学生の胃袋を満たしてきた。一番人気はミックスフライ定食980円。肉、魚、野菜を織り交ぜ5種類ものフライを豪快に盛る。千住大橋に近い足立市場から仕入れるエビや白身魚は鮮度抜群。フルーツが隠し味の自家製のタルタルと魚介のフライは好相性。カツは柔らかいヒレカツで、思わず頬が緩む。ワカメと豆腐の味噌汁が脇を固める。
『御定食 動坂食堂』店舗詳細
フライ7種盛りの老舗洋食店『西洋御料理 小春軒』(人形町)
明治45年(1912)創業の東京を代表する洋食店の一つ。この店の特製盛合せ1500円は、エビフライ、白身魚フライなどミックスフライの定番ネタに加えて、カジキマグロとイカのバター焼きが加わりバラエティ豊か。細かいパン粉を使い、ラードで揚げるので衣はサックリして軽い。注目はカラスカレイを使った白身魚フライ。ふわふわで口の中でとろける。ごろっとしたジャガイモが入るポテトサラダは、自家製マヨネーズが味の決め手。
『西洋御料理 小春軒』店舗詳細
サバの旨味と味噌のコク!『和定食・麦めし いとう』(若松河田)
開店して40年以上。2代目店主の伊藤文孝さんは、母・ウタさんのレシピを守り、店を切り盛りする。「ベースは白味噌ですが、色付けで少し赤味噌を入れて煮詰めると、この色になるんです」と、運ばれてきたサバの味噌煮は真っ黒。しかし、ほぐすとふんわり白い身が現れる。身から染み出た旨味と味噌のコクが凝縮された煮汁は、見た目と裏腹にさらりとした舌触りで、やさしい味わいだ。麦を混ぜ込んだ山形県産コシヒカリとの相性は言わずもがな。ご飯をかき込む手が、もう止まらない!
『和定食・麦めし いとう』店舗詳細
サバ本来の旨味を生かした一皿『菱田屋』(駒場東大前)
東大の仕出し弁当屋として開店してから100年余り。時代とともに形を変え、今は地域で人気の定食屋に。「ボリュームたっぷりで毎日食べても飽きない味を意識しています」とは、店主の菱田アキラさん。たっぷり半身を使ったサバの味噌煮は、皿からはみ出さんほどの大きさだ。ザラメと醤油を加えて水煮し、下味を付けたら、信州田舎味噌でさっと仕上げる。肉厚の身に煮汁を付けて頬張ると、プリっとした食感とたっぷりの脂、味噌の甘みが混ざり、舌の上で躍る。
『菱田屋』店舗詳細
骨ごと食べられる極上の柔らかさ『季節料理 根本』(市ケ谷)
「良い魚を、最高の味で食べてほしい!」と開業した店主の根本勝義さん。サバの味噌煮は10年以上の試行錯誤を経て店の名物になった。下処理したノルウェー産のサバを、翌日に10時間水煮し、3日目に味噌で煮付けて完成させる。太い背骨もろともほぐして口に運んでみると、とろけるような食感で固い部分は皆無。赤と白の合わせ味噌に酒粕香る濃厚なタレがしっかりと染み込んでサバの脂と混ざり合い、さらに深みが増す。
『季節料理 根本』店舗詳細
信州の実りが凝縮『百瀬食堂』(阿佐ケ谷)
不動の人気は、店主の百瀬壽郎さんが郷里・松本の農産物を取り入れた定食だ。豊洲市場仕入れの魚もいいが、上州もち豚を使う主菜は、脂身の甘みが、鉄板でひとつひとつ焼き上げた野菜の香味、まろやかなゴマ&ゆずこしょうソースと重なりあう。兄が丹精込めたはぜ掛け天日干しのコシヒカリのご飯、姉お手製の根っこ入りシャキシャキ野沢菜にも頬が緩む。実家の隣家が作るふじがとろ~りバニラアイスととろけるタルトタタンにたどり着けたら、口福。
『百瀬食堂』店舗詳細
鶏肉の旨味を丼で堪能『鳥藤分店』(築地)
場外市場にある、明治40年(1907)創業の鶏肉問屋の支店となる鳥料理店。それだけに、鶏肉の調理法を知り尽くしている。親子丼は鶏肉の切り方の工夫や卵の火の入れ方により絶妙な味わいに。一見地味なぼんじり温玉丼に至っては、問屋ならではの贅沢さ。鶏一羽につきわずかしか取れない尻肉が、ご飯の上にびっしりのっているのだ。添えられた鶏白湯スープもこの上ない濃厚さで、材料をいかにふんだんに使っているかがわかる。
『鳥藤分店』店舗詳細
大正時代から続く市場の食堂。『小田保』(築地)
まだ魚市場が日本橋にあった頃から“市場の食堂”だった店。本店は築地から豊洲へと市場と共に移転したが、場外市場では築地魚河岸に開店して「魚市場の味」をこの地に残している。食材はもちろん市場直送。フライの海老もホタテも驚くほどの大きさと品質のよさで、自家製クリームコロッケも絶品。何よりの名物はチャーシューエッグ。市場内で働く常連たちの「ハムエッグよりボリュームがあるものを」という要望でメニューが生まれた。チャーシューももちろん手作りだ。
『小田保』店舗詳細
日本の鯨食文化を伝える使命。『築地の鯨』(築地)
鯨の立田揚が給食に出ていたことを知らない世代も増えたこの頃、鯨料理は特別なものとなった。何しろ「世界の台所」と名高い築地場外市場でも専門店はわずか2軒なのだ。その1軒がこの「築地の鯨」、お手頃価格で味は保証済み。「脂少なめで栄養価の高い鯨肉を、もっと知ってほしい」と、料理担当の小泉さんは料理法の研究を重ねている。店頭では鯨肉や立田揚も販売している。
『築地の鯨』店舗詳細
出汁と魚とご飯の香り。『白金 よこ山』(白金高輪)
注文してから炭火で焼き上げる魚の、香ばしい身に箸を入れると、ふわっ。味わい濃く甘い銀カマスが主菜の本日の万福御膳は、長角盆に乗り切らない品数に嬉(き)々となる。左上のお椀は、牛肉となめこの煮物。肉を使う副菜も必ず登場し、しらす豆腐やお浸しが脇を固める。「お昼に気軽に割烹の味を」と、店主の横山拓生(ひろたか)さん。気品漂う麻のれんに身構えるも、白木を基調にした店内は、気負わず和める空間だ。さらに和みたいなら、ランチ日本酒380円を迷わずに。
『白金 よこ山』店舗詳細
取材・文=半澤則吉、桂水社中、高橋健太、佐藤さゆり・松井一恵(teamまめ)、高山和佳、戸田恭子、加藤桐子(風来堂)、眞鍋じゅんこ 撮影=小野広幸、井原淳一、山出高士、加藤熊三、門馬央典、金井塚太郎、鴇田康則